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啜
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すゝ
ふりがな文庫
“
啜
(
すゝ
)” の例文
しかしあの
逞
(
たくま
)
しいムツソリニも一
椀
(
わん
)
の「しるこ」を
啜
(
すゝ
)
りながら、
天下
(
てんか
)
の
大勢
(
たいせい
)
を
考
(
かんが
)
へてゐるのは
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
想像
(
さうぞう
)
するだけでも
愉快
(
ゆくわい
)
であらう。
しるこ
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その
音
(
ね
)
といつたら美しい女の
啜
(
すゝ
)
り泣きをするやうな調子で、
聴衆
(
ききて
)
は誰一人今日までこんな美しい音楽を耳にした事はないらしかつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
熱い味噌汁を
啜
(
すゝ
)
り乍ら、八五郎は肩を
聳
(
そび
)
やかします。この男の取柄は、全くこの忠實と、疲れを知らぬ我武者羅だつたかも知れません。
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
少
(
すこ
)
し
懷
(
ふところ
)
が
窮屈
(
きうくつ
)
でなくなつてからは
長
(
なが
)
い
夜
(
よ
)
の
休憇時間
(
きうけいじかん
)
には
滅多
(
めつた
)
に
繩
(
なは
)
を
綯
(
な
)
ふこともなく
風呂
(
ふろ
)
に
行
(
い
)
つては
能
(
よ
)
く
噺
(
はなし
)
をしながら
出殼
(
でがら
)
の
茶
(
ちや
)
を
啜
(
すゝ
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
生
(
い
)
ける
犬
(
いぬ
)
を
屠
(
ほふ
)
りて
鮮血
(
せんけつ
)
を
啜
(
すゝ
)
ること、
美
(
うつく
)
しく
咲
(
さ
)
ける
花
(
はな
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
すること、
玲瓏
(
れいろう
)
たる
月
(
つき
)
に
向
(
むか
)
うて
馬糞
(
ばふん
)
を
擲
(
なげう
)
つことの
如
(
ごと
)
きは、
言
(
い
)
はずして
知
(
し
)
るベきのみ。
蛇くひ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
「あんまりどす。」とお信さんは恨めしさうに
啜
(
すゝ
)
り泣きを始めた「お父つあん等、
自分
(
めんめ
)
の子お産みやしたことおへんよつてお知りんのどす。」
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
でも平中は、あまり不思議でたまらないので、その筥を引き寄せて、中にある液体を少し
啜
(
すゝ
)
って見た。と、やはり非常に濃い丁子の匂がした。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
子供は気を呑まれて
一寸
(
ちよつと
)
静かになつたが、直ぐ低い
啜
(
すゝ
)
り泣きから出直して、前にも増した
大袈裟
(
おほげさ
)
な泣き声になつた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
不思議
(
ふしぎ
)
なこともあるものです。それが
今日
(
けふ
)
は、
何
(
なに
)
をおもひだしたのか、
目
(
め
)
が
覺
(
さ
)
めると、めそめそ
啜
(
すゝ
)
り
泣
(
な
)
きをしながら、
何處
(
どこ
)
へか
出
(
で
)
て
行
(
い
)
つてしまひました。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
不思議なことには、熱い涙が人知れず其顔を流れるといふ様子で、時々
啜
(
すゝ
)
り上げたり、
密
(
そつ
)
と鼻を
拭
(
か
)
んだりした。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし何の物音も聽えず、
啜
(
すゝ
)
り
泣
(
なき
)
の聲もしなかつた。この上五分間も、あの死のやうな沈默が續いたなら、私は盜人のやうに
錠前
(
ぢやうまへ
)
をこぢ開けたに違ひない。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そこでは
流石
(
さすが
)
にゆつくりと膳につく気も
出
(
で
)
なかつた。立ちながら紅茶を一杯
啜
(
すゝ
)
つて、タヱルで
一寸
(
ちよつと
)
口髭
(
くちひげ
)
を
摩
(
こす
)
つて、それを、
其所
(
そこ
)
へ放り出すと、すぐ客間へ
出
(
で
)
て
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「まア、あなたも。わたしどうしたらいゝでせう。」とおかみさんはとう/\音高く涙を
啜
(
すゝ
)
り上げた。
にぎり飯
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼奴
(
あいつ
)
は
一
(
ひ
)
ト通りの奴じゃアありませんから、
襤褸褞袍
(
ぼろどてら
)
を女に着せて、膏薬を身体中へ貼り付けて来て、
動
(
いご
)
けねえから
此方
(
こっち
)
の
家
(
うち
)
へおいて重湯でも
啜
(
すゝ
)
らせてくれろと云って
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
... 内へ
這入
(
はいっ
)
て見ますると、可哀相に、此有様です」と
言来
(
いいきた
)
りて老女は真実
憫
(
あわ
)
れに堪えぬ如く声を
啜
(
すゝ
)
りて泣出せしかば目科は之を慰めて「いやお前が
爾
(
そう
)
まで悲むは尤もだが、 ...
