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凝
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じつ
ふりがな文庫
“
凝
(
じつ
)” の例文
と
呟
(
こぼ
)
した事があつた。そして相手の
農夫
(
ひやくしやう
)
が値上げの張本人であるかのやうに
凝
(
じつ
)
とその顔を見つめた。顔は焼栗のやうに日に
焦
(
や
)
けてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
宿
(
やど
)
に
凝
(
じつ
)
としてゐるのは、
猶
(
なほ
)
退屈
(
たいくつ
)
であつた。
宗助
(
そうすけ
)
は
匆々
(
そう/\
)
に
又
(
また
)
宿
(
やど
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎ
棄
(
す
)
てゝ、
絞
(
しぼ
)
りの
三尺
(
さんじやく
)
と
共
(
とも
)
に
欄干
(
らんかん
)
に
掛
(
か
)
けて、
興津
(
おきつ
)
を
去
(
さ
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
唯時々
凝
(
じつ
)
とお時の手先を見詰めたり襟筋を見詰めたりするより外何も爲なかつたのです。それでも自分だけでは何となく滿足なのでした。
反古
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
軈てお八重も新太郎に伴れられて帰つて来たが、坐るや否や先づ険しい眼尻を一層険しくして、
凝
(
じつ
)
と忠太の顔を睨むのであつた。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
二筋
(
ふたすぢ
)
三筋
(
みすぢ
)
、
後毛
(
をくれげ
)
のふりかゝる
顔
(
かほ
)
を
上
(
あ
)
げて、
青年
(
わかもの
)
の
顔
(
かほ
)
を
凝
(
じつ
)
と
視
(
なが
)
めて、
睫毛
(
まつげ
)
の
蔭
(
かげ
)
に
花
(
はな
)
の
雫
(
しづく
)
、
衝
(
つ
)
と
光
(
ひか
)
つて、はら/\と
玉
(
たま
)
の
涙
(
なみだ
)
を
落
(
おと
)
す。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
その前に浮ぶありとある輝やかしい幻想を
凝
(
じつ
)
と見つめさせることだつた——確かにそれは數多く輝やかしいものであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
万作は木の株の上に立つたまゝ
凝
(
じつ
)
と見てゐると多勢はだん/\と近寄つて来て、万作の姿を見るや否や一斉に
蚊帳の釣手
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
一つ篠田様にお願申して見る外無いと思ひましてネ、二日目の夕方、ブラリと出て新聞社へ参つたのですヨ、——先生様が、
凝
(
じつ
)
と私の顔を見つめなすつて
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
と
云
(
い
)
つて、
出
(
で
)
て
行
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れ、
默
(
だま
)
つてゐて
呉
(
く
)
れとは
彼
(
かれ
)
には
言
(
い
)
はれぬので、
凝
(
じつ
)
と
辛抱
(
しんばう
)
してゐる
辛
(
つら
)
さは一
倍
(
ばい
)
である。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
處
(
こ
)
れは
奇妙
(
きめう
)
だと
思
(
おも
)
つて、
近寄
(
ちかよ
)
つて
凝
(
じつ
)
と
見
(
み
)
てゐますと、やがて
其中
(
そのなか
)
の
一人
(
ひとり
)
が
云
(
い
)
ふことには、『
意
(
き
)
をお
注
(
つ
)
けよ、
何
(
なん
)
だね、
五點
(
フアイブ
)
!こんなに
私
(
わたし
)
に
顏料
(
ゑのぐ
)
を
撥
(
は
)
ねかして!』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
彼は生の慾望と死の壓迫の間に、わが身を想像して、未練に兩方に徃つたり來たりする苦悶を心に描き出しながら
凝
(
じつ
)
と坐つてゐると、背中一面の皮が毛穴ごとにむづむづして殆ど堪らなくなる
知られざる漱石
(旧字旧仮名)
/
小宮豊隆
(著)
益子は
凝
(
じつ
)
と考へ込んだ。かの女の眼には米三君の顔が再び描き出された。
田舎からの手紙
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
目は目でまばたきもしないで
凝
(
じつ
)
とそれを見てゐる
風は草木にささやいた:01 風は草木にささやいた
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
そして、
轅
(
ながえ
)
は
凝
(
