てい)” の例文
ものすべて腐爛美ふらんびていして来たのである。現前の逸楽に世をあげて酔いしれている。——どうにもならないもの。それが今である。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
〔評〕慶應けいおう三年九月、山内容堂ようだう公は寺村左膳さぜん、後藤しやう次郎を以て使となし、書を幕府にていす。曰ふ、中古以くわん政刑せいけい武門に出づ。
コン吉は今日こそは正当まともな昼飯にありつけると、心情いささか駘蕩たいとうたる趣きをていしかけて来たところ、アランベエル商会は、その町の入口で
すると、つぎに、その萩乃の表情かおに、急激な変化がきた。眼はうるみをおびて輝き、豊頬ほうきょうくれないていして、ホーッ! と、肩をすぼめて長い溜息。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
室中しつちゆう以上いじやうは、なに見解けんげていしないわけかないので、やむをさまらないところを、わざとをさまつたやう取繕とりつくろつた、其場そのばかぎりの挨拶あいさつであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「こんなことは滅多めったにないことだ。おお、ここに何か落ちているぞ。時計だ。懐中時計でメタルがついている。剣道優賞牌ゆうしょうはい、黒田選手にていす——」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてそのつぼみのまさにほころびんとする刹那せつなのものは、まるふくらみ、今にもポンと音してけなんとする姿をていしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
とくに売春婦を選んだような観をていしたのだといえば、一応説明にならないことはないが、ジャックは、ただ相手の娼婦を殺しただけでは満足せず
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
郊外の林地りんち田圃でんぽに突入する処の、市街ともつかず宿駅しゅくえきともつかず、一種の生活と一種の自然とを配合して一種の光景をていしおる場処を描写することが
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その皮膚の色は銅色をていし、あちこちからうみが流れていた。顱頂部ろちょうぶにある一掴みの髪が、紙のように白く変色しているのも、悪病のさせた業であろう。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いまつばかりなり。すなはなん貴下きかもとほうず、稻妻いなづまさひはひせずして、貴下きかこのしよていするをば、大佐たいさよ、はかりごとめぐらして吾等われら急難きふなんすくたまへ。
毎日まいにち透徹とうてつしたそらをぢり/\ときしりながら高熱かうねつ放射はうしやしつゝあつたあまりにながひる時間じかんまうとして、そらからさうして地上ちじやうすべてがやうや變調へんてうていした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのときにはたしかに精神せいしん異状いじょうていしておった。なにを話してみようもなく、花前は口をきかなかった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あだか陸上りくじようける洪水こうずいごとかんていするので山津浪やまつなみばれるようになつたものであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
拝啓はいけい仕候つかまつりそうろうのぶれば過日瘠我慢之説やせがまんのせつと題したる草稿そうこう一冊をていし候。あるいは御一読も被成下なしくだされ候哉そうろうや
これ極端きよくたん誇張こてうする結果けつくわいきほ異形いげうさうていするので、これわたしのばけものゝ定義ていぎである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
かくてはその災害さいがいを待つにおなじくして本意ほんいに非ざれば、今より毎年寸志すんしまでの菲品ひひんていすべしとて、その後はぼんくれ衣物いぶつ金幣きんへい、或は予が特に嗜好しこうするところの数種をえておくられたり。
おお美わしのおとめよ、と賽銭さいせんに、二百金、現に三百金ほどを包んで、袖にていするものさえある。が、お誓はいつも、そのままお帳場へ持って下って、おかみさんの前で、こんなもの。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、そのバタの光沢と金箔きんぱく、銀箔及び五色の色に映ずるところの幾千万の燈明とうみょうとが互いに相照すその美しさは、ほとんどこの世の物とも思えないほどの壮観そうかん及び美観をていして居るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
しかし表構えはただ「久兵衛」と書いてあるのみ、寿司屋ともなんとも表現していない。なに知らぬ者にはちょっと飛び込みにくい様相ようそうていし、遅疑逡巡ちぎしゅんじゅんついには素通りする者も少なくなかろう。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
ト僕ガ言つてはヤツパリ広目屋臭ひろめやくさい、おい悪言あくげんていするこれは前駆ぜんくさ、齷齪あくせくするばかりが平民へいみんの能でもないから、今一段の風流ふうりう加味かみしたまへたゞ風流ふうりうとは墨斗やたて短冊たんざく瓢箪へうたんいひにあらず(十五日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
文鳥のような鳥は鼻孔がむしろ嘴の根元の隆起部に大きく露出していてまるで違った景観をていしている。ウソの黒頭巾ずきんの頭は角刈のようにさっと平らにそげている。これはややクマタカじみている。
木彫ウソを作った時 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
一坪のくりやは活気をていしていわしを焼く匂いが僕の生唾なまつばさそった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
本官において大いに同情をていする。
あのとき、すぐに宮内がけつけて引き分けてくれたからこそ、かれの頭が多少のでこぼこをていしただけですんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
