)” の例文
新字:
何方どつちいたツて、人の影が一つ見えるのではない。何處どこまでもくらで、其の中に其處そこらの流の音が、夜の秘事ひめごと私語ささやいてゐるばかり。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
『十八丁だすて、東光院まで。……この道をぐに行きますと、駐在所ちうざいしよがあつて、其處そこから北へ曲るんやさうだす。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
致し斯成かくなるうへ重置かさねおかれ二ツにせらるゝとも致し方無く思ひきつて云ひけれど忠兵衞儀は妻に未練みれんの有る處より私しばかり殺すわけにも相成あひならず其場を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
火箸ひばしさきんでて、それからつゞいて肉汁スープなべや、さら小鉢こばちあめつてました。公爵夫人こうしやくふじんは、其等それらつをも平氣へいきりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
こゝろ不覺そゞろ動顛どうてんして、匇卒いきなりへや飛出とびだしたが、ばうかぶらず、フロツクコートもずに、恐怖おそれられたまゝ、大通おほどほり文字もんじはしるのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
マーキュ 出來できた。此上このうへ洒落競しゃれくらべぢゃぞ。これ、足下おぬしそのうすっぺらなくつそこは、いまこと/″\って、はて見苦みぐるしいあししゃらうぞよ。
矢庭に平次の身體を横抱きにしたガラツ八、有無を言はせず、ぱだかのまゝ、猛然と焔の中に突進したのです。
重詰ぢうづめ中味なかみのまゝつてかへことはない、とおもつたが、成程なるほどわたし家内かないだつて、つらはどうでも、かみつたをんなが、「めしあがれ。」とその火事場くわじばなか
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おれはさういふ手紙でもに受けられないから困るよ。おれには母の氣持はよく讀めてゐるつもりだ。
母と子 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
全く血の氣がなくなつて、消し忘れたうす暗いランプの光りにかの女の額のさをな色が見える。こちらには、それが、實際、死の命令者たる權威でもあるやうだ。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
このをとこことけるな、なにつてもうそおもへ、——おれはそんな意味いみつたへたいとおもつた。しかしつま悄然せうぜんささ落葉おちばすわつたなり、ぢつとひざをやつてゐる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かずなかにはにうけて此樣こん厄種やくざ女房にようぼにとふてくださるかたもある、たれたらうれしいか、うたら本望ほんもうか、れがわたしわかりませぬ、そも/\の最初はじめからわたし貴君あなたきできで
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
されどともに之を見て彼は青銅の槍さけつ、 525
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
木原こばらした路くだりに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
黄塵くわうぢん濛々そう/\々として、日光さへばむで見える大都たいとの空に、是が二百まんの人間を活動させる原動げんどう力かと思はれる煤煙はいえんが毒々しくツ黒に噴出し
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ぐに行かうとしても、一筋道が長々と北へ續いてゐるだけで、當てもなく歩くといふ氣にはなれなかつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ロミオ はて、ぐるしいはぢ駄洒落だじゃるとは足下おぬしのこと。それ、もう、うすっぺらな智慧ちゑそこえるわ!
吾助は得たりと太刀たち振上ふりあげたゞ一刀に討たんとするやお花は二ツと見えし時友次郎がえいと打たる小柄こづか手裏劍しゆりけんねらたがはず吾助が右のひぢに打込みければ忽ち白刄しらは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこ女王樣ぢよわうさま眼鏡めがねをかけ、氣味きみわるほど帽子屋ばうしや凝視みつめられました、帽子屋ばうしやさをになつてふるへてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「憎い奴等だ。地獄の釜の中へ、逆樣さかさまに叩き込み度いほど憎い奴等だが、仕組みが巧過うますぎて、手も出せない——口惜しいがになる證據が一つも無いのだよ」
みぞつかつた麥藁帽子むぎわらばうしが、たけかは一所いつしよに、プンとにほつて、くろになつて撥上はねあがる。……もう、やけになつて、きしきるむし合方あひかたに、夜行やかう百鬼ひやくき跳梁跋扈てうりやうばつこ光景くわうけいで。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つらねてきしはそもいつのゆめになりて精靈棚しやうりやうだなこものうへにもおもてだちてはまつられずさりとてはなかうらめしゝつきあき草葉くさばもろ白玉しらたまつゆこたへてえかぬる
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
相變らずぴかり、ぴかりからだを光らしてゐる。それからまたふうわ、ふうわ飛んで來るのをくらな中に待伏まちぶせしてゐて笹の葉か何んかで叩き落す。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
玄竹げんちく意氣揚々いきやう/\と、ふねなかへ『多田院御用ただのゐんごよう』の兩掛りようがけをゑて、下男げなん二人ふたりそれを守護しゆごする位置ゐちひざまづいた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
急ぎしに※らずも踏迷ふみまよあへぎ/\漸々やう/\秋葉の寶前はうぜんに來りしが此時ははや夜中にてゴーン/\となりしは丑刻やつかねなれば最早もはや何へも行難しふもとへ下ればおほかみ多く又夜ふけに本坊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と立直るところを、足をさらはれて、さすがの八五郎、逆樣さかさまに引くり返つて了ひました。
文字もんじけて人中ひとなかけつくゞりつ、筆屋ふでやみせへをどりめば、三五らう何時いつみせをば賣仕舞うりしまふて、腹掛はらがけのかくしへ若干金なにがしかをぢやらつかせ、弟妹おとうといもとひきつれつゝきなものをばなんでもへの大兄樣おあにいさん
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なにしろみな顏色かほいろさをです
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五日ばかりの月も落ちて了ツて、四方あたりが急にくらになると、いや螢の光ること飛んで來ること! 其の晩は取分け螢の出やうが多かツたやうに思はれた。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「親分さん、小僧の言ふことなどをに受けないで下さい。そいつは何んでもありませんよ」
いづれもうれしさうにして、ふね近付ちかづいてるのを、退けるやうにして、天滿與力てんまよりききにふねへ、雪駄せつたあしまたんだ。途端とたん玄竹げんちくはいつにないらいのやうに高聲たかごゑで、叱咜したした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
足のかたちでもこし肉付にくつきでも、またはどうならちゝなら胸なら肩なら、べて何處どこでもむツちりとして、骨格こつかくでも筋肉きんにくでも姿勢しせいでもとゝのツて發育はついくしてゐた。加之それにはだしろ滑々すべ/″\してゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
竹丸はともに母の方を見ることが出來なくなつた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
正直たうに話してもらひたいが