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一游亭
時雨の庭を
塞いだ障子。時雨の寒さを避ける火鉢。わたしは
紫檀の机の前に、一本八銭の葉巻を
啣へながら、
一游亭の鶏の
画を眺めている。
大正十二年八月、僕は
一游亭と鎌倉へ
行き、
平野屋別荘の客となつた。僕等の座敷の
軒先はずつと
藤棚になつてゐる。その又藤棚の葉の
間にはちらほら紫の花が見えた。
一游亭と鎌倉より帰る。
久米、
田中、
菅、
成瀬、
武川など停車場へ見送りに
来る。一時ごろ
新橋着。直ちに一游亭とタクシイを
駆り、
聖路加病院に入院中の
遠藤古原草を見舞ふ。