内心ないしん)” の例文
一方、おかみさんは、主人しゅじんにむかっては、きっぱりと強がりを言ったものの、内心ないしんはやはり、きゃくのことが気になってしかたがなかった。
わたくし内心ないしん不服ふふくでたまりませんでしたが、もともと良人おっと見立みたててくれたうまではあるし、とうとう『若月わかつき』とぶことになってしまいました。
その代りに、今度は珠子を非難し、君の脚を売ることを望むような女性は外面がいめんにょ菩薩ぼさつ内心ないしんにょ夜叉やしゃだといって罵倒ばとうした。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
べつにもならずすべてを義母おつかさんにおまかせしてちやばかりんで内心ないしん一のくいいだきながら老人夫婦としよりふうふをそれとなく觀察くわんさつしてた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
天性てんせい陰気いんきなこの人は、人の目にたつほど、愚痴ぐちやみもいわなかったものの、内心ないしんにはじつに長いあいだの、苦悶くもん悔恨かいこんとをつづけてきたのである。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
外面女𦬇げめんによぼさつ内心ないしん如夜叉によやしやのいましめもあれば、𦬇ぼさつはなにとやおもひ玉ふらんともつたいなし。すで下晡なゝつさがりなればおの/\あしをすゝめて小千谷をぢやへかへりき。
けれども、内心ないしんノロ公の考えが気にいったもので、それからは、ニールスのすきなように言わせておきました。
よわB坊ビーぼうは、たとえ内心ないしんでは、それを無理むりかんじても、だまって、うなずくよりほかはなかったのです。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
をつとおもはずをそらした。すつかり弱味よわみかれたかんじで内心ないしんまゐつた。が、そこでつま非難ひなんをすなほにけとるためにはをつと氣質きしつはあまりに我儘わがままで、をしみがつよかつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
漢学者の使用する一句に、「羊質虎皮ようしつこひ」というのがあって、外面虎皮こひをかぶりて虚勢きょせいを張り、内心ないしん卑怯ひきょうきわまる偽物にせものす成語としてあり、楊雄ようゆう(前五八—後一八)の文に
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
とぢられけり然ば吾助白状はなすと雖も落着らくちやくに致されざるは越前守殿吾助が面體めんてい太刀疵たちきずと云何樣なにさまくせあるべき惡漢わるものと見られし故内心ないしんには今一應吟味致し舊惡きうあく有ば糺明きうめい有んと思は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小六ころく實際じつさいこんなようをするのを、内心ないしんではおほいに輕蔑けいべつしてゐた。ことに昨今さくこん自分じぶんむなくかれた境遇きやうぐうからして、此際このさい多少たせう自己じこ侮辱ぶじよくしてゐるかのくわんいだいて雜巾ざふきんにしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
グングンと自分ののどをしめつけてきた。蛾次は内心ないしん、こいつは強いぞとおどろいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ると、宛然まるで空々そら/″\しい無理むり元氣げんきして、ひて高笑たかわらひをしてたり、今日けふ非常ひじやう顏色かほいろいとか、なんとか、ワルシヤワの借金しやくきんはらはぬので、内心ないしんくるしくるのと、はづかしくところから
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
人傳ひとづてふみ一通いつつうそれすらもよこさぬとは外面げめん如菩薩によぼさつ内心ないしんはあれも如夜叉によやしやめ。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
道徳の形骸けいがいや、ひられた犧牲ぎせいやらをこばみましたけれども、今わが内心ないしんに新しくき起つて來た道徳的な感情かんじやうをもつて、初めてやみの中にさぐり求めてゐたあるものをつかんだやうな氣がするのです。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
内心ないしんには、あによめつやことまたあきこと、さすがにことをしたとおもはないから、村近むらぢかだけにあしのうらがくすぐつたい。ために夕飯ゆふはん匇々さう/\燒鮒やきぶなしたゝめて、それから野原のはらかゝつたのが、かれこれよる十時過じふじすぎになつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
外面げめん如菩薩にょぼさつ内心ないしん如夜叉にょやしゃとは彼女等三人の事でなければならぬ。そうしてこの恐ろしい形容詞が、女に限られたものでなければ、の呉井嬢次と称する怪少年も、その仲間に数え入れなければならぬ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
外見そとみ女菩薩にょぼさつ内心ないしん女夜叉にょやしゃに、突如湧いた仏ごころ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
内心ないしんのかなしき瞳………
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
外面女𦬇げめんによぼさつ内心ないしん如夜叉によやしやのいましめもあれば、𦬇ぼさつはなにとやおもひ玉ふらんともつたいなし。すで下晡なゝつさがりなればおの/\あしをすゝめて小千谷をぢやへかへりき。
こうの百しょうは、内心ないしんずかしくおもっていたところですから、こういわれましたので、かおいろあかくなりました。
駄馬と百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしとしては内心ないしん多大ただい不安ふあんかんじながら、そうおこたえするよりほか詮術せんすべがないのでございました。
