“忽:たちま” の例文
“忽:たちま”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花61
芥川竜之介44
中里介山36
海野十三31
泉鏡太郎25
“忽:たちま”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸33.9%
文学 > 日本文学 > 小説 物語13.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)5.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
貫一の手にすがりて、たちまちその肩におもて推当おしあつると見れば、彼も泣音なくねもらすなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と尋ねた。すると不思議なことには赤鸚鵡がたちまち姫の前の金網へ飛び付いて、姫の顔を真赤まっかな眼で見つめながら――
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
運河には石の眼鏡橋。橋には往来の麦稈帽子。――たちまち泳いで来る家鴨あひるの一むれ。白白と日に照つた家鴨の一むれ。
長崎 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
赤羽主任は、それをチラと見るや、たちまちにして脳裡にわだかまっていた疑問を一掃いっそうし得ることが出来たのだ。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『オヤおきぬ!』とおももなくくるまぶ、三にんたちままどしたた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
余は模糊もこたる功名の念と、検束に慣れたる勉強力とを持ちて、たちまちこの欧羅巴ヨオロツパの新大都の中央に立てり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
たちまち一発の銃声が薄曇の日の重い空気を震動させて、とある町家の廂間ひあはひから、五六人の士が刀を抜き連れて出た。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
旅人たびびとつゆわかてば、細瀧ほそだき心太ところてんたちまかれて、饂飩うどん
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
昼間は、わしは祈祷と神聖な事物とに忙しい神の僧侶であるが、夜、眼をつぶる刹那からは、たちまち若い貴族になつてしまふ。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
夫人は、それを待ち受けていたように、手をさし延べて呉れた。兄の偶然な死は、夫人と彼とをたちまち接近せしめてしまった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
どうした火のつまずきか、けたたましい一つの爆音と共に、一団の煙が空を目がけて飛び上り、そしてたちまちに霧散した。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ここでは旅人が池の岸に来て「姥甲斐かいない」と大きな声で呼ぶと、たちまち池の水がきあがるといっておりました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私が看板の横に書いてある細い文字の町名番地を、俥の上で遠くからのぞき込むようにすると、女はたちまち気が附いたか、
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それが、二三度、繰返されたかと思ふと、やがて、人のけはひが止んで、あたりはたちまち元のやうに、静な冬の夜になつた。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼の頭が否と云つてゐるにも関らず、彼の心臓はたちまち正秀の哀慟の声に動かされて、何時か眼の中は涙で一ぱいになつた。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
宮はたちまおもてあかめて、如何いかにともすべを知らざらんやうに立惑たちまどひてゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
けれどもまだ腰をかけぬ前に姫はその銀杏の樹の根元に思いがけないものを見つけて、たちまおどり上らんばかりに喜んだ。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
けれども仮りにニイチェ一人を持ち出して来ると、その超人の哲学はたちまち四方からの非難攻撃にわねばならぬのだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「原子爆弾を食う男だな」と兄は食卓で軽口を云いだした。が、少し飲んだビールでたちまち兄は皮膚にかゆみを発していた。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)
「あら、う御座んすよ、たんと御なぶり遊ばせ」と、たちまち砕けで群に加はる花吉を、相格さうがう崩しての包囲攻撃、
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
六才むつばかりなる稚児おさなごの、余念なく遊びゐたるを、過失あやまちて蹴倒せば、たちまわっと泣き叫ぶ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
たちまち、動揺どよめく人波の点々が、倒れ、跳ね、おどり、渦巻くそれらの頭上で無数の白い閃光せんこうが明滅した。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
茂之助が柄杓で水を飲んで居るうち、夕立もれてたちまちに雲が切れると、十七日の月影が在々あり/\します。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
前後あとさきに二人ずつ居りまして、中乗なかのりが三人ぐらい居まして、たちまちに前橋まで此の筏が下りて参りますが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
白雲は、立ち止って、その挙動を仔細に凝視する立場になったのは、物体そのものにもたちまち諒解が届いたからなのであります。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これは行き過ぎたと思っては、踏みとどまって待受けて、また、そろそろ踏み出すと、たちまちまた二三間の隔たりが生ずる。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
硝子戸ガラスどの外れるのと共に、へやの中へ吹き入った風と雨とは、たちまちに、二十畳に近い大広間にうず巻いた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
判断がつきかねている時、呉が来た。嬰寧は避けて室の中へ入った。呉は理由を聞いて暫くぼんやりしていたが、たちまちいった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
たちまあかり行燈あんどうへて、薄暗うすぐらところでおやすみなさいと命令めいれいされるが
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
口を開く間もあらばこそたちまちばらばらとけ寄った数人の者に軽々と担ぎ上げられ、そのまま築山の谷へ投げ込まれたなり
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
たちまち細君の声に変りまして、非常に優しい声です、やって居る霊媒はお婆さんですから、女の方がうまく行くんでしょう。
