)” の例文
猟奇のよ、卿等けいらは余りに猟奇者であり過ぎてはならない。この物語こそよきいましめである。猟奇のはて如何いかばかり恐ろしきものであるか。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「へい、申しわけございません。といったって、こちも、足を棒にして、そこらじゅうを、クルクルぎ歩いちゃいるんですが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同じ逆境にしても、慷慨こうがいの士には激しい痛烈な苦しみが、軟弱のには緩慢なじめじめした醜い苦しみが、というふうにである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
この二人は浅草公園を徘徊はいかいする不良ので、岩本は千束町に住んで活動写真の広告のビラをるのが商売、山西は馬道うまみち床屋とこやせがれであった。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
まして無神無仏のは既に神をみし仏を無みするだけの偉いものであるから、夢にも恐怖心などに囚はれてはならぬ。云々。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ばつする時は以てたるべし一夫いきどほりをふくめば三年雨降ずと云先哲せんてつの語あり百姓は國の寶人の命は千萬金にも換難かへがたし然るを正直しやうぢき篤實とくじつなる九助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と云つても僕を江戸趣味の速断そくだんしてはいけません、僕は知りもせぬ江戸の昔に依依恋恋いいれんれんとする為には余りに散文的に出来てゐるのですから。
それまで熊本には罪人を取扱ふのに、死刑と追放と、この二つしか無かつたのを、勝名の考へで刑と刑とがそのほかに設けられる事になつた。
後単行出版に際し都合により、を添えたるもの。あるいはおなじ単行本御所有の方々の、ここにお心つかいもあらんかとて。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すでにして大夫たいふ鮑氏はうしかうこくぞくこれみ、景公けいこうしんす。景公けいこう穰苴じやうしよ退しりぞく。しよやまひはつしてす。田乞でんきつ田豹でんへうこれつてかうこくうらむ。
けがれたる油に廻転する社会は堕落だらくする。かの紳士、通人、芸妓のは、汚れたる油の上をすべって墓に入るものである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
暴虎馮河ぼうこひょうがには孔子こうしくみせずといったが、世俗はいまだ彼らに敬服けいふくする。昔時せきじ、ローマ時代には徳という字と勇気という字とは二つ別々に存在しなかった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
東京のさる專門學校の生である草野金太郎は、春やすみで故けうの町に省してゐたが、春やすみも終つたので、あと二時間もするとまた一人で東京にたつのである。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
駄賃だちんはこの翁を父親ちちおやのように思いて、したしみたり。少しく収入のあまりあれば、町にくだりきて酒を飲む。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
茶山の此書を読んで、わたくしは頼竹里ちくりが此年文化十二年に江戸より広島へ帰り、僦居してに授けたことを知る。頃日このごろわたくしに無名の葉書を投じた人がある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼らにとってこころよく思われたかは、主家の兇変きょうへんの前に、すでに浪人していた不破数右衛門ふわかずえもん千葉ちば三郎兵衛、間新六はざましんろくが、同じように連盟に加わってきたのでも分る。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
女の容色の事も、外に真似手のない程くわしく心得ている。ポルジイが一度好いと云った女の周囲には、耳食じしょくが集まって来て、その女は大幣おおぬさ引手ひくてあまたになる。
即ち米国辺の鉱山では年々無数の人が死傷し、義手義足のは、米国に於て最も多く見受ける。従って義手義足の製作術に至っては、米国はその精巧世界に冠たり。
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
〔評〕十年のえき、私學校の彈藥製造所だんやくせいざうじよかすむ。南洲時に兎を大隈おほすみ山中にふ。之を聞いてにはかいろへて曰ふ、しまつたと。爾後じご肥後日向に轉戰して、神色夷然いぜんたり。
つまりこの一隊の異形いぎょうは、左膳の乾雲、栄三郎の坤竜にとって、ともに同じ脅威きょういであった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
其角きかく嵐雪らんせつもその人にあらざりき。『五色墨ごしきずみ』の固よりこれを知らず。『新虚栗しんみなしぐり』の時何者をかつかまんとして得る所あらず。芭蕉死後百年になんなんとして始めて蕪村は現れたり。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
拝啓久しく御無沙汰に打過ぎ候段そうろうだんひら御宥免被下度ごゆうめんくだされたく候しかし毎度新聞雑誌にて面白き御作おさく拝見つかまつりわれら芸術主義ののためかつは徳川の懐かしき趣味のため御奮闘ありがたく奉感謝かんしゃたてまつり
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
まち人々ひと/″\ことかれいつ輕蔑けいべつして、無教育むけういく禽獸的生活きんじうてきせいくわつのゝしつて、テノルの高聲たかごゑ燥立いらだつてゐる。かれものふのは憤懣ふんまんいろもつてせざれば、欣喜きんきいろもつて、何事なにごと熱心ねつしんふのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかるに勝氏は一身のはたらきを以ていて幕府を解散かいさんし、薩長のに天下を引渡ひきわたしたるはいかなるかんがえより出でたるか、今日に至りこれを弁護べんごするものは、勝氏は当時外国干渉がいこくかんしょうすなわち国家の危機ききに際して
而も世を棄て名を棄て、更に三界に流浪せしめしは誰ぞ。我もとより貧しけれど天命を知る。我が性玉の如し。我はこれ畢竟詩歌しいかまい、清貧もとよりる。我はめ、妻はいまだ痴情の恋に狂ふ。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
