旦那樣だんなさま)” の例文
新字:旦那様
たしか左樣さうつてりまするけれどいますこしもうらことをいたしません、なるほど此話このはなしをかしてくださらぬが旦那樣だんなさま價値しんしやう
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝ、いかい難儀なんぎをして、おいでなさるさきの旦那樣だんなさま御大病ごたいびやうさうな、たゞときならはしうへも、欄干らんかんはうけておとほりなさらうのに、おいたはしい。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
段々御やつれなされてと常にも似ずしほるゝに、それは/\知ぬ事とて御見舞もせなむだがさぞまあ旦那樣だんなさまは御心配、御可哀想に早く御全快おさせもふしたい
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
とき丁度ちやうど時過じすぎ。いつもなら院長ゐんちやう自分じぶんへやからへやへとあるいてゐると、ダリユシカが、麥酒ビール旦那樣だんなさま如何いかゞですか、と刻限こくげん戸外こぐわいしづか晴渡はれわたつた天氣てんきである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
變て扨は私をなぐさみ者にして女房にもせず金も出さずお前はかまはぬ了簡れうけん成ん其心ならば私も此儘このまゝにはすまがたとても生ては居られねば此通り旦那樣だんなさまに申上お前の首へも繩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二日ふつかゆきつただけ何事なにごともなくぎた。三日目みつかめ日暮ひくれ下女げぢよ使つかひて、御閑おひまならば、旦那樣だんなさまおくさまと、それから若旦那樣わかだんなさま是非ぜひ今晩こんばん御遊おあそびにらつしやるやうにとつてかへつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此事このこと旦那樣だんなさまにも奧樣おくさまにも毎度いくたび申上まうしあげて、何卒どうか今夜こんや御出帆ごしゆつぱんけは御見合おみあはくださいと御願おねがまうしたのですが、御兩方おふたりともたゞわらつて「亞尼アンニー其樣そんな心配しんぱいするにはおよばないよ。」とおほせあるばかり
霜夜しもよふけたるまくらもとにくとかぜつまひまよりりて障子しようじかみのかさこそとおとするもあはれにさびしき旦那樣だんなさま御留守おんるす
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
旦那樣だんなさま畫師ゑかきぢやげにござりまして、ちよつくら、はあ、おかゝりたいとまをしますでござります。」
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此間このあひだこしらえた旦那樣だんなさま外套ぐわいたうでもられやうものなら、それこそさわぎで御座ございましたね。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
旦那樣だんなさま、もうビールを召上めしあがります時分じぶんでは御座ござりませんか。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
きく奴等やつらなり無刀流の達人たつじん後藤半四郎秀國が相手なるぞいざ出來いできた片端かたはしよりひねり殺して呉れんと大音聲によばはるにぞつれの町人はおのれが仕事の邪魔じやまになりてはならずと思ひしかば若々もし/\旦那樣だんなさまだれも何とも申は致しません貴方に對して過言くわごん申者の有べきやと種々さま/″\なだすかしサア/\を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたし仕樣しやうわるかつたに相違無さうゐな旦那樣だんなさまのおこゝろ何時いつとはしにぐれさせましたはわたしこゝろかたちがつたゆゑいまではつく/″\後悔こうくわいなみだがこぼれまする。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
てゝくにはしのびぬけれども、鎭守府ちんじゆふ旦那樣だんなさまが、呼吸いきのあるうち一目ひとめひたい、わたしこゝろさつしておくれ、とかういふこゝろく、たうげまへひかへてるし、ぢいや!
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふほどのひと愛想あいそをしやうでもなく、旦那樣だんなさま御同僚ごどうれうなどがおいでになつた時分じぶん御馳走ごちそうはすべて旦那だんなさまのお指圖さしづいうちは手出てだしをもしたことはなく
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ところ旦那樣だんなさま別嬪べつぴんさんが、うやつて、手足てあし白々しろ/″\座敷ざしきなかすゞんでなさいます、周圍まはりを、ぐる/\と……とこからつぎ簀戸よしどはううらから表二階おもてにかいはうと、横肥よこぶとりにふとつた
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
番町ばんちやう旦那樣だんなさまいでくよりゆき兄樣にいさんがお見舞みまひくだされたとへど、かほよこにして振向ふりむかうともせぬ無禮ぶれいを、つねならばいかりもすべきことなれど、あゝ、てゝいてください
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
言問こととひ曲角まがりかどで、天道てんだうか、また一組ひとくみこれまた念入ねんいりな、旦那樣だんなさま洋服やうふく高帽子たかばうしで、して若樣わかさまをおあそばし、奧樣おくさま深張ふかばり蝙蝠傘かうもりがさすまして押並おしならあとから、はれやれおひとがついてぶらなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
れも縁切ゑんきりとおつしやつてからう五ねん旦那樣だんなさまばかりわるいのではうて、暑寒しよかんのおつかいものなど、くらしい處置しよちをしてせるに、おこゝろがつひかれて、おのづとあしをもたま
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うらうつくしいのは、旦那樣だんなさま、……坊主ばうずもちものでござります……」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ちひさきかみ川村太吉かはむらたきちかいりたるをよみみて此處こゝだ/\とくるまよりりける、姿すがたつけて、おゝ番町ばんちやう旦那樣だんなさまとおさんどんが眞先まつさきたすきをはづせば、そゝくさは飛出とびだしていやおはやいおいで
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝあのこゑ旦那樣だんなさま、三せん小梅こうめさうな、いつののやうな意氣いき洒落しやれものにたまひし、由斷ゆだんのならぬとおもふとともに、心細こゝろほそことえがたうりて、しめつけられるやうなるしさは
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もすがら枕近まくらちかくにありて悄然しよんぼりとせし老人としより二人ふたりおもやう、何處どこやら寢顏ねがほところのあるやうなるは、此娘このむすめもし父母ちゝはゝにてはなきか、のそゝくさをとこはじめとして女中ぢよちゆうども一どう旦那樣だんなさま御新造樣ごしんぞさまへば
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)