じつ
)
とその
先端
(
さき
)
を地に著けてゐる。
詩集夏花
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
彼は此
気掛
(
きがゝり
)
が、自分を
駆
(
か
)
つて、
凝
(
じつ
)
と落ち
付
(
つ
)
かれない様に、東西に
引張回
(
ひつぱりまは
)
した揚句、
遂
(
つい
)
に三千代の方に
吹
(
ふ
)
き
付
(
つ
)
けるのだと解釈した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
醜い乞食の女は、流れた血を拭かうともせず、どんよりとした疲労の眼を怨し気に
睜
(
みは
)
つて、唯一人残つた私の顔を
凝
(
じつ
)
と瞶めた。私も瞶めた。
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
置いてきぼりにされた小山内氏は、
履直
(
げたなほ
)
しのやうに
道
(
みち
)
ツ
傍
(
ばた
)
にぺたりと尻を下した。そして一念こめて
凝
(
じつ
)
と電車の
後
(
あと
)
を睨んだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼の眉は顰み、殆んど不機嫌な程に
嚴
(
きび
)
しいその眼は、
凝
(
じつ
)
と私を見てゐた。私は彼に這入つて來るやうにと云つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
と
凝
(
じつ
)
と
視
(
なが
)
める、と
最
(
も
)
う
其
(
そ
)
の
鳥居
(
とりゐ
)
の
柱
(
はしら
)
の
中
(
なか
)
へ、
婦
(
をんな
)
の
姿
(
すがた
)
が
透
(
す
)
いて
映
(
うつ
)
る……
木目
(
もくめ
)
が
水
(
みづ
)
のやうに
膚
(
はだ
)
に
絡
(
まと
)
ふて。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
院長
(
ゐんちやう
)
は
其側
(
そのそば
)
に
腰
(
こし
)
を
掛
(
か
)
けて、
頭
(
かしら
)
を
垂
(
た
)
れて、
凝
(
じつ
)
として
心細
(
こゝろぼそ
)
いやうな、
悲
(
かな
)
しいやうな
樣子
(
やうす
)
で
顏
(
かほ
)
を
赤
(
あか
)
くしてゐる。ハヾトフは
肩
(
かた
)
を
縮
(
ちゞ
)
めて
冷笑
(
れいせう
)
し、ニキタと
見合
(
みあ
)
ふ。ニキタも
同
(
おな
)
じく
肩
(
かた
)
を
縮
(
ちゞ
)
める。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
云
(
い
)
ひながらも
王樣
(
わうさま
)
は、
名簿
(
めいぼ
)
を
彼方此方
(
かなたこなた
)
と
索
(
さが
)
して
居
(
を
)
られました、ところで
愛
(
あい
)
ちやんは、
次
(
つぎ
)
なる
證人
(
しようにん
)
が
何
(
ど
)
んなのだらうかと
頻
(
しき
)
りに
見
(
み
)
たく
思
(
おも
)
ひながら、
凝
(
じつ
)
と
白兎
(
しろうさぎ
)
を
瞻戍
(
みまも
)
つて
居
(
ゐ
)
ました、が
軈
(
やが
)
て
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
醜い乞食の女は、流れた血を拭かうともせず、どんよりとした疲勞の眼を怨し氣に
睜
(
みは
)
つて、唯一人殘つた私の顏を
凝
(
じつ
)
と
瞶
(
みつ
)
めた。私も瞶めた。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
三四郎は此時、
凝
(
じつ
)
と座に着いてゐる事の極めて困難なのを発見した。脊筋から足の裏迄が
疑惧
(
ぎく
)
の刺激でむづ/\する。立つて便所に行つた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
鴻池の主人は、皿を
掌面
(
てのひら
)
に載せた儘
凝
(
じつ
)
と考へてゐたが、暫くすると亭主を呼んで、この皿を譲つてはくれまいかと畳の上に小判を三十枚並べた。
青磁の皿
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私がかう云つた時、彼は私を
凝
(
じつ
)
と見た。今迄彼は殆んど私のゐる方へ目を向けない位だつたのである。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
其處
(
そこ
)
へ、
魂
(
たましひ
)
を
吹込
(
ふきこ
)
んだか、
凝
(
じつ
)
と
視
(
み
)
るうち、
老槐
(
らうゑんじゆ
)
の
梟
(
ふくろふ
)
は、はたと
忘
(
わす
)
れたやうに
鳴止
(
なきや
)
んだのである。
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
續
(
つゞ
)
いてダリユシカも
來
(
き
)
、
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
悲
(
かな
)
しそうな
