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歎
>
たん
ふりがな文庫
“
歎
(
たん
)” の例文
昼はかくれて、不思議な星のごとく、
颯
(
さっ
)
と
夜
(
よ
)
の幕を切って
顕
(
あらわ
)
れる
筈
(
はず
)
の処を、それらの英雄
侠客
(
きょうかく
)
は、
髀肉
(
ひにく
)
の
歎
(
たん
)
に堪えなかったに相違ない。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
内に眠っている事業に圧迫せられるような心持である。潜勢力の苦痛である。三国時代の英雄は
髀
(
ひ
)
に肉を生じたのを見て
歎
(
たん
)
じた。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
詩人たちは或は彼等の孤立に多少の
歎
(
たん
)
を持つてゐるかも知れない。しかしそれは僕に言はせれば、寧ろ「名誉の孤立」である。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
若き御連枝はムッとしてそのまま訪問されず、しかも、その人も配偶をむかえてから、
代
(
かわ
)
る
女
(
もの
)
はなかったとの
歎
(
たん
)
をもたれたのだから悲しい。
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
余は人間と生れしを
歎
(
たん
)
ぜり、もし愛情ちょうものの余に存せざりしならば余にこの落胆なかりしものを、ああ
如何
(
いか
)
にしてこの傷を
愈
(
いや
)
すを得んや。
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
▼ もっと見る
物語れば忠八は
驚
(
おどろ
)
き
歎
(
たん
)
じ此處に夫程
御滯留
(
ごたいりう
)
有とも知らず所々方々尋ね廻りしこそ愚なれ併し
今宵
(
こよひ
)
此家に泊らずば御目にも
掛
(
かゝ
)
らず江戸迄行んものを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そこで囚人
歎
(
たん
)
じて曰く、子供は監獄に父親は病院に、お母さんは淫売帰にああ——。私はクツクツ笑い出してしまった。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その上に、例の溌剌たるお嬢さんがたを全部、招待して、まるで、移動する花園の中に
在
(
あ
)
る
想
(
おも
)
いありと、
側
(
はた
)
から見る者をして
歎
(
たん
)
ぜしめたのであった。
暗号音盤事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
是
(
ここ
)
において余は
漸
(
ようや
)
く不折君を信ずるの深きと共に君を見るの遅きを
歎
(
たん
)
じたり。これより後また新聞の画に不自由を感ずる事なかりき。(六月二十五日)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
古
(
いにしえ
)
より今に至るまで、
成敗
(
せいばい
)
の跡、禍福の運、人をして
思
(
おもい
)
を
潜
(
ひそ
)
めしめ
歎
(
たん
)
を発せしむるに
足
(
た
)
るもの
固
(
もと
)
より多し。されども人の奇を好むや、
猶
(
なお
)
以
(
もっ
)
て足れりとせず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
何か
仔細
(
しさい
)
の有りそうな、もとは良家の青年らしく、
折角
(
せっかく
)
染めた木綿の
初袷
(
はつあわせ
)
を、色もあろうに
鼠色
(
ねずみいろ
)
に染めたと、若い
身空
(
みそら
)
で仏門に入ったあじきなさを
歎
(
たん
)
じていると
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
巴里
(
パリー
)
、
伯林
(
ベルリン
)
、ブラッセル、アムステルダム、
何
(
いず
)
れも電信の速力は一杯にウォール街に資金を流入した。大西洋北岸の富の
余剰
(
よじょう
)
はいまや米国株式に変形したと
歎
(
たん
)
じさせた。
大阪万華鏡
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
拙者
(
せっしゃ
)
