住居すまゐ)” の例文
で、百人長ソートニックは若い後妻を新らしい住居すまゐへ迎へたのさ。その新妻は美人だつた。白い生地へ紅を溶かしこんだやうな瑞々しい女だつた。
すべて名所旧蹟の近くに住居すまゐを構へるといふ事は、自分にとつては兎も角も、訪ねて来るお客達きやくだちにとつては、分り易くて便利なものだが
和尚をしやうさん、和尚をしやうさん、こちらは大層たいそういお住居すまゐですね。このむら澤山たくさんうちがありましても、こちらにかなふところはありません。村中むらぢうだい一の建物たてものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
コロボックルの住居すまゐには直徑五六間のもの徃々有り。是彼等が長大なる木材を用ゐし事有るを間接かんせつに示すものなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
わら粟幹あはがら近所きんじよからあたへられた。かれ住居すまゐうしなつただい日目かめはじめて近隣きんりん交誼かうぎつた。みなみ女房にようばうふる藥鑵やくわん茶碗ちやわんとをつててくれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
住居すまゐ其処等そこら散歩さんぽをする、……ほこらいへにはおうら留主るすをして、がために燈火ともしびのもとで針仕事はりしごとでもるやうな、つひしたたのしい心地こゝちがする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いへ間數まかず三疊敷さんでふじき玄關げんくわんまでをれて五間いつま手狹てぜまなれども北南きたみなみふきとほしの風入かぜいりよく、には廣々ひろ/″\として植込うゑこみ木立こだちしげければ、なつ住居すまゐにうつてつけとえて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
具清の家の住居すまゐと酒蔵の幾つかが焼けただけで、他家よそへ火は伸びずに鎮火しました。ほい/\とかどを走る人は、皆先刻さつきと反対の方を向いて行くやうになりました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ヂオゲンは勿論もちろん書齋しよさいだとか、あたゝか住居すまゐだとかには頓着とんぢやくしませんでした。これあたゝかいからです。たるうち寐轉ねころがつて蜜柑みかんや、橄欖かんらんべてゐればれですごされる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
つら/\此住居すまゐを見るに、いしずえもすえず掘立ほりたてたるはしらぬきをば藤蔓ふぢづるにてくゝりつけ、すげをあみかけてかべとし小きまどあり、戸口は大木のかはの一まいなるをひらめてよこ木をわたし
「義雄さんは今どちらにお住居すまゐですか? たしか大分前から富山にゐられるときゝましたが……」
念仏の家 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
旅の事ゆゑ、なほさら寒さもみるであろ。さうはいふものの、たとへ二十日はつかでも住み馴れて見ると、この離家はなれが何とはなしに古びて来て、矢つ張り二人ふたり住居すまゐらしい。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
白き大理石のうちなるほら住居すまゐとし、こゝより星と海とを心のまゝに見るをえき 四九—五一
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
住居すまゐはつひ構内こうない長屋ながやの一つであるけれど、『せい/″\かしておやくつてみせます』とつてるやうなむすめこゝろをいぢらしくおもひながら、彼女かのぢよはぱちりと雨傘あまがさをひらく。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
時折車の音の聞ゆるばかり、春は囘向院えかうゐん角力すまふの太鼓夢の中にきいて、夏は富士筑波つくばの水彩畫をてんねむの後景として、見あかぬ住居すまゐさりとて向島根岸の如き不自由はなく、娘がのぞみかなひ
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
弘の葬式をすましてこのかた、一枝はいよいよ自分ひとりがこの世に取り残されたやうな寂寞を感じ、早くこの家を引払つて、市内の賑やかなところへ住居すまゐをきめたいと思つてゐた。
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
これから案内あんないれてき、はしわたると葭簀張よしずばり腰掛こしか茶屋ぢやゝで、おく住居すまゐになつてり、戸棚とだなみつつばかりり、たないくつもりまして、葡萄酒ぶだうしゆ、ラムネ、麦酒ビールなどのびん幾本いくほんも並んで
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
