透通すきとほ)” の例文
改札口かいさつぐちつめたると、四邊あたりやまかげに、澄渡すみわたつたみづうみつゝんで、つき照返てりかへさるゝためか、うるしごとつややかに、くろく、玲瓏れいろうとして透通すきとほる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
薄暗いランプの光に照されて透通すきとほるやうに白い襟足えりあしに乱れかゝつて居る後毛おくれげが何となくさびしげで、其根のがつくりした銀杏返いちやうがへしが時々ふるへて居るのは泣いてゐるのでもあるのか
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
横ざまに長く棚曳たなびく雲のちぎれが銀色に透通すきとほつて輝いてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
トもんどりをつて手足てあしひとつにちゞめたところは、たきけて、すとんとべつくにおもむきがある、……そして、透通すきとほむねの、あたゝかな、鮮血からくれなゐうつくしさ。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いろ五百機いほはた碧緑あをみどりつて、濡色ぬれいろつや透通すきとほ薄日うすひかげは——うちなにますべき——おほいなる琅玕らうかんはしらうつし、いだくべくめぐるべき翡翠ひすゐとばりかべゑがく。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
淺黄あさぎ手絡てがらけかゝつて、透通すきとほるやうに眞白まつしろほそうなじを、ひざうへいて、抱占かゝへしめながら、頬摺ほゝずりしていつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ゆきよりしろく、透通すきとほむねに、すや/\といきいた、はいなやむだ美女たをやめ臨終いまはさまが、歴々あり/\と、あはれ、くるしいむなさきの、ゑりみだれたのさへしのばるゝではないか。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
清々すが/\しいの、なんのつて、室内しつないにはちりひとツもない、あつてもそれ矢張やつぱ透通すきとほつてしまふんですもの。かべ一面いちめんたまの、大姿見おほすがたみけたやうでした、いろしろいんですがね。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
日当ひあたりいゝんですけれど、六でふのね、水晶すゐしやうのやうなお部屋へやに、羽二重はぶたへ小掻巻こかいまきけて、えさうにおつてゝ、おいろなんぞ、ゆきとも、たまとも、そりや透通すきとほるやうですよ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さいたまのやうにえた。綺麗きれいみがいたのが透通すきとほるばかりに出来できて、点々ぽち/\つたくろいのが、ゆきなかかげあらはれた、つらな山々やま/\ひいでたみねふかたにのやうに不図ふとえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わしそのまゝらしたが、の一だん婦人をんな姿すがたつきびて、うすけぶりつゝまれながらむかぎししぶきれてくろい、なめらかな、おほきいし蒼味あをみびて透通すきとほつてうつるやうにえた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんでございます、まあ、」と立停たちどまつてたのが、ふたツばかり薄彩色うすさいしき裾捌すそさばきで、にしたかごはなかげが、そでからしろはださつ透通すきとほるかとえて、小戻こもどりして、トなゝめに向合むきあふ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
年紀としわかい、十三四か、それとも五六、七八か、めじりべにれたらしいまで極彩色ごくさいしき化粧けしやうしたが、はげしくつかれたとえて、恍惚うつとりとしてほゝ蒼味あをみがさして、透通すきとほるほどいろしろい。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……ひとみ水晶すゐしやうつたやうで、薄煙うすけむりしつとほして透通すきとほるばかり、つき射添さしそふ、とおもふと、むらさきも、萌黄もえぎも、そでいろ𤏋ぱつえて、姿すがた其處此處そここゝ燃立もえたは、ほのほみだるゝやうであつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
顔面がんめんくろうるしして、くま鼻頭はなづら透通すきとほ紫陽花あぢさゐあゐながし、ひたひからあぎとけて、なが三尺さんじやくくちからくちはゞ五尺ごしやく仁王にわうかほうへふたしたはせたばかり、あまおほきさとつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ときれたやうな眞黒まつくろ暗夜やみよだつたから、まつもすら/\と透通すきとほるやうにあをえたが、いまは、あたかくもつた一面いちめん銀泥ぎんでいゑがいた墨繪すみゑのやうだと、ぢつながら、敷石しきいしんだが
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うしますとね、くるしいなかにも、むつてふんでせう……まど硝子がらす透通すきとほつて、晴切はれきつたあきの、たか蒼空あをぞらを、もひとした、それは貴方あなたうみそこつていかなんまをしていんでせう
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つまり、上下うへしたしろくもつて、五六しやくみづうへが、かへつて透通すきとほほどなので……
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……其處そこで、昨日きのふ穿いたどろだらけの高足駄たかあしだ高々たか/″\穿いて、透通すきとほるやうな秋日和あきびよりには宛然まるでつままれたやうなかたちで、カラン/\と戸外おもてた。が、咄嗟とつさにはまぼろしえたやうで一疋ひとつえぬ。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにりませんけれども、いくらも其處等そこいらるものの、不斷ふだんえない、空氣くうきまぎれてかくれてるのが、うしてちり透通すきとほるやうな心持こゝろもちつたので、自分じぶんえるのだらうとおもひました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
眞赤まつかひれへ。すごつきで、紫色むらさきいろ透通すきとほらうね。」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)