きち)” の例文
「ナアニ、訳もないこってさあ」ゴリラは小鼻をヒクヒクさせながら、舌なめずりをして、「きちの野郎、うまくやってくれましたよ。 ...
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
薩軍の池辺いけべきちろうは、試みに、勧降状かんこうじょうを矢にむすんで、諸所の防寨ぼうさいに射込ませてみたが、ひとりの城兵も、降伏して出て来なかった。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あたしゃみじかいから、どこへくにしても、とてもあるいちゃかれない。千きちつぁん、ぐに駕籠かごんでもらおうじゃないか」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
面白おもしろかつたり、つらかつたり………しかし女にやア不自由しねえよ。」きちさんは鳥渡ちよつと長吉の顔を見て、「ちやうさん、君は遊ぶのかい。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
調とゝのへ來り左右とかくもの事はいはひ直さばきよきちへんずべしと申すゝめ兩人して酒宴しゆえんもよほせしが靱負ゆきへは元よりすきさけゆゑ主が氣轉きてんあつがんに氣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
伯父をぢさんも、きちさんも、友伯父ともをぢさんも、みんなおさるさんのわきまして、がけしたにあるふる石碑せきひ文字もじみました。それには
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しかし、トムきちが、真物ほんものどおりの相場そうばで、正直しょうじきったとると、たちまち、主人しゅじんかお不機嫌ふきげんわって、おこしました。
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「めっぽう寒いじゃねエか。故国うちにいりや、葱鮪ねぎまで一ぺえてえとこだ。きち、てめえアまたいい物引っかけていやがるじゃねえか」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
彼はきたない仕事着を着て石の上に腰をかけていた。前には人夫頭のきちが恐ろしい顔をして立っていた。徳市は眼をこすった。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
女房はおきちといって三十七八、こいつは商売人上がりらしい代物しろものだ。おしゃれでおしゃべりで、お先っ走りだが、人間はあんまり悧巧りこうじゃねえ。
きち様と呼ばせらるゝ秘蔵の嬢様にやさしげなぬれを仕掛け、鉋屑かんなくずに墨さしおもいわせでもしたるか、とう/\そゝのかしてとんでもなき穴掘り仕事
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
舟子「旦那、心配しなさるな、わしらが二人附いていりゃアどんな風でも大丈夫でがす、おかを行くよりも沖の方がいくらいで、やいきちしっかりしろ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まへ新網しんあみかへるがいやなら此家こゝ死場しにばめてほねらなきやならないよ、しつかりつておれとふくめられて、きちや/\とれよりの丹精たんせいいまあぶらひきに
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
旦那様、貴下あなた桔梗ききょうの花をいでる処を御覧じゃりましたという、きちさんという植木屋の女房かみさんでございます。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はる、こうろう、も、それから、唐人とうじんきちも、それから青い目をした異人さんという歌も、みんなあたしが教えたのよ。きょうはこれからみんなでお寺に集ってお稽古けいこ
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
きちで名高いハリスの狡猾こうかつと、幕府役人のまぬけさに基づく、日本にとっての大失敗であった。
明治の五十銭銀貨 (新字新仮名) / 服部之総(著)
ことに欽吾きんごは多病である。実の娘に婿むこを取って、かかる気がないとも限らぬ。折々に、解いて見ろと、わざとらしく結ぶ辻占つじうらがあたればいつもきちである。いては事を仕損ずる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お妾さんの品格とはどんなものにやと、蔭で舌出す髪結のおきちも盆暮の祝儀物、さては芝居のお供に外れじと、喋々しきお世辞にお艶を嬉しがらす奥の手は、いつも丸三郎の噂なり。
野路の菊 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
が、悪い事にはこの吉蔵が博徒ばくとの親分で、昔「痩馬やせうまきち」と名乗って売り出してから、今では「今戸の親分」で通る広い顔になっている。しかもお由はその吉蔵親分の恋女房であった。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
細君が指輪ゆびわをなくしたので、此頃勝手元の手伝てつだいに来る隣字となりあざのおすずに頼み、きちさんに見てもらったら、母家おもやいぬい方角ほうがく高い処にのって居る、三日みっか稲荷様いなりさまを信心すると出て来る、と云うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
きちだの三、四人は、もうおよいで、さいかちの木の下まで行ってっていた。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
斯う見込を附たから打附ぶっつけに先ず築地のきちの所へ行きました
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
となりのびつこのとんきち
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
それなら、きち
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
きちは今も
