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哀
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あはれ
ふりがな文庫
“
哀
(
あはれ
)” の例文
わがアントニオは又例の物の
哀
(
あはれ
)
といふものに襲はれ居れば、そを少し爽かなる方に向はせんは、おん宅ならではと思ひて參りしなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
周三はまた、「
何點
(
どこ
)
か俺の
生母
(
せいぼ
)
に似た
點
(
とこ
)
がある。」と思ツた。で何となく
懐慕
(
なつか
)
しいやうにも思はれ、また其の
淋
(
さび
)
しい
末路
(
まつろ
)
が
哀
(
あはれ
)
になツて
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
此
(
こ
)
の
尖端
(
せんたん
)
を
上
(
うへ
)
に
向
(
む
)
けてゐる
釘
(
くぎ
)
と、
塀
(
へい
)
、さては
又
(
また
)
此
(
こ
)
の
別室
(
べつしつ
)
、こは
露西亞
(
ロシア
)
に
於
(
おい
)
て、たゞ
病院
(
びやうゐん
)
と、
監獄
(
かんごく
)
とにのみ
見
(
み
)
る、
儚
(
はかな
)
き、
哀
(
あはれ
)
な、
寂
(
さび
)
しい
建物
(
たてもの
)
。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
戸をあけて
宅
(
うち
)
へ入らうとすると、闇の中から、
哀
(
あはれ
)
な細い
啼聲
(
なきごゑ
)
を立てゝ、雨にビシヨ/\濡れた飼猫の三毛が
連
(
しきり
)
に
人可懷
(
ひとなつかし
)
さうに
絡
(
からま
)
つて來る。
絶望
(旧字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
で
干潮
(
かんてう
)
の
時
(
とき
)
は
見
(
み
)
るも
哀
(
あはれ
)
で、
宛然
(
さながら
)
洪水
(
でみづ
)
のあとの
如
(
ごと
)
く、
何時
(
いつ
)
棄
(
す
)
てた
世帶道具
(
しよたいだうぐ
)
やら、
缺擂鉢
(
かけすりばち
)
が
黒
(
くろ
)
く
沈
(
しづ
)
むで、
蓬
(
おどろ
)
のやうな
水草
(
みづくさ
)
は
波
(
なみ
)
の
隨意
(
まに/\
)
靡
(
なび
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
如何
(
いか
)
なる罪やあらげなく
閉
(
た
)
てらるる扉に
袂
(
たもと
)
を
介
(
はさ
)
まれて、もしもしと
救
(
すくひ
)
を呼ぶなど、
未
(
いま
)
だ都を離れざるにはや旅の
哀
(
あはれ
)
を見るべし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
初めから
覚悟
(
かくご
)
してゐた事なので
長吉
(
ちやうきち
)
は黙つて首をたれて、何かにつけてすぐに「親一人子一人」と
哀
(
あはれ
)
ツぽい事を
云出
(
いひだ
)
す母親の意見を聞いてゐた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そしてその老いた跛が次第に彼女を見て、同じ不具者の
哀
(
あはれ
)
みを乞ふやうな同情を強ひるやうに、笑顏を見せるやうになつた時、お葉は悲しかつた。
三十三の死
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
郷里
(
きやうり
)
から
來
(
き
)
たものに
聞
(
き
)
いて
彼
(
かれ
)
は
勘次
(
かんじ
)
が
次第
(
しだい
)
に
順境
(
じゆんきやう
)
に
赴
(
おもむ
)
きつゝあることを
知
(
し
)
つた。
彼
(
かれ
)
は
心
(
こゝろ
)
が
復
(
ま
)
た
動搖
(
どうえう
)
して
脆
(
もろ
)
く
成
(
な
)
つた
心
(
こゝろ
)
が
酷
(
ひど
)
く
哀
(
あはれ
)
つぽく
情
(
なさけ
)
なくなつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
付け其上に悴惣内夫婦の者を殺したる爰な大
惡人
(
