別段べつだん)” の例文
狼群ろうぐん鉄砲てっぽうをおそれて日中はあまりでないし、また人間の姿すがたが見えると、さっさとげてしまうので、この日は別段べつだん危険きけんもなかった。
「自分の家に属してある属領から上って来る物があるからそれで沢山だ。別段べつだんに法王に御厄介やっかいをかけてそんなに沢山貰うにも及ばぬ」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
一体いつたい東海道とうかいだう掛川かけがは宿しゆくからおなじ汽車きしやんだとおぼえてる、腰掛こしかけすみかうべれて、死灰しくわいごとひかへたから別段べつだんにもまらなかつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ウム、それ検熱器けんねつきふものだ、これ聴診器ちやうしんきこれ打診器だしんきふものだ。伊「へえー。殿「一つてやらうか。登「いえわたくし別段べつだん何処どこも。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
小六ころく宗助そうすけきるすこまへに、何處どこかへつて、今朝けさかほさへせなかつた。宗助そうすけ御米およねむかつて別段べつだんその行先ゆくさきたゞしもしなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そこ種々いろ/\押問答おしもんだふしましたが、あいちやんのはうでも別段べつだんうま理屈りくつず、こと芋蟲いもむし非常ひじよう不興ふきようげにえたので、あいちやんは早速さつそくもどりかけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此關係このかんけい關東大地震かんとうだいぢしん但馬地震たじまぢしん丹後地震たんごぢしんおいて、此頃このごろ證據立しようこだてられたところであつて、別段べつだん説明せつめいようしない事實じじつである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
かくかれ醫科大學いくわだいがく卒業そつげふして司祭しさいしよくにはかなかつた。さうして醫者いしやとしてつるはじめにおいても、なほ今日こんにちごと別段べつだん宗教家しゆうけうからしいところすくなかつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
正九郎は別段べつだんみたわけではない。だがはじめから空気ポンプがどこにあるか知っていた。さわってみなくてもはれもののあるところがわかるのと同じことである。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
しやうして傳吉は領主より相當さうたう恩賞おんしやうあるべきむね別段べつだん遠江守へ仰せ付らるゝ間此旨留守居へ相心得あひこゝろえよと申渡す
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しか從來じゆうらい其麽そんなことは滅多めつたになく、別段べつだんみとむべき弊害へいがいともなふのでもないのであつた。それで普通ふつうどのうちでも彼等かれら滿足まんぞく分量ぶんりやう前以まへもつ用意よういしてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
職業しよくげふはとへば、いえ別段べつだんこれといふもの御座ござりませぬとて至極しごく曖昧あいまいこたへなり、御人數ごにんずはとかれて、其何そのなんだか四五人しごにんこと御座ござりますし、七八人しちはちにんにもなりますし
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たとへば日本にほん小島國せうたうごくであつて、氣候きこう温和をんわ山水さんすゐがいして平凡へいぼん別段べつだん高嶽峻嶺かうがくしゆんれい深山幽澤しんざんゆうたくといふものもない。すべてのものが小規模せうきもである。その我邦わがくに雄大ゆうだい化物ばけもののあらうはずはない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
女子教育上ぢよしけういくじやう意見いけんとしては別段べつだん申上まをしあげることも御在ござませんが、わたくしが一昨年さくねんはる女子英學塾ぢよしえいがくじゆくひらいてから以來いらい種々いろ/\今日こんにち女子ぢよしすなは女學生ぢよがくせいつい經驗けいけんしたことがありますから
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
別段べつだんさうするやうにひつけたわけではなかつたけれど、自然しぜん自然しぜんはゝ境遇きやうぐう會得ゑとくしてむすめ君子きみこは、十三になつた今年頃ことしごろから、一人前にんまへ仕事しごとにたづさはるのをたのしむものゝやうに
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
文福ぶんぶくちゃがまもそれなりくたびれて寝込ねこんででもしまったのか、それからは別段べつだん手足てあしえておどすというようなこともなく、このおてら宝物ほうもつになって、今日こんにちまでつたわっているそうです。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「さればにてさふらふ別段べつだんこれまをしてきみすゝたてまつるほどのものもさふらはねど不圖ふと思附おもひつきたるは飼鳥かひどりさふらふあれあそばして御覽候ごらんさふらへ」といふ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あいちやんはほか別段べつだん用事ようじもなかつたので、大方おほかたしまひにはなにことはなしてれるだらうとおもつて悠然ゆつくりつてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
宗助そうすけ坂井さかゐからつてしなが、御米およね嗜好しかうつたので、ひさりに細君さいくんよろこばせてつた自覺じかくがあるばかりだつたから、別段べつだんそこにはかなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれくするのは、別段べつだん同情どうじやうからでもなく、とつて、情誼じやうぎからするのでもなく、たゞみぎとなりにゐるグロモフとひとならつて、自然しぜん其眞似そのまねをするのでつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もよほ講中かうちうの内にて紺屋こんや五郎兵衞蒔繪師まきゑし三右衞門米屋六兵衞呉服屋ごふくや又兵衞の四にんを跡へ止め別段べつだん酒肴しゆかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その翌三月十日頃までは書物はこの国の図書館長が買い集めてくれますから、私は別段べつだん用事もない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
の二つのほかには別段べつだんれというてかぞへるほど他人たにん記憶きおくにものこつてなかつた。それでもかれおほきな躰躯からだ性來せいらい器用きようとは主人しゆじんをして比較的ひかくてき餘計よけい給料きふれうをしませなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それで神々かみ/\うち別段べつだん異樣いやうさうをしたものはない。猿田彦命さるたひこのみことはなたかいとか、天鈿目命あまのうづめのみことかほがをかしかつたといふくらゐのものである。また化物思想ばけものしさう具體的ぐたいてきあらはしたあまおほくはない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
『あァ、此處こゝたまちやんがればいにねえ!』と別段べつだんだれふともなくあいちやんが聲高こわだかひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
とにかく、かれ医科大学いかだいがく卒業そつぎょうして司祭しさいしょくにはかなかった。そうして医者いしゃとしてつるはじめにおいても、なお今日こんにちごと別段べつだん宗教家しゅうきょうからしいところすくなかった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
汽車きしやるとみじかい道中だうちゆうでも所爲せゐつかれるね。留守中るすちゆう別段べつだんかはつたことはなかつたかい」といた。實際じつさいかれみじかい汽車きしや旅行りよかうにさへへかねる顏付かほつきをしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其方儀吟味ぎんみ致し候處別段べつだん惡事あくじ無之とは申ながら不行屆の儀も有之候故主人方にて遠慮ゑんりよ申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みたけりやむがいといふのみで別段べつだんみていつてくれるのでもない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれがかくするのは、別段べつだん同情どうじょうからでもなく、とって、情誼じょうぎからするのでもなく、ただみぎとなりにいるグロモフとひとならって、自然しぜんその真似まねをするのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)