屋敷やしき)” の例文
屋敷やしき周囲まわりには広々ひろびろとしたはたけがありました。そして、そこにはばらのはなや、けしのはなが、いまをさかりにみだれているのであります。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
役人共は突退々々つきのけ/\富右衞門を引立つゝ問屋場へと連れ來り宿駕籠しゆくかごのせて江戸馬喰町四丁目の郡代ぐんだい屋敷やしきへ引れしは無殘むざんなることどもなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三条さんじょうまでると、たくさんりっぱなお屋敷やしきならんだ中に、いちばん目にたってりっぱな門構もんがまえのお屋敷やしきがありました。一寸法師いっすんぼうし
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こうしている間に、博士はくし屋敷やしきからにげだした透明人間が、なにをしでかすか知れないと思うと、ケンプ博士は気が気でなかった。
ニールスは、ここはどこですか、ときいてみました。すると、フクロウは、ここはモールバッカというお屋敷やしきだよ、と答えました。
画面がめんが変ると、こんどは広い屋敷やしきの庭先きがうつり、スプリングコートを着て帽子をかぶった男の姿が、私の視野しやをかすめたと見るまに
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
顔丸の丸彦は、野原や山をとびまわることがすきで、家や屋敷やしきなどはなんとも思っていませんでしたから、すぐに答えました。
長彦と丸彦 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
初君が古跡こせき寺泊てらどまりり、里俗りぞく初君屋敷やしきといふ。貞享ぢやうきやう元年釈門万元しやくもんまんげんしるすといふ初君が哥のいしぶみありしが、断破かけやぶれしを享和年間きやうわねんかん里入りじん重修ちようしうして今にそんせり。
ところ叔父をぢ意見いけんによると、あの屋敷やしき宗助そうすけ自分じぶん提供ていきようしてつたのだから、たとひ幾何いくらあまらうと、あまつたぶん自分じぶん所得しよとく見傚みなして差支さしつかへない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おかあさんは鳩の歌に耳をかたむけて、その言うことばがよくわかっていたのですから、この屋敷やしきを出て行くにつけても行く先が知れていました。
と、けわたった菊亭家きくていけ裏門うらもんのあたりから、築土ついじをこえて、ヒラリと屋敷やしきのなかへしのびこんだ三つの人かげがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
音次郎君の家のひろい屋敷やしきには、かきや、みかんや、ざくろなど、子どものほしがるくだものの木がたくさんある。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
それどころか、こんな話をすれば、おかみさんは、この人は、もう、伯爵さまのお屋敷やしきでは、だいじにされてはいないんだ、と思うにきまっています。
門はこの家のは北向きたむきなれど、通例は東向きなり。右の図にて厩舎うまやのあるあたりにあるなり。門のことを城前じょうまえという。屋敷やしきのめぐりは畠にて、囲墻いしょうを設けず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
源四郎げんしろうはなお屋敷やしきのすみずみの木立こだちのなか垣根かきねのもとから、やほこりのたぐいをはきだしては、物置ものおきのまえなるくりの木のもとでそれをやしている。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そのあき屋敷やしきの前を通りかかった者でもなければ、もう噂をいう人もないという時分になってしまいました。
「園絵様も琴二郎様も、お二人とも、もうおしらべがついて、お屋敷やしきへお下げになったのでござりますな」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おゝ、こひ屋敷やしきうたれど、おのが住居すまひにはまだならぬ、ひとったれど、まだ賞翫しゃうくわんはしてもらへぬ。
ちょうどそのころ、その国の殿との様のお屋敷やしきにつたわっている家宝かほうの名刀が、だれかのためにぬすまれました。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
新築しんちくいへんで、屋敷やしきのわるいたましひしづをんなが、きつけたたまを、いまらしてゐることよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
千助せんすけじゆんさかづき𢌞まはつてとき自分じぶん國許くにもとことなぞらへて、仔細しさいあつて、しのわかものが庄屋しやうや屋敷やしき奉公ほうこうして、つま不義ふぎをするだんるやうに饒舌しやべつて
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて、三人組の脱走者だっそうしゃは、とある屋敷やしき内に来かかりました。門の上に、その家のおんどりがのっていて、ありったけの声をふりしぼって、さけび立てていました。
いずこの大名だいみょう旗本はたもと屋敷やしきに、如何いかなるさわぎが持上もちあがっていようとも、それらのことは、まったくべつ世界せかい出来事できごとのように、菊之丞きくのじょううちは、しずかにしめやかであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それは昔の旗本が住んでた屋敷やしきで、大きな武家風の門があり、庭には蓮池はすいけなどがあった。
そこの小川おがわのそばに自分のお屋敷やしきがあるんですから。そこでかえるさんはんで行きます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
聞けばこの母親娘がある屋敷やしき奥向おくむき奉公中ほうこうちう臨時りんじ頂戴物てうだいものもある事なればと不用分ふようぶんの給料を送りくれたる味の忘られず父親のお人よしなるに附込つけこみて飽迄あくまで不法ふはふちんじたるものゝよしそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
