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傾
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かたぶ
ふりがな文庫
“
傾
(
かたぶ
)” の例文
ただ
一呑
(
ひとのみ
)
と
屏風倒
(
びょうぶだおし
)
に
頽
(
くず
)
れんずる
凄
(
すさま
)
じさに、
剛気
(
ごうき
)
の
船子
(
ふなこ
)
も
啊呀
(
あなや
)
と驚き、
腕
(
かいな
)
の力を失う
隙
(
ひま
)
に、
艫
(
へさき
)
はくるりと波に
曳
(
ひか
)
れて、船は
危
(
あやう
)
く
傾
(
かたぶ
)
きぬ。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
傾
(
かたぶ
)
け
其許
(
そのもと
)
何時
(
いつ
)
江戸へ參られしやと
問
(
とふ
)
に彦三郎は
今朝
(
こんてう
)
福井町へ
着
(
ちやく
)
し
直
(
すぐ
)
に承まはり
糺
(
たゞ
)
し只今
爰許
(
こゝもと
)
へ參りしと申ゆゑ
彌々
(
いよ/\
)
合點行ず段々樣子を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
春の
日脚
(
ひあし
)
の西に
傾
(
かたぶ
)
きて、遠くは日光、
足尾
(
あしお
)
、
越後境
(
えちござかい
)
の山々、近くは、
小野子
(
おのこ
)
、
子持
(
こもち
)
、
赤城
(
あかぎ
)
の峰々、入り日を浴びて花やかに夕ばえすれば
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
籠を箱から出すや否や、文鳥は白い首をちょっと
傾
(
かたぶ
)
けながらこの黒い眼を移して始めて自分の顔を見た。そうしてちちと鳴いた。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
折柄
(
おりから
)
四時頃の事とて日影も大分
傾
(
かたぶ
)
いた塩梅、
立駢
(
たちなら
)
んだ樹立の影は
古廟
(
こびょう
)
の
築墻
(
ついじ
)
を
斑
(
まだら
)
に染めて、
不忍
(
しのばず
)
の池水は大魚の
鱗
(
うろこ
)
かなぞのように
燦
(
きら
)
めく。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
五百は火鉢の前に坐って、やや首を
傾
(
かたぶ
)
けていたが、保はその姿勢の常に異なるのに気が附いて、急に
起
(
た
)
って
傍
(
かたわら
)
に往き顔を
覗
(
のぞ
)
いた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
他人
(
たにん
)
が
聞
(
き
)
けば
適當
(
てきたう
)
の
評
(
ひやう
)
といはれやせん
別家
(
べつけ
)
も
同
(
おな
)
じき
新田
(
につた
)
にまで
計
(
はか
)
らるゝ
程
(
ほど
)
の
油斷
(
ゆだん
)
のありしは
家
(
いへ
)
の
運
(
うん
)
の
傾
(
かたぶ
)
く
時
(
とき
)
かさるにても
憎
(
にく
)
きは
新田
(
につた
)
の
娘
(
むすめ
)
なり
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それでも
彼
(
かれ
)
の
強健
(
きやうけん
)
な
鍛練
(
たんれん
)
された
腕
(
うで
)
は
定
(
さだ
)
められた一
人分
(
にんぶん
)
の
仕事
(
しごと
)
を
果
(
はた
)
すのは
日
(
ひ
)
が
稍
(
やゝ
)
傾
(
かたぶ
)
いてからでも
強
(
あなが
)
ち
難事
(
なんじ
)
ではないのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
母もおぼつかない挨拶だと思うような顔つきをしていたがさすがになお
強
(
し
)
いてとも言いかね、やがてやや
傾
(
かたぶ
)
いた月を見て
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
笠
(
かさ
)
を
傾
(
かたぶ
)
けるもの、道づれを呼ぶもの、付近の休み茶屋へとかけ込むもの、途中で行きあう旅人の群れもいろいろだ。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
源起きいで誰れぞと問うに、島まで渡したまえというは女の声なり。
傾
(
かたぶ
)
きし月の光にすかし見ればかねて見知りし大入島の
百合
(
ゆり
)
という小娘にぞありける。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
笠の裏に
書
(
かゝ
)
んとせしが茶店の亭主仔細らしき顏して二人が姿を見上げ
見下
(
みおろ
)
し小首
