彩色さいしき)” の例文
くもならば、くもに、うつくしくもすごくもさびしうも彩色さいしきされていてある…取合とりあふてむつふて、ものつて、二人ふたりられるではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
されば北斎が彩色さいしき板画の手腕を見んと欲すれば富嶽三十六景、諸国滝巡り、名橋奇覧、詩歌写真鏡しいかしゃしんきょうの如き錦絵を採らざるべからず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
前陳の各種を製作するにつき、これに附属する飾り金物かなもの、塗り、金箔きんぱく消粉けしこな彩色さいしき等の善悪よしあしを見分ける鑑識も必要であります。
しかもみな彩色さいしきの新版であるから、いわゆる千紫万紅せんしばんこう絢爛けんらんをきわめたもので、眼もあやというのはまったく此の事であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
土器どきはやはり日本につぽん彌生式やよひしきちか種類しゆるいのものが普通ふつうでありまして、ときにはめづらしく、だんだら模樣もよう彩色さいしきしたうつくしいものがることもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
やがて出来上った彩色さいしきされた死体は、妙なことに、彼が嘗つてS劇場で見た、サロメの舞台姿に酷似していた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
艫の方の化粧部屋はむしろで張られ、昔ながらの廢れかけた舟舞臺には櫻の造花を隈なくかざし、欄干の三方に垂らした御簾みす彩色さいしきも褪せはてたものではあるが
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
画のうちでは彩色さいしきを使った南画なんがが一番面白かった。惜しい事に余の家の蔵幅ぞうふくにはその南画が少なかった。子供の事だから画の巧拙こうせつなどは無論分ろうはずはなかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はなしてかしておれな』とあいちやんはおそる/\つて、『何故なぜ其麽そんな薔薇ばらはな彩色さいしきするの?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ベンヺ あのやうな冗繁あくどいことは最早もう流行はやらぬ。肩飾かたかけ目飾めかくしをしたキューピッドに彩色さいしきした韃靼形だったんがた小弓こゆみたせて、案山子かゞしのやうに、娘達むすめたち追𢌞おひまはさするのは最早もうふるい。
あやしきなりに紙を切りなして、胡粉ごふんぬりくり彩色さいしきのある田楽みるやう、裏にはりたるくしのさまもをかし、一軒ならず二軒ならず、朝日に干して夕日にしまふ手当ことごとしく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何だか細かい線でいてある横物よこもので、打見たところはモヤモヤと煙っているようなばかりだ。あかや緑や青や種〻いろいろ彩色さいしきが使ってあるようだが、図が何だとはサッパリ読めない。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
女権拡張じょけんかくちょうも友愛結婚も時世とやらの産物で大いに結構だが、園絵は、眉を描いたり頬を彩色さいしきしたり、ビックリ箱から今飛び出たような面をして、チャールストンとか何とか称し
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
是製造の始ものとして用ゐたる編み物或は木の葉が偶然此所に印せられしに他ならず。裝飾そうしよくには摸樣もやう彩色さいしきとの二種有り。摸樣は燒く前に施し、彩色は燒きたるのちほどこせしなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
彼女等は自分達の部屋がすつかり模樣が變り、新しい窓掛、おろし立ての敷物、手の込んだ彩色さいしきをほどこした瀬戸物の花瓶などで飾られてあるのを見て心から感謝の情を表はした。
吉野よしのの花の盛りの頃を人は説くが、私はな菜の花がほとんど広い大和国中を彩色さいしきする様な、落花後の期を愛するのである、で私が大和めぐりをたのも丁度ちょうどこの菜の花の頃であった。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
到頭我慢が出來なくなつて、小舟で濱町川岸から向う兩國に渡り、手桶に隅田川の水をくみ込んで、嫁の手引で小屋に忍び込み、せめても下品な彩色さいしきだけでも洗ひ落さうとしました。
窓のまえに貼ってある二枚のビラの一枚には彩色さいしき入で、月と、ほととぎすと、駒形堂の屋根が描いてあって、“柳川やながわのお出前をいたします”としるしてあり、一枚には、あたりまと
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
たまさかなれば、余りにあこがれ給ひて、其男の形を木像にきざませ、面体なんども常の人形にかはりて、其男にうのけほどもちがはず、色艶の彩色さいしきはいふに及ばず、毛の穴までをうつさせ、耳鼻の穴も
実物と模型 (新字旧仮名) / 相馬御風(著)
「だめですよ、まだ彩色さいしきもしてないし……」
祖母 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
幻惑の彩色さいしき打混うちまぜて
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
物語ものがたりき、此像このざうはいするにそゞろに落涙らくるゐせり。(りやく)かくてたる小堂せうだう雨風あめかぜをだにふせぎかねて、彩色さいしき云々うん/\
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この土器どきは、滿洲まんしゆうから彩色さいしき土器どきとはちがつてゐて、餘程よほど西にしほうくにからるものにてゐるところがありますから
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
されば今浮世絵板下絵師として両者の彩色さいしきを比較すれば広重は北斎の如く苦心する所更になかりしが如し。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ぽんおほきな薔薇ばらが、ほとんど其花園そのはなぞの中央ちゆうわうつてゐて、しろはないくつもそれにいてゐましたが、其處そこには三にん園丁えんていて、いそがはしげにそれをあか彩色さいしきしてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あやしきなりかみりなして、胡粉ごふんぬりくり彩色さいしきのある田樂でんがくみるやう、うらにはりたるくしのさまもをかし、一けんならず二けんならず、朝日あさひして夕日ゆふひ仕舞しま手當てあてこと/″\しく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ベシーは、臺所へいつて、美しく彩色さいしきされた陶器の皿に果物入パイを運んで來た。皿の、晝顏や薔薇の蕾に巣くつた極樂鳥ごくらくてうの模樣はいつも私に熱狂的な感嘆を呼び起したものである。