教場のしくじりが生徒にどんな影響えいきょうあたえて、その影響が校長や教頭にどんな反応をていするかまるで無頓着むとんじゃくであった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もっともその土間には、少年の背がかくれるほどのたけの長い雑草ざっそうがおいしげっていて、荒涼こうりょうたる光景をていしていた。
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
英色にられるか、仏色を帯びるか、独色をていするか、つまり将来の対トルコ関係がいま決定されるといっていい。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
球根もきわめて大きく、鱗片りんぺんも大形で肉厚く黄色をていし、食用ユリとしても上位をむるものといってよろしい。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
洪水こうずゐつたあとは、丁度ちやうど過激くわげき精神せいしん疲勞ひらうからにはか老衰らうすゐしたものごとく、半死はんし状態じやうたいていした草木さうもくみな白髮はくはつへんじてちからない葉先はさき秋風あきかぜなびかされた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
緑蔭に紅葉に、さまざまの光景をていするその妙はちょっと西国地方また東北の者には解しかねるのである。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しかもこの鎔岩ようがん流動りゆうどうして種々しゆ/″\奇觀きかんていするので、觀光客かんこうきやくえずひきつけてゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その休みの時分に寺に行って見ると、実に驚くばかりの有様をていして居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その上に新書生が入門するとき先生束脩そくしゅうを納めて同時に塾長へもきん貳朱にしゅを[#「貳朱を」は底本では「※朱を」]ていすと規則があるから、一箇月に入門生が三人あれば塾長には一分いちぶ二朱の収入
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また婦人の方よりかくと知りつつ争つてこびを捧げ、色をていする。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
期せずして、深夜の長屋会議の光景をていしている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
こういう特異な人物は、そう沢山にあろうはずはないが、どんな乱麻らんま暗澹あんたんていしている時流の中でも、かならずどこかにいることはいるのである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花は芍薬に比べるとすこぶる貧弱だが、その果実はみごとなもので、じゅくしてけると、その内面が真赤色しんせきしょくていしており、きわめて美しい特徴とくちょうあらわしている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
いずれもその生殖器が斬りかれ、えぐり出され、そこから手を挿入そうにゅうして大腸、内部生殖器官、その他の臓物ぞうもつが引き出されてあって、まことに正視に耐えない光景をていしているのである。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
阿蘇あそはこの百年ひやくねんぐらゐのあひだ平均へいきん十一年目じゆういちねんめ活動かつどう繰返くりかへしてゐるが、それはそのみつつのいけのいづれかゞ活氣かつきていするにるものである。しかしながら、まれにはほか場所ばしよからすこともある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
煉瓦れんがなどが、ボールほどの大きさにくだかれ、天井裏てんじょううら露出ろしゅつし、火焔かえんに焦げ、地獄のような形相ぎょうそうていしていたが、その他の町では、土嚢どのうの山と防空壕の建札たてふだと高射砲陣地がものものしいだけで
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その玉子を四つずつ左右のたもとへ入れて、例の赤手拭あかてぬぐいかたへ乗せて、懐手ふところでをしながら、枡屋ますや楷子段はしごだんを登って山嵐の座敷ざしきの障子をあけると、おい有望有望と韋駄天いだてんのような顔は急に活気をていした。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんと、糠河豚ぬかふぐを、紅葉先生こうえふせんせい土産みやげていしたをとこがある。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何となれば、御着ごちゃくの小寺もまた、村重と呼応こおうして、現在、あきらかに逆心ぎゃくしんを示しておるものを、何で、官兵衛をさし向けて、今更、村重に意見をていそうや
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああア、そこで新学期の始めに一つ、クラス全体に苦言くげんていしておく。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこで、士官連が是公に向って、今夜の会は大成功であるとか、非常にさかんであったとか、口々に賛辞をていしたものだから、是公はやむをえず、大声たいせいを振りしぼって gentlemenゼントルメン! と叫んだ。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんら精神的反応をていさずに報告はいつもネガチヴだった。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
深刻な苦労を経て来たその筋骨は、たとえば岩礁がんしょうえているまつか、風雪に痛めつけられて来た矮梅わいばいの如き感じで、強くはあるがもう人間の老成ろうせいていしていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驚異軍艦から左の方へ千メートルばかりはなれたところの海面か、どういうわけか、むくむくと盛りあがってきて、それはあたかも、小さい爆雷ばくらいが海中かなり深いところで爆発したような光景をていした。
ずいぶん危険な現象をていするに至るのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)