トップ
>
啣
>
くは
ふりがな文庫
“
啣
(
くは
)” の例文
お
品
(
しな
)
には
與吉
(
よきち
)
が
惡戯
(
いたづら
)
をしたり、おつぎが
痛
(
いた
)
いといつて
指
(
ゆび
)
を
啣
(
くは
)
へて
見
(
み
)
せれば
與吉
(
よきち
)
も
自分
(
じぶん
)
の
手
(
て
)
を
口
(
くち
)
へ
當
(
あて
)
て
居
(
ゐ
)
るのが
目
(
め
)
に
見
(
み
)
えるやうである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
之
(
これ
)
が
引摺
(
ひきず
)
つて、
足
(
あし
)
を
見
(
み
)
ながら
情
(
なさけ
)
なさうな
顔
(
かほ
)
をする、
蟋蟀
(
きり/″\す
)
が
𢪸
(
も
)
がれた
脚
(
あし
)
を
口
(
くち
)
に
啣
(
くは
)
へて
泣
(
な
)
くのを
見
(
み
)
るやう、
目
(
め
)
もあてられたものではない。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その時彼は葉巻を
啣
(
くは
)
へて、洋服の膝に軽々と小さな金花を抱いてゐたが、ふと壁の上の十字架を見ると、不審らしい顔をしながら
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その一本の
葉巻
(
シガア
)
を将軍はいつも口に
啣
(
くは
)
へてゐる。食事の時は叮嚀に
卓子
(
テーブル
)
の上にそつとそれを置き、食事が済むと、またそれを啣へてゐる。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
野良犬は、秋刀魚の片側の肉を美味しさうに喰べ終へると、魚の頭のところを
啣
(
くは
)
へて、どんどん海の方角へ馳け出しました。
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
▼ もっと見る
皆が硯箱に蓋をしたり、袴の紐を締直したり、
莨
(
タバコ
)
を
啣
(
くは
)
へて外套を着たりしたが、三面の外交をして居る小松君が、突然
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
林檎
(
りんご
)
の様に赤い顔をして大きな
煙管
(
パイプ
)
を
啣
(
くは
)
へて離さず、よく食ひ、よく語り、よく運動する元気のいい爺さんである。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
おくみは額際に汗をにじませて、袂を
啣
(
くは
)
へながら、下手なよそひ方なぞをしたお皿を、ちやぶ台の上に並べた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
垂し鰻屋の臭に指を
啣
(
くは
)
へる
類
(
たぐひ
)
なり慾で滿ちたる人間とて何につけても
夫
(
それ
)
が出るには愛想が盡る人生
居止
(
きよし
)
を營む
竟
(
つひ
)
に
何人
(
なんぴと
)
の爲に
卜
(
ぼく
)
するぞや
眺望
(
ながめ
)
があつて清潔な所を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
「太郎や
妾
(
わたし
)
は一生お
前
(
まい
)
と離れないよ、お前の好きな処へお前を
伴
(
つ
)
れてお嫁に行くから子、お前の好きな人が来たら妾の
袂
(
たもと
)
を
啣
(
くは
)
へて其人の
傍
(
そば
)
へ伴れて行くのだよ、」
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
二三人の男が大声で話をしながら腰をかけるが否や其一人が口に
啣
(
くは
)
へた巻煙草にマツチの火をつけた。
男ごゝろ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
啣
(
くは
)
え
烟草
(
たばこ
)
の
烟
(
けむ
)
を
秋
(
あき
)
の
日
(
ひ
)
に
搖
(
ゆら
)
つかせながら、ぶら/\
歩
(
ある
)
いてゐるうちに、どこか
遠
(
とほ
)
くへ
行
(
い
)
つて、
東京
(
とうきやう
)
と
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
はこんな
所
(
ところ
)
だと
云
(
い
)
ふ
印象
(
いんしやう
)
をはつきり
頭
(
あたま
)
の
中
(
なか
)
へ
刻
(
きざ
)
み
付
(
つ
)
けて
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
将門はそれで
宜
(
よ
)
いが、良兼等は
其儘
(
そのまゝ
)
指を
啣
(
くは
)
