山道やまみち)” の例文
二人ふたりは、そこでかなしいわかれをしました。びっこのむすめは、ひとり山道やまみちあるいてかえります途中とちゅうみちばたのいしうえこしをかけてやすみました。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
だんだん山道やまみちのぼって、もりけ、たにえて、とうとうおくおく山奥やまおくまで行きました。山の上はしんとして、とりのさわぐおともしません。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
宿屋の番頭はこれから三里の山道をば温泉うんぜんたけの温泉へ行かれてはと云つてくれたが、自分は馬か駕籠かごしか通はぬといふ山道やまみちの疲労を恐れて
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なにかな、御身おみ遠方ゑんぱうから、近頃ちかごろ双六すごろく温泉をんせんへ、夫婦ふうふづれで湯治たうぢて、不図ふと山道やまみち内儀ないぎ行衛ゆくゑうしなひ、半狂乱はんきやうらんさがしてござる御仁ごじんかな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とうさんも馬籠まごめのやうなむらそだつた子供こどもです。山道やまみちあるくのにれてはます。それにしても、『みさやまたうげ』は見上みあげるやうなけはしい山坂やまさかでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ひとゝせ二月のはじめ、用ありて二里ばかりの所へいたらんとす、みな山道やまみちなり。母いはく、山なかなれば用心なり、つゝをもてといふ、にもとて鉄炮てつはうをもちゆきけり。
やま修行場しゅぎょうばあとにした私達わたくしたちは、随分ずいぶんながあいだけわしい山道やまみちをば、したしたしたへとくだってまいりました。
およ後方こうほうまうけられたる遞進機ていしんきとを使用しようして、のぼ山道やまみち大木たいぼく巨巖等きよがんとうちからに、螺旋形らせんけい尖端せんたん螺釘らていごと前方ぜんぽう大木たいぼくねぢみ、車内しやない揚上機やうじやうき運轉うんてんともに、その螺旋らせん自然しぜん收縮しゆうしゆくして
文「御子息が猟師ならば、此の辺の山道やまみちくわしく存じて居りましょうな、今から御子息を尋ねて往って、今一度此の辺を捜して見たいが、御子息は何方どちらの方へお出でか、分って居りましょうな」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
赤彦はいづく行くらむただひとりこの山道やまみちをおりて行きしが
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
そして、老人ろうじんは、いよいよ山道やまみちにさしかかりますと、やまうえは、まだ、ふもとよりは、もっとあかるくて、ちょうがんでいました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うま荷物にもつをつけてときはなか/\ほねれますが、一にち仕事しごとをすまして山道やまみちかへつてるのはたのしみなものですよ。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
鬼共おにどものいびきのおとくと、ぼうさんはほっといきをつきながら、いまのうちにそうとおもって、もうくらになった山道やまみちをやたらにけていきました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
随筆ずゐひつはうは、奥州おうしう会津あひづ諏訪越中すはゑつちう大力だいりきひとありて、これは宙外ちうぐわいさんの猪苗代ゐなはしろから、山道やまみちだから面白おもしろい。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとゝせ二月のはじめ、用ありて二里ばかりの所へいたらんとす、みな山道やまみちなり。母いはく、山なかなれば用心なり、つゝをもてといふ、にもとて鉄炮てつはうをもちゆきけり。
瀑布たき右手みぎてにくねくねといているせま山道やまみち私達わたくしたちはそれをばうえうえへとのぼってきました。
みちばたにいて龍膽りんだうはなとうさんにこゑけてれました。龍膽りんだう桔梗ききやうちいさな草花くさばなで、よく山道やまみちなぞにいてるのをかけるものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
道々みちみちててある木のえだたよりにしてあるいて行きますと、なが山道やまみちにもすこしもまよわずにうちまでかえりました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
げたむすめは、山道やまみちがさをさしてけてゆきました。そのあとをむすめたちは、っていったのです。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
うしてその時分じぶんぢやからといふて、滅多めツた人通ひとどほりのない山道やまみち朝顔あさがほいてるうちけぶり道理だうりもなし。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのありがたさを吾がのちへもしめさんとてふでついでにしるせり。近年は山家の人、家を作るに此雪頽なだれさけて地をはかるゆゑそのなんまれなれども、山道やまみち往来ゆきゝする時なだれにうたれ死するものまゝある事なり。
