下界げかい)” の例文
「もうこんなみじめな下界げかいには一こくもいたくない。」といって、いもうとはふたたびはとの姿すがたとなって、天上てんじょう楽園らくえんかえってしまったのです。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
いろは以前よりうすかつた。くもから、落ちてる光線は、下界げかい湿しめのために、半ば反射力を失つた様に柔らかに見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
スサノヲの命は、かようにして天の世界からわれて、下界げかいくだつておいでになり、まず食物をオホゲツ姫の神にお求めになりました。
無数の征矢そやは煙りを目がけて飛んだ。女は下界げかいをみおろして冷笑あざわらうように、高く高く宙を舞って行った。千枝松はおそろしかった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すこし心細くないでもなかったが、ときどき山のからはるか下界げかいの海や町が見えるので、そのたびに彼は元気をとりもどした。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帝室ていしつをば政治社外の高処こうしょあおたてまつりて一様いちようにその恩徳おんとくよくしながら、下界げかいおっあいあらそう者あるときは敵味方の区別なきを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
下界げかいものとしてはあま靈妙いみじい! あゝ、あのひめ女共をんなども立交たちまじらうてゐるのは、ゆきはづかしい白鳩しらはとからすむれりたやう。
人穴ひとあなから燃えひろがった野火のびは、とどまるところを知らず、ほうにわたって、濛々もうもうと煙をたてているので、下界げかいのようすはさらに見えない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、下界げかいでは、そのあくる朝、まきのうしろへもぐりこんで、そのままこごえんでいる少年の小さな死がいを、門番もんばんの人が見つけた。
つかまれていた巨人の手が、パッと開いて、幸ちゃんのからだは、まるで石でも投げたように、ヒューッと風を切って、下界げかいへ落ちてきたのです。
天空の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
とおっしゃって、調使丸ちょうしまるという召使めしつかいの小舎人ことねりをくらのうしろにせたまま、うまって、そのまますうっとそらの上へんでおきになりました。下界げかいでは
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なつ高原一帶こうげんいつたい高山植物こうざんしよくぶつがさきつゞいてゐたりする光景こうけいはとても、下界げかいでは想像そうぞうもつかないうつくしさです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
いつのまにかじぶんは下界げかいにおりて、のまんまんなかにねているではありませんか。
そして、下界げかいりて、みねを、はらを、むらさきほし微行びかうしてかすか散歩さんぽするおもかげがあつたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よけい下界げかいのわざわいになったというわけは、鏡のかけらは、せいぜい砂つぶくらいの大きさしかないのが、世界じゅうにとびちってしまったからで、これが人の目にはいると
かまのやうな新月しんげつ物凄ものすご下界げかいてらしてたが、勿論もちろんみち案内しるべとなるほどあかるくはない、くわふるに此邊このへんみちいよ/\けわしく、とがつた岩角いはかどわだかま無限むげん行方ゆくてよこたはつてるので
夜のちやうにささめき尽きし星の今を下界げかいの人の鬢のほつれよ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
つち下界げかいにやらはれて、勢子せこの叫に煩へば
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
懶き疲れの折々は下界げかいおも
やみ下界げかいをうかゞへば
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「どうぞ、おかあさま、わたしを一下界げかいへやってくださいまし。」と、幾度いくたびとなく、そのちいさな天使てんし一人ひとりは、おかあさまにたのみました。
海からきた使い (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ漫然たる江湖において、論者も不学、聴者も不学、たがいに不学無勘弁の下界げかいに戦う者は、捨ててこれを論ぜざるなり。
経世の学、また講究すべし (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
下界げかいは、はばのひろい濃いみどり色のもうせんをしいたように見え、そのもうせんの両側にガラスのような色を見せているのは海にちがいない。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
下界げかいをにらみつけるような大きな月が、人ひとり、鳥一羽の影さえない、裾野すそののそらの一かくに、夜の静寂しじまをまもっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうしてお前も、赤ちゃんのときから、かわいそうに、お前のおかあさんのふところにだかれたまま、下界げかいにおちぶれて、なさけないくらしをするようになったのだよ。
ジャックと豆の木 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おそる/\搖籃ゆれかごから半身はんしんあらはして下界げかいると、いま何處いづこそら吹流ふきながされたものやら、西にしひがし方角ほうがくさへわからぬほどだが、矢張やはり渺々べう/\たる大海原おほうなばら天空てんくう飛揚ひやうしてるのであつた。
そんなその、紅立羽あかたてはだの、小紫こむらさきだの、高原かうげん佳人かじん、おやすくないのにはおよばない、西洋化粧せいやうけしやう化紫ばけむらさき、ござんなれ、白粉おしろいはなありがたい……はや下界げかいげたいから、真先まつさき自動車じどうしやへ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二十面相の黒軽気球は、下界げかいのおどろきをあとにして、ゆうゆうと大空にのぼっていきます。地上の探照燈は、軽気球とともに高度を高めながら、暗やみの空に、大きな白いしまをえがいています。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