コスモポリタンのと呼んで見るもいゝ。ハヽヽヽ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
尊氏はその夜、ひとまず二条千手堂の吉良邸を陣営とし、そして、諸所の山野に分散して旗色を見ているらしい一族家臣の教書きょうしょれまわした。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堅彊けんきょうは死の柔弱にゅうじゃくは生の徒なれば、「学ぼう。学ぼう」というコチコチの態度を忌まれたもののようである。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
人一倍好奇心が強くて、冒険好きで、所謂いわゆる猟奇のであったことが、彼の長所でもあり弱点でもあった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
さらにさかのぼっては能の狂言の何山伏の数篇を見て、かろうじてこのの社会上の地位を察するのみである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
日本の文芸家が作家オーソース倶楽部クラブというほどの単純な組織すらも構成し得ない卑力ひりょくである事を思えば、政府の計画した文芸院のゆうに成立するのも無理はないかも知れぬ。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(四四)七十(四五)仲尼ちうぢひと顏淵がんえん(四六)すすめ、がくこのむとす。しかれども(四七)くわい屡〻しばしばむなしく、糟糠さうかうにだもかず、しかうしてつひ(四八)蚤夭さうえうせり。
豊洲は中年にして与力の職を弟直道なほみちに譲り、くだに授けたと云ふ。墓誌に徴するに、与力を勤むることゝなつてから本郷に住んだ。致仕の後には「下帷郷南授徒」と書してある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そして金太郎は、更めて自分が專門學校生であるほこりにうつとりする。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
男女烏合うごうを集めて芝居をしてさえもし芸術のためというような名前を付けさえすればそれ相応に看客かんきゃくが来る。田舎の中学生の虚栄心を誘出さそいだして投書をつのれば文学雑誌の経営もまた容易である。
まち人々ひとびとのことはかれはいつも軽蔑けいべつして、無教育むきょういく禽獣的生活きんじゅうてきせいかつののしって、テノルの高声たかごえ燥立いらだっている。かれものうのは憤懣ふんまんいろもってせざれば、欣喜きんきいろもって、何事なにごと熱心ねっしんうのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
洋学の東漸とうぜんここにさだまりて青年せいねんはなべてきほひき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「そ、そんなことで、寝首をかかれる大将でもねえでしょう。それに、こちのような人間に、油断するはずもねえ」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つの呉起ごき射刺せきしするにつて、あはせて悼王たうわうつ。悼王たうわうすではうむられて、太子たいしつ。すなは(一一〇)令尹れいゐんをしてことごと呉起ごきあはせてわうてしものちうせしむ。
近頃の記録に出ているのは、すべて願人坊主がんにんぼうずに近い門付かどづ物貰ものもらいのであったが、それでもまだ彼らの唱えあるいた歌詞などの中には、比較に値する僅かずつの特徴が伝わっている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
森本のような浮浪のといっしょに見られちゃ、少し体面にかかわる。いわんや後暗うしろぐらい関係でもあるように邪推して、いくら知らないと云っても執濃しつこく疑っているのはしからんじゃないか。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
張目飛耳ちょうもくひじ多き今の文界なれば万事決定まで何分内密に願上候
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「二夫人の従者から将軍が今日にいたるまでのご忠節をつぶさに聞いて、まったく心服したためであります。緑林りょくりんとても、心まで獣心ではありません」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芭蕉示寂じじゃくして数十年の後に、有名なる『七部集』というものが結集けつじゅうせられ、末法まっぽうの有難い経典となったが、この『七部集』には異本が多く、テキストのまだ確定しておらぬは勿論もちろん
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
春秋しゅんじゅうに指を折り尽して、白頭はくとう呻吟しんぎんするのといえども、一生を回顧して、閲歴の波動を順次に点検し来るとき、かつては微光の臭骸しゅうがいれて、われを忘れし、拍手はくしゅきょうび起す事が出来よう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ゆゑ其著書そのちよしよ餘萬言よまんげん大抵たいていおほむ(二一)寓言ぐうげんなり(二二)漁父ぎよふ盜跖たうせき胠篋きよけふつくり、もつ孔子こうし詆訿ていしし、もつ老子らうし(二三)じゆつあきらかにせり。(二四)畏累虚わいるゐきよ亢桑子かうさうしたぐひみな空語くうごにして事實じじつし。
私たちはひとえに芸の道を以て諸民に仕え、諸民と苦楽を共にしているだけのもの、弓矢のではなし、南朝北朝の争いなども知るところではありません。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ですがさ、そんな風にこちには受けとれまさあね。また血の気の多いまっ正直な衆は、どう取ったかしれますまい。先生にだって責任はありましょうぜ」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに少弐頼尚よりひさ、大友具簡、島津道鑑、大隅忠能、そのほか河田、渋谷の、つまり九州足利方のあらましが加わったとみても、たかだか千か千二、三百人。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何だか知らねえが、こちは元々裸の流人るにんだ。万一管営の落度ッてなことにでもなるといけませんから、ちょっくら顔出しのつもりで行って来ましょうや」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)