傾
(
かたぶ
)
け痛はしやいかなる雲の上人の
抔
(
など
)
云出ん樣子なればチヤクと其笠に姿を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
〔評〕南洲、
顯職
(
けんしよく
)
に居り
勳功
(
くんこう
)
を
負
(
お
)
ふと雖、身極めて
質素
(
しつそ
)
なり。朝廷
賜
(
たま
)
ふ所の
賞典
(
しやうてん
)
二千石は、
悉
(
こと/″\
)
く私學校の
費
(
ひ
)
に
充
(
あ
)
つ。
貧困
(
ひんこん
)
なる者あれば、
嚢
(
のう
)
を
傾
(
かたぶ
)
けて之を
賑
(
すく
)
ふ。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
渡りて河中に到りし時に、その船を
傾
(
かたぶ
)
けしめて、水の中に墮し入れき。ここに浮き出でて、水のまにまに流れ下りき。すなはち流れつつ歌よみしたまひしく
四
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
私が揺り上げ揺り
傾
(
かたぶ
)
く
艀
(
はしけ
)
の中から初めて見た
敷香
(
しくか
)
の第一印象は、一頭のその黒い
牝牛
(
めうし
)
であった。すぐとっつきの砂浜の一角にぽっつりと彼女は突っ立っていた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
「こは
好
(
よ
)
きことを聞き得たり」ト、
数度
(
あまたたび
)
喜び聞え、なほ
四方山
(
よもやま
)
の物語に、時刻を移しけるほどに、日も
山端
(
やまのは
)
に
傾
(
かたぶ
)
きて、
塒
(
ねぐら
)
に騒ぐ
群烏
(
むらがらす
)
の、声かしましく聞えしかば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
やや有りて彼は
嬾
(
しどな
)
くベットの上に起直りけるが、
鬢
(
びん
)
の
縺
(
ほつ
)
れし
頭
(
かしら
)
を
傾
(
かたぶ
)
けて、
帷
(
カアテン
)
の
隙
(
ひま
)
より
僅
(
わづか
)
に眺めらるる庭の
面
(
おも
)
に見るとしもなき目を遣りて、
当所無
(
あてどな
)
く心の
彷徨
(
さまよ
)
ふ
蹤
(
あと
)
を追ふなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
荻
(
おぎ
)
の
湖
(
こ
)
の波はいと静かなり。
嵐
(
あらし
)
の誘う木葉舟の、島隠れ行く影もほの見ゆ。折しも松の風を払って、
妙
(
たえ
)
なる琴の音は二階の一間に起りぬ。新たに来たる
離座敷
(
はなれ
)
の客は耳を
傾
(
かたぶ
)
けつ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
やすらはで寝なましものを
小夜
(
さよ
)
ふけて
傾
(
かたぶ
)
くまでの月をみしかな、は実に好い歌であるが、あれも右衛門自身の情から出た歌では無くて、人に代って其時の情状を写実に詠んだものである。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
庇
(
ひさし
)
傾
(
かたぶ
)
きたる
大
(
だい
)
なる家屋の
幾箇
(
いくつ
)
となく其道を挾みて立てる、旅亭の古看板の幾年月の
塵埃
(
ちりほこり
)
に黒みて
纔
(
わづ
)
かに軒に認めらるゝ、
傍
(
かたはら
)
に
際立
(
きはだ
)
ちて白く
夏繭
(
なつまゆ
)
の籠の日に光れる、驛のところどころ家屋
途絶
(
とだ
)
えて
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
まる/\とした月を
象
(
かた
)
どる
環
(
わ
)
を作って、大勢の若い男女が、白い地を
践
(
ふ
)
み、黒い影を落して、歌いつ
踊
(
おど
)
りつ夜を深して、
傾
(
かたぶ
)
く月に
一人
(
ひとり
)
減
(
へ
)
り
二人
(
ふたり
)
寝に行き、
到頭
(
とうとう
)
「四五人に月落ちかゝる踊かな」の
趣
(
おもむき
)
は
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
見ると日はもう
傾
(
かたぶ
)
きかけている。
初夏
(
しょか
)
の
日永
(
ひなが
)
の頃だから、
日差
(
ひざし
)
から判断して見ると、まだ四時過ぎ、おそらく五時にはなるまい。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
第二に広島某新聞の主筆は、保が初めその任に当ろうとしていたが、次で出来た学校の地位に心を
傾
(
かたぶ
)
けたために、半途にして交渉を絶った。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
皆其隣の
家
(
