)” の例文
さがしたぞ。こんたなどごまで来て。して黙って彼処あそごに居なぃがった。おぢいさん、うんと心配してるぞ。さ、早くべ。」
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
愛宕町あたごちやうは七八丁の距離しかないので銀之助はしづのこと、今のさい元子もとこのことを考へながら、あゆむともなく、徐々のろ/\るいた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
画家はゆるやかに部屋の内をあちこちるきいる。折々ある絵の前に立ち留まりて、何を思うともなしに絵を見る事あり。
茶縁ちゃべりの畳を境に、二尺をへだてて互に顔を見合した時、社会は彼らのかたえを遠く立ち退いた。救世軍はこの時太鼓をたたいて市中を練りるいている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伯母は涙きもへず「——長二や、——私や、かうしてお前とるいて居ながら、コツクリと死にたいやうだ——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
異国に渡りて碧眼奴あをめだまどもを切り従へむこそ相応ふさはしけれと思ひ定めつ。渡船の便宜よすがもがなと心掛けりくうち、路用とても無き身のいつしか窮迫の身となりぬ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二郎は心のうちで、どうして姉が斯様こんな山道をくわしくしっていようか……斯様なに暗いのにどうして斯様なにみちが分るだろうかといぶかしがりながらるいていた。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
馬鹿ばからしい氣違きちがひじみた、我身わがみながらわからぬ、もう/\かへりませうとて横町よこちようやみをばはなれて夜店よみせならぶにぎやかなる小路こうぢまぎらしにとぶら/\るけば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
義男は義男で、堅い腕組みをして素つ氣のない顏をしながらみのると離れてぽつ/\とるいてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
「昔は新聞記者さん達がアミさんの行く所に犯罪あり、って追っかけるいていたもんでしたね」
(新字新仮名) / 楠田匡介(著)
はじまりはお屋敷そとを槍持六尺棒持を連れて見廻らんければなりません、槍持は仲間部屋ちゅうげんべやから出ます、棒持の方は足軽部屋からて、甃石いしの処をとん/\とん/\たゝいてるく
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そなたもひと元気げんきして、るいてるがよい。病気びょうき肉体からだのもので、たましい病気びょうきはない。
犬殺しがるき、巫女みこが酒倉に見えるのもこの時である。さうして雨乞の思ひ思ひに白粉をつけ、あかい隈どりを凝らした假裝行列の日に日に幾隊となく續いてゆくのもこの時である。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
男子たるものが自分の身体からだを養う食物には一円二円の金を惜しんで、雨が降るとるけないような下駄のために五円も八円も金をかけるというのは随分不心得の極端でありませんか。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
開卷第一かいかんだいゝちに、孤獨幽棲こどくゆうせい一少年いつしようねん紹介しようかいし、その冷笑れいしようその怯懦きようだうつし、さらすゝんでその昏迷こんめいゑがく。襤褸らんるまとひたる一大學生いつだいがくせい大道だいどうひろしとるきながら知友ちゆう手前てまへかくれするだんしめす。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
きやしやな、しかも堅固な植物の幹がるいてゐるやうである。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
仕方がない西洞までるくことにする。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
さがしたぞ。こんたなどごまで来て。してだまって彼処あそごなぃがった。おじいさんうんと心配しんぱいしてるぞ。さ、はやべ。」
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
先生は紀元前の半島の人のごとくに、しなやかなかわで作ったサンダルを穿いておとなしく電車のそばるいている。
ケーベル先生 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぼく溪流けいりう沿ふてこのさびしい往來わうらいあてもなくるいた。ながれくだつてくも二三ちやうのぼれば一ちやう其中そのなかにペンキで塗つたはしがある、其間そのあひだを、如何どん心地こゝちぼくはぶらついたらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そして、他にも、貸間はないかと、方々探がしてるいた。他にも、好ましい家はなかった。
貸間を探がしたとき (新字新仮名) / 小川未明(著)
しばらく湖水こすいへりつたってるいてうちに、やまがだんだんひくくなり、やがて湖水こすいきるとともやまきて、広々ひろびろとした、すこしうねりのある、あかるい野原のはらにさしかかりました。
而も耻と悲哀に弾ぢぎれさうな胸を抑えて、怖々おづ/″\と人目を忍んでるいてゆく切りつめた今の自分の心にも何時しか忘れはてた淫蕩な罪の記憶が泣かむばかりに芽ざしてくる浅間しさ。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
此身このみ遊藝ゆうげい手藝學校しゆげいがくかうにもかよはせられて、そのほうはこゝろのまゝ、半日はんにちあね部屋へや半日はんにちまちあそんでくは三味さみ太皷たいこにあけむらさきのなりかたち、はじめ藤色絞ふぢいろしぼりの半襟はんゑりあはせにかけてるきしに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは仏蘭西フランスの男女のるくがごとくにるいたのであつた。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
