)” の例文
おじいさんは、来年らいねんはるになるのをったのです。ついに、そのはるがきました。すると、常夏とこなつは、ぐんぐんとおおきくなりました。
花と人間の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
知れてゐたならば、少しでも知れてゐたならば、さうした心はざす余裕もなかつたであらう。かう思つて百合子はしたゝかに泣いた。
百合子 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
やまがたといひして、土地とち樣子ようすからその性質せいしつべて、そこに青々あを/\した野菜やさいいろを、印象深いんしようぶかくつかんで、しめしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
八月の末から九月になると、日に日に温度がのぼりゆき、平和湖の水面に春らしい風が吹けば、木々のもなんとなく活気づいて見える。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それが年月としつきるにしたがつていしくづれたり、そのなかたねちてしたりして、つかうへ樹木じゆもくしげつてたのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
かんがえてみると、うれしいどころではありません。じぶんがはじめてを出した森のいえからはなれるのは、しみじみかなしいことでした。
木々のもふく春に向いて、嬰児あかごの手足は、日ごとにまろくなって行った。父の血をうけて、この子も意志強い容貌かおだちしていた。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
簡易の一生を送れる王、イギリスのアルリーゴのかしこにひとり坐せるを見よ、かれの枝にはまされるあり 一三〇—一三二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ふゆ何事なにごともなく北風きたかぜさむくにつた。やまうへあきらかにしたまだらゆき次第しだいちて、あとからあをいろ一度いちどいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
にわ若草わかくさ一晩ひとばんのうちにびるようなあたたかいはるよいながらにかなしいおもいは、ちょうどそのままのように袖子そでこちいさなむねをなやましくした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ひんと心の惱みとにきたへぬかれた今(まだまつたくはぬけ切らぬけれども)やうやくある落着おちつきが私の心にを出しかけました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
やま陽炎かげらふえてきます。ところによつて時季じきはむろんちがひますが、東京附近とうきようふきんでは三月さんがつ中旬頃ちゆうじゆんごろから五月頃ごがつごろまでに、します。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
何やら物のは出て居りますが、二三日前の雨で畑の土はよくならされ、その上へ眞一文字に附いた草鞋わらぢの跡は、點々として描いたやうに鮮明です。
翌日はみやげにすると云うて父が秘蔵ひぞうのシャボテンのをかいで、一同土肥君の宅に押しかける途中、小川で水泳して
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いました。するとかきはずんずんのびて、大きな木になって、えだが出て、しげって、やがてはなきました。
猿かに合戦 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こんなことを思い思いこのときも、まだが出ないかと思って、たねのまいてある地べたに鼻をくっつけて調べていた。
鶴見少年にも思想らしいものが、内からこうひらいてぐんでいる。そこに見られるのは不満の穎割葉かいわればである。かれはいつのまにか生意気になってきた。
針葉樹しんえふじゆるやうではなく、はるあめ數次しば/\やはらかにうるほせばつひにはこそつぱいかは何處どこからかしろつぽいいて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それは、若竹わかたけが、あちこちのそらに、かぼそく、ういういしい緑色みどりいろをのばしている初夏しょかのひるで、松林まつばやしでは松蝉まつぜみが、ジイジイジイイといていました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
わたしはこう云う話の中にいつか彼女の乳首ちちくびの大きくなり出したのに気づいていた。それはちょうどキャベツののほぐれかかったのに近いものだった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのきびしい冬がぎますと、まずやなぎ温和おとなしく光り、沙漠さばくには砂糖水さとうみずのような陽炎かげろう徘徊はいかいいたしまする。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なつかしい日本にっぽんにかえりついたのは、もう木々きぎのわかが、みどりのにかわる五がつのはじめのことでした。
そうして、不思議なことであるが、雪子を失って以来砂漠のようになってしまったと自分でも思っていた私の心に、再び異性に対する恋をぐませたのである。
秘密 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
それは山海さんかいの珍味づくしだった。車えびの天ぷら。真珠貝の吸物、牡牛おうしの舌の塩漬しおづけ羊肉ひつじにくのあぶり焼、茶ののおひたし、松茸まつたけ松葉焼まつばやき……いや、もうよそう。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そういう自分達の、まして、まだ親らしい自覚もぐまないうちに親になって途方にくれて居るなかで、いつか成人して仕舞ったむす子の生命力の強さに驚かれる。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
