昼間ひるま)” の例文
旧字:晝間
ひとりきりになると、男はまどぎわにいって、まだ昼間ひるまだというのに、カーテンをひいた。へやのなかが、きゅうに、うす暗くなった。
茫然ぼんやりしてると、木精こだまさらふぜ、昼間ひるまだつて用捨ようしやはねえよ。)とあざけるがごとてたが、やがいはかげはいつてたかところくさかくれた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから毎日、昼間ひるま甚兵衛じんべえがでかけ、よるになるとさるがでかけて、人形の行方ゆくえさがしました。けれどなかなか見つかりませんでした。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
かれは、東京とうきょうへきてから、ある素人家しろうとやの二かい間借まがりをしました。そして、昼間ひるま役所やくしょへつとめて、よるは、夜学やがくかよったのであります。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昼間ひるま一、二度帰って来たことがあるが、夜は毎晩どこをか泊まりあるいているとの事であった。半七ははらのなかで笑いながら聴いていた。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのときからからすとふくろうとは、かたき同士どうしになりました。そしてふくろうはからすのしかえしをこわがって、昼間ひるまはけっして姿すがたせません。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「いや、昼間ひるまはそんなことはありません。昼間なら、じぶんをも家族かぞくをもまもれます。」と、牡羊はつのをふりながら言いました。
昼間ひるまくしこしらへ、夜だけ落語家はなしかでやつて見ようと、これから広徳寺前くわうとくじまへの○○茶屋ぢややふのがござりまして、其家そのいへ入口いりぐち行燈あんどんけたのです。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
クリストフはいつもよるよく眠れないで、夜の間に昼間ひるま出来事できごとを思いかえしてみるくせがあって、そんな時に、小父おじはたいへん親切しんせつな人だと考え
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
昼間ひるま見ると其処そこ丈色が新らしい。うしろから女がいて来る。三四郎は此帽子に対して少々極りがわるかつた。けれどもいて来るのだから仕方がない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
龍太郎りゅうたろうと伊那丸は、血刀をふって、追いちらしたうえ、昼間ひるまのうちに、見ておいた本丸をめがけて、かけこんでいった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うちなかは、昼間ひるまなのに、電灯でんとうがついていたが、これはむろん、事件発生当時じけんはっせいとうじからつけつぱなしになつていたのだろう。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
要吉は、夢の中で、そういいながら、ごろんとひとつがえりをうつと、昼間ひるまのつかれで、今度は夢もなんにも見ない、深いねむりにおちていきました。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
甲板球戯デツキビリヤアド我我われわれに最も好く時間を費させつ運動にもなるが、昼間ひるまに限られた遊戯であつて其れもき易い日本人には二時間以上続け得ない様である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
下士はよき役をつとめかねて家族の多勢たぜいなる家に非ざれば、婢僕ひぼくを使わず。昼間ひるまは町にでて物を買う者少なけれども、夜は男女のべつなく町にいずるを常とす。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
つれてきたときより三ばいも大きくなり、夜はよく家のばんをし、昼間ひるまは林太郎のいうことをよく聞いて、いっしょにふざけながら遊んでもおしっこをもらしたり
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
この家では、昼間ひるまはいろいろの職業が営まれているということであったが、しかしいつの昼でもさほど物音も聞えず、その物音も夜になればみんな差控えられた。
むしむしする昼間ひるまの暑さは急にえとなって、にわかに暗くなった部屋へやの中に、雨から逃げ延びて来たらしい蚊がぶーんと長く引いた声を立てて飛び回った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
彼の郷里熊本などは、昼間ひるまは百度近い暑さで、夜も油汗あぶらあせが流れてやまぬ程蒸暑むしあつい夜が少くない。蒲団ふとんなンか滅多に敷かず、ござ一枚で、真裸に寝たものだ。此様こんなでも困る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ふけの二条にじょうの城の居間に直之の首を実検するのは昼間ひるまよりもかえってものものしかった。家康は茶色の羽織を着、下括したくくりのはかまをつけたまま、式通りに直之の首を実検した。
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
片側かたかは朝日あさひがさし込んでるので路地ろぢうち突当つきあたりまで見透みとほされた。格子戸かうしどづくりのちひさうちばかりでない。昼間ひるま見ると意外に屋根やねの高いくらもある。忍返しのびがへしをつけた板塀いたべいもある。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
が、太陽がかんかん照ってぎらぎらする昼間ひるまであったにも拘らず、海賊どもはもう分れ分れになって森の中を走ったり喚いたりせずに、互に並んで歩き、息をひそめて話した。
その時、家の中ではおばあさんが、昼間ひるま旅の人から習ったお経を始めるところでした。
でたらめ経 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
日がな終日ひねもす昼間ひるまから、今日けふの朝から、昨日きのふから、遠い日の日のゆふべから
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これは箸間はしまと書き、はしで食べる食事のあいだのものだから、そういうのだと説明してくれる人もあるが、これはこじつけで、じっさいは昼間ひるまのマと同じく、ただ中間の食事というに過ぎぬことは