フウラリフウラリるいたらア
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
世の中が二間四方にちぢまったかと思うと、歩けばるくほど新しい二間四方があらわれる。その代り今通って来た過去の世界は通るにまかせて消えて行く。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
歸路かへり眞闇まつくらしげつたもりなかとほときぼくんなことおもひながらるいた、ぼくあしべらして此溪このたにちる、んでしまう、中西屋なかにしやではぼくかへらぬので大騷おほさわぎをはじめる
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「さあもう一あしだ。べ。上まで行げば雪も降ってなぃしみぢも平らになる。歩べ、っかなぐなぃはんて歩べ。あどがらあの人も馬ひで来るしそれ、泣がなぃで、今度ぁゆっくり歩べ。」
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
じいさんのほうでは、何処どこかぜくとった面持おももちで、きもせず、ずんずんきへってるきされましたので、わたくしだまってそのあといてまいりますと、いつしかみちくださかになり
代々木の白樫しらかしがもと黄楊つげがもと飛びてりきし栗鼠りす吾妹わぎも
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
馬鹿ばからしくるき廻つてゐるのであつた。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
掘崩ほりくずした土の上に悠然ゆうぜんそばだって、吾らのために道を譲る景色けしきはない。向うで聞かぬ上は乗り越すか、廻らなければならん。いわのない所でさえるきよくはない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
陰晴さだめなき天気、薄き日影洩るゝかと思へば忽ち峰より林より霧起りて峰をも林をも路をも包んでしまう。山路は思ひしより楽にて、余は宿の子と様々の物語しつゝ身も心も軽くゆんだ。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「さうが。よしよし。まづべ。おぢいさん、火たいで待ってるがらな。」
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
池向ひ築地ついぢに明る冬ののけ寒き下坂くだり鹿りき見ゆ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そうして依然としてできるようなまたできないような地位を、元ほど焦燥あせらない程度ながらも、まず自分のやるべき第一の義務として、根気にるいていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そうが。よしよし。まずべ。おじいさん、火たいてってるがらな。」
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
『それでは其所そこいらまで御一所ごいつしよるきませう。』
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かれくろよるなかるきながら、たゞうかしてこのこゝろからのがたいとおもつた。そのこゝろ如何いかにもよわくて落付おちつかなくつて、不安ふあん不定ふていで、度胸どきようがなさぎて希知けちえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あ、居だが。馬鹿だな。うなは。さ、べ。」
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かれはまづ眞直まつすぐるきした。左右さいうにも行手いくてにも、だうやうなものや、ゐんやうなものがちよい/\えた。けれどもひと出入でいり一切いつさいなかつた。こと/″\寂寞せきばくとしててゝゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あ、だが。馬鹿ばかだな。うなは。さ、べ。」
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
電車を降りて五六丁るいて、Hさんの応接間に通った時、時計を見たらまだ八時であった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さあ、べ。あと三十分で下りるにい。」
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
しかも何処どこをどうるいても、材木が放りしてある、石が積んである、新らしいいへが往来から二三間引っ込んでゐる、ふるくらが半分くづされて心細く前の方に残つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その上身分が定まらないので、気の落ちつく背景をたない彼は、朝から晩まで下宿のにじっと坐っている苦痛にえなかった。用がなくっても半日は是非出てるいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ほのかにうけたまわれば世間には猫の恋とか称する俳諧はいかい趣味の現象があって、春さきは町内の同族共の夢安からぬまで浮かれるく夜もあるとか云うが、吾輩はまだかかる心的変化に遭逢そうほうした事はない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さうして御腹おなか消化こなために、わざ/\此所こゝまでるいてらしつたの」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところへ両隣りょうどなりの机の所有主も出校したんで、赤シャツは早々自分の席へ帰って行った。赤シャツはるき方から気取ってる。部屋の中を往来するのでも、音を立てないようにくつの底をそっとおとす。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)