ところどころに朱く塗った太い円い柱が立っていて、柱には鳳凰ほうおうや龍や虎のたぐいが金や銀や朱や碧や紫やいろいろの濃い彩色さいしきを施して、生きたもののようにあざやかにられてあった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
土偶中には裸体らたいの物有り、着服ちやくふくの物有り、素面すめんの物有り、覆面ふくめんの物有り、かむり物の在る有り、き有り、穿き物の在る有り、き有り、上衣うわぎ股引ももひきとには赤色あかいろ彩色さいしきを施したるも有るなり
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
あの錦襴も織りたては、あれほどのゆかしさも無かったろうに、彩色さいしきせて、金糸きんしが沈んで、華麗はでなところがり込んで、渋いところがせり出して、あんないい調子になったのだと思う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは肥後熊本の人で、店は道具商で、果物くだものの標本を作っていました。枇杷びわ、桃、かきなどを張り子で拵え、それに実物そっくりの彩色さいしきをしたものでちょっと盛り籠に入れて置き物などにもなる。
また、安永中あんえいちう続奥ぞくおく細道ほそみちには、——故将堂女体こしやうだうによたい甲胄かつちうたいしたる姿すがた、いとめづらし、ふるざうにて、彩色さいしきげて、下地したぢなる胡粉ごふんしろえたるは。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また近年きんねんこの洞穴ほらあな發掘はつくつして、むかし彩色さいしき使つかつた繪具えのぐ發見はつけんせられたので、それらは洞穴ほらあなそばにある番人小屋ばんにんごやにあるちひさな陳列室ちんれつしつならべてありました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
これを浮世絵に見れば鳥居派のほかあらたに奥村一派の幽婉ゆうえんなる画風と漆絵の華美なる彩色さいしき現はれぬ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一番纖細な栗鼠りすの毛の筆を選んで、想像出來る限りの美しい顏を描いて、フェアファックス夫人が話したブランシュ・イングラムの描寫に從つて、最もやはらかな陰と、最も美しい色で彩色さいしきせよ。
座敷は——こんな貸家建かしやだてぢやありません。壁も、床も、皆彩色さいしきした石を敷いた、明放あけはなした二階の大広間、客室きゃくまなんです。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
座敷ざしきは——こんな貸家建かしやだてぢやありません。かべも、ゆかも、みな彩色さいしきしたいしいた、明放あけはなした二階にかい大廣間おほひろま客室きやくまなんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし、一口に絵馬とはいうが、入念じゅねん彩色さいしき、塗柄の蒔絵まきえに唐草さえある。もっとも年数のほども分らず、おさめぬしの文字などは見分けがつかない。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よめ姿すがた彩色さいしきしては、前後左右ぜんごさいう額縁がくぶちのやうなかたちで、附添つきそつて、きざんでこしらへたものが、くものか、とみづから彫刻家てうこくかであるのをあざける了見れうけん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
学士先生の若夫人と色男の画師さんは、こうなると、緋鹿子ひがのこ扱帯しごきわらすべで、彩色さいしきをした海鼠なまこのように、雪にしらけて、ぐったりとなったのでございます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
荒果あれはてたが、書院づくりの、とこわきに、あり/\と彩色さいしきの残つた絵の袋戸ふくろどの入つた棚の上に、やあ! 壁を突通つきとおして紺青こんじょうなみあつて月の輝く如き、表紙のそろつた
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
衣服きもの白無垢しろむくに、水浅黄みづあさぎゑりかさねて、袖口そでくちつまはづれは、矢張やつぱりしろ常夏とこなつはならした長襦袢ながじゆばんらしく出来できて……それうへからせたのではない。木彫きぼり彩色さいしきたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
坐中の貴婦人方には礼を失する罪をまぬかれざれども、予をして忌憚きたんなくわしめば、元来、淑徳、貞操、温良、憐愛、仁恕じんじょ等あらゆる真善美の文字を以て彩色さいしきすべき女性と謂うなる曲線が
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にはいけこひを、大小だいせうはかつてねらひにくるが、かけさへすれば、すぐにかゝる。また、同國どうこくで、特産とくさんとして諸國しよこくくわする、鮎釣あゆつりの、あの蚊針かばりは、すごいほど彩色さいしきたくみ昆蟲こんちうしてつくる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彩色さいしきした影のごとくにうかんだので、ああ、このままここへ寝るかも知れない。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
親仁おやじが大目金めがねを懸けて磨桶とぎおけを控え、剃刀の刃を合せている図、目金と玉と桶の水、切物きれものの刃を真蒼まっさおに塗って、あとは薄墨でぼかした彩色さいしき、これならば高尾の二代目三代目時分の禿かむろ使つかいに来ても
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……いかにや、年ふる雨露あめつゆに、彩色さいしきのかすかになったのが、木地きじ胡粉ごふんを、かえってゆかしくあらわして、萌黄もえぎ群青ぐんじょうの影を添え、葉をかさねて、白緑碧藍はくりょくへきらんの花をいだく。さながら瑠璃るりの牡丹である。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)