ひとりのたかい、かみのぼうぼうとした、ばかりひかる、いろくろおとこが、なつのさかりに、おおきな炭俵すみだわらをおって、このけわしい山道やまみちあるいて、まちりにきました。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
「もしもし、たびものでございますが、山道やまみちまよって、もうつかれて一足もあるかれません。どうぞおなさけに、しばらくわたくしどもをやすませていただきとうございます。」
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
山道やまみちなかばあたりでツイのさきにあるやうな、おほきな、あざやかかたちで、ありのまゝえた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのありがたさを吾がのちへもしめさんとてふでついでにしるせり。近年は山家の人、家を作るに此雪頽なだれさけて地をはかるゆゑそのなんまれなれども、山道やまみち往来ゆきゝする時なだれにうたれ死するものまゝある事なり。
行けば行くほどだんだんふかふか山道やまみちまよんで、どうしてももとのうみばたへ出ることができません。そのうちにだんだん日がれてきて、足もとがくらくなりました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と思う内に、車は自分の前、ものの二三げん隔たる処から、左の山道やまみちの方へ曲った。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なつからあきにかけて、このけわしい山道やまみちあるいて、やまして、他国たこくへゆく旅人たびびとがあったからですが、もうあきもふけたので、この数日間すうじつかんというものまったくひとかげなかったのであります。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さびしい野道のみちとおして、やがて山道やまみちにかかりますと、背中せなかにおぶさりながらおかあさんは、みちばたの木のえだをぽきんぽきんっては、みちてました。お百姓ひゃくしょうはふしぎにおもって
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おもうちに、くるま自分じぶんまへ、ものの二三げんへだたるところから、ひだり山道やまみちはうまがつた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しんずるもののように、おとなしくしていましたが、やがてってきた、かきとまたたびをそこへてると、徳利とくりかかえるようにして、まるまるふとったからだで、まえ山道やまみちあとをもずに
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある日さるとかにはお天気てんきがいいので、れだってあそびに出ました。その途中とちゅう山道やまみちさるかきたねひろいました。またしばらくくと、かわのそばでかにはおむすびをひろいました。かには
猿かに合戦 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みちすがらのも、くさも、いしも、またこのやまにすんでいる小鳥ことりや、せみや、ひぐらしにいたるまで、毎日まいにちのように、この山道やまみちある老人ろうじんせきばらいや、足音あしおとや、姿すがたらぬものはありません。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分とれ違って後方うしろへ通り抜けねばならないのに、とあやしみながら見ると、ぼやけた色で、夜の色よりも少し白く見えた、車も、人も、山道やまみちなかばあたりでツイ目のさきにあるような、大きな
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……じついただけで。わたしおぼえたのは……そんな、そ、そんなしからん場所ばしよではない。くに往復ゆきかへり野路のみち山道やまみちと、市中しちうも、やままはりの神社佛閣じんじやぶつかくばかり。だが一寸ちよつとこゝに自讚じさんしたいことがある。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仕丁 はあ、いえ、孕婦はらみおんなが鉄橋を這越はいこすから見ますれば、うし刻参ときまいりが谿河の一本橋は、もなく渡ると申すことで。石段は目につきます。裏づたいの山道やまみちを森へかよったに相違はござりますまい。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あたりは蝙蝠傘かうもりがさかついで、やごゑけて、卍巴まんじともえを、薙立なぎた薙立なぎた驅出かけだした。三里さんり山道やまみち谷間たにまたゞ破家やぶれや屋根やねのみ、わし片翼かたつばさ折伏をれふしたさまなのをたばかり、ひとらしいもののかげもなかつたのである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)