活計くらし)” の例文
何しろ横に転がして使うびんなぞ見た事もないんだからね。……いいかい。それに活計くらしむきに余裕があるとなれば、またどうにもなる。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その上清は湯の戻りに髪結かみゆいの所へ回って頭をこしらえるはずだそうであった。閑静な宗助の活計くらしも、大晦日おおみそかにはそれ相応そうおうの事件が寄せて来た。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また世間から見ても財産もあり万事整うて居るから非常に安楽であろうとこう見られる訳で私どももつい結構な活計くらしだなと思って居りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
田畑が少のうございますから、温泉宿の外は近傍もよりの山々から石を切出したり、炭を焼いたり、種々しゅ/″\の山稼ぎをいたして活計くらしを立っている様子です。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
別に活計くらしに困る訳じゃなし、おごりも致さず、偏屈でもなく、ものはよく分る、男もし、誰が目にも良い人。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
活計くらしを立つるには、鍼仕事はりしごとして得給ふ錢と、むかし我等が住みたりしおほいなる部屋を人に借して得給ふあたひとあるのみなりき。われ等は屋根裏やねうらの小部屋に住めり。
大がらとても八歳やつは八歳、天秤肩にして痛みはせぬか、足に草鞋くひは出來ぬかや、堪忍して下され、今日よりは私も家に歸りて伯父樣の介抱活計くらしの助けもしまする
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
洋学生徒の数は次第々々にえるからその教授法に力をつくし、又家の活計くらしは幕府に雇われて扶持米ふちまいもらうてソレで結構暮らせるから、世間の事にはとん頓着とんじゃくせず、怖い半分
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
家内はまた家内で心配して、教員をめてしまつたら、奈何どうして活計くらしが立つ、銀行へ出て帳面でもつけて呉れろと言ふんだけれど、どうして君、其様そんな真似が我輩に出来るものか。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
盡し難くわけて神田は土地柄とちがらとて人の心も廣小路ひろこうぢ横筋違いの僻みなきすぐなる橋の名の如く昌平しやうへいの御代なれやいらかならべし軒續き客足絶ぬ店先みせさきは津國屋松右衞門とて小間物を商ひ相應さうおう活計くらし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは、小才を利かしてごまかして活計くらしを立てる方々、と定義してもよかろう。彼らは二つの隊に分れて公衆を餌食にしているように思われる、——すなわち伊達者ダンディの隊と、軍人の隊とだ。
群集の人 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
其の日の活計くらしにも困るようになりましたから、私は従来これまでの恩がえしに、身を売りたいと思いましたが、義理堅い伯父故、知らしては許可ゆるしませんから、こっそり知人しりびとに相談しておりますと
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ああ今の東京とうけい、昔の武蔵野むさしの。今はきりも立てられぬほどのにぎわしさ、昔は関も立てられぬほどの広さ。今なかちょう遊客うかれおにらみつけられるからすも昔は海辺うみばた四五町の漁師町でわずかに活計くらしを立てていた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
わけて万作は此頃僂麻質斯りゅうまちすで右の腕をいためて時々は久しく仕事を休むこともあり、それに不漁しけが続くやら網を破くやらで活計くらしも段々困難になって来るので、果ては今迄になく大酒をのみ出して
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
まず融通ゆとりのある活計くらし
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
健三は時々兄が死んだあとの家族を、ただ活計くらしの方面からのみ眺める事があった。彼はそれを残酷ながら自然の眺め方として許していた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
引続きお話申します業平文治は町奴親分と云うのではありません、浪人で田地でんじも多く持って居りますから活計くらしに困りませんで、人を助けるのが極く好きです。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
少し活計くらし向きの豊かなものなれば三人あるいは四人位持って居るというのが今日ネパール国民の状態である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
根気こんの薬じゃ。」と、そんな活計くらしの中から、朝ごとに玉子を割って、黄味も二つわけにして兄弟へ……
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大がらとても八歳やつは八歳、天秤てんびん肩にして痛みはせぬか、足に草鞋くひは出来ぬかや、堪忍かんにんして下され、今日けふよりは私もうちに帰りて伯父様の介抱活計くらしの助けもしまする
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
網船頭あみせんどうなぞというものはなおのことそうです。網は御客自身打つ人もあるけれども先ずは網打あみうちが打って魚を獲るのです。といって魚を獲って活計くらしを立てる漁師とはちがう。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それから家は貧乏だけれども活計くらしは大きい。借金もある様子で、その借金の云延いいのばし、あらたに借用の申込みに行き、又金談きんだんの手紙の代筆もする。其処そこの家に下婢かひが一人に下男が一人ある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その時分じぶん夫婦ふうふ活計くらしくるしいつらつきばかりつゞいてゐた。宗助そうすけ流産りうざんした御米およねあをかほながめて、これ必竟つまり世帶しよたい苦勞くらうからおこるんだとはんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そういう活計くらしをする金はどこから来るかと言えば、先に申しました財産から供給されて居ますので、上等僧侶の家には大抵五名以上七、八十名までの召使がある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
あとには嫁と孫が二人みんな快う世話をしてくれますが、なにぶん活計くらしが立ちかねますので、かえるの子は蛙になる、親仁おやじももとはこの家業をいたしておりましたから
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此方が此通りつまらぬ活計くらしをして居れば、お前の縁にすがつて聟の助力たすけを受けもするかと他人樣の處思おもはくが口惜しく、痩せ我慢では無けれど交際だけは御身分相應に盡して
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