には武力はありますが名はありませぬ。それゆえ、
今日
(
こんにち
)
まで
髀肉
(
ひにく
)
の
歎
(
たん
)
をもっておりましたが、若君のみ
旗
(
はた
)
さえおかしくださるならば、
織田
(
おだ
)
や
徳川
(
とくがわ
)
は
鎧袖
(
がいしゅう
)
の一
触
(
しょく
)
です。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いはば
私
(
わたし
)
にとつては
實
(
じつ
)
に
好
(
こう
)
々
敵
(
てき
)
手だつたのだが、先生今や東北青
葉
(
ば
)
城
(
ぜう
)
下に
去
(
さ
)
つて久しく
相
(
あひ
)
見ゆる
機
(
き
)
を
得
(
え
)
ない。時々
思
(
おも
)
ひ出すと、
私
(
わたし
)
には脾
肉
(
にく
)
の
歎
(
たん
)
に
堪
(
た
)
へないものがあるのである。
文壇球突物語
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
わたしはどうかしてこの野卑
蕪雑
(
ぶざつ
)
なデアルの文体を
排棄
(
はいき
)
しようと思いながら多年の
陋習
(
ろうしゅう
)
遂に改むるによしなく空しく
紅葉
(
こうよう
)
一葉
(
いちよう
)
の如き文才なきを
歎
(
たん
)
じている次第であるノデアル。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
出す返事などはどんなに時代おくれなものと見られるかしれぬと
歎
(
たん
)
じているのであった。
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
其後
荊棘
(
けいきよく
)
の為めに
悉
(
こと/″\
)
く
破壊
(
はくわい
)
せられ、躰を
被
(
お
)
ふべきもの
更
(
さら
)
に無く、全身
挙
(
こぞ
)
りて
覆盆
(
ふくぼん
)
の雨に
暴露
(
ばうろ
)
せらる、
其状
(
そのじやう
)
誠に
憐
(
あはれ
)
むに
堪
(
た
)
へたり、衆相対して
眼
(
め
)
を
開
(
ひら
)
くも
閴
(
げき
)
として
声
(
こゑ
)
なく、
仰
(
あほ
)
ぎて天の無情を
歎
(
たん
)
す
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
うたた
脾肉
(
ひにく
)
の
歎
(
たん
)
に耐えないのであったが、これも身から出た
錆
(
さび
)
と思えば、
落魄
(
らくはく
)
の身の誰を怨まん者もなく、
南京虫
(
なんきんむし
)
と
虱
(
しらみ
)
に悩まされ、濁酒と唐辛子を
舐
(
な
)
めずりながら、
温突
(
おんどる
)
から温突へと放浪した。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
私は喜びかつ
歎
(
たん
)
じた次第だ、
可笑
(
おかし
)
な事にはかなりの店を持った商人である処の私の友人Hよりも私の方が多額納税者となっていた事だった、もち論Hは税金としての最低額を収めているのである。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
つくすとも
饜
(
あきた
)
るべき
奴
(
やつ
)
ならずと
冷凍
(
ひえこほ
)
る
拳
(
こぶし
)
握
(
にぎ
)
りつめて
當處
(
あてど
)
もなしに
睨
(
にら
)
みもしつ
思
(
おも
)
ひ
返
(
かへ
)
せばそれも
愚痴
(
ぐち
)
なり
恨
(
うら
)
みは
人
(
ひと
)
の
上
(
うへ
)
ならず
我
(
わ
)
れに
男
(
をとこ
)
らしき
器量
(
きりやう
)
あらば
是
(
こ
)
れ
程
(
ほど
)
までには
窮
(
きゆう
)
しもすまじアヽと
歎
(
たん
)
ずれば
吐
(
つ
)
く
息
(
いき
)
しろく
見
(
み
)
えて
身
(
み
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
誠に
邦家
(
ほうか
)
のために
歎
(
たん
)
ずべき次第なり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
鮎子さんが、
脾肉
(
ひにく
)
の
歎
(
たん
)
をもらす。
キャラコさん:07 海の刷画
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