へて終ふ訳には、これも阪東武者の腹の虫が承知しない。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
こゝで、葉卷を取り出して火を
點
(
つ
)
ける間の沈默があとに續いた。それを唇に
啣
(
くは
)
へて、薫たかいハバナの煙を、
冷
(
ひや
)
やかな曇り日の空氣にふかし、彼はまた語りつゞけた。——
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
殘
(
のこ
)
し己は
飯
(
めし
)
喰
(
くひ
)
にぞ下りけり跡には寶澤
只
(
たゞ
)
一人
熟々
(
つら/\
)
思ひ
廻
(
めぐ
)
らせば
今
(
いま
)
此
(
こ
)
の二品を
盜
(
ぬす
)
み
置
(
お
)
かば用ゆる時節はこれ
斯
(
かう
)
と心の中に
點頭
(
うなづき
)
つゝ
頓
(
やが
)
て
懷中紙
(
くわいちうがみ
)
を口に
啣
(
くは
)
へ毒藥の
壺
(
つぼ
)
取卸
(
とりおろ
)
し彼中なる二品を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
親烏が獲物を
啣
(
くは
)
へて来ては小烏の口の中へ入れてやつて居た。其時の声が殊に耳にたつて騒がしかつた。烏は時々首を左右に傾けて下の畑を覗く様な風をした。お桐は始終注意して居た。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
そのお菊が大名屋敷に奉公すると聞いて、指を
啣
(
くは
)
へて引込む手前ぢやあるめえ
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
燕
(
つばめ
)
、燕、春のセエリーのいと赤きさくらんぼ
啣
(
くは
)
え飛びさりにけり
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
彼はパイプを
啣
(
くは
)
へて、
悠々
(
いういう
)
と青い煙を吐いてゐた。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
舊巣
(
ふるす
)
啣
(
くは
)
へて飛び去りぬ。
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
もろともに
啣
(
くは
)
へて帰る
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
キヤツと
啼
(
な
)
く、と五六
尺
(
しやく
)
眞黒
(
まつくろ
)
に
躍
(
をど
)
り
上
(
あが
)
つて、
障子
(
しやうじ
)
の
小間
(
こま
)
からドンと
出
(
で
)
た、
尤
(
もつと
)
も
歌
(
うた
)
を
啣
(
くは
)
へたまゝで、
其
(
そ
)
ののち
二日
(
ふつか
)
ばかり
影
(
かげ
)
を
見
(
み
)
せぬ。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
さう云ふ
語
(
ことば
)
がまだ
完
(
をは
)
らない中に、蛇の頭がぶつけるやうにのびたかと思ふと、この雄辯なる蛙は、見る
間
(
ま
)
にその口に
啣
(
くは
)
へられた。
蛙
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今度
皇后宮大夫
(
くわうごうぐうだいぶ
)
になつた大森鍾一氏は官吏は威容を整へなければならぬといふので、
何時
(
いつ
)
も葉巻を
啣
(
くは
)
へる事に決めてゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
自分はケロリとして煙管を
啣
(
くは
)
へ乍ら、幽かな微笑を女教師の方に向いて洩した。古山もまた煙草を吸ひ始める。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
とある
矮
(
ひく
)
い石垣の上に腰を掛けた九
里
(
り
)
は大きな
煙管
(
パイプ
)
を
啣
(
くは
)
へて
快
(
こゝろよ
)
さ
相
(
さう
)
に
燐寸
(
マツチ
)
を擦つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
と泣声になり掻口説く女房の頭は低く垂れて、髷にさゝれし縫針の
孔
(
めど
)
が
啣
(
くは
)
へし
一条
(
ひとすぢ
)
の糸ゆら/\と振ふにも、千〻に砕くる心の態の知られていとゞ
可憫
(
いぢら
)
しきに、眼を瞑ぎ居し十兵衞は
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
其
(
そ
)
の人々の中に
長吉
(
ちやうきち
)
は
偶然
(
ぐうぜん
)
にも若い一人の芸者が、口には桃色のハンケチを
啣
(
くは
)
へて、