長年ながねん苦労した種に芽が生えて、十分ではなくても、兎に角子息むすこが月給取になつて、呼んでれるのは嬉しいが、東京といふ処は石の上の住居すまゐ、一晩でも家賃といふものを出さずには寝られない。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
かひこみなお玉の母親の心に感じたものか眼もまばゆい金銀の糸を吐いて大きな繭を家中うちぢうにかけてりましたから今まで真暗まつくらなみじめなお玉のいへの中はまるで王様のお住居すまゐの様に光り輝いてりました。
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
くるまもあまり通らない細い横町で、至極閑静な住居すまゐであつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
人々の住居すまゐを訪ねてこなければ
長長秋夜 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
この頃の日盛りに近所の問屋とひや荷役にやくに来る馬子まごが、荷馬にうまをその夫人の住居すまゐの格子戸に繋いでおく事がよくある。
あつ氣候きこう百姓ひやくしやうすべてをその狹苦せまくるし住居すまゐからとほさそうて、相互さうごその青春せいしゆんのつやゝかなおもかげ憧憬あこがれしめるのに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
家の間数まかずは三畳敷の玄関までを入れて五間、手狭てぜまなれども北南吹とほしの風入かぜいりよく、庭は広々として植込の木立も茂ければ、夏の住居すまゐにうつてつけと見えて
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
祖母おばあさんはあのかぎようむと、くらまへ石段いしだんりて、かきあひだとほりましたが、そこにとうさんがよくあそんでたのです。味噌藏みそぐら階上うへには住居すまゐ出來できた二かいがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
が、興行こうぎやうをり桟敷さじきまた従兄弟いとこ住居すまゐで、かほはせれば、ものをはす、時々とき/″\ふほどでもないが、ともに田端たばたいへおとづれたこともあつて、人目ひとめくよりはしたしかつた……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
上結東かみけつとうは廿九軒有)此村に市右エ門とて村中第一の大家あり、幸ひ案内者の知る人なれば宿やどりをもとめたち入りて見るに、四けんに六間ほどの住居すまゐ也、主人夫婦あるじふうふ老人らうじんにて、長男せがれは廿七八
さアどうも入牢じゆらうおほけられて見ると、仕方しかたがないからつゝしんで牢舎らうしや住居すまゐをいたしてりますと、わうもお考へになつて、アヽ気の毒な事をいたした、さしたる罪はない、一いかりにまかして
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
毎夜毎夜提灯をともして遠いあなたの住居すまゐを訪ねて来て
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
人々の住居すまゐを訪ねてこなければ
となり主人しゆじん家族かぞく長屋門ながやもんの一たゝみいてかり住居すまゐかたちづくつてた。主人夫婦しゆじんふうふ勘次かんじからは有繋さすが災厄さいやくあとみだれた容子ようすすこしも發見はつけんされなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのむかし池大雅が真葛原まくずがはら住居すまゐには、別に玄関といつてへやも無かつたので、軒先のきさき暖簾のれんつるして、例の大雅一流の達者な字で「玄関」と書いてあつたさうだ。
まへさんはわたしがこの住居すまゐ御主人ごしゆじんのやうなことをひますがわたしたゞこゝの番人ばんにんです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
愛嬌あいきやうもありなか/\大腹おほつぱらひとです、布袋和尚ほていをしやうえんがあるのは住居すまゐ悉皆みなてらです、こと彼程あれほどるまでには、跣足はだしで流れ川をわたやうあやふい事も度々たび/\ツたとさ、遊ぶ時には大袋おほぶくろひろげる事もあり
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
貴重尊用きちようそんようの縮をおるには、家のほとりにつもりし雪をもその心してほりすて、住居すまゐの内にてなるたけけふりの入らぬあかりもよき一間ひとまをよく/\きよめ、あたらしきむしろをしきならべ四方に注連しめをひきわたし
次ぎの市街まちでは、小ざつぱりした住宅向きの建物が幾つとなく目に留つた。こんな住居すまゐに入つて家賃もきちん/\と払つて、加之おまけに結婚しないで済まされるものなら、この世は天国だらうと思はれた。
そして最寄もよりの巡査派出所へ寄つて、相手の住居すまゐを確めると