“團扇(うちは)” の例文
新字:団扇
姿(すがた)は婀娜(あだ)でもお妾(めかけ)ではないから、團扇(うちは)で小間使(こまづかひ)を指圖(さしづ)するやうな行儀(ぎやうぎ)でない。「少(すこ)し風(かぜ)過(す)ぎる事(こと)」と、自分(じぶん)でらふそくに灯(ひ)を入(い)れる。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
團扇(うちは)ばかりは新しいものにかぎる。この節の東京の團扇は粗製に流れて來たかして、一夏の間の使用にすら耐へないのがある。
短夜の頃 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
安瀬戸物か團扇(うちは)の繪にしかふさはない山の樣に言はれないでもないが、この沼津に移住して以來、毎日仰いで見てゐると
番町(ばんちやう)の旦那(だんな)といふは口數(くちかず)少(すくな)き人(ひと)と見(み)えて、時(とき)たま思(おも)ひ出(だ)したやうにはた/\と團扇(うちは)づかひするか、卷煙草(まきたばこ)の灰(はひ)を拂(はら)つては又(また)火(ひ)をつけて手(て)に持(もつ)てゐる位(くらゐ)なもの
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お葉は團扇(うちは)でちよいと打つ眞似をするのです。川柳の『團扇では憎らしいほど叩かれず』と言つた風情です。
「午後三時三十分だしたなア。」と、道臣は大きな銀側時計を弄(いぢ)りつゝ言つたが、軈(やが)て居室(ゐま)へ退いてまた酒を始めた。京子の枕元には、お時が一人團扇(うちは)を持つて附いてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
種々(しゆ/″\)整(とゝの)へ江戸錦繪淺草海苔館林(たてばやし)團扇(うちは)其外田舍(ゐなか)相應(さうおう)の品々を買求(かひもと)め荷造(にづく)りをして町内の飛脚屋(ひきやくや)十七屋(とをつや)より先へ廻(まは)し夫より名主(なぬし)家主町代(ちやうだい)は申に及ばず懇意(こんい)の先々へ暇乞(いとまごひ)に參りしに何れも餞別(せんべつ)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「屹度(きつと)左(さ)うよ」と答(こた)へながら、暗(くら)がりで團扇(うちは)をはた/\動(うご)かした。宗助(そうすけ)は何(なに)も云(い)はずに、頸(くび)を延(の)ばして、庇(ひさし)と崖(がけ)の間(あひだ)に細(ほそ)く映(うつ)る空(そら)の色(いろ)を眺(なが)めた。二人(ふたり)は其儘(そのまゝ)しばらく默(だま)つて居(ゐ)たが、良(やゝ)あつて
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
(團扇(うちは)を取る。)このごろは晝間でも藪つ蚊が出て來やあがる。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
門(かど)、背戸(せど)の清(きよ)き流(ながれ)、軒(のき)に高(たか)き二本柳(ふたもとやなぎ)、——其(そ)の青柳(あをやぎ)の葉(は)の繁茂(しげり)——こゝに彳(たゝず)み、あの背戸(せど)に團扇(うちは)を持(も)つた、其(そ)の姿(すがた)が思(おも)はれます。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『僕は今度、亞米利加から船中で團扇(うちは)で客を煽(あふ)ぐ商賣をやつて來た。これはその金の殘りだ。これで一杯飮まうよ。』
樹木とその葉:03 島三題 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
あの莚(むしろ)の上(うへ)を御覽(ごらん)と言(い)つて見(み)せました。そこではお釜(かま)から出(だ)したお茶(ちや)の葉(は)をひろげて團扇(うちは)であほいで居(ゐ)る人(ひと)があります。あの焙爐(ほいろ)の方(はう)を御覽(ごらん)と言(い)つて見(み)せました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あきれたものだのと笑つてお前なぞは其我まゝが通るから豪勢さ、此身になつては仕方がないと團扇(うちは)を取つて足元をあふぎながら、昔しは花よの言ひなし可笑しく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは團扇(うちは)を二枚合せて、芝居で使ふ紫色の小袖を着せ、風呂敷で拵へた頭をつけた、不思議な人形で、主人夫婦や叔母さんが、これを怪物と見たのは當然のことでした。
聞て幸八は心得(こゝろえ)其夜の中に部屋(へや)から撰(えらん)で呉服屋の六團扇(うちは)の源入墨(いれずみ)七箱根傳助小僧の吉品川の松抔(など)何(いづれ)も當宿の腕(うで)こき六人體(からだ)へは赤合羽(あかがつぱ)を羽折(はをり)各自向ふ鉢卷(はちまき)をなし腰(こし)に挾(はさみ)しは叺莨入(かますたばこいれ)手には竹の息杖(いきづゑ)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と向(むき)を替(か)へて、團扇(うちは)を提(さ)げて、すらりと立(た)つた。美人(びじん)は庭(には)を差覗(さしのぞ)く……横顏(よこがほ)は尚(な)ほ、くつきりと、鬢(びん)の毛(け)は艷増(つやま)したが、生憎(あいにく)草(くさ)は暗(くら)かつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あきれたものだのと笑(わら)つてお前(まへ)などは其我(そのわが)まゝが通(とほ)るから豪勢(ごうせい)さ、此身(このみ)になつては仕方(しかた)がないと團扇(うちは)を取(と)つて足元(あしもと)をあふぎながら、昔(むか)しは花(はな)よの言(い)ひなし可笑(をか)しく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