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
明日になすったらいいではありませんかと母親が言ったが、しかし昼間ひるま公然と移転して行かれぬわけがあった。熊谷における八年の生活は、すくなからざる借金をかれの家に残したばかりであった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
さて、夜が明けて当日になると、昼間ひるまはなかなか声が出せない。
昼間ひるまは御家隷達が鋤鍬を使って
もう、ひやひやと、にしむあきかぜいていました。はらっぱのくさは、ところどころいろづいて、昼間ひるまからむしごえがきかれたのです。
少年と秋の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おくにはきゃくがきているのだ。昼間ひるま飯屋めしやでぶつかった地蔵行者じぞうぎょうじゃ菊村宮内きくむらくないを引っぱってきて、ひさしぶりにけるのをわすれて話しているあんばい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、座敷から、昼間ひるま買つた百合ゆりの花を取つてて、自分の周囲まはりき散らした。白い花瓣くわべん点々てん/\として月のひかりえた。あるものは、木下やみほのめいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さてこまつたは、さむければ、へい、さむし、あつければあつ身躰からだぢや、めしへば、さけむで、昼間ひるまよる出懸でかけて、ぬま姫様ひいさまるはえが、そればかりではきてられぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二階のは電燈で昼間ひるまより明るく葉子には思われた。戸という戸ががたぴしと鳴りはためいていた。板きらしい屋根に一寸くぎでもたたきつけるように雨が降りつけていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
するうちつい昼間ひるまつかれが出て、人もいぬねむるともなく、ぐっすり寝込ねこんでしまいました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あたりには大きなすぎの木が立ちならんでいて、昼間ひるまでもおそろしいようなところでした。けれども甚兵衛じんべえは一心になって、どうか上手じょうずな人形使いになりますようにと、神様かみさまねがいいました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
昼間ひるまの感情の激動で頭が乱れてもいたし、粗野な振舞のこの生写いきうつしの人間と一緒にそこにいるのが夢のように思れもするので、チャールズ・ダーネーはどう答えていいかまごついた。
このあたりで女達をんなたち客引きやくひき場所ばしよは、目下もくか足場あしばかゝつてゐる観音堂くわんおんだう裏手うらてから三社権現じやごんげんまへ空地あきち、二天門てんもんあたりから鐘撞堂かねつきだうのある辨天山べんてんやましたで、こゝは昼間ひるまから客引きやくひきをんながゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
抱擁だきしめられたとき昼間ひるま塩田えんでんが青く光り
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
昼間ひるまがそうあったばかりでなしに、よるになってるときも、みんなは、おかあさんのそばにたいといって、その場所ばしょあらそいました。
お母さまは太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
万歳を唱へた晩、与次郎が三四郎の下宿へた。昼間ひるまとはつて変つてゐる。堅くなつて火鉢のそばすはつてさむい寒いと云ふ。其かほがたゞさむいのではいらしい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とどろき又八がバカ軍師とののしったわけである。昼間ひるまから、攻守両意見にわかれて、反対していたのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むらたれにかもせて、あやしさをたゞしぶきごとらさう、とひとげぬのではいけれども、昼間ひるまさへ、けてよるつて、じやうぬま三町四方さんちやうしはう寄附よりつかうと兄哥せなあらぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
往来に出るとその旅館の女中が四五人早じまいをして昼間ひるまの中を野毛山のげやまの大神宮のほうにでも散歩に行くらしい後ろ姿を見た。そそくさと朝の掃除を急いだ女中たちの心も葉子には読めた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
つきひかりばかりがこうこうと、昼間ひるまのようにかがやいていました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
夜の追剥おいはぎ昼間ひるま本市シティーで商売をしている男であった。
昼間ひるまあアか豆頭巾まめづきん
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
電信柱でんしんばしらはいうに、昼間ひるま人通ひとどおりがしげくて、おれみたいなおおきなものがあるけないから、いまごろいつも散歩さんぽするのにめている、とこたえた。
電信柱と妙な男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
気勢けはひが、やがて昼間ひるま天守てんしゆむねうへいたほどに、ドヽンとすごおとがして、足代あじろつたした老人らうじんしづめてつた手網であみ真中まんなかあたりへ、したゝかなものちたおと
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
昼間ひるまのうちに、あんな準備をして置いて、よるになつて、交通其他の活動がにぶくなる頃に、此静かな暗い穴倉で、望遠鏡のなかから、あの眼玉めだまの様なものを覗くのです。さうして光線の圧力を試験する。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
夏の昼間ひるま
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)