うち
)
の者の
住居
(
すまい
)
にしてある座敷に
塊
(
かた
)
まっているらしい。
好
(
い
)
い
塩梅
(
あんばい
)
だと、私は椽側に
佇立
(
たたず
)
んで、庭を眺めている
風
(
ふり
)
で、歌に耳を
傾
(
かたぶ
)
けていた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「おゝ
痛
(
いて
)
えまあ」と
顏
(
かほ
)
を
蹙
(
しか
)
めて
引
(
ひ
)
かれる
儘
(
まゝ
)
に
首
(
くび
)
を
傾
(
かたぶ
)
けていつた。
亂
(
みだ
)
れた
髮
(
かみ
)
の
三筋
(
みすぢ
)
四筋
(
よすぢ
)
が
手拭
(
てぬぐひ
)
と
共
(
とも
)
に
強
(
つよ
)
く
引
(
ひ
)
かれたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ば
討取
(
うちとら
)
ば此度の公事は
必定
(
ひつぢやう
)
勝利
(
しようり
)
ならん右兩人を
討取
(
うちとり
)
手段
(
てだて
)
を一
刻
(
こく
)
も
早
(
はやく
)
成
(
な
)
さるが
捷徑
(
ちかみち
)
なりと申ければ主税之助は首を
傾
(
かたぶ
)
け兩人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
とつぶやきながら、やおらその肥え太りたる手をさしのべて
煙草
(
たばこ
)
盆を引き寄せ、つづけざまに二三服吸いて、耳
傾
(
かたぶ
)
けつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
秋の初の西に傾いた
鮮
(
あざ
)
やかな
日景
(
ひかげ
)
は遠村近郊小丘樹林を
隈
(
くま
)
なく照らしている、二人の背はこの
夕陽
(
ゆうひ
)
をあびてその
傾
(
かたぶ
)
いた
麦藁帽子
(
むぎわらぼうし
)
とその白い
湯衣地
(
ゆかたじ
)
とを
真
(
ま
)
ともに照りつけられている。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
大宮の をとつ
端手
(
はたで
)
二
隅
(
すみ
)
傾
(
かたぶ
)
けり。 (歌謠番號一〇六)
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
三日月山三日の月よりなほほそく
傾
(
かたぶ
)
く山にかかる白滝
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と独り笑み
傾
(
かたぶ
)
けてまた
煙
(
けぶり
)
を吐き出しぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
呆
(
あき
)
れたる貫一は
瞬
(
またたき
)
もせで耳を
傾
(
かたぶ
)
けぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
健三の心には細君の言葉に耳を
傾
(
かたぶ
)
ける余裕がなかった。彼は自分に不自然な
冷
(
ひやや
)
かさに対して腹立たしいほどの苦痛を感じていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
有信は長左衛門のために産を
傾
(
かたぶ
)
け、深川の地所を売つて、麻布鳥居坂に
遷
(
うつ
)
つた。今伊沢信平さんの住んでゐる邸が是である。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
其
(
そ
)
の
日
(
ひ
)
も
埃
(
ほこり
)
が
天
(
てん
)
を
焦
(
こが
)
して
立
(
た
)
つた。
其
(
そ
)
の
埃
(
ほこり
)
は
黄褐色
(
くわうかつしよく
)
で
霧
(
きり
)
の
如
(
ごと
)
く
地上
(
ちじやう
)
の
凡
(
すべ
)
てを
掩
(
おほ
)
ひ
且
(
か
)
つ
包
(
つゝ
)
んだ。
雜木林
(
ざふきばやし
)
は一
齊
(
せい
)
に
斜
(
なゝめ
)
に
傾
(
かたぶ
)
かうとして
梢
(
こずゑ
)
は
彎曲
(
わんきよく
)
を
描
(
ゑが
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
卷
(
ま
)
き恐れ其不敵なるを感じ世に
類
(
たぐ
)
ひなき
惡者
(
わるもの
)
も有れば有る者とます/\心を
傾
(
かたぶ
)
けて兩人とも一味なして寶澤が
運
(
うん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
さて落着て居廻りを
視回
(
みまわ
)
すと、
仔細
(
しさい
)
らしく
頸
(
くび
)
を
傾
(
かたぶ
)
けて
書物
(
かきもの
)
をするもの、
蚤取眼
(
のみとりまなこ
)
になって
校合
(
きょうごう
)
