附近ふきん)” の例文
と、海蔵かいぞうさんがいいました。そばにてみると、それはこの附近ふきん土地とちっている、まちとしとった地主じぬしであることがわかりました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
紅葉もみぢうつくしさは、植物しよくぶつそのものゝ種類しゆるいと、その發生はつせい状態じようたいとでそれ/″\ちがひますが、一面いちめんには附近ふきん景色けしきにも左右さゆうされるものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
またギリシヤの文明ぶんめいひらけるまへに、クリートのしまやその附近ふきんにおいて發達はつたつした文明ぶんめいも、やはり青銅器せいどうき時代じだいぞくするのでありました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
あえて私のみではない。盗難のあったれ以来、崖下の庭、古井戸の附近ふきんは、父を除いて一家中いっかちゅう異懼いく恐怖の中心点になった。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
にしろ附近ふきん医師いしらしいものはないところなので、漁師達りょうしたちってたかって、みずかせたり、焚火たきびあたためたり、いろいろつくしましたが
いまの名残なごりきあおられた落葉おちばが、まだ一ひら二ひらちゅうっているのでもわかる。わしがこの源氏閣げんじかく附近ふきんにおりたのは事実じじつにちがいない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この二首にしゆうたは、うたがひもなく、景色けしきんだうたであります。畝傍山うねびやま附近ふきんの、ちひさな範圍はんい自然しぜんうたつた、いはゆる敍景詩じよけいしといふものであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
それは、トーケルン附近ふきんに住んでいる百姓ひゃくしょうたちが、湖を相談そうだんをいくどもして、いよいよそれがきまりかかっていることを知っていたからです。
伊豆南方いづなんぽう洋底ようてい航海中こうかいちゆう船舶せんぱく水柱みづばしら望見ぼうけんし、あるひ鳴動めいどうともなつて黒煙くろけむりのあがるのをることもあり、附近ふきん海面かいめん輕石かるいしうかんでゐるのに出會であふこともある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
附近ふきんを乗りまわしていたぼくの瞳に、道路の真中で、五六人の少年少女が集まり、リンキイが先に立って、なに事か、一心不乱に、働いているのがみえました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
くわふるに橄欖島かんらんたう附近ふきんには、始終しじう有名いうめいなる海賊船かいぞくせん横行わうかうし、また屡々しば/\歐洲をうしう諸國しよこく軍艦ぐんかん巡航じゆんかうしてますから、其邊そのへん海底戰鬪艇かいていせんとうてい機關きくわん活動くわつどううしなつて
三十七ねん正月しやうぐわつ掘初ほりそめとして望玄ぼうげんしたがへてつてると、如何いかに、りかけてあな附近ふきんに、大男おほをとこが六七にんる。うして枯萱かれかやつてる。
が、おなつきおな命日めいにちは、つきれても、附近ふきんまちは、よひからぢるさうです、眞白まつしろな十七にん縱横じうわうまちとほるからだとひます——あとこれきました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
反対された寺田は実家を飛び出すと、銀閣寺附近ふきんの西田町に家を借りて一代と世帯しょたいを持った。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そのころは日のつまって行くせわしない秋に、誰も注意をかれる肌寒はださむの季節であった。先生の附近ふきんで盗難にかかったものが三、四日続いて出た。盗難はいずれも宵の口であった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのときあちこちの氷山に、大循環到着者とうちゃくしゃはこの附近ふきんおいて数日間休養すべし、帰路は各人の任意なるも障碍しょうがいは来路に倍するをもっ充分じゅうぶん覚悟かくごを要す。海洋は摩擦まさつ少きもかえって速度は大ならず。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「くず」と云う地名は、吉野川の沿岸附近ふきんに二箇所かしょある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
潜𤍠せんねつといふのは物體ぶつたい融解ゆうかいしたり、また蒸發じようはつするときにようする𤍠量ねつりようです。そんなわけで森林しんりん附近ふきん空氣くうきはいつもえてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
それで、その當時とうじひと住居じゆうきよしたあと海岸かいがん附近ふきんのこつてゐて、かれつてすてた貝殼かひがらや、さかなけだものほねなどがたまつてゐるところがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
肉体にくたい通例つうれい附近ふきん森蔭もりかげ神社やしろ床下ゆかしたなどにかくき、ただいたたましいのみを遠方えんぽうすものでござる。
其夜そのよ大雨たいうしたので、これまで野營やえいつゞけてゐた附近ふきん被害民ひがいみんは、みなつぶのこりのいへあつまつてあま大勢おほぜいでありしため混雜こんざつはしたけれども、みな口々くち/″\
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
して、櫻木君さくらぎくん一行いつかう意外ゐぐわい天變てんぺんのために、きたる二十五にち拂曉ふつげう橄欖島かんらんたう附近ふきんにて貴下等きから應援おうえんつのですか、よろしい、うけたまはる以上いじやう最早もはや憂慮いうりよするにはおよびません。
またしばらくして、日本選手一同がそろって、ベニスという下町へ遊びに行った日がありました。附近ふきんで、いちばん大きなダウンタアオンで、途中とちゅうの風光の美しさも類のないものでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
高山こうざんにはよくさういふ凹地くぼちみづたゝへて、ときには沼地ぬまちかたちづくり、附近ふきんいはあひだゆきをためてゐたりするところがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
この貝塚かひづか附近ふきんだとか、石器時代せつきじだいひとんでゐたあと發掘はつくつするときは、をり/\いしでもつてかこんだあとだとか
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
かうして鎔岩ようがんあらされた損害そんがいおほきいが、それよりも火山灰かざんばひのために荒廢こうはいした土地とち損害そんがい地盤沈下じばんちんかによつてうしなはれた附近ふきん水田すいでんあるひ鹽田えんでん損害そんがいはそれ以上いじようであつて
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そこで、何方どちらでも、はや橄欖島かんらんたう到着たうちやくしたほうは、むか一週間いつしゆうかんあひだそのしま附近ふきん待合まちあはせ、一週間いつしゆうかんすぎのち一方いつぽうえぬときには、最早もはや運命うんめいつき覺悟かくごさだめるはづであつた。
あちらにゆる遠景えんけい丁度ちょうど油壺あぶらつぼ附近ふきんりますので、うっかり話頭はなし籠城時代ろうじょうじだいことむかいますと、良人おっと様子ようすきゅうしずんで、さも口惜くやしいとったような表情ひょうじょううかべるのでした。
みんなはおしゃべりな小鳥のようにぺちゃくちゃさえずりながら、附近ふきんのデッキ・チェアに群がりましたが、ぼくの顔をみるや、急に内田さんから始まって、ひそひそ話になり、一度にぱっと飛びたって
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)