やは)” の例文
かうしてはやしなか空氣くうきは、つねはやしそとくらべて、晝間ちゆうかんすゞしく、夜間やかんあたゝかで、したがつてひるよるとで氣温きおんきゆうかはることをやはらげます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
渠は、暫らく何かの返事または應援を待つて居る樣子であつたが、絶望の色を見せたかと思へると、急に顏をやはらげて苦笑に轉じた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
含みのある、美しきなさけに富んだ聲音こはね——きくうちに、わたしの心は、花が開くときもまたかうもあらうかと思ふ、やはらぎにみたされた。
四人の兵隊 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
さて春をむかへて寒気次第にやはらぎ、その年の暖気だんきにつれて雪も降止ふりやみたる二月のころ水気すゐき地気ちきよりも寒暖かんだんる事はやきものゆゑ
それをあめのために、にほひがやはらげられて、ほとんど、あるかないかのように、しんみりとしたふうにかをつてる、とべてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
神の聖心みこゝろやはらぐ日までわれ此罪のためにこゝにこの重荷を負ひ、生者しやうじやの間に爲さざりしことを死者の間になさざるべからず。 七〇—七二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
読み返しくに、はづかしきことのみ多き心の跡なれば、あきらかにやはらぎたるあら御光みひかりもとには、ひときはだしぐるしき心地ぞする。晶子
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
彼の顏は燃え、強い鋭い眼は輝き、顏中にやはらぎと熱情があふれてゐたのを見た瞬間、私はひるんだ——しかしその次にはもう氣力を囘復した。
かれ自由じいううしなうたその手先てさきあたゝかはるつもつて漸次だん/\やはらげられるであらうといふかすかな希望のぞみをさへおこさぬほどこゝろひがんでさうしてくるしんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「だのに、あなたはそんなに愉快さうで、又いつでも喜んで他の人達の惱みをやはらげようとしてゐらつしやる。ほんたうにいゝエイブラム小父さん!」
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
何に驚きてか、垣根の蟲、はたと泣き止みて、空に時雨しぐるゝ落葉る響だにせず。やゝありて瀧口、顏色やはらぎて握りし拳もおのづから緩み、只〻太息といきのみ深し。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
己れの頑剛なる質をやはらげて、優柔なる性情を与ふるもの、即ちこの不完全が多少完全になされしちようなり、これを為すもの恋愛の妙力にあらずして何ぞ。
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
さゝれぬ私し勿々なか/\以て然樣さやう成事なること思ひよらずおゆるし成されて下されと云まぎらすを忠兵衞はなほ種々さま/″\よりつゝやがて言葉をやはらげて言ひ出しけるは然云さういふ御前の心底しんてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と再び振り向く梅子を、力まかせに松島は引きゑつ、憤怒の色、眉宇びうに閃めきしがたちまちにしてしひおもてやはらげ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
紙は今も祭事になくてならない品物である。そのやはらぎと浄らかさとは、神の御霊みたまに相応はしいのである。
和紙の教へ (新字旧仮名) / 柳宗悦(著)
それは成程やはらかひ衣服きものきて手車に乘りあるく時は立派らしくも見えませうけれど、父さんや母さんに斯うして上やうと思ふ事も出來ず、いはゞ自分の皮一重
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
然ありて還り上ります時に、山の神河の神また穴戸あなどの神一四をみな言向けやは一五してまゐ上りたまひき。
いにしへ、あだなすは討ちてしやみ、まつろはぬことむけやはした。砲煙のとどろき、爆彈の炸烈する、もとより聖業の完遂にある。大皇軍おほみいくさくところ必ず宣撫の恩澤めぐみがある。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
食前に散歩したホテルの木下路このしたみちと海岸の瀟洒とした風致が日本に在る如き感を与へた。海上に近く浮んだ三つの小島にあたる残照が、紗を隔ててとうを望む趣も旅中の心をやはらげた。
先刻さつきから、人々ひと/″\布施ふせするのと、……ものやはらかな、おきなかほの、眞白まつしろひげなかに、うれしさうなくちびる艷々つや/\あかいのを、じつながめて、……やつこつゝんでくれた風呂敷ふろしきを、うへゑたまゝ
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロミオは言葉ことばおだやかに、この爭端さうたんとるらぬよし反省はんせいさせ、ふたつには殿とののおいかりおもひやれ、と聲色せいしょくやはらげ、ひざげて、さま/″\にまうしましたなれども、中裁ちゅうさいにはみゝしませぬチッバルト
まことに此時このときうららかにかぜやはらかくうめの花、のきかんばしくうぐひすの声いと楽しげなるに、しつへだてゝきならす爪音つまおと、いにしへの物語ぶみ、そのまゝのおもむきありて身も心もきよおぼえたり、の帰るさ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
