平常つね)” の例文
答 平常つねカラ私ノ愛シテ居ル女ヲ苦シメテ居タ事ガ実ニ憎イノデス。シカシ私ガ一番タマラナイノハ清三ガ道子ノ夫ダトイウ事デス。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
平常つね部屋へやりかゝる文机ふづくゑ湖月抄こげつせうこてふのまき果敢はかなくめてまたおもひそふ一睡いつすゐゆめ夕日ゆふひかたぶくまどすだれかぜにあほれるおとさびし。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平常つねは六碗七碗を快ういしもわずかに一碗二碗で終え、茶ばかりかえって多く飲むも、心に不悦まずさのある人の免れがたき慣例ならいなり。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「三月になります。」とか「なるわよ。」とか言切ったら平常つねの談話に聞えたのであろうが、ネエと長く引いた声は咏嘆えいたんおんというよりも
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
含みて夫は職人衆しよくにんしう符號ふちやうにて其なげしと云は下帶したおびの事なりくぢらとは鐵釘かなくぎの事股引もゝひきをばたこと云ふ是れ皆職人衆の平常つねに云ふ符號詞ふちやうことばなりと能々わけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
多「誠に有難ありがたえ、平常つねこんな事はねえ、どんな重い荷い附けても悪い顔をする馬ではがんせん、アレ又止った、青々」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ハテなと思い眼をすえて熟視よくみると、三十くらいで細面ほそおもてやせた年増が、赤児に乳房をふくませ、悄然しょうぜんとして、乳をのませていたのである、この客平常つね威張屋いばりやだが余程臆病だと見え
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
川島家にては平常つねにも恐ろしき隠居が疳癪かんしゃくの近ごろはまたひた燃えに燃えて、慣れしおんなばらも幾たびか手荷物をしまいかけるに、朝鮮事起こりて豊島牙山ほうとうがざんの号外は飛びぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
姿平常つねにまさり最終をはりの時にもまさるばかり、その目清くたのしげなりき 五五—五七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
小言こごとがましき時にあたって慈愛の情の平常つねまさり病子を看護するを見たり、爾無限の慈母も余のいためる時に余を愛する余が平常無事の時の比にあらざるなり、余の愛するもの失してのち
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
母はついに、それ故と申すでもござりますまい? なれども、平常つねから病身の身とて、遂に全く床に就く事となりまして、程なく私の事をいひいひはかなくも、私が十九の秋あしたの露と消へ失せました。
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
事に臨みては母ありとも思ふべからず、家ありとも思ふべからず、取るべき道の重大おほきなるに寄りて進み給へと、これは平常つねの詞なりけり。
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平常つねは六碗七碗を快うひしも僅に一碗二碗で終へ、茶ばかり却つて多く飲むも、心に不悦まづさの有る人の免れ難き慣例ならひなり。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
きゝ吉兵衞不しんに思ひ御の如く幼少えうせうの時不※ふと怪我けがを致せしが其あとが今にのこり在しを娘が人さうかゝると人々が申せしとて平常つねに苦勞致しをりしが此度斯樣かやうの死を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此お供を嬉しがるは平常つねのこと、父母なき後は唯一人の大切な人が、病ひの床に見舞ふ事もせで、物見遊山に歩くべき身ならず
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
砕けた源太が談話はなしぶりさばけたお吉が接待とりなしぶりにいつしか遠慮も打ち忘れ、されていなまず受けてはつと酒盞さかずきの数重ぬるままに、平常つねから可愛らしきあから顔を一層みずみずと
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
守りしかも天然の大力ありと雖も是を平常つねに顯さず仁義を專らになし強きをくぢき弱きを助け金銀ををしまず人の難儀なんぎを救ふ此故に大岡殿の吹擧すゐきよに預りて將軍家の御旗本おはたもととなり領地五百石を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
平常つねの美登利ならば信如が難義の體を指さして、あれ/\彼の意久地なしと笑ふて笑ふて笑ひ拔いて、言ひたいまゝの惡まれ口
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
来む二十一日の日曜には舟をむなしうして吾等を待てと堅く約束を結ばしめつ、ひたすらに其日の至るを心楽みにして、平常つねのおのれが為すべきわざを為しながら一日ひとひ〻〻と日を送りけり。
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
平常つねの美登利ならば信如が難義のていを指さして、あれあれあの意久地なしと笑ふて笑ふて笑ひ抜いて、言ひたいままのにくまれ口
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
清吉酔ふては撿束しまりなくなり、砕けた源太が談話はなしぶりさばけたお吉が接待とりなしぶりに何時しか遠慮も打忘れ、されていなまず受けては突と干し酒盞さかづきの数重ぬるまゝに、平常つねから可愛らしき紅ら顔を一層沢〻みづ/\
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
平常つね美登利みどりならば信如しんによ難義なんぎていゆびさして、あれ/\意久地いくぢなしとわらふてわらふてわらいて、ひたいまゝのにくまれぐち
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いよ/\離縁するとでも言はれて來たのかと落ついて問ふに、良人は一昨日より家へとては歸られませぬ、五日六日と家を明けるは平常つねの事
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いよいよ離縁するとでも言はれて来たのかと落ついて問ふに、良人おつと一昨日おととひより家へとては帰られませぬ、五日六日と家を明けるは平常つねの事
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いよ/\離縁りゑんするとでもはれてたのかとおちついてふに、良人おつと一昨日おとゝひよりうちへとてはかへられませぬ、五うちけるは平常つねこと
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其後は物ごとに念を入れて、遂ひに麁想そさうをせぬやうに成りぬ、世間に下女つかふ人も多けれど、山村ほど下女の替る家は有るまじ、月に二人は平常つねの事