あくにん
)
めと泣聲に成て
窘付
(
きめつけ
)
れども九助は
只
(
たゞ
)
眼
(
め
)
を
閉
(
とぢ
)
て物言ず居たりしは誠に覺悟を極しと見え
最
(
いとゞ
)
哀
(
あはれ
)
ぞ
増
(
まさ
)
りける
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
泣
(
な
)
く
聲
(
こゑ
)
、
喚
(
わめ
)
く
聲
(
こえ
)
、
哀
(
あはれ
)
に
救助
(
たすけ
)
を
求
(
もと
)
むる
聲
(
こゑ
)
は、
悽
(
すさ
)
まじき
怒濤
(
どとう
)
の
音
(
おと
)
と
打交
(
うちまじ
)
つて、
地獄
(
ぢごく
)
の
光景
(
ありさま
)
もかくやと
思
(
おも
)
はるゝばかり。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
流轉
(
るてん
)
の
世
(
よ
)
に
生
(
うま
)
れ
合
(
あ
)
はせては、
姫
(
ひめ
)
と
呼
(
よ
)
ばれしことも
無
(
な
)
けれど、
面影
(
おもかげ
)
みゆる
長襦袢
(
ながじゆばん
)
の
縫
(
ぬひ
)
もよう、
母
(
はゝ
)
が
形見
(
かたみ
)
か
地赤
(
ぢあか
)
の
色
(
いろ
)
の、
褪色
(
あせ
)
て
殘
(
のこ
)
るも
哀
(
あはれ
)
いたまし、
住
(
す
)
む
所
(
ところ
)
は
何方
(
いづく
)
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
娘は馬鹿にせられたのに気が付いて頬の上に大きい真つ赤な
斑
(
ぶち
)
が出来た。その様子が如何にも際限なく、
哀
(
あはれ
)
つぽいので、男の子等が却て自分達のした事を恥かしく思つた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
モスコオ河の上に脅かす様に建てられた
冬宮
(
とうきゆう
)
も旅の女の心には
唯
(
たゞ
)
哀
(
あはれ
)
を誘ふ一つの物として見るに過ぎない。白い宮殿の三層目の左から二つ目の窓掛が
人気
(
ひとげ
)
のあるらしく動いて居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
何だか一種の
哀
(
あはれ
)
ふかいやうな気持で僕の心に浮んでくることもあつたのである。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
沙羅雙樹
(
さらさうじゆ
)
の花の色、厭世の目には諸行無常の形とも見ゆらむが、
愁
(
うれひ
)
を知らぬ
乙女
(
おとめ
)
は何さまに眺むらむ、要するに造化の本意は人未だこれを得知らず、只おのれに愁の心ありて秋の
哀
(
あはれ
)
を知り
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
御身もいつかは老の
哀
(
あはれ
)
を知ることだらう。御身が顔を見なかつたあの娘を、その住んでゐた土地から、非常な用心をして秘密に奪つて来させた時、己は自分の老衰を好くも顧慮してゐなかつた。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
唄は、ほんたうに
哀
(
あはれ
)
ツぽい悲しさうな声で又聞えました。
少女と海鬼灯
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
われは夢む、
滄海
(
さうかい
)
の
天
(
そら
)
の色、
哀
(
あはれ
)
深き入日の影を
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
哀
(
あはれ
)
知る
女子
(
をみなご
)
のために
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
哀
(
あはれ
)
知る女子のために
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
牝馬のこゝろ
哀
(
あはれ
)
なり
若菜集
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
在るが故に
慶
(
よろこ
)
ぶべきか、
亡
(
な
)
きが故に
悼
(
いた
)
むべきか、在る者は積憂の中に
活
(
い
)
