はね)” の例文
と、つかれてきたはねにバサバサとちからめて、ひつかうとするけれど、ラランのやつはさつさとさきびながら、いたもので
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
そのうちに、バタバタ、バタバタ、はねの音をたてながら、空の下の鳥が一羽のこらずあつまってきて、はいのまわりにおりたちました。
ぶときはそのはねじつうつくしいいろひらめきます。このとりはね綺麗きれいですが、ごゑうつくしく、「ぶっ、ぽう、そう」ときつゞけます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
春子はるこさんが、ってみると、それは、うつくしい、べにざらをるように、むらさきのぴかぴかとしたはねった玉虫たまむし死骸しがいでありました。
玉虫のおばさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
可哀かわいそうな子家鴨こあひるがどれだけびっくりしたか! かれはねしたあたまかくそうとしたとき、一ぴきおおきな、おそろしいいぬがすぐそばとおりました。
すがる波に力あり、しかと引いて水をつかんで、池にさかさまに身を投じた。爪尖つまさきの沈むのが、かんざし鸚鵡おうむの白くはねうつが如く、月光にかすかに光つた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何度なんど何度なんど雄鷄おんどりえだのぼりまして、そこからばうとしましたが、そのたびはねをばた/″\させてりてしまひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
西の方の遠くの空でさっきまで一生けんめいいていたひばりがこの時風にながされてはねへんにかしげながら二人のそばにりて来たのでした。
おきなぐさ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのなかの「壁に來て草かげろふはすがり居りきとほりたるはねのかなしさ」といふ一首に私は云ひやうもなく感動した。
此の引力が、やがて無能力者に絶大の權力を與へるやうなことになるのだから、女が威張ゐばりもすれば、ありもせぬはねのばさうとするやうになる。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さうして自分じぶん天地てんちそのはねを一ぱいひろげる。何處どこてもたゞふかみどりとざされたはやしなか彼等かれらうたこゑつてたがひ所在ありかつたりらせたりする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わしかなんぞなららないが、さぎのようなはねよわいものでは、せいぜい一か二ぐらいしかちからはないはずだ。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
見よ彼これを伸べて天にむかはせ、朽つべき毛の如く變ることなきその永遠とこしへはねをもて大氣を動かす。 三四—三六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
五二 馬追鳥うまおいどり時鳥ほととぎすに似てすこし大きく、はねの色は赤に茶をび、肩には馬のつなのようなるしまあり。胸のあたりにクツゴコ(口籠)のようなるかたあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
壁はまったく装飾なく、はねをひろげた大きいひからびた蝙蝠こうもりや、豪猪やまあらしの皮や剥製の海毛虫シーマウスや、それらが何だか分からないような形になって懸かっている。
私はまるで自分の肩にはねでも生えているように、浮きうきした心持ちで、教会の方へ軽く歩んでいました。まるで自分を天使エンジェルのように思うくらいでした。
赤とんぼは、まどはねを休めて、書生さんのお話に耳をかたむけています、かあいいおじょうちゃんと同じように。
赤とんぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
さうかとおもふと、其青年そのせいねん高等商業かうとうしやうげふ生徒せいとらしく、実業界じつげふかいはねのばさうと前途ぜんと抱負はうふなども微見ほのめかしてある。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
さっそく、はねペンと墨汁ぼくじゅうかみ用意よういして、二百ページあまりの築城書ちくじょうしょを、かたっぱしからうつしはじめました。
「すぐ側に、鳥のはねが一枚落ちて居ました。百姓家が近いから、風に飛ばされて入つて來たのかも知れませんが、親羽毛ばねで、なか/\確かりしたものでした」
水はいまに規則きそく正しい波になって、こうの中を走っていた。気ちがいのようないきおいでうずをわかせながら、材木ざいもくをおし流して、はねのようにかるくくるくる回した。
あの日はまた穀倉の暗い二階の隅に幕を張り薄青い幻燈の雪をうつしては、長持のなかにしまつてある祭の山車だしの、金の薄い垂尾たりををいくつとなく下げた、鳳凰のはね
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
それにしても他のひとりの媳はどうしたかと見まわすと、はりの上に一羽の大きい怪鳥けちょうが止まっていた。鳥は灰黒色のはねを持っていて、口喙くちばしかぎのように曲がっていた。