一重羽織
(
ひとへばおり
)
の
袖口
(
そでぐち
)
を
濡
(
ぬら
)
すまい
為
(
た
)
めか、
真白
(
まつしろ
)
な
手先
(
てさき
)
をば腕までも見せるやうに長くさし
伸
(
のば
)
してゐるのを認めた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「
燒餅
(
やきもち
)
燒
(
や
)
くとて
手
(
て
)
を
燒
(
や
)
いてえ、
其
(
そ
)
の
手
(
て
)
でお
釋迦
(
しやか
)
の
團子
(
だんご
)
捏
(
こ
)
ねたあ」と
當
(
あ
)
てつけに
唄
(
うた
)
うてずん/\
行
(
い
)
つて
畢
(
しま
)
ふ。
後
(
うしろ
)
の
群集
(
ぐんしふ
)
はそれに
應
(
おう
)
じて
指
(
ゆび
)
を
啣
(
くは
)
へてぴう/\と
鳴
(
な
)
らしながら
勘次
(
かんじ
)
の
心
(
こゝろ
)
を
苛立
(
いらだ
)
たせた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
夜廻りを
増
(
ふや
)
し、
時候
(
しゆん
)
外れの火の番を置き、
鳶
(
とび
)
の者まで動員して、曲者狩に努めましたが、冬からの
跳梁
(
てうりやう
)
を指を
啣
(
くは
)
へて眺めるばかり、
嘗
(
かつ
)
て曲者の姿を見た者もなく、よしんば見た者があるにしても
銭形平次捕物控:077 八五郎の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこで猫は焼いた魚を口に
啣
(
くは
)
へて、奥様や女中さんの知らないまに、そつと裏口から脱けだしました、そしてどんどんと駈け出しました、ちやうど街
端
(
はづ
)
れの橋の上まできましたときに猫は魚にむかつて
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
旧巣
(
ふるす
)
啣
(
くは
)
へて飛び去りぬ。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
唇
(
くち
)
に
啣
(
くは
)
えた帯留の
金
(
きん
)
——
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
二十三歳の彼の心の中には耳を切つた
和蘭
(
オランダ
)
人が一人、長いパイプを
啣
(
くは
)
へたまま、この憂欝な風景画の上へぢつと鋭い目を注いでゐた。……
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
否
(
いゝえ
)
、まだ
出
(
だ
)
して
上
(
あ
)
げません。……お
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
かなくツちや……でないと
袖
(
そで
)
を
啣
(
くは
)
へたり、
乘
(
の
)
つたり、
惡戲
(
いたづら
)
をして
邪魔
(
じやま
)
なんですもの。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ある日、秋濤はいつものやうに
香
(
にほひ
)
のいゝ
葉巻
(
シガー
)
を
啣
(
くは
)
へて教室に入つて来たが、
平素
(
ふだん
)
にない生真面目な調子で、皆の顔を見た。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
自分はケロリとして煙管を
啣
(
くは
)
へ乍ら、幽かな微笑を女教師の方に向いて洩した。古山もまた煙草を吸ひ初める。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼等
(
かれら
)
は
夜
(
よる
)
垣根
(
かきね
)
の
側
(
そば
)
に
立
(
た
)
つて
指
(
ゆび
)
を
口
(
くち
)
に
啣
(
くは
)
へてぴゆう/\と
劇
(
はげ
)
しく
鳴
(
な
)
らして
見
(
み
)
たり、
戸口
(
とぐち
)
に
近
(
ちか
)
く
竊
(
ひそか
)
に
下駄
(
げた
)
の
齒
(
は
)
の
趾
(
あと
)
を
附
(
つ
)
けて
置
(
お
)
いたり、
勘次
(
かんじ
)
が
眠
(
ねむり
)
に
落
(
お
)
ちようとする
頃
(
ころ
)
假聲
(
こはいろ
)
を
使
(
つか
)
つておつぎを
喚
(
よ
)
んだりした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼等は船が
殊更
(
ことさら
)
絵のやうに美しい海岸の
巌角
(
いはかど
)
なぞを通り過ぎる
折々
(
をり/\
)
啣
(
くは
)
へてゐる大きなパイプを口元から離して、日本の
山水
(
さんすゐ
)
のうつくしい事を自分に語つた。支那には木がなく水は黄色に濁つてゐる。
