はん)” の例文
足跡からはんずると、ロボは狼群ろうぐんの先に立ってわなへ近よると、仲間なかまを止めて、自分ひとりでうまい工合ぐあいにかきだしてしまうらしい。
「もうじきに、練馬ねりまの、豊島園としまえんの裏へつくったうちへ越すので『女人芸術』のと、あなたのとのはんをこしらえてあげたいって。」
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その時分じぶん夫婦ふうふ活計くらしくるしいつらつきばかりつゞいてゐた。宗助そうすけ流産りうざんした御米およねあをかほながめて、これ必竟つまり世帶しよたい苦勞くらうからおこるんだとはんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
が、大正九年のあき、たま/\ヨーロツパからかへつて來た親戚しんせきの人からイーストマンの葉書はん寫眞器しやしんきをみやげにもらつた。
「なるほど、そういえば、へんな模様だね。なんだかはんものみたいだけれど、だれがこんなものをかいたのかなあ」
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これ、はたして武田勝頼たけだかつよりその人であるかいなかは、あまりに、主客の対話たいわがかすかで、にわかにはんじがたいのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつて奉化ほうか州のはんを勤めて居りました者の娘でございますが、父は先年この世を去りまして、家も次第に衰え、ほかに兄弟もなく、親戚みよりもすくないので
こりゃ六兵衛、なんじ盗人ぬすっとでない証拠しょうこを見せるために、の手のひらに書いた文字を当ててみよ。うまくはんじ当てたならば、のぞみ通りの褒美ほうびをとらせよう。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
是非曲直かろ/″\しくはんし難し。かず、修練鍛磨してみだりに他人の非を測らざることをつとむるに。
山庵雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
それを見込みこみて石之助いしのすけ今宵こよひ期限きげん借金しやくきん御座ござる、ひとけにちてはんたるもあれば、花見はなみのむしろに狂風けうふうぢん破落戸仲間ごろつきなかまものらねば此納このおさまりむづかしく
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
或る所で臆面おくめんもなくこの頃南画を練習していますなどと話をしたら、しばらくして、はんを作ったらどうだといって、丁度その頃札幌へ来ていた篆刻家てんこくかを紹介してくれた人があった。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
それは男に活写いきうつし、はん手札てふだ形とやらの光沢消つやけしで、生地から思うと少許すこしもっともらしくれてはいましたが、根が愛嬌あいきょうのある容貌おもばせの人で、写真顔が又た引立って美しく見えるのですから
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「これをきみにあずけておく。僕の退校届だ。このとおり伯父おじさんのはんがおしてある」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「私には謎はわかりません。私、はんものなんぞあてることはまるで出來ませんから。」
無邪気でそしてまたいかにも下賤げすばったこれら愚民の習慣は、馬鹿囃子ばかばやしにひょっとこの踊またははんもの見たような奉納の絵馬のつたない絵を見るのと同じようにいつも限りなく私の心を慰める。
見て此手跡しゆせきは源藏なり周藏が印形いんぎやう名主なぬし惣内殿の印形喜平次のは源藏がはんこれは如何にと周藏はお深に對ひコレお深殿此通りだがまだわかとしをして周藏や喜平次が名をかたるとはハテ大盜賊おほどろばうと惣内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくしの姓はあざな麗卿れいけい、名は淑芳しゅくほうと申しまして、かつて奉化ほうか州のはん(高官が低い官を兼ねる)を勤めておりました者の娘でございますが、父は先年この世を去りまして、家も次第に衰え
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
銭形平次も腕をこまぬくばかり、このはんものは容易に解けそうもありません。
橘屋たちばなや若旦那わかだんな徳太郎とくたろうも、このれいれず、に一は、はんしたように帳場格子ちょうばごうしなかからえて、目指めざすは谷中やなか笠森様かさもりさまあか鳥居とりいのそれならで、あかえりからすっきりのぞいたおせんがゆきはだ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
數限かずかぎりもない材木ざいもくみづのまゝにひたしてあるが、彼處かしこへ五ほん此處こゝへ六ぽん流寄ながれよつたかたちはんしたごとく、みな三方さんぱうからみつツにかたまつて、みづ三角形さんかくけい區切くぎつた、あたりはひろく、一面いちめん早苗田さなへだのやうである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今日の思想からはんずれば、狐はこれ人民の敵で、人は汲々乎きゅうきゅうことしてその害を避くるにもっぱらであるけれども、祭った時代にはいろいろの好意を示し、また必ずしも仏法の軌範の内に跼蹐きょくせきしていなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