顏
(
かほ
)
をして、一
時間
(
じかん
)
も
旦那
(
だんな
)
の
寐臺
(
ねだい
)
の
傍
(
そば
)
に
凝
(
じつ
)
と
立
(
たつ
)
た
儘
(
まゝ
)
で、
其
(
そ
)
れからハヾトフもブローミウム
加里
(
カリ
)
の
壜
(
びん
)
を
持
(
も
)
つて、
猶且
(
やはり
)
見舞
(
みまひ
)
に
來
(
き
)
たのである。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
代助は其
笑
(
わらひ
)
の
中
(
なか
)
に
一種
(
いつしゆ
)
の
淋
(
さみ
)
しさを認めて、
眼
(
め
)
を
正
(
たゞ
)
して、三千代の
顔
(
かほ
)
を
凝
(
じつ
)
と見た。三千代は急に
団扇
(
うちは
)
を取つて
袖
(
そで
)
の
下
(
した
)
を
煽
(
あほ
)
いだ。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
鴻池の主人は、皿を
掌面
(
てのひら
)
に載せた儘
凝
(
じつ
)
と考へてゐたが、暫くすると亭主を呼んで、この皿を譲つてはくれまいかと畳の上に小判を三十故並べた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
泣きたくなるのを漸く辛抱して、
凝
(
じつ
)
と畳の目を見てゐる辛さ。九時半頃になつて、
漸々
(
やうやう
)
「疲れてゐるだらうから。」と、裏二階の六畳へ連れて行かれた。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私
(
わたし
)
は
傍目
(
わきめ
)
も
觸
(
ふ
)
らないで、
瞳
(
ひとみ
)
を
凝
(
じつ
)
と
撓
(
た
)
めて
視
(
み
)
たんですが、つひぞ
覺
(
おぼ
)
えのない
人
(
ひと
)
なんです……
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「さうか知ら。ぢや、基督はちやんと潜航艇の事まで御存じなんだな。」とウヰルソン氏は
睡
(
ねむ
)
さうな眼で牧師の顔を見ながら
凝
(
じつ
)
と考へてゐたが
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
三四郎は
凝
(
じつ
)
と其横
顔
(
がほ
)
を眺めてゐたが、突然
手杯
(
こつぷ
)
にある葡萄酒を飲み干して、表へ飛び出した。さうして図書館に帰つた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
定老爺は、暫く
凝
(
じつ
)
と此女乞食を見てゐたが、『村まで行つたら可がべえ。医者様もあるし巡査も居るだア。』
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
お
婿
(
むこ
)
さんが
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
をお
計
(
はか
)
んなさる
間
(
あひだ
)
に、
細
(
ほつそ
)
りした
手
(
て
)
を、
恁
(
か
)
うね、
頬
(
ほゝ
)
へつけて、うつくしい
目
(
め
)
で
撓
(
た
)
めて
爪
(
つめ
)
を
見
(
み
)
なすつたんでせう、のびてるか
何
(
ど
)
うだかつて——
凝
(
じつ
)
と
御覧
(
ごらん
)
なすつたんですがね
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
下
(
した
)
から
覗
(
のぞ
)
くと、
寒
(
さむ
)
い
竹
(
たけ
)
が
朝
(
あさ
)
の
空氣
(
くうき
)
に
鎖
(
とざ
)
されて
凝
(
じつ
)
としてゐる
後
(
うしろ
)
から、
霜
(
しも
)
を
破
(
やぶ
)
る
日
(
ひ
)
の
色
(
いろ
)
が
射
(
さ
)
して、
幾分
(
いくぶん
)
か
頂
(
いたゞき
)
を
染
(
そ
)
めてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
と同時に、怎やら頭の中の熱が一時
颯
(
さつ
)
と引いた様で、急に気がスツキリとする。
凝
(
じつ
)
と目を据ゑて竹山を見た。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
侯爵夫人は
側
(
そば
)
にゐる大隈侯の顔をちらりと見た。侯爵は
鱈
(
たら
)
の
乾物
(
ひもの
)
のやうな顔をして
凝
(
じつ
)
と何か考へ込んでゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
其
(
そ
)
の
手
(
て
)
を、
密
(
そつ
)
と
伸
(
の
)
ばして、お
薬
(
くすり
)
の
包
(
つゝみ
)
を
持
(
も
)
つて、
片手
(
かたて
)
で
円
(
まる
)
い
姿見
(
すがたみ
)
を
半分
(
はんぶん
)
、
凝
(
じつ
)
と
視
(
み
)
て、お
色
(
いろ
)
が
颯
(
さつ
)
と
蒼
(
あを
)
ざめた
時
(
とき
)
は、
私
(
わたし
)
はまた