そこで内心ないしん非常ひじやうおどろいたけれどなほも石を老叟らうそうわたすことはをしいので色々いろ/\あらそふた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
咲耶子さくやこのからだはかれにようがない。内心ないしんでは、わたしてやってもいいと考えている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おのれるべきやとしかつけ直樣奉行所へ訴へけり是は利兵衞が内心ないしんには幸ひ吉三郎を科に落し外より持參金ぢさんきん澤山たくさんあるむこを取る存意ぞんいなりしとぞ大岡殿金屋利兵衞が願書ぐわんしよを一らんあつすなはち吉三郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御米およね此頃このごろをつと樣子やうす何處どこかに異状いじやうがあるらしくおもはれるので、内心ないしんでは始終しじゆう心配しんぱいしてゐた矢先やさきだから、平生へいぜいらない宗助そうすけ果斷くわだんよろこんだ。けれどもその突然とつぜんなのにもまつたおどろいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ると、まるで空々そらぞらしい無理むり元気げんきして、いて高笑たかわらいをしてたり、今日きょう非常ひじょう顔色かおいろがいいとか、なんとか、ワルシャワの借金しゃっきんはらわぬので、内心ないしんくるしくあるのと、はずかしくあるところから
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかしながらいまのこの人には、そんな内心ないしんにいくぶん自負じふしているというような、気力きりょくかげもとどめてはいない。きどってだまっていた、むかしのおもかげがただそのかたちばかりに残ってるのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
内心ないしんにがきおびえか
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こうは、内心ないしん、いくらいいさおをってもれるときはれるが、れないときには、やはりれない。すべて人間にんげんのことはうんだ、おれのようなものだとおもいながら
一本の釣りざお (新字新仮名) / 小川未明(著)
人の狼なるは狼の狼なるよりも可惧おそるべく可悪にくむべし篤実とくじつ外面げめんとし、奸慾かんよく内心ないしんとするを狼者おほかみものといひ、よめ悍戻いびる狼老婆おほかみばゝといふ。たくみ狼心らうしんをかくすとも識者しきしや心眼しんがん明鏡めいきやうなり。
大方おおかた内心ないしんではわたくしこといまからでも鎌倉かまくらもどりたかったのでございましたろう。
さなきだにかれ憔悴せうすゐしたかほ不幸ふかうなる内心ないしん煩悶はんもんと、長日月ちやうじつげつ恐怖きようふとにて、苛責さいなまれいたこゝろを、かゞみうつしたやうにあらはしてゐるのに。其廣そのひろ骨張ほねばつたかほうごきは、如何いかにもへん病的びやうてきつて。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
華厳経けごんきょう外面げめん如菩薩にょぼさつ内心ないしん如夜叉にょやしゃと云う句がある。知ってるだろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
欵待もてなし置て早々文藏方へいたり只今我等方へ御侍士一人御入にて斯樣々々かやう/\の御尋ねあり貴樣に後暗き事の有べき樣なけれど一おう申聞ると申せしに文藏は内心ないしんぎよつとなせしかども素知そしらぬ體にて其は一向心當りもなしと申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
深きやかた内心ないしんを。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
陶器店とうきてん主人しゅじんは、いつかおちゃわんをつくってたてまつったことがあったので、おほめくださるのではないかと、内心ないしんよろこびながら参上さんじょういたしますと、殿とのさまは、言葉静ことばしずかに
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
人の狼なるは狼の狼なるよりも可惧おそるべく可悪にくむべし篤実とくじつ外面げめんとし、奸慾かんよく内心ないしんとするを狼者おほかみものといひ、よめ悍戻いびる狼老婆おほかみばゝといふ。たくみ狼心らうしんをかくすとも識者しきしや心眼しんがん明鏡めいきやうなり。
さなきだにかれ憔悴しょうすいしたかお不幸ふこうなる内心ないしん煩悶はんもんと、長日月ちょうじつげつ恐怖きょうふとにて、苛責さいなまれいたこころを、かがみうつしたようにあらわしているのに。そのひろ骨張ほねばったかおうごきは、如何いかにもへん病的びょうてきであって。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのうまのかたわらへこううまならびますと、それはくらべものにならないほど、姿すがたうえ優劣ゆうれつがありました。こうの百しょうは、内心ないしんずかしくてしかたがありませんでした。
駄馬と百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たっちゃんは、秀公ひでこうが、どんな自分じぶんこまることをいいだすだろうと、内心ないしんびくびくしていたのですが、なにこれくらいのことなら、そうずかしくないと安心あんしんしたのでした。
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのくさははたして、りっぱなはなきました。も、もっとたかくのびて、青木あおきよりもたかくなりました。そして、もたくさんにしげりました。くさは、内心ないしんおおいに安堵あんどしていたのであります。
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)