き、亡き者は非命の
下
(
もと
)
に
殪
(
たふ
)
る。
抑
(
そもそ
)
もこの
活
(
かつ
)
とこの死とは
孰
(
いづれ
)
を
哀
(
あはれ
)
み、孰を
悲
(
かなし
)
まん。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
明
(
あけ
)
ぬれば月は空に帰りて
余波
(
なごり
)
もとゞめぬを、硯はいかさまになりぬらん、
夜
(
よ
)
な/\影や
待
(
まち
)
とるらんと
哀
(
あはれ
)
なり。
あきあはせ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
女
(
むすめ
)
はひい/\と泣きながら、「姉様
謝罪
(
おわび
)
をして頂戴よう、あいたゝ、姉様よう」と、
哀
(
あはれ
)
なる声にて
助
(
たすけ
)
を呼ぶ。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
見んとて
群集
(
むれつど
)
ふ老若男女おしなべて
哀
(
あはれ
)
の者よ
不便
(
ふびん
)
やと云ぬ者こそなかりけれ
斯
(
かゝ
)
る所に向ふよりして
早駕籠
(
はやかご
)
一
挺
(
ちやう
)
ワヤ/\と
舁來
(
かききた
)
り人足どもは夫御早なり
片寄々々
(
かたよれ/\
)
御用々々と聲を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
女子はこの時もろ手高くさし上げて、
哀
(
あはれ
)
に悲しげなる聲を揚げ、神の母よ、我を見棄て給ふな、我は仰を畏みてこゝに來たりと云へり。われは此聲を聞きて一聲ララと叫べり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
其
(
そ
)
の
目
(
め
)
が、あの
恋
(
こひ
)
の
秘密
(
ひみつ
)
を
私語
(
さゝや
)
いてゐるかと
思
(
おも
)
ふと、
腹立
(
はらだゝ
)
しくもあつたが、
哀
(
あはれ
)
にも
思
(
おも
)
つた。
此
(
こ
)
の
哀
(
あは
)
れは
崇高
(
すうかう
)
の
感
(
かん
)
じを
意味
(
いみ
)
するので、
妻
(
つま
)
の
昔
(
むかし
)
を
客観
(
かくゝわん
)
に
見
(
み
)
た
時
(
とき
)
であるのは、
言
(
い
)
ふまでもない。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
然
(
しか
)
し
彼
(
かれ
)
はもう
其
(
そ
)
の
群集
(
ぐんしふ
)
の
間
(
あひだ
)
に
交
(
まじ
)
つて
主人
(
しゆじん
)
の
災厄
(
さいやく
)
に
赴
(
おもむ
)
く
心
(
こゝろ
)
は
起
(
おこ
)
らなかつた。
彼
(
かれ
)
は
其
(
そ
)
の
群集
(
ぐんしふ
)
の
聲
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて、
自
(
みづか
)
ら
意識
(
いしき
)
しない
壓迫
(
あつぱく
)
を
感
(
かん
)
じた。
彼
(
かれ
)
は
酷
(
ひど
)
く
自分
(
じぶん
)
の
哀
(
あはれ
)
つぽい
悲慘
(
みじめ
)
な
姿
(
すがた
)
を
泣
(
な
)
きたくなつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
『あら、
父君
(
おとつさん
)
は
單獨
(
ひとり
)
で
何處
(
どこ
)
へいらつしやつたの、もうお
皈
(
かへ
)
りにはならないのですか。』と
母君
(
はゝぎみ
)
の
纎手
(
て
)
に
依
(
よ
)
りすがると
春枝夫人
(
はるえふじん
)
は
凛々
(
りゝ
)
しとはいひ、
女心
(
をんなごゝろ
)
のそゞろに
哀
(
あはれ
)
を
催
(
もよほ
)
して、
愁然
(
しゆうぜん
)
と
見送
(
みおく
)
る
良人
(
をつと
)
の
行方
(
ゆくかた
)
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
われは夢む、
滄海
(
そうかい
)
の
天
(
そら
)
の色、
哀
(
あはれ
)
深き入日の影を
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
哀
(
あはれ
)
知る
女子
(
をみなご
