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すきとほ
改札口を
冷く
出ると、
四邊は
山の
陰に、
澄渡つた
湖を
包んで、
月に
照返さるゝ
爲か、
漆の
如く
艶やかに、
黒く、
且つ
玲瓏として
透通る。
薄暗いランプの光に照されて
透通るやうに白い
襟足に乱れかゝつて居る
後毛が何となくさびしげで、其根のがつくりした
銀杏返しが時々
慄へて居るのは泣いてゐるのでもあるのか
横ざまに長く
棚曳く雲のちぎれが銀色に
透通つて輝いてゐる。
トもんどりを
打つて
手足を
一つに
縮めた
處は、
瀧を
分けて、すとんと
別の
國へ
出た
趣がある、……そして、
透通る
胸の、
暖かな、
鮮血の
美しさ。
色を
五百機の
碧緑に
織つて、
濡色の
艶透通る
薄日の
影は——
裡に
何を
棲ますべき——
大なる
琅玕の
柱を
映し、
抱くべく
繞るべき
翡翠の
帳の
壁を
描く。
淺黄の
手絡が
解けかゝつて、
透通るやうに
眞白で
細い
頸を、
膝の
上に
抱いて、
抱占めながら、
頬摺していつた。
其の
雪より
白く、
透通る
胸に、すや/\と
息を
引いた、
肺を
病むだ
美女の
臨終の
状が、
歴々と、あはれ、
苦しいむなさきの、
襟の
乱れたのさへ
偲ばるゝではないか。
清々しいの、
何のつて、
室内には
塵一ツもない、あつても
其が
矢張り
透通つて
了ふんですもの。
壁は
一面に
玉の、
大姿見を
掛けたやうでした、
色は
白いんですがね。
日当は
好んですけれど、六
畳のね、
水晶のやうなお
部屋に、
羽二重の
小掻巻を
掛けて、
消えさうにお
寝つてゝ、お
色なんぞ、
雪とも、
玉とも、そりや
透通るやうですよ。
采は
珠のやうに
見えた。
綺麗に
磨いたのが
透通るばかりに
出来て、
点々打つた
目の
黒いのが、
雪の
中に
影の
顕はれた、
連る
山々、
秀でた
峯、
深い
谷のやうに
不図見えた。
私は
其まゝ
目を
外らしたが、
其の一
段の
婦人の
姿が
月を
浴びて、
薄い
煙に
包まれながら
向ふ
岸の
潵に
濡れて
黒い、
滑かな、
大な
石へ
蒼味を
帯びて
透通つて
映るやうに
見えた。
「
何でございます、まあ、」と
立停つて
居たのが、
二ツばかり
薄彩色の
裾捌で、
手にした
籠の
花の
影が、
袖から
白い
膚へ
颯と
透通るかと
見えて、
小戻りして、ト
斜めに
向合ふ。
年紀が
少い、十三四か、それとも五六、七八か、
眦に
紅を
入れたらしいまで
極彩色に
化粧したが、
烈しく
疲れたと
見えて、
恍惚として
頬に
蒼味がさして、
透通るほど
色が
白い。
……
瞳は
水晶を
張つたやうで、
薄煙の
室を
透して
透通るばかり、
月も
射添ふ、と
思ふと、
紫も、
萌黄も、
袖の
色が
𤏋と
冴えて、
姿の
其處此處、
燃立つ
緋は、
炎の
亂るゝやうであつた。
顔面黒く
漆して、
目の
隈、
鼻頭、
透通る
紫陽花に
藍を
流し、
額から
頤に
掛けて、
長さ
三尺、
口から
口へ
其の
巾五尺、
仁王の
顔を
上に
二つ
下に
三つ
合はせたばかり、
目に
余る
大さと
成つて
其の
時は
濡れたやうな
眞黒な
暗夜だつたから、
其の
灯で
松の
葉もすら/\と
透通るやうに
青く
見えたが、
今は、
恰も
曇つた
一面の
銀泥に
描いた
墨繪のやうだと、
熟と
見ながら、
敷石を
蹈んだが
然うしますとね、
苦しい
中にも、
氣が
澄むつて
言ふんでせう……
窓も
硝子も
透通つて、
晴切つた
秋の、
高い
蒼空を、も
一つ
漉した、それは
貴方、
海の
底と
云つて
可いか
何と
申して
可いんでせう
詰り、
上下が
白く
曇つて、五六
尺水の
上が、
却つて
透通る
程なので……
……
其處で、
昨日穿いた
泥だらけの
高足駄を
高々と
穿いて、
此の
透通るやうな
秋日和には
宛然つままれたやうな
形で、カラン/\と
戸外へ
出た。が、
出た
咄嗟には
幻が
消えたやうで
一疋も
見えぬ。
何か
知りませんけれども、
幾らも
其處等に
居るものの、
不斷は
目に
見えない、
此の
空氣に
紛れて
隱れて
居るのが、
然うして
塵も
透通るやうな
心持に
成つたので、
自分に
見えるのだらうと
思ひました。
「
眞赤な
鰭へ。
凄い
月で、
紫色に
透通らうね。」