はんじものだ、どうしたつて、これ。……
十年…… (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
すると、山下氏は、はんでおしたように
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ぼくはん
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かへるときに、小六ころくたもとから半紙はんし何枚なんまいして、缺席屆けつせきとゞげ入用にふようだからこれはんしてれと請求せいきうして、ぼく退學たいがく在學ざいがくかたまで勉強べんきやう出來できないから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「さて、の家につたわる名刀のありかについて、そのうらないをその方に申しつける。正しく名刀のありかをはんじ当てるならば、ぞんぶんの褒美ほうびを取らすぞ。」
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ビタ、ビタ、ビタ……足音はちかづいてきたが、星明かりぐらいでは、それが百姓だか侍だかはんじがつかないけれど、蛾次郎は、ひょいとまえへ立ちあらわれて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「黒い、大きなはんこが、朱肉になってくると、商業あきないの具合がちがってくるな。」
つけ其上にてかせぎなば娘を請出す時節じせつも有なんはなくとも其内娘がよき客ありて身請をさるる事もや有んとお文にも言聞せすぐに證文を取極めはん人へ禮金三兩當人の身附みづき金五兩を引去四十二兩の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「親分、そりゃどういうはんもんだろう?」
意味いみそんするところ何方いづこぞやぼうとしてくらきわかのかげいとゞまよひはしげふばかりるゝよしそらつき心〻こゝろ/\はんじてれどいづ眞意しんいぞわきがたよろこぶべきかなげくべきかお八重やへはお八重やへ優子いうこ優子いうこはれなばくせんの决心けつしんたがひかたけれどおもひのほかなるかへしにはなにさだめてなにとせん未練みれん
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それにもかゝはらず、彼等かれら毎日まいにちおなはんおなむねして、なが月日つきひまずわたつてたのは、彼等かれらはじめから一般いつぱん社會しやくわい興味きようみうしなつてゐたためではなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まことの挑戦状なら、何であのようにつやめかして書こうぞ。それとおはんじがつかなんだとは、さても婆娑羅を知らぬ一徹な御仁ごじんかな——と、また腹を抱えて笑いおった
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
取扱とりあつかひ居候得ば遊女いうぢよに付候事は委細に辨へ居候と申にぞ大岡殿しからばかゝいう女文事丁山富事小夜衣の兩人は何人の周旋せわにて何れよりかゝへたるや請人等うけにんとう巨細こさいに申立よと尋問たづねらるゝに文七丁山事は三河國藤川ざい岩井村百姓十兵衞と申實親じつおやはんにて麹町三丁目醫師いし長庵儀は右十兵衞の兄なる由にて受人に相立あひたち召抱めしかゝへ候又妹小夜衣事は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
毎日はんで押したようにつづきましたが、丁字ちょうじ風呂の二階に、ぽッと春の灯が橙色だいだいいろにともるころになりますと、お蝶も、日本左衛門も、期せずしてえいのさめたようなひとみに変り
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなら自分が今こゝで平岡のためはんして、連借でもしたら、うするだらう。矢っ張りの時の様に奇麗に片付けて呉れるだらうか。あに其所そこ迄考へてゐて、断わつたんだらうか。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すると停車場の方から提燈をけた男が鉄軌レールの上をつたつて此方こつちへ来る。はなし声ではんじると三四人らしい。提燈の影は踏切りから土手下どてしたへ隠れて、孟宗藪のしたを通る時は、話し声丈になつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「どれ」と、入道にゅうどうはそれを受けとり、馬上で扇面せんめんの文字を読みはんじて——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絵かきだか何だか妙なはんじもののような者や、ポンチ画の広告見たような者や、長いマントを着てとがったような帽子をかぶった和蘭オランダの植民地にいるような者や、一種特別な人間ばかりが行っている。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
信長はん
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)