人をして山に對してなつかしいやはらかな感じをもたしむる所以で、それが加之しかも清らかに澄みきつた萬頃ばんけいの水の上にノッシリと臨んでゐるところは、水晶盤上に緑玉をうづたかうすとでもいひたい氣がする。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「や、さうでしたか。それは——」と、鬼倉は目に見えてやはらいだ。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
癒えよとやはらになだめ給ふ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
やはらぎたりや、このゆふべ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「それが、あなた」と、うち消すやうに首を一つやはらかにまはして、襟を拔け衣紋えもんにして、「御失敗のもとぢやアありませんか?」
我等は悔いつゝ赦しつゝ、神即ち彼を見るの願ひをもて我等の心をはげますものとやはらぎて世を去れるなり。 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
つけられし如く是又長庵が惡事なりと思はるれ共本人の口より白状はくじやうさせんと猶もことばやはらげ三次が斯迄かくまで申てもおぼなきやと言はるれば長庵さればにて候此上骨身ほねみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それは成程やはらかひ衣類きものきて手車に乗りあるく時は立派らしくも見えませうけれど、ととさんやかかさんにかうして上やうと思ふ事も出来ず、いはば自分の皮一重
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
判斷力のない感情はまつたく水つぽい藥である。しかしまた感情にやはらげられぬ判斷力は、人間がのみ込むには、あまりに、苦くひからびた一片の食物である。
大吉備津日子おほきびつひこの命と若建吉備津日子わかたけきびつひこの命とは、二柱相たぐはして、針間はりまかはさき忌瓮いはひべゑて、針間を道の口として、吉備の國言向ことむやはしたまひき。
月日は彼の強い悲しみをやはらげて、彼は最早その頃の記憶を苦痛とは思はなくなつてゐた。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
荒み魂しかもやはすと明らけしとほ祖先みおやは討ちに討たしき
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やゝありて、左衞門は少しくおもてやはらげて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
花を踏みては、やはらかき
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
幼君えうくんおもてやはらげたま
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それは成程なるほどやはらかひ衣類きものきて手車てぐるまりあるくとき立派りつぱらしくもえませうけれど、とゝさんやかゝさんにうしてあげやうとおもこと出來できず、いはゞ自分じぶん皮一重かはひとゑ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
戻つて來てから、渠は初めてかの女にうち明けた、——かの女の枕もとにあぐらをかいて言葉やはらかに
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
やはらげられ白状するとは神妙しんめうの至りなりと申さるゝに長庵見開みひらき御奉行越前守殿にえきも無く御骨おほね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
頬をふくらませ、その輝やくやうな活々しさを憂愁の雲がやはらげる、そして、彼女は、彼の手から素早すばやく自分の手を引込めると、しばらくの不機嫌さで、英雄らしく
日のおもて曇りて出で、目のながくこれに堪ふるをうるばかり光水氣にやはらげらるゝを 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
すなはちはむと思ほししかども、また還り上りなむ時に婚はむと思ほして、ちぎり定めて、東の國に幸でまして、山河の荒ぶる神又は伏はぬ人どもを、悉にことむやはしたまひき。
天雲あまぐもの青くたなびく大きくがかくいにしへもやはしたまひき
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ただやはらかな寂しい微笑をもらしながら、「お女郎にでも僕は札幌で本氣になつたんですから。」
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
にぎたま、またやはせ、ただにやすらと
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
抱持はうぢ不十分ふじふぶん甲斐かひなきうらめしくなりててたしとおもひしは咋日きのふ今日けふならず我々われ/\二人ふたりくとかば流石さすが運平うんぺい邪慳じやけんつのれるこゝろになるはぢやうなりおやとてもとほ一徹いつてつこゝろやはらぎらば兩家りやうけ幸福かうふくこのうへやある我々われ/\二人ふたりにありては如何いか千辛萬苦せんしんばんくするとも運平うんぺい後悔こうくわいねんまじくしてや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひて顏をやはらげた時は、棒立ちに立ちどまつてゐた。
ひたにち、しかもやはせや。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひたにち、しかもやはせや。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)