別後 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
きちさんとふのは地方町ぢかたまちの小学校時代の友達で、理髪師とこやをしてゐる山谷通さんやどほりの親爺おやぢの店で、れまで長吉ちやうきちの髪をかつてくれた若衆わかいしゆである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「あれだ。おもしれえはどくだぜ。千きちいもうとのおせんをえさにして、若旦那わかだんなから、二十五りょうという大金たいきんをせしめやがったんだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そして、トムきちが、はっとおもったしゅんかんに、いとゆびからはなれて、曲玉まがたまは、なみなかちてまれてしまいました。
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
東助が出てみると、目明し万吉の女房のおきちであった。何か心配事がありそうに、悄々しおしおと通されて一八郎の前へ坐った。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに主人新三郎の遠縁に当る美しい中年増のおきち、外に下女やら庭掃きやら、ほんの五六人が鳴りを鎮めて、主人夫婦の帰りを待っておりました。
わたくしめはきちと申す不束ふつつかな田舎者、仕合しあわせに御縁の端につながりました上は何卒なにとぞ末長く御眼おめかけられて御不勝ごふしょうながら真実しんみの妹ともおぼしめされて下さりませと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それからとうさんは伯父をぢさんやきちさんや友伯父ともをぢさんと一緒いつしよ東京行とうきやうゆき馬車ばしやりまして、ながなが中仙道なかせんだう街道かいだうひるよるりつゞけにつてきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かくよろこんでおわることではいからとふに、本當ほんたうか、本當ほんたうか、きちあきれて、うそではいか串戯じようだんではいか、其樣そんことつておどかしてれなくても
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「駄目だ。殺しても何にもならない。よし、いま一ツの手段を取らう。ごん! きち! くま! 一件だ。」
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかるに、ハリスのもとにおきちが通う日が来ても、汽船は太平洋を渡らなかった。
きちだの三四人はもう泳いで、さいかちの木の下まで行って待っていました。
風の又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
りやうに賣渡しければきち三郎大いによろこび是にて藥など調とゝのへ醫師をもかへて其身もそばを放れず看病かんびやうおこたりなかりけるさてまた此與兵衞このよへゑ平生へいぜい金屋かなやへも心易く出入なすにより彼の吉三郎より調とゝのへたる二品を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とんきちとんとんなにしてる
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
きち
のきばすずめ (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
といって、トムきちは、このまちって、ごく自分じぶんちいさい時分じぶんにいたことのあるまちして、旅立たびだちをしたのであります。
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「平次郎と申しまして、柳島の御造営に働いている大工でございます。わたくしは、平次郎の女房で、きちといいまする」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おせんがした菊之丞きくのじょうは、江戸中えどじゅう人気にんき背負せおってった、役者やくしゃ菊之丞きくのじょうではなくて、かつてのおさななじみ、王子おうじきちちゃんそのひとだったのだから。——
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
舞台の奥から拍子木ひやうしぎおとが長いを置きながら、それでも次第しだいに近くきこえて来る。長吉ちやうきち窮屈きうくつこしをかけたあかりの窓から立上たちあがる。するときちさんは
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
金太はの中に小刀の柄を返して見せました。裏には丸にきちの字の焼印がマザマザと捺してあるのです。
なんつてもとうさんはまだ幼少ちひさかつたものですから、友伯父ともをぢさんやきちさんのやうにはあるけませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
船頭のきちというのはもう五十過ぎて、船頭の年寄なぞというものは客が喜ばないもんでありますが、この人は何もそうあせって魚をむやみにろうというのではなし
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたしうしてもうと決心けつしんしてるのだからそれは折角せつかくだけれどきかれないよとふに、きちなみだつめて、おきやうさん後生ごしやうだから此肩こゝはなしておくんなさい。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「発破だぞ、発破だぞ。」とぺきちやみんなさけんだ。しゅっこは、手をふってそれをとめた。庄助は、きせるの火を、しずかにそれへうつした。うしろにた一人は、すぐ水に入って、あみをかまえた。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さゝれしにぞきち三郎は彌々いよ/\かほを赤うして差俯向さしうつむきたり大岡殿おほをかどの大概おほよそこれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
となりの子供こどももとんきち
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)