中川もまた同様の
歎
(
たん
)
なきにあらず
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
河間王
(
かかんわう
)
が
宮殿
(
きうでん
)
も、
河陰
(
かいん
)
の
亂逆
(
らんぎやく
)
に
遇
(
あ
)
うて
寺院
(
じゐん
)
となりぬ。
唯
(
たゞ
)
、
堂觀廊廡
(
だうくわんらうぶ
)
、
壯麗
(
さうれい
)
なるが
故
(
ゆゑ
)
に、
蓬莱
(
ほうらい
)
の
仙室
(
せんしつ
)
として
呼
(
よ
)
ばれたるのみ。
歎
(
たん
)
ずべきかな。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
いや、
人界
(
にんがい
)
に生れ出たものは、たといこの島に流されずとも、皆おれと同じように、孤独の
歎
(
たん
)
を
洩
(
も
)
らしているのじゃ。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
かつや人の常情、敗れたる者は天の
命
(
めい
)
を称して
歎
(
たん
)
じ、成れる者は己の力を説きて誇る。二者共に
陋
(
ろう
)
とすべし。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
毛利へたいしてすら、異存あらば、七月以前に、申し越されよ、
旗鼓
(
きこ
)
の間に、解決しようと、云い切っているのである。——数正は、
歎
(
たん
)
を越えて、かろい疲れすら覚えて来た。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
離縁
(
りえん
)
して昌次郎へ
遣
(
つかは
)
し
見返
(
みかへ
)
らざるは
信
(
しん
)
なり罪なくして牢屋に
繋
(
つな
)
がれ
薄命
(
はくめい
)
を
覺悟
(
かくご
)
して
怨言
(
ゑんげん
)
なきは
禮
(
れい
)
なり
薄命
(
はくめい
)
を
歎
(
たん
)
じて死を定めしは
勇
(
ゆう
)
なり
五常
(
ごじやう
)
の道に
叶
(
かな
)
ふ事
斯
(
かく
)
の如く之に依て其
徳行
(
とくかう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
博士は研究所を
火災
(
かさい
)
で失って、どうにも
復興
(
ふっこう
)
の見込みが立たず、あたら
英才
(
えいさい
)
を
抱
(
いだ
)
いて不幸を
歎
(
たん
)
しているという。しかし博士のことだから、そのうちにもっと何かいい手段を考え出すことだろう。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この頃、銀座通に柳の
苗木
(
なえぎ
)
が
植付
(
うえつ
)
けられた。この苗木のもとに立って、断髪洋装の女子と共に蓄音機の奏する出征の曲を聴いて感激を催す事は、
鬢糸
(
びんし
)
禅榻
(
ぜんとう
)
の
歎
(
たん
)
をなすものの
能
(
よ
)
くすべき所ではない。
正宗谷崎両氏の批評に答う
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と今の世は到る処この
歎
(
たん
)
あり。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
かけて
見
(
み
)
つ
又
(
また
)
ときつ
思案
(
しあん
)
にもつるゝ
撚糸
(
よりいと
)
の
八重
(
やへ
)
が
歎
(
なげ
)
きは
又
(
また
)
異
(
こと
)
なり
茂
(
しげ
)
る
若葉
(
わかば
)
の
妨
(
さまた
)
げと
仰
(
おほ
)
せられしは
我
(
わ
)
が
事
(
こと
)
ならずや
闇
(
くら
)
き
迷
(
まよ
)
ひと
歎
(
たん
)
じ
給
(
たま
)
へど
夫
(
そ
)
れ
悟
(
さと
)
りたればこその
御取持
(
おとりも
)
ちなれ
思
(
おも
)
ひ
合
(
あ
)
ふ
中
(
なか
)
のお
兩方
(
ふたかた
)
に
我
(
わ
)
が
生涯
(
しやうがい
)
の
望
(
のぞ
)
みも
頼
(
たの
)
みも
御讓
(
おゆづ
)
り申して
思
(
おも
)
ひ
置
(
お
)
くこと
些少
(
いさゝか
)
なきを
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「