)
のために。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
哀
(
あはれ
)
知る女子のために。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
廓
(
くるわ
)
ことばを
町
(
まち
)
にいふまで
去
(
さ
)
りとは
耻
(
はづ
)
かしからず
思
(
おも
)
へるも
哀
(
あはれ
)
なり、
年
(
とし
)
はやう/\
數
(
かぞ
)
への十四、
人形
(
にんげう
)
抱
(
だ
)
いて
頬
(
ほう
)
ずりする
心
(
こゝろ
)
は
御華族
(
ごくわぞく
)
のお
姫樣
(
ひめさま
)
とて
變
(
かは
)
りなけれど、
修身
(
しうしん
)
の
講義
(
こうぎ
)
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
彼は悔いたり、我より容さば容さるべきを、さは容さずして堅く隔つる思も、又
怪
(
あやし
)
きまでに貫一は
佗
(
わびし
)
くて、その
釈
(
と
)
き難き
怨
(
うらみ
)
に加ふるに、或種の
哀
(
あはれ
)
に似たる者有るを感ずるなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
印
(
しるし
)
の
石
(
いし
)
も
青
(
あを
)
きあり、
白
(
しろ
)
きあり、
質
(
しつ
)
滑
(
なめらか
)
にして
斑
(
ふ
)
のあるあり。あるが
中
(
なか
)
に
神婢
(
しんぴ
)
と
書
(
か
)
いたるなにがしの
女
(
ぢよ
)
が
耶蘇教徒
(
やそけうと
)
の
十字形
(
じふじがた
)
の
塚
(
つか
)
は、
法
(
のり
)
の
路
(
みち
)
に
迷
(
まよ
)
ひやせむ、
異國
(
いこく
)
の
人
(
ひと
)
の、
友
(
とも
)
なきかと
哀
(
あはれ
)
深
(
ふか
)
し。
弥次行
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
勵
(
はげ
)
まし少しも早く
全快
(
ぜんくわい
)
爲
(
なし
)
給へとて種々に
勞
(
いたは
)
りけれども
終
(
つひ
)
に介抱の
驗
(
しるし
)
もなく母は正徳元年七月二十一日病死し
菩提所
(
ぼだいしよ
)
不動院
(
ふどうゐん
)
に
葬
(
はうむ
)
り
月堂
(
げつだう
)
貞飾
(
ていしよく
)
信女
(
しんによ
)
と云戒名に
哀
(
あはれ
)
を止めけり村方にては九助の孝心を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
まち人恋ふる
鼠
(
ねづみ
)
なき格子の
咒文
(
じゆもん
)
、別れの
背中
(
せな
)
に手加減の
秘密
(
おく
)
まで、唯おもしろく聞なされて、
廓
(
くるわ
)
ことばを町にいふまで去りとは
耻
(
はづ
)
かしからず思へるも
哀
(
あはれ
)
なり、年はやうやう数への十四
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ものの
色
(
いろ
)
もすべて
褪
(
あ
)
せて、
其
(
その
)
灰色
(
はひいろ
)
に
鼠
(
ねずみ
)
をさした
濕地
(
しつち
)
も、
草
(
くさ
)
も、
樹
(
き
)
も、一
部落
(
ぶらく
)
を
蔽包
(
おほひつゝ
)
むだ
夥多
(
おびたゞ
)
しい
材木
(
ざいもく
)
も、
材木
(
ざいもく
)
の
中
(
なか
)
を
見
(
み
)
え
透
(
す
)
く
溜池
(
ためいけ
)
の
水
(
みづ
)
の
色
(
いろ
)
も、
一切
(
いつさい
)
、
喪服
(
もふく
)
を
着
(
つ
)
けたやうで、
果敢
(
はか
)
なく
哀
(
あはれ
)
である。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“哀”の意味
《名詞》
哀(あい)
なげくこと。かなしむこと。あわれむこと。
(出典:Wiktionary)
哀
常用漢字
中学
部首:⼝
9画
“哀”を含む語句
悲哀
可哀
物哀
哀傷
可哀想
哀憐
哀愁
可哀相
哀哭
哀悼
哀願
哀情
哀求
哀歌
哀訴
哀号
哀婉
哀惜
哀切
哀感
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