どり)” の例文
名人めいじんうらなしゃは、もはやこのまちにはいませんでした。たびからたびへ、わたどりのようにあるうらなしゃは、どこへかいってしまったのです。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぬくどりと同じやり方である。馬の体温によって足をあたためるというのは、馬上の寒さを裏面から現したようで、実はそうでない。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
きみ、ちょっとたまえ。きみはずいぶんっともないね。だから僕達ぼくたちきみっちまったよ。きみ僕達ぼくたち一緒いっしょわたどりにならないかい。
ほゝきどり—鶯—になつて居た方がよかつた。昔語の嬢子は、男を避けて山の楚原へ入り込んだ。さうして、飛ぶ鳥になつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
お葉は初めて手をゆるめた。荒鷲の爪から逃れ出たぬくどりのように、冬子は初めてほッと息をいたが、髪を振乱ふりみだした彼女かれの顔には殆ど血色ちのいろを見なかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鉾杉のうづす霧に、はて知れぬ海も見わかず、ひさかたの空もえわかね、時をりは渡りの鳥のはぐれどりちりぢりと落ち、羽重はねおもの一羽鴉も飛びなづみややに来て揺る。
昔話の主人公となった梟や時鳥、東北の野山ではカッコウや馬追うまおどりが、いずれも暮れかかってから啼きしきる鳥であったことは、私にはすこしも偶然とは思われぬ。
イザこのとりをツブシどりに売ろうと思うとあとはどうでも構わんから鳥屋の人が鶏の口を手で割て砂をドシドシ押し込んで水を無闇むやみに飲ませます。そうすると百二、三十目違います。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しながどり猪名野いなぬれば有間山ありまやま夕霧ゆふぎりちぬ宿やどくして 〔巻七・一一四〇〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
能考へ置と云ばお節は彌々いよ/\打喜びまことに何から何まで厚い御世話有難う御座りますと言けるが終夜よもすがらも遣らず心せくまゝ一番どりなくや否や起出つゝ支度調へ藤八諸共もろともあけ寅刻比なゝつごろより宿屋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
通りがかりのわたどりだから、わしにとっては、どっちでもいいことなんだが、もしおまえさんが、ほんとうに、このトーケルンの鳥たちを、このままにしておきたいと思うんなら
実に分明なるものであるという、「農鳥」というのは、鶏の義であるそうだが、事実残雪は、鶏とは見えない、無風流な農夫は、自分に説明して、シャモのどりの立っているようで
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
良人は言い甲斐なくもぬくどりの如くに押しすくめられるという奇劇も珍しからぬ。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
どこか近郊きんこうたら、とちかまはりでたづねても、湯屋ゆや床屋とこやも、つりはなしで、行々子ぎやう/\しなどは對手あひてにしない。ひばり、こまどり、うぐひすを町内ちやうない名代なだい小鳥ことりずきも、一向いつかう他人たにんあつかひで對手あひてにせぬ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いいえ、どういたしまして。どうです、今年のわたどりの景気は。」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「わしの大事などりへ、なんで手をふれるのじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はるばる波をわたりどり
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
いまこそわたくしどりでも
おごどりれて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「あっ、わたどりが!」と、小田おだが、大空おおぞらしました。はるかに、そらをたがいにいたわりながら、とおたびをするとりかげられました。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まれびとといふのは、おきやくさまといふことですが、ごくたまにめづらしいひとといふのがふる意味いみです。わたどりなるかりをば、この珍客ちんきやく見立みたてたのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
鉾杉の渦成うづなす霧に、はて知れぬ海も見わかず、ひさかたの空もえわかね、時をりは、渡りの鳥のはぐれどりちりぢりと落ち、羽重はねおもの一羽鴉も飛びなづみ、ややに来て揺る。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しまみやまがりのいけはなどり人目ひとめひていけかづかず 〔巻二・一七〇〕 柿本人麿
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
一昨日おととい第二限だいにげんころなんか、なぜ燈台とうだいを、規則以外きそくいがいに間(一時空白)させるかって、あっちからもこっちからも、電話で故障こしょうが来ましたが、なあに、こっちがやるんじゃなくて、わたどりどもが
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
津々浦々つつうらうら渡鳥わたりどり稲負いなおおどり閑古鳥かんこどり。姿は知らず名をめた、一切の善男子ぜんなんし善女人ぜんにょにん木賃きちん夜寒よさむの枕にも、雨の夜の苫船とまぶねからも、夢はこのところに宿るであろう。巡礼たちが霊魂たましいは時々此処ここに来てあすぼう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はなは、つくづくとはじめて敏捷びんしょうそうなわたどりの、きれいなはねいろと、くろひかったと、するどいとがったつめとをながめたのであります。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