両側は一面に枝柿えだがきを売るいえが並んで、其の並びには飴菓子屋汁粉屋飯屋などが居て、常には左のみ賑かではございませんが、一年の活計くらしを二日で取るという位なひどい商いだが、実に盛んな事で
どの位な程度の活計くらしをしていたものかく分らないが、困ったとか、窮したとかいう弱い言葉は御常の口をれなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東京では細君と二人ぐらしで——(私は謡や能で知己ちかづきなのではない。)どうやらごく小人数の活計くらしには困らないから、旅行をするのに一着外套がいとうを心得ていない事はない。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此方こちら此通このとほりつまらぬ活計くらしをしてれば、御前おまへゑんにすがつてむこ助力たすけけもするかと他人樣ひとさま處思おもはく口惜くちをしく、我慢がまんではけれど交際つきあひだけは御身分ごみぶん相應さうおうつくして
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その時分の夫婦の活計くらしは苦しいつらい月ばかり続いていた。宗助は流産した御米のあおい顔を眺めて、これも必竟つまりは世帯の苦労から起るんだと判じた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山家やまがものでも商人あきんどは利にさとい——名物の力餅を乾餅かきもちにして貯えても、活計くらしの立たぬ事にはやく心着いて、どれも竹の橋の停車場前へ引越しまして、袖無しのちゃんちゃんこを
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あるひ其頃そのころ威勢めをひ素晴すばらしきものにて、いまの華族くわぞくなんとして足下あしもとへもらるゝものでなしと、くちすべらしてあわたゞしくくちびるかむもをかし、それくらべていま活計くらしは、きえしもおなじことなり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
親父が無理算段の学資を工面くめんして卒業の上は月給でも取らせて早く隠居でもしたいと思っているのに、子供の方では活計くらしの方なんかまるで無頓着むとんじゃく
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それでまず活計くらしを立てているという、まことにずかしい次第さ。しかし、私だってまさか馬方で果てる了簡りょうけんでもない、目的も希望のぞみもあるのだけれど、ままにならぬが浮き世かね
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
段々に喰べへらして天秤まで賣る仕義になれば、表店おもてだな活計くらしたちがたく、月五十錢の裏屋に人目の恥を厭ふべき身ならず、又時節が有らばとて引越しも無慘や車に乘するは病人ばかり
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其所そこで娘に二度目の夫が出来るまでは、死んだ養子の遺族へ毎年まいねん下がる扶助料だけで活計くらしを立てて行った。……
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(それでは手前、活計くらしのために夫婦になったか。そんな水臭い奴とは知らなんだ。)
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
段々に喰べへらして天秤てんびんまで売る仕義になれば、表店おもてだな活計くらしたちがたく、月五十銭の裏屋に人目の恥をいとふべき身ならず、又時節が有らばとて引越しも無惨むざんや車に乗するは病人ばかり
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もとから自分の持家もちいえだったのを、一時親類のなにがしに貸したなり久しく過ぎたところへ、父が死んだので、無人ぶにん活計くらしには場所も広さも恰好かっこうだろうという母の意見から
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
唯今ただいまは御慮外をいたしまして、恐入ってござります。命をつなぐためとは申せ、因業いんごう活計くらしでござりまして、前世さきのよの罪が思い遣られまする。」と啜上すすりあげて、南無阿弥なむあみと小声にて唱え
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
段々だん/\べへらして天秤てんびんまで仕義しぎになれば、表店おもてだな活計くらしたちがたく、つき五十せん裏屋うらや人目ひとめはぢいとふべきならず、また時節じせつらばとて引越ひきこしも無慘むざんくるまするは病人びやうほんばかり
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あとはと思つてゐると、今度こんどは毎日の活計くらしはれした。自分ながら心持こゝろもちはしなかつたけれども、仕方しかたなしにこまるとは使つかひ、こまるとは使つかひして、とう/\荒増あらましくして仕舞つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
にん居縮ゐすくんで乞食こじきのやうな活計くらしをするも、あまめたことではし、なんなりとくちつけて、いまうちからこゝろがけすこしおかねになる職業しよくげうとりかへずば、行々ゆく/\まへがたのふりかたは
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
で、屋根やねからつきすやうなわけにはかない。其処そこで、かせぎも活計くらしてず、夜毎よごとぬまばん難行なんぎやうは、極楽ごくらくまゐりたさに、身投みなげをるもおなこと、と老爺ぢゞい苦笑にがわらひをしながらつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あとはと思っていると、今度は毎日の活計くらしに追われ出した。自分ながら好い心持はしなかったけれども、仕方なしに困るとは使い、困るとは使いして、とうとうあらましくしてしまった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大威張に出這入ではいりしても差つかへは無けれど、彼方あちらが立派にやつてゐるに、此方がこの通りつまらぬ活計くらしをしてゐれば、御前の縁にすがつてむこ助力たすけを受けもするかと他人様ひとさま処思おもはく口惜くちをしく
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
俯目ふしめつて、うち活計くらしのためにつて、人買ひとかひれられてくにたまゝ、行方ゆくへれなかつたむすめが、ふとゆめのやうにかへつてて、したるもののよみがへつたごとく、をんな取卷とりまいた人々ひと/″\
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おがみますとこゝろからいて、このある甲斐かひなき活計くらしかぞへれば、らうのゝしられしことはらたゝしく、おためごかしの夜學沙汰やがくさたは、れを留守るすにしてたのしみをおもゆゑぞと一にくやしく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手紙には向うの思わしくない事や、物価の高くて活計くらしにくい事や、親類も縁者もなくて心細い事や、東京の方へ出たいが都合はつくまいかと云う事や、——凡てあわれな事ばかり書いてあった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)