まか)” の例文
さうして東隣ひがしどなりからりてござが五六まいかれた。それから土地とち習慣しふくわん勘次かんじきよめてやつたおしな死體したいは一さい近所きんじよまかせた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それゆえ誰かそれをどうにか出来る者にまかさなければならなかったからであるし、私の財政に関しては、収税請負人は富裕であって
お前さんはマアわしにまかせて、なんの心配することアねえやな、今におしんも帰ってくるから、ユックリ話して休んでいなさるがいい
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
何年何月何日にどうしたこうしたとあたかも口からまかせに喋舌しゃべっているようである。しかもその流暢りゅうちょうな弁舌に抑揚があり節奏せっそうがある。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いえ、いきなり九条殿へ、あなたがお訪ね遊ばしては、人目立ちましょう。てまえにおまかせくだされば、よいように運びますが」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足の弱いやつなんぞ相手にしていられるもんかと、自分の健脚けんきゃくまかせてさっさと友をりにして行ってしまいそうに思われる。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
然し血気の怒にまかする巳代吉の勢鋭く、親分は右の手首を打折うちおられ、加之しかも棒に出て居た釘で右手の肉をかきかれ、大分の痛手いたでを負うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
足にまかせて行くほどに、山路に迷い込んだりしたが、夜が明けた頃ふたゝび元の在所ざいしょへ戻って来たところを、討手に捕えられた。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ではうばをおかかえになり、お湯をおつかわせ申す女たちをもおおきになって、それらの者におまかせになればよろしゅうございます」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
しかはあれ、一切の虚僞いつはりを棄てつゝ、汝の見し事をこと/″\くあらはし、かさある處は人のこれを掻くにまかせよ 一二七—一二九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
只今たゞいまはお気楽きらくでございますよ、みなさんがたまかせツきりで、憲法発布けんぱふはつぷりまして、それからはみなえらいかた引受ひきうけてんでもなさるのです。
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
海よりただちに高く築き上げられたる外観の極めて美はしく、逞しきは、古三韓の地も優に指揮にまかすべく、その風姿せまらざるものあり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
が、店のものにもひまを出さず、成行きにまかせていた所を見ると、それでも幾分か心待ちには、待っていたのでございましょう。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
行儀作法も知らず言葉遣いは下等人物同様で一挙一動がことごとく感情まかせという動物性の人間もすくなくない。実に野蛮界の有様ありさまを現出しているね。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
絶えず束縛され——無理ひに生得せいとくの性質の火を絶えずよわめさせられて、その焔が内に向ふにまかせ生命を刻々こく/\に嘗め盡すとも
させおのれら我意がいまかせて退出後たいしゆつごにゆる/\休足きうそく酒盛さかもりなどして夜に入て評定ひやうぢやうし又もなかれてかへすなとよく/\舜帝しゆんていの御心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
高低のある広い地は一面に雑草を以ておおわれていて、春は摘草つみくさ児女じじょの自由に遊ぶに適し、秋は雅人がじんほしいままに散歩するにまかす。
それを見るとわたしはあわてて、あとをも見ずに、足にまかせて小山をかけ下りて、ヴィタリスのいる所までにげようとした。
此時このとき如何いかうれしく、また、如何いかなる談話だんわのあつたかはたゞ諸君しよくん想像さうぞうまかせるが、こゝ一言ひとことしるしてかねばならぬのは、この大輕氣球だいけいききゆうことである。
日本政府は二百四十万ドル支出ししゅつし、四年間継続けいぞくの工事としてこれを経営けいえいし、技師職工は仏人をやとい、したがっ器械きかい材料ざいりょうの買入までも仏人にまかせたり。
また、舵手コクスンのイズレール・ハンズは注意深い、狡猾な、老練な、経験のある海員で、まさかの時にはほとんど何でもまかすことが出来る男だった。
「へへへへへへ」すると、井関さんは、くせの、気味悪い笑い方をして「それはまあ、私にまかせておいて下さい。決してつまらない者は呼びません。 ...