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其後そのごものごとにねんれて、ひに麁想そそうをせぬやうにりぬ、世間せけん下女げぢよつかふひとおほけれど、山村やまむらほど下女げぢよかはいゑるまじ、つき二人ふたり平常つねこと
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのは物ごとに念を入れて、ひに麁想そさうをせぬやうに成りぬ、世間に下女つかふ人も多けれど、山村やまむらほど下女の替る家は有るまじ、月に二人は平常つねの事
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おぬひあきれて貴君は其樣の事正氣で仰しやりますか、平常つねはやさしい方と存じましたに、お作樣に頓死しろとは蔭ながらの嘘にしろあんまりでござります
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おぬひあきれて貴君あなた其樣そのやうこと正氣せうきおつしやりますか、平常つねはやさしいかたぞんじましたに、お作樣さくさま頓死とんししろとはかげながらのうそにしろあんまりでござります
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わびるやうになぐさめられて、それでもと椀白わんぱくへず、しくしくきに平常つね元氣げんきなくなりて、悄然しよんぼりとせし姿すがた可憐いぢらし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おぬひあきれて貴君あなたはその様の事正気で仰しやりますか、平常つねはやさしい方と存じましたに、お作様に頓死しろとはかげながらのうそにしろあんまりでござります
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
へば平常つねだてにるべきねがひとてうたがひもなく運平うんぺい點頭うなづきてらばきてくかへれ病人びやうにんところ長居ながゐはせぬものともにはなべなりとれてきなされと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
潜りの工合の惡るくして平常つねさわる處のあれば、を直さんとて明けつしめつするほどに、暗をてらして彼方の大路より飛くる車の、提燈かんばん澤瀉をもだかの紋ありしかば
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
めづらしく家内中うちゞうとのれになりけり、このともうれしがるは平常つねのこと、父母ちゝはゝなきのちたゞ一人の大切たいせつひとが、やまひのとこ見舞みまこともせで、物見遊山ものみゆさんあるくべきならず
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
珍らしく家内うち中との触れに成けり、このお供をうれしがるは平常つねのこと、父母ちちははなきのちは唯一人の大切な人が、病ひの床に見舞ふ事もせで、物見遊山ゆさんに歩くべき身ならず
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平常つねはともあれ由縁ゆかりある日はこと更におもひ出されて、まぎらさんとても氣のまぎれぬは今日なり。
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けてのきばに風鈴ふうりんのおとさびしや、明日あす此音このおといかにこひしく、此軒こののきばのこと部屋へやのこと、取分とりわけては甚樣じんさまのこと、父君ちヽぎみのこと母君はヽぎみのこと、平常つねまでならぬ姉妹しまいのこと
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平常つね道理だうりがよくわかひとではないか、しづめてかんがなほしてれ、植村うゑむらこと今更いまさらとりかへされぬことであるから、あとでもねんごろとぶらつてれば、おまへづから香花かうげでも手向たむければ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さりとて立去るでも無しに唯うぢうぢと胸とどろかすは平常つねの美登利のさまにては無かりき。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さりとて立去たちさるでもしにたゞうぢ/\とむねとゞろかすは平常つね美登利みどりのさまにてはかりき。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平常つねは道理がよく了解わかる人では無いか、氣を靜めて考へ直して呉れ、植村の事は今更取かへされぬ事であるから、跡でも懇にともらつて遣れば、お前が手づから香花かうはなでも手向れば
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平常つねは道理がよく了解わかる人では無いか、気を静めて考へ直してくれ、植村の事は今更取かへされぬ事であるから、跡でもねんごろともらつて遣れば、お前が手づから香花かうはなでも手向たむければ
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まつりの趣向も我れよりは花を咲かせ、喧嘩けんくわに手出しのなりがたき仕組みも有りき、今年又もや負けにならば、誰れだと思ふ横町の長吉ちようきちだぞと平常つねの力だてはからいばりとけなされて
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今年ことしまたもやまけけにならば、れだとおも横町よこてう長吉ちようきちだぞと平常つねちからだてはからいばりとけなされて、辧天べんてんぼりにみづおよぎのをりくみひとおほかるまじ、ちからはゞはうがつよけれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今更の汗わき下を傳へば後悔の念かしらにのぼりて、平常つねの心のあらはれける我れ恥かしく、さても何如なる事をか申たる、お前樣お二人の外に聞かれし人は無きかと裏どへば、佐助大笑ひに笑ひて
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此邸こゝ奧樣おくさまうもひとつた、繼母まゝはゝつたので平常つね我慢がまん大底たいていではなく、つもつて病死びやうしした可憐かわいさういづをとここと御座ござりますから、眞面目まじめかほであり/\をひましたを
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
誰れだと思ふ横町の長吉だぞと平常つねの力だては空いばりとけなされて、弁天ぼりに水およぎの折も我が組に成る人は多かるまじ、力を言はゞ我が方がつよけれど、田中屋が柔和おとなしぶりにごまかされて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ありましたれど赤子あかごせるものがないとかきませば平常つねこゝろ承知しようちがならずとほして針仕事はりしごとるものふたつかはしましたと得意顏とくいがほ物語ものがたとくかげなるこそよけれとかきゝしがあやしのことよとうたがむね相談さうだんせばやのこゝろえぬ花子はなこさま/″\の患者くわんじやはなし昨日きのふ往診みまひ同朋町どうぼうちやうとやらしやとけばつゆたがはぬ樣子やうすなりそれほどまでには
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)