した)” の例文
はるになれば、毎日まいにちのように、ああしたそらられるとおもったからです。そして、かわいらしい小鳥ことりどもが、自分じぶんしたってやってくる。
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
みつつにつてたおしな卯平うへいしたうて確乎しつかうちめたのはそれからもないことである。へびはなし何時いつにか消滅せうめつした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
くるひまつはり、からまつて、民子たみこはだおほうたのは、とりながらもこゝろありけむ、民子たみこ雪車そりのあとをしたうて、大空おほぞらわたつてかりであつた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ベンヺ そのカピューレットの例會れいくわいに、足下きみしたふローザラインが、このヹローナで評判ひゃうばんのあらゆる美人達びじんたち同席どうせきするは都合つがふぢゃ。
長蛇ちょうだいっした伊那丸いなまるは、なおも、四、五けんほど、追いかけてゆくのを、待てと、坂部十郎太さかべじゅうろうたの陣刀が、そのうしろからしたいよった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
互にしたい合った結果、とうとう夫に見つかって殺されるという悲しい物語りで、ダンテの神曲の中とかに書いてあるそうであった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「汝があとに残ったら姫にそういえ、津の茅原は心では最後までおしたい申したと伝えてくれ、我がのこらば汝の思うところを伝えよう。」
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
義仲寺にうつして葬礼義信をつくし京大坂大津膳所ぜゞ連衆れんじゆう被官ひくわん従者ずさまでも此翁のなさけしたへるにこそまねかざるに馳来はせきたる者三百余人なり。
するとへびのひめは、皇子のおあとをしたって、急いで別の船をしたてて、海の上をきらきらと照らしながら、どんどん追っかけて来ました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
女が反対に自分から逃げようとすればするほど、女がしたわしくなるとかきいています。そこに手練手管てれんてくだとかいうものが出来るのでしょう。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
李張は燭火ともしびの前に浮き出た花のような姿を見たうえに、奥ゆかしいその物ごしを見せられてますますその女がしたわしくなった。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
んでゐるむねには、どんな些細ささいふるえもつたはりひゞく。そして凝視みつめれば凝視みつめほどなんといふすべてがわたししたはしくなつかしまれることであらう。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
しかし自分が奇異に思うことは、そう云う風に常にしたったのは主として母の方であって、父に対してはさほどでもなかった一事である。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わたくしなどは随分ずいぶん我執がしゅうつよほうでございますが、それでもだんだん感化かんかされて、肉身にくしんのお祖父様ぢいさまのようにおした申上もうしあげ、勿体もったいないとはりつつも
くろってじゃれるのは、おまえしたっているからだよ。あたしゃまた、わるいいたずらでもされたかとおもって、びっくりしたじゃァないか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
但馬守たじまのかみなつかしさうにつて、築山つきやま彼方かなたに、すこしばかりあらはれてゐるひがしそらながめた。こつな身體からだがぞく/\するほどあづまそらしたはしくおもつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
なにか耳の底できこえているようなこころもちがして、そのしたい乍ら、その音を慕い求めて、この道をやって来たのに間違いはないが——。
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
日が次第に、この以後くらくなる。唄の声(どこからか聞こえる)ぬしを松戸で、目を柴又しばまたき、小岩したえど、真間ままならぬ。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
私を呼んでいるのではないけれども、いまのあの子に泣きながらしたわれているその「おねえちゃん」をうらやましく思うのだ。
女生徒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
町「さア/\、もう覚悟の我が身、なんの怖いこともない、早く帰ってくれ、さゝ帰ってくれ、まだわししたっていますか」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
子供たちには、それがよくわかると見え、おまわりさんと言ってしたってくれます。大人おとなの人には、まだよくわかってもらえないようで、残念ですがね
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
道庵の跡をしたい、これにくっつき、すりつき、もたれかけ、さんざんに牽制運動を試みようとする作戦が熟しました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
青木さんの弟が妾をしたっていらっしゃるとする。そう仮定したとしても、それがあの方としては、一番本当の生活じゃございませんでしょうかしら。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ですから部下ぶか兵士へいしたちも田村麻呂たむらまろしたいきって、そのためには火水ひみずの中にもとびむことをいといませんでした。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
したわしく存じおりながら今までご尊顔を拝すことも出来ず残念に存じておりましたところ、今回心を決しまして