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それゆえ学校事業は独立事業としてはずいぶん難い事業であります。しかしながら文学事業にいたっては社会はほとんどわれわれの自由にまかせる。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
よいまかせて詰寄つめよりました。すると母は僕の剣幕の余り鋭いので喫驚びっくりして僕の顔を見てるばかり、一言も発しません。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
……狂人きちがひでもなんでもかまはん。自分じぶん生命いのちがけの女房にようばう自分じぶんすくふに間違まちがひるまい。すべまかしてもらはう。なんでもわたしのするまゝにしてください。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、舟をゆくままにまかしておくと、いつの間にか遊びがおわって、舟は元の処に帰って船がかりをするのであった。
織成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
あとは読者の方々のご想像にまかせるよりしかたがない。それに八五郎を結婚させたら、もうおしまいだろうと思う。
平次と生きた二十七年 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「じゃあ一つ、わしがそれを生捕いけどってあげよう。そのかわり、ほんとに生捕ることが出来たら、手荒なことをしないで、万事ばんじわしにまかしてくれるかね」
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それゆゑ規則きそくでやつたこと何處どこへも通用つうようするといふわけにはまゐりません。矢張やはり本人ほんにん獨立心どくりつしんまかせなければなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
が、この男はまだ芸術家になりきらぬ中、香具師やし一流ののぞみまかせて、安直に素張すばらしい大仏を造ったことがある。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まかせ置きたるに弟金起は兎角放埓にして悪しき行い多く殊に支店の金円を遣い込みて施寧の許へとては一銭も送らざる故施寧は自ら長崎に渡らんとの心を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
時ならぬ忠告は有害ならぬまでも、無益におわる場合多ければ、葬式そうしき祝詞しゅくじを呈し、めでたき折に泣きごとを述ぶるにひとしきことは常識にまかせてつつしみたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その存分にまかすべしという規定があり(Noxa deditio)、またガーイウス、ウルピアーヌスらの言うところに拠れば、この行害物引渡の主義は
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
全く自由自在のようなれども、ればとて食物を勝手にまかせて何品でも喰い次第にすると云うけではない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おのれも手伝い申さんというにまかせてはたらかせて置きしに、午飯時ひるめしどきめしを食わせんとてたずねたれど見えず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
例えば中国一たび亡びんか、日本も必ず幸いなし。何ぞそれく国家の旗を高くてるをまかせんや。嗚呼ああ君、われら、今彼らの滅種政策の下に嫉転えんてん呼号するもの。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そののち幾年いくねんって、おとこほうがあきらめて、何所どこからかつまむかえたときに、敦子あつこさまのほうでもれたらしく、とうとう両親りょうしんすすめにまかせて、幕府ばくふ出仕しゅししている
闇黒を悪魔に与えてその跳梁ちょうりょうまかし、夢の天国を自ら守る人には、永久に平和が失われないのである。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
金髮を風の脣に、白いはだへを野山のせいにみえぬ手に、無垢むくの身を狂風に乘る男に、おまへはまかせる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
清盛の懲罰ちょうばつ魔王まおうまかせてください。この世では記録にないほどの恐ろしい苛責かしゃくを受け、死後もまた地獄じごくにおちて永劫えいごうにつきない火に焼かれなくてはならなかったら!
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「よろしい。では給料の点は儂にまかしておくがいい、それから君は何日何時でも旅行に出られるだろうね。儂が新聞広告で係累けいるいのない人間を求めたのはそうした理由だよ」
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
まよひし邪正じやしやうがたし、鑑定かんてい一重ひとへ御眼鏡おめがねまかさんのみと、はじたるいろもなくべらるゝに、母君はゝぎみ一トたびあきれもしつおどろきもせしものゝ、くまで熱心ねんしんきはまりには
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とはいへ、一しゃう航路ふなぢをばひとへにかみまかした此身このみ!……(一同に對ひ)さ、さ、元氣げんき人達ひとたち
西洋諸国たえて鄙野ひやの教門なし。ここをもって人の好むところにまかするもまた可ならん。かつ人々しき高く、学ひろし。あに木石虫獣を拝する者あらんや。わが邦はすなわちしからず。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
生來せいらい貴方あなた怠惰者なまけもので、嚴格げんかく人間にんげん其故それゆゑ貴方あなたんでも自分じぶん面倒めんだうでないやう、はたらかなくともむやうとばか心掛こゝろがけてゐる、事業じげふ代診だいしんや、其他そのたのやくざものにまか
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
与えられた運命の風のまにまに身をまかせ、そうして大事の一点で、ひらっと身をかわして、より高い運命をつくる。宿命と、一点の人為的なる技術。ヴィナスの結婚は仕合せであった。
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
これを思って来ると、おきみも陰険でいやらしい女と思いますが、そんなことを知らないで坊っちゃん気質にまかせ手近かで腹癒はらいせしたがる池上も随分浅墓なものだと思われて来ます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
傍の人がとめると、それならかうさせてくれと云つて、その着物をお末にかけて、自分はその傍に添寝をした。お末の知覚はなくなつてゐたから、医師も母のするまゝにまかせて置いた。
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
つまりこのあと言葉ことばおぎなへば、わたしりあひのひともとではないといふ言葉ことばにすぎません。さうした言葉ことばれるのとひと氣持きもちにまかせるのと、どちらがいとおもひますか。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「ひとつ御相談にのりましょう。短気はおやめなさりませ。死ぬほどの事情がありましても、生きられる事情にもなりますもので。ひとつ御相談に乗りましょう。私におまかせなさりませ」
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)