都て不快な衝動しようどうあたへたにかゝはらず、しかも心には何んといふことは無く爽快そうくわいな氣が通ツて、例へば重い石か何んぞにせられてゐた草のが、不圖ふといしを除かれて
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
木々には、大きながもえだし、牧草地ぼくそうちには、いちめんに春の花がきだしていました。ポプラの木の、ほっそりと長くれた枝は、ゆらゆらとゆらめいていました。
氏はまた蒲公英たんぽぽ少しと、ふきおくとを採ってくれた。双方そうほう共に苦いが、蕗の芽はことに苦い。しかしいずれもごく少許しょうきょを味噌と共に味わえば、酒客好しゅかくごのみのものであった。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
朝柏あさがしはうる八河辺はかはべ小竹しぬのしぬびて宿ればいめに見えけり 〔巻十一・二七五四〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その中へ、ちょうどあしのがはえ出るように、二人の神さまがお生まれになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
私は白いくさをかみながら立ち上つた。ふと、私はそのくさが、去年きよねんあき私達わたしたちすわつてみつけたときのくさ相違さうゐないとかんがへた。それが一を落してまたを出した。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
向日葵ひまはり向日葵ひまはり百日紅ひやくじつこう昨日きのふ今日けふも、あつさはありかずかぞへて、麻野あさの萱原かやはら青薄あをすゝき刈萱かるかやあきちかきにも、くさいきれくもるまで、たちおほ旱雲ひでりぐもおそろしく、一里塚いちりづかおにはあらずや
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
どきといって、私のようなからだには、入梅頃から新緑へかけての気候が一番いけないのですが、どうやらその時季も無事に通り越して、待ち切っていた夏休暇も迎えることができました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
水母くらげのようにふわふわ漂つている時に、泥の中からあしを出して來るような勢いの物によつて御出現になつた神樣は、ウマシアシカビヒコヂの神といい、次にアメノトコタチの神といいました。
あさみどりぶくくぬぎの木々の間に櫻は乏しちらひそめつつ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
苗床のなかにめぐむ憂ひの望みの芽
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
またわかやぎの新青葉にひあをばえだぐみて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
あめ又病むときく加餐かさんせよ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
二葉ふたばはな
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
菊のをとり
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
しかし、いくらをもんでも、その気候きこうとならなければ、なかなか、し、くものでないことも、っていました。だから
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひるがへつて考へて見なければならない余地はないか否か。かれ等は少くとも犬死ではなかつた。すぐれたいたには相違なかつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
正月を越え、やがて桃李とうりや花が色づくと、街道の庶民は、百年でもこのままな無事がつづくように思って、欠伸あくびしていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天は浅黄色あさぎいろに晴れて綿雲わたぐもが夢のように浮かぶ。忍苦にんくの冬にたえてきた木々がいっせいにみどりをふきだす。土をわって草がかれんな花をつけた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
皆樣みなさまはしかしふゆあひだにもえだをよくると落葉樹らくようじゆでも常緑樹じようりよくじゆでも、それ/″\をもつてゐるのがえるはずです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
それがをふくのはこの春のことであろう。早ざきのものでも冬の終わるのを待たなければならなかった。これからつづいておいおい芽を出しかけている。
鯉はおどる。はすを吹く、芝生はしだいに青くなる、辛夷こぶしちた。謎の女はそんな事に頓着とんじゃくはない。日となく夜となく欽吾の幽霊で苦しめられている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
錢形平次は鎌首かまくびをもたげました。相變らず日向に不景氣な植木鉢を竝べて、物のをなつかしんでゐたのです。
曳馬野ひくまの——萬葉集まんにようしゆうなどにえてゐる土地とちで、濱松はまゝつからきたへかけての平野へいや地方ちほう——のあたらしくてゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
早い萱草かんぞうやつめくさのにはもう黄金きんいろのちいさな澱粉でんぷんつぶがつうつういたりしずんだりしています。
イーハトーボ農学校の春 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)