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「はア」と自分は
緩
(
ぬる
)
い茶を一杯
啜
(
すゝ
)
つてから、「それでですナア、今
喞筒
(
ポンプ
)
を稽古して居るのは?」
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
「今日は出来るだけ幸福でなくちや。」とそんなことを考へながら、彼は熱い珈琲を
啜
(
すゝ
)
つた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
部屋に錠を
下
(
おろ
)
して置いて暗い階段を三つ
下
(
くだ
)
る。
入口
(
いりくち
)
を出て台所の
硝子戸
(
がらすど
)
をコツコツ遣つて見たが
未
(
ま
)
だマリイは起きて居ない。𤍠い
珈琲
(
キヤツフエ
)
と
牛乳
(
ちゝ
)
とを
啜
(
すゝ
)
つて
行
(
ゆ
)
く事は出来なかつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「ひよつとすると私は半分位此手を切るかも知れません。その時は御婦人方の中どなたかが血を
啜
(
すゝ
)
つたり、白いハンケチで
拭
(
ふ
)
いて下さるでせうな。では早速乍ら取りかゝりませう。」
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
朝
(
あさ
)
には
患者等
(
くわんじやら
)
は、
中風患者
(
ちゆうぶくわんじや
)
と、
油切
(
あぶらぎ
)
つた
農夫
(
のうふ
)
との
外
(
ほか
)
は
皆
(
みんな
)
玄關
(
げんくわん
)
に
行
(
い
)
つて、一つ
大盥
(
おほだらひ
)
で
顏
(
かほ
)
を
洗
(
あら
)
ひ、
病院服
(
びやうゐんふく
)
の
裾
(
すそ
)
で
拭
(
ふ
)
き、ニキタが
本院
(
ほんゐん
)
から
運
(
はこ
)
んで
來
(
く
)
る、一
杯
(
ぱい
)
に
定
(
さだ
)
められたる
茶
(
ちや
)
を
錫
(
すゞ
)
の
器
(
うつは
)
で
啜
(
すゝ
)
るのである。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
川島先生が息を
呑
(
の
)
む一瞬のあひだ身動きの音さへたゝず
鎮
(
しづ
)
まつた中に、突然佐伯の激しい
啜
(
すゝ
)
り
泣
(
な
)
きが起つた。と、
他人
(
ひと
)
ごとでも見聞きするやうにぽツんとしてゐた私の名が、
霹靂
(
へきれき
)
の如くに呼ばれた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
わが
小蒸汽
(
こじようき
)
は
堪
(
た
)
へかねし
如
(
ごと
)
く
終
(
つひ
)
に
啜
(
すゝ
)
り泣くに………
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
相變らずの
氣紛
(
きまぐ
)
れらしい樣子に、平次は大した氣にも留めず、煙草を呑んで茶を
啜
(
すゝ
)
つて、お墓詣りらしい三崎町の往來を眺めてゐると
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
然
(
しか
)
し
卯平
(
うへい
)
は
其
(
そ
)
の
僅少
(
きんせう
)
な
厚意
(
こうい
)
に
對
(
たい
)
して
窪
(
くぼ
)
んだ
茶色
(
ちやいろ
)
の
眼
(
め
)
を
蹙
(
しが
)
める
樣
(
やう
)
にして、
洗
(
あら
)
ひもせぬ
殼
(
から
)
の
兩端
(
りやうはし
)
に
小
(
ちひ
)
さな
穴
(
あな
)
を
穿
(
うが
)
つて
啜
(
すゝ
)
るのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
偶
(
たま
)
には茶入や黒茶碗を
購
(
か
)
はないとも限らないが、それは自分で薄茶を
啜
(
すゝ
)
らうためではなくて、物好きな東京の成金に売りつけようとするからだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それから
又
(
また
)
パリの
或
(
ある
)
カツフエにやはり
紅毛人
(
こうもうじん
)
の
畫家
(
ぐわか
)
が
一人
(
ひとり
)
、一
椀
(
わん
)
の「しるこ」を
啜
(
すゝ
)
りながら、——こんな
想像
(
さうぞう
)
をすることは
閑人
(
かんじん
)
の
仕事
(
しごと
)
に
相違
(
さうゐ
)
ない。
しるこ
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
弟子ガ一ト匙ズツユックリ/\ト、アイスクリームノ
塊
(
