方角ほうがく)” の例文
と竹童はその手紙を、一ぴき小猿こざるにくわえさせて、むちで僧正谷の方角ほうがくをさすと、さるは心得たようにいっさんにとんでいく。そのあとで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは、すぐにうちからしました。そして、子供こどもはしっていった方角ほうがくましたが、なんらそれらしい人影ひとかげもありません。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
だからアッカには、これですっかり方角ほうがくがわかったのです。もうこうなれば、だれにもまよわされるようなことはありません。
たうとう盲目めくらになつたペンペは、ラランの姿すがた見失みうしなひ、方角ほうがくなにもわからなくなつて、あわてはじめたがもうをそかつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
遠縁の者はその老人をれて葛西のやしきの傍へ往くと、老人はそこここと方角ほうがくを考えていて、坂路さかみちの登りぐちへ往って
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
わしは幾百度いくひゃくたび裏切られたろう。しかも今度は、今度はと思って希望をかけないではいられない。きょうもまた無慈悲むじひ方角ほうがくを変えてしまうのかもしれない。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「こうの悪いことばかり続くというのはどういうもんでしょう。そういうとあなたはすぐ笑ってしまいますけど、家の方角ほうがくでも悪いのじゃないでしょうか」
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
義家よしいえはまっくらなおにわの上につっって、魔物まものるとおもわれる方角ほうがくをきっとにらみつけながら、弓絃ゆみづるをぴん、ぴん、ぴんと三までらしました。そして
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それともどこか方角ほうがくもわからないその天上へ行ったのか、ぼんやりして見分けられませんでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自分の村でさえ出歩けない者が、方角ほうがくも分らない東京へ行ってマゴマゴすると思うと心細くなるだろう。東京のいい家では、つい近所へでも若い女一人外へ出しやしないよ。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
こういうしだいで、四人組は、そのあかりのさしている方角ほうがくにむかって、出かけました。
ちよつとしたあてこみので、わたし公園こうえんほう商売しょうばいくつもりだつたんですが、しかたがない、方角ほうがくちがいのおやじのところへ、あのランチュウをつてつたというわけでさ
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
みぎ白壁町しろかべちょうへのみちひだりれたために、きつねにつままれでもしたように、方角ほうがくさえもわからなくなったおりおり彼方かなた本多豊前邸ほんだぶぜんてい練塀ねりべいかげから、ひたはしりにはしってくるおんな気配けはい
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おそる/\搖籃ゆれかごから半身はんしんあらはして下界げかいると、いま何處いづこそら吹流ふきながされたものやら、西にしひがし方角ほうがくさへわからぬほどだが、矢張やはり渺々べう/\たる大海原おほうなばら天空てんくう飛揚ひやうしてるのであつた。
帰り道が同じ四谷よつや方角ほうがくなので、六十人いる朋輩ほうばいの中では一番心安くなっている。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
細君が指輪ゆびわをなくしたので、此頃勝手元の手伝てつだいに来る隣字となりあざのおすずに頼み、きちさんに見てもらったら、母家おもやいぬい方角ほうがく高い処にのって居る、三日みっか稲荷様いなりさまを信心すると出て来る、と云うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
天柱てんちうくだけ地維ちいかくるかとおもはるゝわらこゑのどよめき、中之町なかのちやうとほりはにわか方角ほうがくかはりしやうにおもはれて、角町すみちやう京町きやうまち處々ところ/″\のはねばしより、さつさせ/\と猪牙ちよきがゝつた言葉ことば人波ひとなみくるむれもあり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして、都田川を背水はいすいにしいて、やや、半刻はんときあまりの苦戦をつづけていると、フイに、思いがけぬ方角ほうがくから、ワーッという乱声らんせいがあがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はじめて、こんなにたかそらがった風船球ふうせんだまは、どこがまちだやら、みなとだやら、その方角ほうがくがわかりませんので、ただ、あてもなくんでいました。
風船球の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
といって、そのまま小船こぶねにとびって、さぎのんで行った方角ほうがくかってどこまでもこいで行きました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
成経 (突然おきを見て叫ぶ)いよいよきまった。あの船はもうこの島に必ず来る。あすこまで来たからにはもうだいじょうぶだ。いつも方角ほうがくをかえるのはもっとずっと遠くのおきだから。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「とおっしゃいましても、どっちへおかけか、方角ほうがくわかりゃァいたしやせん」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
言放いひはなつて、英風えいふう颯々さつ/\逆浪げきらういわくだくる海邊かいへんの、ある方角ほうがくながめた。