つち下界げかいにやらはれて、勢子せこの叫に煩へば
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
そんな信仰しんこうのないものは、あのへゆくことはできない。おまえは、ちょうになって、もう一下界げかいかえって、よくかんがえてくるがいい。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうのいただきにいる者のすがたは、下界げかいのさわぎを、どこふく風かというようすで、すましこんでいるらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下界げかいへおりると、さいわいにとがめられないで、地下へもぐることができた。すべり台式の降下路こうかろにとびこんですーイすーイと地階を何階も通り越して、おりていった。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
下界げかいるとまなこくらむばかりで、かぎりなき大洋たいやうめんには、波瀾はらん激浪げきらう立騷たちさわぎ、數萬すまん白龍はくりよう一時いちじをどるがやうで、ヒユー、ヒユーときぬくがごとかぜこゑともに、千切ちぎつたやう白雲はくうん眼前がんぜんかすめて
灰色はいいろ着物きものあねは、べつに姿すがたえる必要ひつようもなかったので、あるほしひかりももれないくら真夜中まよなか下界げかいりてきたのです。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ヒマラヤ山の上へのぼります。そして山の上から下界げかいに住む蠅の世界がだすその電波を受信しましょう。ああ、きました。ヒマラヤのいただきです。しずかに着陸します」
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
下界げかいのどんなものでも、太陽たいようのこの機嫌きげんのいいかおたものは、みんな、気持きもちがはればれとしてよろこばないものはなかったのであります。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
では、下界げかいで待っているあの人のために、第二にはロードスターのために、第三は原稿料のために、第四は編集長のために、勇気を出して、この鉄梯子てつばしごつかまって登りましょう。
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ほしひかりは、それをむかえるように、にこにことわらっていました。そして、うるんだ、うつくしいで、じっと、下界げかい見下みおろしながら
寒い日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるよるくもは、まりをせて下界げかいりてきました。そして、いつかまりのかくれていたやぶのなかへ、そっとろしてくれました。
あるまりの一生 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「三ねんあいだ、わたしは下界げかいにいって、辛抱しんぼうをいたします。そして、いろいろのものをたり、また、いたりしてきます。」とこたえました。
海からきた使い (新字新仮名) / 小川未明(著)
よるになると、くもあいだから、ほしが、下界げかいくさや、らしたのです。そこには、うつくしいべにや、むらさき黄色きいろはないている花園はなぞのがありました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
安心あんしんあそばしてください、下界げかい穀物こくもつがすきまもなく、に、やまに、はたにしげっています。また樹々きぎには果物くだものかさなりってみのっています。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
毎夜まいよ、この下界げかいちかくにまでりてくる。もし、やまや、もりきあたったらどうするつもりだろう。」と、かれらはたがいにはないました。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがて、ふゆり、はるになろうとして、気流きりゅうあらそいました。みだれるくもあいだから、太陽たいよう下界げかいをのぞいて、たゆみなき人間にんげん努力どりょくをながめながら
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらあおぎますとあまがわが、下界げかいのことをらぬかおに、むかしながらのままで、ほのぼのとしろながれているのでありました。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まりは、この地上ちじょうのものをうつくしく、うれしくおもいました。なぜ、自分じぶんは、この下界げかいてて、そらうえなどへ、すこしのあいだなりとゆくになったろう。
あるまりの一生 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、下界げかいったちょうは、いまだにさとりがつかないとみえて、はなからはなへと、うつくしい姿すがたをしてびまわっていて、かえってこないのであります。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
にん子供こどもらは、よく祖母そぼや、母親ははおやから、ごとにてんからろうそくがってくるとか、また下界げかいで、このやまかみさまにいのりをささげるろうそくの
不死の薬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間にんげんが、天国てんごくのようすをりたいとおもうように、天使てんし子供こどもらはどうかして、下界げかい人間にんげんは、どんなような生活せいかつをしているかりたいとおもうのであります。
海からきた使い (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひか下界げかいおろしながらんでゆくうちに、わしは電信柱でんしんばしらのかぶっている帽子ぼうしつけて、つーうとりると、それをさらっていってしまったのです。
頭をはなれた帽子 (新字新仮名) / 小川未明(著)