出入でい)” の例文
このむらに、もう一人ひとり金持かねもちがありました。そのおとこは、むらのものが、一ぽう金持かねもちのうちにばかり出入でいりするのをねたましくおもいました。
時計のない村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
れを種々さま/″\おもふてるととゝさんだとてわたしだとてまごなりなりのかほたいは當然あたりまへなれど、あんまりうるさく出入でいりをしてはとひかへられて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたくしは不思議に思った。しかし私は先生を研究する気でそのうち出入でいりをするのではなかった。私はただそのままにして打ち過ぎた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれその當時たうじしなうちへはとなりづかりといふので出入でいつた。ひとつにはかたちづくつてたおしな姿すがたたい所爲せゐでもあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
親類というものからも、出入でいりというものからも、お手柄でございましたという讃詞さんじと、張込んだ祝いものがくる。そこで、母の勢力が増して強くなった。
道子みちこはアパートに出入でいりする仕出屋しだしやばあさんのすゝめるがまゝ、戦後せんご浅草あさくさ上野辺うへのへん裏町うらまち散在さんざいしてゐるあや旅館りよくわん料理屋れうりや出入でいりしておきやくりはじめた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
道理だうりこそ、出入でいりをひとかくしてかたちせぬと、一晩あるばんさんが注進顏ちうしんがほで、てがららしくつたことおぼえてる。……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さわぎはだんだん大きくなって、下宿げしゅく人間にんげんはひとりのこらず、そのうえ出入でいりの商人しょうにんたちまでがぼくの部屋へやにはいりこんで、実験じっけん機械きかい薬品やくひんをいじりはじめたんだ
大親分も好いが、縄張なはばりが広くなれば出入でいりも多くなる道理で、人に立てられゝば人の苦労も背負つてやらねばならない。こゝに常陸の国に藤原玄明はるあきといふ者があつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
中に江戸屋敷へ出入でいる職人とか申す者の話は、少し心配になりますから、お目をさましてくださいまし
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
千種屋ちぐさや出入でいりの大町人おほちやうにんそろひもそろつて出來でき病人びやうにんのことを、さま/″\にかんがへてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
身元みもと長谷部某はせべなにがし出入でいりの徒士かぢの、たしか二番目ばんめむすめだったかとおぼえてります。
土手は南北百六けん、三ツのくるわにわかれ、八もん石築いしづき出入でいりをまもられている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らの言葉で出入でいりというが、百本二百本の長脇差が、縦横に乱れる喧嘩の場を、くぐって来た奴に相違ない。それも一回や二回ではない。幾度となく潜って来た奴だ。それは自然と様子で知れる。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
にんともに、老人ろうじんうち時々ときどき出入でいりしているという事実じじつがある。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
一郎の出入でいりをとめているのを、知らないわけじゃなかろう。
喪服 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
あるとき、出入でいりの商人しょうにんがきて、いいました。
出入でいりの商人もすこしは出入りしたね」
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
みづから探し求めて出入でいりする
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それは、方々ほうぼうひと出入でいりするところへいって、いろいろのひとに、おまえさんのにいさんのはなしをしていてみなければ、わかりっこはないよ。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くちるきおひとこれをきて、さてもひねくれしおんなかな、いまもし學士がくしにありて札幌さつぽろにもゆかず以前いぜんとほなまやさしく出入でいりをなさば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
逃出にげだすとときに、わがへの出入でいりにも、硝子がらす瀬戸せとものの缺片かけら折釘をれくぎ怪我けがをしない注意ちういであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
先生と奥さんの間に起った波瀾はらんが、大したものでない事はこれでもわかった。それがまた滅多めったに起る現象でなかった事も、その後絶えず出入でいりをして来た私にはほぼ推察ができた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あづけたあづからないのあらそひになつたところが、出入でいりの車力しやりき仕事師しごとし多勢おほぜいあつまつてて、此奴こいつ騙取かたりちがひないとふので、ポカ/\なぐつておもて突出つきだしたが、証拠しようこがないから表向訴おもてむきうつたへることが出来できない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
汽車でも電車でも出入でいりの不便な貧しい場末の町に引込んで秋雨を聴きつつ老い行く心はどんなであろう……何の気なしに思いつくと、自分は今までは唯淋しいとばかり見ていた場末の町の心持に
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
此処ここ出入でいりする人人ひとびと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
みなとほうでは、出入でいりするふねふえおとが、にぶこえていました。あかるい、あめいろそらに、くろけむりあとがわずかにただよっている。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
まへとゝさんはうまだねへとはれて、のりやらき子心こゞころにもかほあからめるしほらしさ、出入でいりの貸座敷いゑ祕藏息子ひざうむすこ寮住居りようずまひ華族くわぞくさまを氣取きどりて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
牛込築土前うしごめつくどまへの、大勝棟梁だいかつとうりやうのうちへ出入でいりをする、一寸ちよつと使つかへる、岩次いはじつて、女房持にようばうもち小兒こども二人ふたりあるのがた。む、ふ、つ、道樂だうらくすこしもないが、たゞ性來しやうらい釣好つりずきであつた。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
だんだんこのみなとに、ふねがたくさんはいってきて、方々ほうぼう人々ひとびと出入でいりするようになりますと、まちもにぎやかになりますかわり、らしづらくなりますよ。
船でついた町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此方こちらから強請ねだつわけではなけれど支度したくまで先方さき調とゝのへてはゞ御前おまへ戀女房こひによぼうわたし父樣とゝさん遠慮ゑんりよしてのみは出入でいりをせぬといふもいさむさんの身分みぶんおそれてゞは
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くちびるしろ附着くツついて、出入でいりを附狙つけねらつてたとのこと
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのもりは、あるおおきな屋敷やしきの一になっていたのです。やぶれた垣根かきねからは、いぬばかりでなく、近所きんじょ人間にんげん子供こどもたちも、ときどき、出入でいりをしました。
森の中の犬ころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
くらゐ方々かた/″\身分みぶんのある奧樣おくさまがたとの御交際おつきあひもして、かく原田はらだつま名告なのつとほるには氣骨きぼねれることもあらう、女子をんなどもの使つかひやう出入でいりのもの行渡ゆきわた
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あるのこと、ふるくから、この病院びょういん出入でいりして、炊事婦すいじふ看護婦かんごふと、顔見知かおみしりという老婆ろうばが、ふいに、おたけのもとへやってきて、まえ約束やくそくがあるのだから
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
八つくちをふさぎて大人おとな姿すがたにこしらへられしより二十二の今日けふまでに、下宿屋住居げしゆくやずまゐ半分はんぶんつもりても出入でいり三ねんはたしかに世話せわをうけ、伯父おぢ勝義かつよし性質せいしつむづかしいところから
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
毎日まいにちのように、勝手かってもとへごようきにくる、出入でいりの商人しょうにん暑中伺しょちゅううかがいにってきたのであって、だれがいたのかしれないが、わかおんなひとが、晩方ばんがたまちあるいているいてありました。
遠方の母 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あんまり、あんたはむしがよすぎる、このかね出入でいりのせわしいれに、自分じぶん不注意ふちゅういからかねをなくしたといって、またせというのは。こちらもいそがしいので、いちいちたのみをきいていられない。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)