泣
(
な
)
かされました。……
私
(
わたし
)
は
自分
(
じぶん
)
ながら
頓狂
(
とんきやう
)
な
声
(
こゑ
)
で
言
(
い
)
つたんですよ……
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そのうち、
障子
(
しやうじ
)
丈
(
だけ
)
がたゞ
薄白
(
うすじろ
)
く
宗助
(
そうすけ
)
の
眼
(
め
)
に
映
(
うつ
)
る
樣
(
やう
)
に、
部屋
(
へや
)
の
中
(
なか
)
が
暮
(
く
)
れて
來
(
き
)
た。
彼
(
かれ
)
はそれでも
凝
(
じつ
)
として
動
(
うご
)
かずにゐた。
聲
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
洋燈
(
らんぷ
)
の
催促
(
さいそく
)
もしなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
と言つて、
安々
(
やす/\
)
と娘の
暖
(
あたゝか
)
さうな掌面と不恰好な自分のをぴたりと合せたと思ふと、その
儘
(
まゝ
)
凝
(
じつ
)
と握り締めた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
雨の降る日は老爺は
盡日
(
ひねもす
)
圍爐裏に焚火をして、
凝
(
じつ
)
と其火を
瞶
(
みまも
)
つて暮す。お雪は其傍で穩しく遊んで暮す。
散文詩
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
蓋
(
ふた
)
を
向
(
むか
)
うへはづすと、
水
(
みづ
)
も
溢
(
あふ
)
れるまで、
手桶
(
てをけ
)
の
中
(
なか
)
に
輪
(
わ
)
をぬめらせた、
鰻
(
うなぎ
)
が
一條
(
ひとすぢ
)
、
唯
(
たゞ
)
一條
(
ひとすぢ
)
であつた、のろ/\と
畝
(
うね
)
つて、
尖
(
とが
)
つた
頭
(
あたま
)
を
恁
(
か
)
うあげて、
女房
(
にようばう
)
の
蒼白
(
あおじろ
)
い
顏
(
かほ
)
を、
凝
(
じつ
)
と
視
(
み
)
た。——と
言
(
い
)
ふのである。
夜釣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
眼
(
め
)
のうちには
明
(
あき
)
らかに
憎悪
(
ぞうお
)
の色がある。三四郎は
凝
(
じつ
)
と
坐
(
すは
)
つてゐにくい程な
束縛
(
そくばく
)
を感じた。男はやがて行き
過
(
す
)
ぎた。其
後
(
うし
)
ろ影を見送りながら、三四郎は
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
世捨人の和尚の身にとつても、
納所
(
なつしよ
)
坊主の他愛もないお談義を聴いてゐるよりか、鯉の戯けるのを見てゐる方がずつと面白かつた。和尚は夢中になつて
凝
(
じつ
)
と見とれてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と、真砂町へ抜ける
四角
(
よつかど
)
から、黒い影が現れた。ブラリブラリと
俛首
(
うなだ
)
れて歩いて来る。竹山は
凝
(
じつ
)
と月影に透して視て居たが、
怎
(
どう
)
も野村らしい。帽子も冠つて居ず、首巻も巻いて居ない。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
外道、
退
(
ひ
)
くな。(
凝
(
じつ
)
と
視
(
み
)
て、剣の刃を下に引く)
虜
(
とりこ
)
を離した。受取れ。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
未
(
まだ
)
ですわ。だつて、
片付
(
かたづ
)
く訳が
無
(
な
)
いぢやありませんか」と云つた儘、
眼
(
め
)
を
睜
(
みは
)
つて
凝
(
じつ
)
と代助を見てゐた。代助は
折
(
を
)
れた小切手を取り
上
(
あ
)
げて二つに
開
(
ひら
)
いた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は
先日中
(
こなひだぢゆう
)
から、こんな事になるだらうと思つてましたが、今日まで
凝
(
じつ
)
と
辛抱
(
がまん
)
して来ました。所がとうと大変な事になりました。私はもう隠してばかりは居られなくなりました。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と思ふと、両親の顔や弟共の声、馬の事、友達の事、草刈の事、水汲の事、生れ故郷が
詳
(
つまび
)
らかに思出されて、お定は
凝
(
じつ
)
と涙の目を
押瞑
(
おしつぶ
)
つた儘、『
阿母
(
あツばあ
)
、許してけろ。』と胸の中で繰返した。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
凝
常用漢字
中学
部首:⼎
16画
“凝”を含む語句
凝然
凝視
凝結
凝乎
混凝土
凝固
凝塊
凝滞
凝集
三上水凝刀自女
凝脂
凝灰岩
思凝
凝議
凝坐
煮凝
凝固土
凝如
凝着
唐太常凝菴
...