そして落ちたざくろを一つ拾ってかじったろう、さあ僕はおかしくて笑ったね、そこで僕は、屋敷やしきの塀に沿って一寸戻ったんだ。それからにわかに叫んで大工の頭の上をかけけたねえ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
戦後その身のかんなるがために所謂いわゆる脾肉ひにくたんえず、折柄おりから渡来とらいしたる日本人に対し、もしも日本政府にて雇入やといい若年寄わかどしより屋敷やしきのごとき邸宅ていたくに居るを得せしめなばべつかねは望まず
池上權藏いけがみごんざう此日このひからうまかはりました、もとより強健きやうけん體躯からだもつ元氣げんきさかんをとこではありましたが、放蕩はうたう放蕩はうたうかさねて親讓おやゆづり田地でんちほとんえてくなり、いへ屋敷やしきまで人手ひとでわたりかけたので
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
屋敷やしき兩方りやうはうまたがつてるといふがらではない。あせだらけの浴衣掛ゆかたがけである。が、實際じつさい此時このとき、四十一番地ばんちじうし、角力すまふ土俵どへうきづいたので、四十番地ばんちをもりてたのだ。大分だいぶ茶番氣ちやばんげがさしてた。
「すこしとおいけど、ひとんでいないれた屋敷やしきで、おおきなくりのがあるの。学校がっこうかえりに、松野まつのさんがつれていってくれたのよ。」
夕雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
宰相殿さいしょうどのはなおなおおおこりになって、一寸法師いっすんぼうしにいいつけて、おひめさまをお屋敷やしきからして、どこかとおところてさせました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
時計屋とけいやがどんどん歩いて、グリーソン屋敷やしきのかどまできたとき、のんきな顔で馬車ばしゃを走らせてくるホールにばったりと出あった。
くはへ候由私しは數年の出入屋敷やしきの事故先一旦の難儀なんぎすくふ心に候へどもかく御尋ねの上はつゝまず申上るにより御役人樣方の御慈悲おじひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
屋敷やしきも売らないですみました。借りたお金もはらうことができました。兄弟のせわになった人たちも、みな助かりました。
長彦と丸彦 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ところで、貴族きぞくのお屋敷やしきにいるニワトリともなれば、こうまんちきで、ひとから、からかわれでもすると、たいへんです。
初君が古跡こせき寺泊てらどまりり、里俗りぞく初君屋敷やしきといふ。貞享ぢやうきやう元年釈門万元しやくもんまんげんしるすといふ初君が哥のいしぶみありしが、断破かけやぶれしを享和年間きやうわねんかん里入りじん重修ちようしうして今にそんせり。
どれもこれもていたりがたくけいたりがたき腕白顔わんぱくがおだ。さだめし、屋敷やしきへかえったのちには、母者人ははじゃびとからお小言こごとであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、古いお屋敷やしきがありました。お屋敷の人たちは、もう、カタツムリを食べなくなっていました。カタツムリは、すっかり死にたえてしまったのです。
元二げんじじゆんさかづき𢌞まはつてとき自分じぶん國許くにもとことりて仔細しさいあつて、しのわかものが庄屋しやうや屋敷やしき奉公ほうこうして、つま不義ふぎをする、なかだちは、をんな寵愛ちようあいねこ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
源四郎げんしろうの家では、屋敷やしき掃除そうじもあらかたかたづいたらしい。長屋門ながやもんのまえにある、せんだんの木に二、三のシギがいこぼしつつ、しきりにキイキイとく。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
道から十メートルばかりはいったところに、太郎左衛門の屋敷やしきの門がある。光蓮寺こうれんじの山門をすこし小さくしたような、さびた金具などのついた古めかしい門である。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
屋敷やしきまわりの大きな杉林はきりはらわれ、米倉こめぐらはとりこわされ、馬もいないうまやと、屋根に草がぼうぼうにはえた納屋なやがあるきりの、貧乏びんぼう百姓ひゃくしょうとなっていました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ここは士族屋敷やしきで下宿屋などのある町ではないから、もっとにぎやかな方へ引き返そうかとも思ったが、ふといい事を考え付いた。おれが敬愛するうらなり君はこの町内に住んでいる。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
にげだしてきたこの三びきのものたちは、やがて、とある屋敷やしきのそばをとおりかかりました。すると、門の上に一のオンドリがとまっていて、ありったけの声でさけびたてていました。
だからこの二首にしゆのおうたも、じつ後世こうせいのもので、なんだか、へんな暗示あんじかんじさせるところからして、しぜん、畝傍山うねびやま・さゐかは——さゐかはは、いすけよりひめのお屋敷やしきのあつたところ——などいふ地名ちめいから
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
今も屋敷やしきの周囲には堀ありて水を通ず。刀剣馬具あまたあり。当主は安倍与右衛門よえもん、今も村にては二三等の物持ものもちにて、村会議員なり。安倍の子孫はこのほかにも多し。盛岡の安倍館あべだての附近にもあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
屋敷やしき兩方りやうはうまたがつてる』
ぜんちゃん、きみなら、とれるよ。地主じぬしさんの屋敷やしきのすぎのに、からすがつくったのだ。したからも、よくえる。いってろうや。」
高い木と子供の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからまたあるとき義家よしいえはいつものとおり宗任むねとう一人ひとりともにつれて、大臣だいじん藤原頼通ふじわらのよりみちという人のお屋敷やしきへよばれて行ったことがありました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)