をするもの、筆を
啣
(
くわ
)
えて
忙
(
いそがわ
)
し気に帳簿を繰るものと種々さまざま有る中に
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
欲には
酌人
(
しゃくにん
)
がちと
無意気
(
ぶいき
)
と思い
貌
(
がお
)
に、しかし愉快らしく、
妻
(
さい
)
のお
隅
(
すみ
)
の顔じろりと見て、まず三四杯
傾
(
かたぶ
)
くるところに、
婢
(
おんな
)
が
持
(
も
)
て来し新聞の号外ランプの光にてらし見つ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
煌々
(
くわうくわう
)
と光りて動く山ひとつ押し
傾
(
かたぶ
)
けて
来
(
く
)
る力はも
雲母集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
余の病気はしだいに悪い方へ
傾
(
かたぶ
)
いて行った。その時、余は夜の十二時頃長距離電話をかけられて、
硬
(
かた
)
い胸を抑えながら受信器を耳に着けた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初め抽斎は西洋
嫌
(
ぎらい
)
で、攘夷に耳を
傾
(
かたぶ
)
けかねぬ人であったが、前にいったとおりに、
安積艮斎
(
あさかごんさい
)
の書を読んで悟る所があった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
秋の日影も
稍
(
やや
)
傾
(
かたぶ
)
いて庭の
梧桐
(
ごとう
)
の影法師が背丈を伸ばす三時頃、お政は独り
徒然
(
つくねん
)
と長手の
火鉢
(
ひばち
)
に
凭
(
もた
)
れ懸ッて、
斜
(
ななめ
)
に坐りながら、
火箸
(
ひばし
)
を
執
(
とっ
)
て灰へ書く、
楽書
(
いたずらがき
)
も
倭文字
(
やまともじ
)
、牛の角文字いろいろに
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
厚く青き悲みは満ち
傾
(
かたぶ
)
きぬ。
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と思うと、すらりと
揺
(
ゆら
)
ぐ
茎
(
くき
)
の
頂
(
いただき
)
に、心持首を
傾
(
かたぶ
)
けていた細長い一輪の
蕾
(
つぼみ
)
が、ふっくらと
弁
(
はなびら
)
を開いた。真白な
百合
(
ゆり
)
が鼻の先で骨に
徹
(
こた
)
えるほど匂った。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
爺が「こゝに伊の字があります」と云ふ。「どれ/\」と云つて、進み近づいて見れば、今掘つてゐる所に接して、一の大墓石が半ば
傾
(
かたぶ
)
いて立つてゐる。台石は掘り上げた土に埋もれてゐる。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
文鳥はすでに留り木の上で
方向
(
むき
)
を換えていた。しきりに首を左右に
傾
(
かたぶ
)
ける。傾けかけた首をふと持ち直して、心持前へ
伸
(
の
)
したかと思ったら、白い羽根がまたちらりと動いた。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その声の清きに、いま来し客は耳
傾
(
かたぶ
)
けつ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
春の影は
傾
(
かたぶ
)
く。永き日は、永くとも二人の専有ではない。床に飾ったマジョリカの置時計が絶えざる対話をこの一句にちんと切った。三十分ほどしてから小野さんは門外へ出る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
留守
(
るす
)
では仕方がない。どうしたものだろうと思って、石の上に
佇
(
たた
)
ずんで首を
傾
(
かたぶ
)
けているところへ、
後
(
うしろ
)
に足音がするようだからふり向くと、
先刻
(
さっき
)
鉄嶺丸で
知己
(
ちかづき
)
になった沼田さんである。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこでこの坑夫の忠告には
謹
(
つつし
)
んで耳を
傾
(
かたぶ
)
けていたが、別段先方の注文通りに、では帰りましょうと云う返事もしなかった。そのうちいったん静まりかけた
愚弄
(
ぐろう
)
の
舌
(
した
)
がまた動き出した。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
傾
常用漢字
中学
部首:⼈
13画
“傾”を含む語句
傾斜
引傾
傾向
傾覆
傾城買
傾斜地
男傾城
傾城
打傾
傾聴
傾注
傾城遊女
緩傾斜
傾倒
傾斜面
傾蓋
傾城町
傾国
笑傾
傾聽
...