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あるいは万徳が互をしたって一堂に相会する姿と見てもよい。そこには美の浄土相が見えるのである。本来人間が住むべき幸福な平和な場所なのである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
フランクの周囲には、その風格をしたい、その作品に傾倒する青年達が集まった。まさに桃李とうり物言ものいわずの感である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「仕方のない奴だ。ああ取り乱してはどうにもならぬ。よし、拙者、あとをしたって、間違いのないように致そう」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
四十五年の御代みよ長く、事しげき代の御安息みやす無く、六十路むそぢあまり一年ひととせ御顔みかおに寄する年の波、御魂みたましたふ西の京、吾事終へつとうそむきて、君きましぬ東京に。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
うつくしい郡司の娘が、恋人をしたって身を投げたという湖は、それは先生、田沢という姓名からのお誤りでしょう。田沢いなぶねは、ピンピンしています。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それは決してひとりでは生えないで、仲間をしたって、いつも好んで大勢の友達や肉親に取巻かれて生えていた。
きのふまで君をしたひしも、けふはたちま怨敵あたとなりて、本意ほいをもげたまはで、いにしへより八九あとなきつみを得給ひて、かかるひなの国の土とならせ給ふなり。
した逃亡かけおちして來りし處喜八が右の一件に付兩人共生ては居られぬ其原そのもとの起りは吉之助殿初瀬留が故なりとてすでくびれんとするを漸々やう/\なだすかおき何卒なにとぞ喜八が罪を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
有王 若君は夜も昼も父母をおしたいなされ、「母上はいずくにゆかれた! 鬼界きかいが島とやらへ連れてゆけ。」
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
たとえばぼう令嬢をしたいたるも実業家ならねばせしめぬというを聞き、実業を志望したというがごとき滑稽こっけい的動機すらも現にわが輩の耳にしたところである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
雲は竜を呼び、竜は雲を望んで、相求めしたいあい二ふりの刀が、同じ真夜中にしくしくと泣き出すという。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
二人はその継母けいぼくなつき、たまに自分達の生みの母が来ても、小母おばさん小母さんと言うが、継母にはおッ母さんおッ母さんとしたい寄って来る有様ありさまであった。
玄関を上がつて右が旧塾きうじゆくと云つて、ここには平八郎が隠居する数年前から、その学風をしたつて寄宿したものがある。左は講堂で、読礼堂どくれいだうと云ふ匾額へんがくが懸けてある。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あたかも郷里よりしたい来りける門弟のありしを対手あいてとして日々髪結洗濯のわざをいそしみ、わずかに糊口ここうしのぎつつ、有志の間に運動して大いにそが信用を得たりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
毎夜のように訪れてきて私を見護り顔な様子に気づくにつれて、だんだんしたしさが募ってゆきました。
聖アンデルセン (新字新仮名) / 小山清(著)
聖地をした巡礼じゅんれいのように、皆ふしぎに東海岸に行きたがる。東海岸に行けば米も塩も魚も豊富にある。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
おそろしきはくまでおそろしく、ちりほどのことにしみぬべし、男女なんによなかもかヽるものにや、甚之助じんのすけ吾助ごすけしたふはれともことなりてあはものなれど、わがこのひと一言いちごんおも
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
例えばね、先方でも君のことをしたっているとする。……いいかい?……いつまでも君が愛を打明けてくれるのを待っている。……待っても待っても打明けてくれない。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
西行さいぎょう法師や連歌師の宗祇そうぎの跡をしたって、生涯を笠や草鞋に托することがその希望であったのであるが、また無妻で無一物で孤独の生活をしておる芭蕉の如き人に在っては
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
かれ最愛さいあいちゝ濱島武文はまじまたけぶみは、はるかなる子ープルスで、いま如何いかなるゆめむすんでるだらう、少年せうねんゆめにもかくした母君はゝぎみ春枝夫人はるえふじんは、昨夜さくやうみちて、つひその行方ゆくかたうしなつたが
なおいやな事はこういう厳粛げんしゅく法会ほうえの時に当ってとにかく金を沢山貰えるものですから、貧乏な壮士坊主の常としてうまい肉を余計喰う奴もありまた小僧をしたう壮士坊主もある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
あたかも河の本流に注ぐ支流のそれのように、人々が皆おのがじしにここを目ざし、ここの美しい灯をしたうてつどい寄って来る光景が眼に見えるような気がして、非常に愉快だった。
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
飼犬かいいぬが主人の少年の病死の時その墓を離れず食物もとらずとうとう餓死がしした有名な例、鹿しかさるの子が殺されたときそれをしたって親もわざと殺されることなどたれでも知っています。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おまえたちが朝倉先生をしたう気持なんか実に尊い感情だよ。道理とりっぱに道づれの出来る感情だからね。しかしその尊い感情も、それに功名心がくっつくと、すぐしみが出来る。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
蠻勇ばんゆうごときを、くまでにしたふかをおもへば、うれしいよりもかなしさがうかんでる。