かたまり
)
ヲ口ノ中ヘ入レテヤル。ソノ合間々々ニ紅茶ヲ
啜
(
すゝ
)
ル。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「
何
(
ど
)
うしませう」と
啜
(
すゝ
)
り
泣
(
な
)
いた。
宗助
(
そうすけ
)
は
再度
(
さいど
)
の
打撃
(
だげき
)
を
男
(
をとこ
)
らしく
受
(
う
)
けた。
冷
(
つめ
)
たい
肉
(
にく
)
が
灰
(
はひ
)
になつて、
其灰
(
そのはひ
)
が
又
(
また
)
黒
(
くろ
)
い
土
(
つち
)
に
和
(
くわ
)
する
迄
(
まで
)
、
一口
(
ひとくち
)
も
愚癡
(
ぐち
)
らしい
言葉
(
ことば
)
は
出
(
だ
)
さなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は酒はあまり
遣
(
や
)
らない方だから、すこし甘口ではあるが白葡萄酒の
玻璃盃
(
さかづき
)
に一ぱい注いであるのを前に置いて、それをすこしづゝ遣つたり、乳色のした
牡蠣
(
かき
)
の汁を
啜
(
すゝ
)
つたり
犬
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
近
(
ちかづ
)
けば木蔭の噴水より水の滴る
響
(
ひゞき
)
、
静
(
しづけ
)
き夜に恰も人の
啜
(
すゝ
)
り泣くが如くなるを聞き付け、其のほとりのベンチに腰掛け、水の面に燈影の動き砕くるさまを見入りて、独り湧出る空想に耽り候。
夜あるき
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
言
(
い
)
ふまでもない
肉
(
にく
)
を
屠
(
ほふ
)
つて
其
(
そ
)
の
血
(
ち
)
を
啜
(
すゝ
)
るに
仔細
(
しさい
)
はないが、
夫
(
をつと
)
は
香村雪枝
(
かむらゆきえ
)
とか。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と文治のあさましき姿を見ては
水洟
(
みずっぱな
)
を
啜
(
すゝ
)
って居ります。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
また
幽
(
かす
)
かな
啜
(
すゝ
)
り泣き……
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
幸ひ間もなく正氣づきましたが、餘程ひどく
怯
(
おび
)
えたものと見えて、
啜
(
すゝ
)
り泣いたり
顫
(
ふる
)
へたりするばかりで、
容易
(
ようい
)
に口も利けません。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
只
(
たゞ
)
響
(
ひゞき
)
を
立
(
た
)
てながら
容易
(
ようい
)
に
冷
(
さ
)
めぬ
熱
(
あつ
)
い
茶碗
(
ちやわん
)
を
啜
(
すゝ
)
つた。おつぎも
幾年
(
いくねん
)
か
逢
(
あ
)
はぬ
伯母
(
をば
)
の
人
(
ひと
)
なづこい
樣
(
やう
)
で
理由
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
樣
(
やう
)
な
容子
(
ようす
)
を
偸
(
ぬす
)
み
視
(
み
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
藤原氏は予言者のヨハネのやうな
厳
(
しか
)
つべらしい口もとをして言つた。たつた一つヨハネと違ふのは、
蝗
(
いなご
)
の代りに今のさきお茶を
啜
(
すゝ
)
つた事だつた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
食刀
(
ナイフ
)
を
置
(
お
)
くや否や、代助はすぐ紅茶々碗を
持
(
も
)
つて書斎へ
這入
(
はい
)
つた。時計を見るともう九時
過
(
すぎ
)
であつた。しばらく、
庭
(
には
)
を
眺
(
なが
)
めながら、茶を
啜
(
すゝ
)
り
延
(
の
)
ばしてゐると、
門野
(
かどの
)
が
来
(
き
)
て
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
炉の火は
盛
(
さかん
)
に燃えた。叔母も
啜
(
すゝ
)
り上げ
乍
(
なが
)
ら耳を傾けた。聞いて見ると、父の死去は、老の為でもなく、病の為でも無かつた。まあ、言はゞ、職業の為に突然な最後を遂げたのであつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
僕
(
ぼく
)
は
今
(
いま
)
もペンを
持
(
も
)
つたまま、はるかにニユウヨオクの
或
(
ある