躑躅さきしろき月夜をさぬつどり雉子きぎすとよめりこもらふらしも (五〇頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「いいえ、どういたしまして。どうです、今年のわたどり景気けいきは」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「すぽいどりですよ。」
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はやしなかに、一ぽん、とりわけたかいすぎのがありました。あきちかづくと、いろいろのわたどりんできて、そののいただきへとまりました。
高い木とからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
かづどり、かいつぶりの
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ちょうは昨日きのうから、このなかに一かしたのであるが、おとのするうえあげて、わたどりにしてはちいさいとおもったので
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
つがどり
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はたして、となり先生せんせいがやってきました。そして、大事だいじあつかうから、ちょっとあほうどり学校がっこうしてくれないかとたのみました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
季節きせつあきにはいると、どこからともなく、わたどりがあかねいろ夕空ゆうぞらを、やまうえたかく、豆粒まめつぶのように、ちらばりながら、んでいくのがえました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すずめまで、わたどりのように、元気げんきよくえだや、屋根やねうえで、いていました。このとき、空気銃くうきじゅうった少年しょうねんが、かきねのそととおりました。
すずめを打つ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうか、あほうどりというをつけておいてください。このとりをあなたにさしあげます。」と、年若としわか子供こどもこたえた。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
毎日まいにちのようにわたどりは、ほばしらのはやしのようにったみなとそらをかすめて、あたたかなくにのあるほうしたってゆきました。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とこなつのはなは、わたどりから、いろいろなかさまをききました。なかというものは、かぎりなくひろい。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、一とりんできて、あちらのもりなかりました。なにどりだろうと、下男げなんはそのほうていると、ズドンといって鉄砲てっぽうおとこえました。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
そういって、わたどりったのでした。こういうようなことが、これまでに何度なんどあったでしょう。二おなわたどりで、たずねてくれたものはなかったのです。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みなみから、みなみから、とんできた、きた、わたどり、うれしさに、たのしさに、——と、うたいはじめたのです。すると、ほかのも、をたたいて、調子ちょうしをとりました。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
このはなしいて、よろこんだのは、ひなどりよりも、もっと、このとしとったおおきなかしののほうでありました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もっときけばなんでもおしえてくれるのであったが、まつは、みずからは経験けいけんのないことで、ただわたどりのするはなしをきいて、なかひろいということをさとるだけです。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
えだができあがりますと、親鳥おやどりはひなどりをつれて、あるときは青々あおあおとした大空おおぞらんでうみほうへ、あるときは、またやまえてまちのあるほうへとゆきました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あほうどり?」といって、先生せんせいは、いたことのないなので、びっくりしたようにまるくしました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとしはるの、ちょうどわりのころでありました。どこからか、きれいな小鳥ことりが、親鳥おやどりとひなどりといっしょにんできて、このとしとったかしのつくりました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
世界せかいじゅうを、どこまでもんでいける、わたどりはしあわせだね。」と、エヌくんがいいました。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ、小鳥ことりだけが、まれにきてえだにとまってつばさやすめました。なかでもわたどりは、たびとりでいろいろのはなしっていました。まちはなしもしてくれれば、みなとはなしもしてくれました。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こういうように、みんなは、わたどりが、古巣ふるすおもすように、ふるさとをおもしました。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)