この人は不思議な潔癖家で、自分の説を一寸でも曲げないで直ぐ衝突するから、学校ではたちま喧嘩けんかをして了った。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
口を開く間もあらばこそたちまちばらばらとけ寄つた数人の者に軽々と担ぎ上げられ、そのまま築山の谷へ投げ込まれたなり
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
蝋燭は最後の燃えんとする努力をするように、パッと一瞬間明るくなると共に、見る見る焔が小さくなって、たちまち消て終った。
罠に掛った人 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
四十三 戦慄の後で、少しの間だけれど安心の思いが浮かんだ。かの怪星はたちまち姿が消えた、誰の目にも見えなくなった。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
「え、お前さんは僕の親父を知っているのか。」と、市郎は不審の眼をひからせると、男はたちまかしらった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一面に降頻ふりしき粉雪こゆきは、戸を明けるのを待って居たように、庭の方からたちまさっと吹き込んで来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あまりに僧が子供のように色里の客になる態度を、人に正直に聞くので、それが可笑おかしいとてたちまち楼中の評判になった。
とと屋禅譚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
小山ぬしの尽力その甲斐かいあらば大原ぬしは押付婚礼おしつけこんれいのがれてたちまち海外へおもむき給わん。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ところへ、たちまち、門外もんぐわい、から/\とくるまおと、ヒヽンとうまいなゝこゑ
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すると大勢の客の中にたちまち「毎度御やかましうございますが」と甲高い声を出しはじめたのは絵葉書や雑誌を売る商人である。
本所両国 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
旅中端午の節句に逢って家郷を想うに当り、たちまち例の転化を試みて、現在自分がかぶっている笠を持出したのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
広次は唯驚いたやうに、色を変へた祖母を眺めてゐた。そのうちにお住は反動の来たのか、たちまち又涙をこぼしはじめた。
一塊の土 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
四馬路すまろの雑踏のなかで支那人の労働者が過激の渡説を始めたがたちまち警吏のために捕縛ほばくされてしまった。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
実行上の権力において自己よりはるかに偉大なる政府というものを背景にひかえた御蔭で、たちまち魚が竜となるのである。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御氣おきどくながら地球ちきうかはたちま諸君しよくんむべくつて
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そっと、教室の後の方の入口から這入って行ったのに、たちまち四十あまりの顔と眼鼻が一斉に振返って彼の方へ注がれた。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
すると私の前額部が、何かしら固いものに衝突ぶっつかって眼の前がパッと明るくなった。……と思うと又たちまち真暗になった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
またこの大伯母はいつも黙って人の話を聞いているだけで、何か一言いうと、それでたちまち親戚間のごたごたが解決した。
洋灯 (新字新仮名) / 横光利一(著)
はばからず声を放つて泣きたりしが、たちまちガパとね起きつ、足を踏みしめ、手を振つて、天地も動けと、呼ばはりぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「これは三保の松原に、伯良はくりょうと申す漁夫にて候。万里の好山に雲たちまちに起り、一楼の明月に雨始めて晴れたり……」
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女は仏菩薩ぼさつに会った心地して、をすり合せて礼拝し、よろこび勇んで、いそいそとたちまち走り去ってしまった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何の為にもならぬことに、いやと申し張らるることもござるまい。応と言われれば、日頃の本懐もたちまち遂げらるる場合にござる。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「お前さんなんて、傍へ置こうものならたちまちちょっかいを出すだろう、出すんならまだいいが、出されちまいまさあね」
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこで、一旦は踏み留まって振返って見たけれども、たちまちクルリと背を向けて、北上川の川破りの続演をつづけました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こんな深夜に、このささやかな合図でたちまち手応えのあるところを以てして見ると、先方も相当に待つ身ではあるらしい。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
馴染の女と話をしていた山崎譲は、無論、このことを知ろうはずがありませんが、その噂はたちまちにして耳へ入りました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこで、侵入者は、以前の蒲団ふとんの中へ案内されると、たちまちに、死せるもののように眠りに落ちてしまいました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昔ある国での話であるが、天文の学生が怠けて星の観測簿を偽造して先生に差出したらたちまち見破られてひどくお眼玉を頂戴した。
雑記帳より(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼の身体はたちまちその風に吹きさらされて透明になり、四方の風はゴウゴウと吹き通り、すでに風だけがはりつめているのでした。
桜の森の満開の下 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ようやくに気を取直して、博士が私に宛てられた唯一の遺書を読むと、私はたちまち奈落の底に突落されたような絶望を感じた。
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
するとひとはらなかみかねるやうな婦人をんなではない、たちま様子やうすさとつたかして、
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その椿を神体として三週間の礼拝を続け、泉の水を飲んで病夫に呑ませるなら、夫の病気はたちまちになおるであろう。
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
させてもらった笠森稲荷かさもりいなり水茶屋みずぢゃやたちま江戸中えどじゅう評判ひょうばんとなっては
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
二番目は「松田の仇討」で華々しく開場したのであったが、それから半年も経たないうちにたちまち灰になってしまったのは