海洋の旅
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
時雨
(
しぐれ
)
の庭を
塞
(
ふさ
)
いだ障子。時雨の寒さを避ける火鉢。わたしは
紫檀
(
したん
)
の机の前に、一本八銭の葉巻を
啣
(
くは
)
へながら、
一游亭
(
いちいうてい
)
の鶏の
画
(
ゑ
)
を眺めている。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
慌
(
あわ
)
てたの
何
(
なん
)
のではない、が、
烈
(
はげ
)
しく
引張
(
ひつぱ
)
ると
裂
(
さ
)
けさうな
處
(
ところ
)
から、
宥
(
なだ
)
めたが、すかしたが、
其
(
そ
)
の
效
(
かひ
)
さらになし、
口
(
くち
)
へ
啣
(
くは
)
へた。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
でも次の停車場へ来ると、肥つた男は
煙管
(
パイプ
)
を
啣
(
くは
)
へた儘
碌
(
ろく
)
に挨拶もせず
他
(
ほか
)
の
客車
(
はこ
)
へ移つて往つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
自分は
敷島
(
しきしま
)
を
啣
(
くは
)
へて、まだ
仏頂面
(
ぶつちやうづら
)
をしてゐたが、やはりこの絵を見てゐると、落着きのある、
朗
(
ほがらか
)
な
好
(
い
)
い心もちになつて来た。
京都日記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
身を投げて程も無いか、花がけにした
鹿
(
か
)
の子の
切
(
きれ
)
も、
沙魚
(
はぜ
)
の口へ
啣
(
くは
)
え去られないで、
解
(
ほど
)
けて
頸
(
うなじ
)
から頬の処へ、血が流れたようにベッとりとついている。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると、
食意地
(
くひいぢ
)
の張つた鴉が一羽下りて来て、胡桃が欲しさに、瓶の栓を
嘴
(
くちばし
)
に
啣
(
くは
)
へて力一杯引張つた。胡桃の栓がすぽりと抜けると、弾機仕掛の蛇がぬつと鎌首を出した。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
番頭のやつはてれ隠しに、若え者を叱りながら、そこそこ帳場の
格子
(
かうし
)
の中へ這入ると、
仔細
(
しさい
)
らしく
啣
(
くは
)
へ
筆
(
ふで
)
で算盤をぱちぱちやり出しやがつた。
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
疾
(
と
)
く
我
(
わ
)
が
小刀
(
こがたな
)
を
袋
(
ふくろ
)
に
納
(
をさ
)
めて、
頤杖
(
あごづゑ
)
して
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
た
老爺
(
ぢい
)
は、
雪枝
(
ゆきえ
)
の
作品
(
さくひん
)
を
掌
(
て
)
に
据
(
す
)
えて
煙管
(
きせる
)
を
啣
(
くは
)
えた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
暫くすると、仲間は
各自
(
てんで
)
に酔ひどれを
啣
(
くは
)
へて巣のなかへ引張り込み、丁寧に寝かしてやつた。
酔
(
よひ
)
が
醒
(
さ
)
めると、
件
(
くだん
)
の蟻はこそ/\這ひ出して直ぐ
例
(
いつも
)
の仕事にかゝつたさうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そこにやはり自動車が一台、僕のタクシイの前を走つてゐた。僕は巻煙草を
啣
(
くは
)
へながら、勿論その車に気もとめなかつた。
凶
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
……あはれな
犠牲
(
いけにえ
)
の
婦人
(
をんな
)
も、
唯
(
たゞ
)
恁
(
か
)
う
申
(
まを
)
したばかりでは、
夫
(
をつと
)
も
心
(
こゝろ
)
に
疑
(
うたが
)
ひませう……
今
(
いま
)
其
(
そ
)
の
印
(
しるし
)
を、と
言
(
い
)
ふてな、
色
(
いろ
)
は
褪
(
あ
)
せたが、
可愛
(
かあい
)
い
唇
(
くちびる
)
を
動
(
うご
)
かすと、
白歯
(
しらは
)
に
啣
(
くは
)
えたものがある。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
啣
漢検1級
部首:⼝
11画
“啣”を含む語句
横啣
啣楊枝
引啣
啣煙管
相啣
排氣啣筒