「あの寺子屋の段の通りだったよ。お師匠さんは矢張り浪人だった。弓矢は家に伝えても、今は仕えん君知らず、はねなき矢間重次郎やざまじゅうじろう尾羽おはち枯らしていたのだろう」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さういふ場合ばあひに、そんなどもが、におりてつて、かりのこぼしてつたはねひろつてよろこんでゐるといふうたです。それをすっかり、大人おとながはからつくつてゐるのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
かくて其冬雪中にいたり、山のいたち狐などとぼしく人家にきたりて食をぬすむ事雪中の常なれば、此ものゝ所為しわざにや、かごはやぶれて白烏しろからすはねばかりゑんの下にありしときゝし。
大佐たいさこゝろでは、吾等われら兩人ふたり意外いぐわい椿事ちんじめに、此樣こん孤島はなれじま漂着へうちやくして、これからある年月ねんげつあひだぶにはねなきかごとりむなしく故國ここくそらをばながめてくらすやうな運命うんめいになつたのをば
“白石毛”とよぶ白馬にまたがり、赤地錦の直垂ひたたれに、おどしのよろいを着、兵庫グサリの丸鞘まるざやの太刀をはき、重籐しげどうの弓をお手に、こうはね征矢そやをえびらに負っておられたという。
... こときじなんぞは古くなるとはねが抜けて来てそんなのはモー食べられないと思っていました」お登和嬢「そこに肝腎かんじんな事があります。古いのが良いと申して腐ったのではありません。 ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
よく見ると、堆い書物の隙間に大きな蝶が一つはねあしとで逃げ廻っていた。小猫は別にそれを取ろうとするでもなく、身体を横にしたり、とんぼ返りをしたりしてそれにじゃれついていた。
掠奪せられたる男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そうして、その光っているはねをふるわしているかと見るうちに、とうとう死んでしまった。それがどういうわけであるのか、彼には分からなかったが、おそらく彼女の息に触れたがためであろう。
文学は伝記にあらず、記実にあらず、文学者の頭脳は四畳半の古机にもたれながらその理想は天地八荒の中に逍遥しょうようして無碍むげ自在に美趣を求む。はねなくして空にかけるべし、ひれなくして海に潜むべし。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
こう言いましたからそこを踏んで落ちて隱れておりました間に、火は燒けて過ぎました。そこでその鼠がその鏑矢を食わえ出して來て奉りました。その矢のはねは鼠の子どもが皆食べてしまいました。
雪のやうな薔薇ばらの花、雪の色、白鳥はくてうはねの色、雪のやうな薔薇ばらの花、おまへは雪の脆いことを知つてゐるから、よほど立派な者のほかには、その白鳥はくてうはねを開いてみせない、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
とどろきわたる媢嫉ばうしつのいけすのなかにはねまはるはねのある魚は
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
不圖ふと自分は柔いはねで撫で開けられるやうに靜かに目をいた。
女の子 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
電灯にむれとべる羽蟻はありおのづからはねをおとしてたたみをありく
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
つばくらのはねにしたたる春雨をうけてなでむかわが朝寝髪
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
アキルリュウスを勵ましてはねある言句陳じ曰ふ、 215
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
山のかぜ花に吹くなりひとはね千里ちさとおほはん大鳥おほとりもがも
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
つばくらめはねうちつけぬ額づける道士も岩の一つと思ひ
はねうちたたきし 繁き海波かいはを 物語らず
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
輝くはねかすめ飛びふまに
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ささやきは細蜂すがるはねとひるがへり
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
おのはねの抜けしをくわ羽抜鳥はぬけどり
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
あわただしくはねうちいそぐ
故郷の花 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
死ぬるを忘れた青い鳥のはね
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
かすかにはたくはねおと
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
四方よもりたるはね
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
やさしき鳩のはねたゆく
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)