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おいた。」と氣輕きがるしやがむ、をとこかたへ、づかとると、たちまおこつた。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たちま手負猪ておひじしおそふやうな、殺氣さつきつた跫音あしおと犇々ひし/\ドアる。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したたちまほりふかく、みづはやゝれたりといへども、枯蘆かれあしかやたぐひ
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼等は店のなかが込んでいると見るや、たちまち鋭い眼付になって、空席を見出すと共に人込みを押分けて驀進ばくしんする。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
高岡町たかおかまちそばを流れている仁淀川によどがわは、たちま汎濫はんらんして両岸の堤防が危険になって来た。
水面に浮んだ女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
第一、主客二人の坐る所もない、うっかり身動きし様ものなら、たちまち本の土手くずれで、しつぶされて了うかも知れない。
D坂の殺人事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし百の游泳者ゆうえいしゃや千のランナアを眺めたにしろ、たちまち游泳を覚えたり、ランニングに通じたりするものではない。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
妙なやつだと自分も見返して居ることしばし、彼はたちまち眼を砂の上に転じて、一歩一歩、静かに歩きだした。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この笑い声を聞くと赤い鳥は、一寸ちょっと頭を傾けているようであったが、たちまち思い出したようにパタパタと羽ばたきをした。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そう呶鳴どなると丘田医師はたちまち身をひるがえして、そば棕櫚しゅろ鉢植はちうえに手をかけた。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たちまる一英國人エイこくじんはつか/\と私共わたくしどもまへすゝつて。
ト口早に制して、お勢が耳をそばだてて何か聞済まして、たちまち満面にわらいを含んでさもうれしそうに、
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さて目見をおわって帰って、常の如く通用門をらんとすると、門番がたちまち本門のかたわらに下座した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それからおもむろに正木博士をふり返ると、博士はたちまち眼を細くして、義歯いればを奥の方までアングリとあらわした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところが一方に吾輩が総督府を飛出して、水産組合を作ったという評判は、たちまちの中に全鮮へ伝わったらしいんだね。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
茶をれて来たかじの妻は、栖方せいほうの小父の松屋の話が出てからはたちまち二人は特別に親しくなった。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そうして、それらの松明は、見る間に一列の弧線を描いて拡がると、たちまち全山の裾を円形に取り包んで縮まって来た。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
辞退すればたちまちこの娘の生命の問題となる――そうかといって、この身でこのまま、この年をして、この娘を連れてどこへ行ける。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
睡気ねむけたちまち香油のびんを離れて瓦斯ガスの光に溶けてしまへやが変に底無しのふちのやうになった。
床屋 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
といまだいひもはてざるに、満堂たちまち黙を破りて、どっ諸声もろごえをぞ立てたりける、喧轟けんごう名状すべからず。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おゝ、眞實しんじつあの藥種屋やくしゅや效力きゝめたちまち……かう接吻せっぷんしておれぬるわ。
もしお祖母ばあ様ののであった鼠色ねずみいろのキレにを移すならば、緑色だった空はたちまち暗くなって雨が降って来る。
少年・春 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
胸中の苦悶未だ全く解けず、行く行く秋草の深き所に到れば、たちまち聴く虫声の如く耳朶じだ穿うがつを。
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
翌年二月襄生徒を集めて荘子を講じつゝありしとき、たちまち飛報あり電の如く彼の心を撃てり、曰く春水の病急なりと。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
毎日工場へ出て働きさへすればきまつた賃銀が得られる現在の境遇がたちまちに何ものにも替へがたくなるのだつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
――「按摩あんまあ……はありツ」とたちまみつきさうに、霜夜しもよ横寺よこでらとほりでわめく。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えるかとおもふと、たちまて、だまつてまたもちいたゞいて、すつと引込ひつこむ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
十日ばかり君江も酒を断っていた後なので、話をしている中にたちまち取寄せた三本のビールをからにしてしまった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それがぱく/\ひらいたりぢたりするので、たま/\これにおちいつた人畜じんちくたちまえなくなり
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ほそたなそこにぎるやうになるとたちまち一てんして、れの思想しさう
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
素通りもなるまいとてずつと這入るに、たちまち廊下にばたばたといふ足おと、ねへさんお銚子と声をかければ、お肴は何をと答ふ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
兄はちよいとけげんさうに母とわたしとを見比べましたが、たちまち妙な笑ひ方をすると、又横文字を読み始めました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕はいつか西廂記せいそうきを読み、土口気泥臭味の語に出合った時にたちまち僕の母の顔を、――せ細った横顔を思い出した。
点鬼簿 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
風に向った二人の半身はたちまち白く染まって、細かい針で絶間なく刺すような刺戟しげきは二人の顔を真赤にして感覚を失わしめた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
うはさたちまち城下にひろまつて、番頭組ばんがしらぐみの者や若侍は次第に利章が邸の前へ詰め懸けた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
PR