)
クラブに
紅毛人
(
こうもうじん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
が七八
人
(
にん
)
、一
椀
(
わん
)
の「しるこ」を
啜
(
すゝ
)
りながら、チヤアリ、チヤプリンの
離婚問題
(
りこんもんだい
)
か
何
(
なん
)
かを
話
(
はな
)
してゐる
光景
(
くわうけい
)
を
想像
(
さうぞう
)
してゐる。
しるこ
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蝗
(
いなご
)
、
蛭
(
ひる
)
、
蛙
(
かへる
)
、
蜥蜴
(
とかげ
)
の
如
(
ごど
)
きは、
最
(
もつと
)
も
喜
(
よろこ
)
びて
食
(
しよく
)
する
物
(
もの
)
とす。
語
(
ご
)
を
寄
(
よ
)
す(
應
(
おう
)
)よ、
願
(
ねが
)
はくはせめて
糞汁
(
ふんじふ
)
を
啜
(
すゝ
)
ることを
休
(
や
)
めよ。もし
之
(
これ
)
を
味噌汁
(
みそしる
)
と
洒落
(
しやれ
)
て
用
(
もち
)
ゐらるゝに
至
(
いた
)
らば、十
萬石
(
まんごく
)
の
稻
(
いね
)
は
恐
(
おそ
)
らく
立處
(
たちどころ
)
に
枯
(
か
)
れむ。
蛇くひ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
障子の外には、シクシクと
啜
(
すゝ
)
り泣く聲、言ふまでもなく、話の樣子を心配したお初が、其處に立つて何も彼も聽いたのでせう。
銭形平次捕物控:316 正月の香り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
博士は水つぽい
吸物
(
すひもの
)
を
啜
(
すゝ
)
りながら、江戸つ子に
附物
(
つきもの
)
の、東京以外の土地は
巴里
(
パリー
)
だらうが、天国だらうが、みんな田舎だと
見下
(
みくだ
)
したやうな調子で
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
約
(
やく
)
三十分の
後
(
のち
)
彼は食卓に就いた。
熱
(
あつ
)
い紅茶を
啜
(
すゝ
)
りながら
焼麺麭
(
やきぱん
)
に
牛酪
(
バタ
)
を付けてゐると、
門野
(
かどの
)
と云ふ書生が座敷から新聞を畳んで持つて来た。四つ折りにしたのを座布団の
傍
(
わき
)
へ置きながら
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
お末は
啜
(
すゝ
)
り上げ乍ら、母親の側へ寄つて
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
ガラツ八はさう言ひながらも、惡い心持がしないらしく、縁臺に腰をおろして、お町がくんでくれた
温
(
ぬる
)
い茶を
啜
(
すゝ
)
ります。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
俳優中村梅玉の楽みは、金を
蓄
(
た
)
めるのと、夕方庭の石燈籠に
灯
(
ひ
)
を入れて、ゆつくりお茶を
啜
(
すゝ
)
るのと、この二つださうだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
いや、そればかりでなく、隣りの部屋で
啜
(
すゝ
)
り泣く聲が次第に大きくなつて、やがてそれは押へきれない
嗚咽
(
をえつ
)
と變り、平次と八五郎を驚かすのです。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
二人は
外套室
(
クローク・ルウム
)
に外套を置いて、かねて馴染の小ぢんまりした
部室
(
へや
)
に入つて往つた。そして
香気
(
かをり
)
の高いココアを
啜
(
すゝ
)
りながら、好きなお
喋舌
(
しやべり
)
に語り耽つた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
平次は叔母さんが
淹
(
い
)
れてくれた、去年貰つた新茶の、火が戻つてすつかり
菜
(
な
)
つ
葉
(
ぱ
)
臭くなつたのを、それでも有難さうに
啜
(
すゝ
)
つて、八の報告を促します。
銭形平次捕物控:316 正月の香り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
舌触りのいい
肉汁
(
スウプ
)
を
啜
(
すゝ
)
りさして、大帝はひよいと顔を持ち上げた。そして
側
(
そば
)
にゐた別荘の主人に呼びかけた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
啜
漢検1級
部首:⼝
11画
“啜”を含む語句
啜泣
啜上
啜込
鼻啜