姫様
(
ひいさま
)
こういらっしゃいまし。」一まず
彼室
(
かなた
)
の休息所へ、しばし引込みたまうにぞ、大切なる
招牌
(
かんばん
)
隠れたれば、店頭
蕭条
(
しょうじょう
)
として秋暮の
歎
(
たん
)
あり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まして我々
下根
(
げこん
)
の
衆生
(
しゆじやう
)
は、
好
(
い
)
い加減な野心に
煽動
(
せんどう
)
されて、
柄
(
がら
)
にもない大作にとりかかつたが
最期
(
さいご
)
、
虻蜂
(
あぶはち
)
とらずの
歎
(
たん
)
を招くは、わかり切つた事かも知れず。
雑筆
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
茫々
(
ぼうぼう
)
たる曠野、
草莱
(
そうらい
)
いたずらに茂って、千古ただ有るがままに有るのみなのを見て、氏郷は「世の中にわれは何をかなすの原なすわざも無く年や経ぬべき」と
歎
(
たん
)
じた。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
椎の葉の椎の葉たるを
歎
(
たん
)
ずるのは椎の葉の笥たるを主張するよりも確かに尊敬に価している。しかし椎の葉の椎の葉たるを一笑し去るよりも退屈であろう。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
喟然
(
きぜん
)
として
私
(
わたし
)
は
歎
(
たん
)
じた。
人間
(
にんげん
)
は
斯
(
そ
)
の
徳
(
とく
)
による。むかし、
路次裏
(
ろじうら
)
のいかさま
宗匠
(
そうしやう
)
が、
芭蕉
(
ばせを
)
の
奧
(
おく
)
の
細道
(
ほそみち
)
の
眞似
(
まね
)
をして、
南部
(
なんぶ
)
のおそれ
山
(
やま
)
で、おほかみにおどされた
話
(
はなし
)
がある。
木菟俗見
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
あるに
甲斐
(
かい
)
なく世を
経
(
ふ
)
れば貧には運も
七分
(
しちぶ
)
凍
(
こお
)
りて
三分
(
さんぶ
)
の未練を命に
生
(
いき
)
るか、
噫
(
ああ
)
と
計
(
ばか
)
りに
夢現
(
ゆめうつつ
)
分
(
わか
)
たず珠運は
歎
(
たん
)
ずる時、雨戸に雪の音さら/\として、火は
消
(
きえ
)
ざる
炬燵
(
こたつ
)
に足の先
冷
(
つめた
)
かりき。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
書画、
篆刻
(
てんこく
)
、
等
(
とう
)
を愛するに至りしも小穴一游亭に負ふ所多かるべし。天下に
易々
(
いい
)
として古玩を愛するものあるを見る、われは唯わが
性
(
さが
)
の
迂拙
(
うせつ
)
なるを
歎
(
たん
)
ずるのみ。
わが家の古玩
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
角力
(
すまふ
)
など
取
(
と
)
らねば
可
(
よ
)
かつた。
夜半
(
よなか
)
に
腹
(
はら
)
の
空
(
す
)
いた
事
(
こと
)
。
大福
(
だいふく
)
もちより、きしめんにすれば
可
(
よ
)
かつたものを、と
木賃
(
きちん
)
でしらみをひねるやうに、
二人
(
ふたり
)
とも
財布
(
さいふ
)
の
底
(
そこ
)
をもんで
歎
(
たん
)
じた。
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
巍は燕王に書を
上
(
たてまつ
)
りしも
効
(
かい
)
無かりしを
歎
(
たん
)
ずれば、鉉は忠臣の節に死する
少
(
すくな
)
きを憤る。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と自ら疑うように又自ら
歎
(
たん
)
ずるように、木沢は
室
(
へや
)
の一隅を
睨
(
にら
)
んだ。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
歎
漢検準1級
部首:⽋
15画
“歎”を含む語句
歎息
愁歎
悲歎
嗟歎
歎悲
御歎
歎願
驚歎
讃歎
浩歎
歎賞
歎異鈔
大歎息
御愁歎
長歎息
歎願書
哀歎
感歎
慨歎
詠歎
...