いきどおろしい、竹童の心はのごとくたぎりたって、こうさけびながら方角ほうがくもさだめず、裏宮うらみやのおどうめぐり、いましも、斎院さいいんの前まであるいてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小鳥ことりは、あらしにかれて、ついおもわぬ方角ほうがくんでいってうみうえてしまい、わずかに一つのおおきなつけて、そこへんでいって、やっと
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こういうがはやいか、和尚おしょうさんはもうまたもときつね姿すがたになって、しっぽをりながら、悪右衛門あくうえもんたちがかえっていった方角ほうがくとはちがったこうのもりの中のみちはいっていきました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
後檣縱帆架ガーフひるがへはたは、まだ朦乎ぼんやりとして、何國いづこ軍艦ぐんかんともわからぬが、いまや、團々だん/\たる黒煙こくゑんきつゝ、なみ蹴立けたてゝ輕氣球けいきゝゆう飛揚ひやうせる方角ほうがく進航しんかうしてるのであつた。此時このときわたくしきふ一策いつさくあんじた。
しかし、みちは、とおく、ひとりあるいたのでは、方角ほうがくすらも、よくわからないのであります。彼女かのじょはただわずかに、かわうてあるいてきたことをおもしました。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
はちかつぎはそれをあおいてながら、いつもおがんでいる長谷はせ観音かんのんさまの方角ほうがくかって、どうぞわたしたちのの上をおまもくださいましと、こころの中でいって手をわせました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
彼女は、蛍籠を抱いて、教えられた方角ほうがくを、星あかりの道に求めて行った。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この近所きんじょ子供こどもなら、自分じぶんうち方角ほうがくっていそうなものだがと、おじいさんは、いろいろにかんがえました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうひとりごとをいいながら、浦島はじぶんの家の方角ほうがくへあるき出しました。ところが、そことおもうあたりには草やあしがぼうぼうとしげって、家なぞはかげもかたちもありません。
浦島太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
もし父親ちちおやが、こんなあらしつよばんに、うみをこいでこえってこられたなら、方角ほうがくもわからないので、どんなにか難儀なんぎをなされるだろうと、こうかんがえると、むすめはもはや
ろうそくと貝がら (新字新仮名) / 小川未明(著)
学校がっこうやすみをって、こころかれるまま、うぐいすのきた方角ほうがくかけてみました。みちばたのはたけには、うめがあり、さくらがあり、またまつ若木わかぎがありました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
つきひかりは、おりおり雲間くもまからかおして、した世界せかいらしましたけれど、そのひかりたよりにあるいてゆくには、あたりがしろで、方角ほうがくすらわからなかったのであります。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
少年しょうねんおもわず、故郷こきょうほうかえりました。青空あおぞらとおくもながれていて、もとよりその方角ほうがくすらたしかでなかったが、くもがつづき、つめたいゆきっていることとおもわれました。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなは、しまからたびへとかけました。べつべつに、自分じぶんたちのいたほうへ、あるものはひがしへ、あるものは西にしへというふうに、おもおもいの方角ほうがくしてかけたのであります。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
せいちゃんか、あっちへげていったようだ。」と、ちがった方角ほうがくゆびさしました。
仲よしがけんかした話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、まちがいなくおひめさまでありました。小鳥ことりはすぐに、おひめさまがくにかえりたいとおもっても、その方角ほうがくも、またみちもわからなくて、こまっていられるのをさっしたのでありました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その方角ほうがくには、あわしろ銀河ぎんがながれて、まる地平ちへいぼっしていたのであります。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらには、くもみだれていました。方角ほうがくもわからなくなってしまいました。小鳥ことりは、ただんでゆきさえすれば、そのうちにはやしえるだろう。また、やまか、野原のはらられるだろうとおもっていました。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
若者わかものは、あつれいをのべて、おしえられた方角ほうがくへ、まちしてゆくべく、ふたたび、あらしのきすさむやみなかて、ったのであります。そのあとを、しばらく主人しゅじんは、だまって見送おくっていました。
般若の面 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆるされたのか、かぜわって、英吉えいきちふねをいままでとは反対はんたい方角ほうがくきつけると、逆巻さかまなみは、つぎからつぎへと、ふねをほんろうして、ちょうどをもてあそぶようでありましたが、ふね
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじさんは、ちがった方角ほうがくから、姿すがたをあらわして、もどってきました。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうは、じっとして、終日しゅうじつ、そのはなうえまっていました。もとの野原のはらかえろうとおもっても、いまは方角ほうがくすらわからないばかりか、とおくて、きずついたには、それすらできないことでありました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)