黄色い團扇(うちは)を額のところに差して、復た町の方へ飛び出して行くといふ風でした。
「あの棒に着物を引つ掛けて、上へ團扇(うちは)か何にか差したのを、木戸の外の下水の縁へでも立てて置くと、面喰つた若い娘は、眞つ暗な晩だつたら、背の高い男と見るやうなことはないだらうか」
はツと思(おも)つたのは、凄(すさま)じい音(おと)で、はた、と落(おと)した團扇(うちは)が、カラ/\と鳴(な)つて、廂屋根(ひさしやね)の瓦(かはら)を辷(すべ)つて、草(くさ)の中(なか)へ落(お)ちたのである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
返(かへ)す團扇(うちは)に思(おも)ひを寄(よ)せし時(とき)憎(に)くからず打笑(うちゑ)みし口元(くちもと)なんど、只(たゞ)眼(め)の先(さき)に沸(わ)き來(き)たりて、我(わ)れ知(し)らず沈思瞑目(ちんしめいもく)することもあり、さるにても何人(なにびと)の住家(すまゐ)にや、人品(ひとがら)の高尚(けだか)かりしは
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御神輿(おみこし)の柱(はしら)の、飾(かざり)の珊瑚(さんご)が𤏋(ぱつ)と咲(さ)き、銀(ぎん)の鈴(すゞ)が鳴据(なりすわ)つて、鳳凰(ほうわう)の翼(つばさ)、鷄(にはとり)のとさかが、颯(さつ)と汗(あせ)ばむと、彼方(あつち)此方(こつち)に揉(も)む状(さま)は團扇(うちは)の風(かぜ)、手(て)の波(なみ)に、ゆら/\と乘(の)つて搖(ゆ)れ
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
洗(あら)ひ髮(がみ)の束髮(そくはつ)に薔薇(ばら)の花(はな)の飾(かざ)りもなき湯上(ゆあが)りの單衣(ゆかた)でたち、素顏(すがほ)うつくしき夏(なつ)の富士(ふじ)の額(ひたひ)つき眼(め)に殘(のこ)りて、世(よ)は荻(をぎ)の葉(は)に秋風(あきかぜ)ふけど螢(ほたる)を招(ま)ねきし塗柄(ぬりゑ)の團扇(うちは)、面影(おもかげ)はなれぬ貴公子(きこうし)あり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と敷居(しきゐ)に、其(そ)の袖(そで)も帶(おび)も靡(なび)くと、ひら/\と團扇(うちは)が動(うご)いて、やゝ花(はな)やかな、そして清(すゞ)しい聲(こゑ)して
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
障子(しやうじ)を透(す)かして、疊(たゝみ)凡(およ)そ半疊(はんでふ)ばかりの細長(ほそなが)い七輪(しちりん)に、五(いつ)つづゝ刺(さ)した眞白(まつしろ)な串團子(くしだんご)を、大福帳(だいふくちやう)が權化(ごんげ)した算盤(そろばん)の如(ごと)くずらりと並(なら)べて、眞赤(まつか)な火(ひ)を、四角(しかく)な團扇(うちは)で、ばた/\ばた
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
人(ひと)を見(み)ると、顏(かほ)を曲(ま)げて、肩(かた)を斜(はすつ)かひにしながら、一息(ひといき)、ばた/\、ばツと團扇(うちは)を拍(たゝ)く。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
すとんきような聲(こゑ)を出(だ)し、螇蚸(ばつた)壓(おさ)へたり、と云(い)ふ手(て)つきで、團扇(うちは)を挾(はさ)んで、仰向(あふむ)いた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
以前(いぜん)は、此(こ)の邊(へん)の樣子(やうす)もこんなでは無(な)かつた。恁(か)う涼風(すゞかぜ)の立(た)つ時分(じぶん)でも、團扇(うちは)を片手(かたて)に、手拭(てぬぐひ)を提(さ)げなどして、派手(はで)な浴衣(ゆかた)が、もつと川上(かはかみ)あたりまで、岸(きし)をちらほら徜徉(ぶら)ついたものである。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
が、太鼓腹(たいこばら)を突出(つきだ)して、でれりとして、團扇(うちは)で雛妓(おしやく)に煽(あふ)がせて居(ゐ)るやうなのではない。片膚脱(かたはだぬ)ぎで日置流(へぎりう)の弓(ゆみ)を引(ひ)く。獅子寺(ししでら)の大弓場(だいきうば)で先生(せんせい)と懇意(こんい)だから、從(したが)つて弟子(でし)たちに帳面(ちやうめん)が利(き)いた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ふと思出(おもひだ)したれば、鄰國(りんごく)富山(とやま)にて、團扇(うちは)を賣(う)る珍(めづら)しき呼聲(よびごゑ)を、こゝに記(しる)す。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
團扇(うちは)やア、大團扇(おほうちは)。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
團扇(うちは)やあ。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)