“可愛(かわゆ)” の例文
本の栞(しおり)に美しいといって、花簪(はなかんざし)の房を仕送れば、小(ちいさ)な洋服が似合うから一所に写真を取ろうといって、姉に叱られる可愛(かわゆ)いのがあり。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怒って怒ってどうにもすべきを、可愛(かわゆ)きものにおもえばこそ一言半句の厭味も云わず、ただただ自然の成行きに任せおきしを忘れしか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お京さん己れが本当に乞食の子ならお前は今までのやうに可愛(かわゆ)がつてはくれないだらうか、振向いて見てはくれまいねと言ふに
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
われという可愛(かわゆ)き者の前に夢の魔を置き、物の怪の祟(たた)りを据えての恐(おそれ)と苦しみである。今宵(こよい)の悩みはそれらにはあらず。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おかみさんは自分(じぶん)の娘(むすめ)を見(み)ると、可愛(かわゆ)くって、可愛(かわゆ)くって、たまらないほどでしたが、この小(ちい)さな男(おとこ)の子(こ)を見(み)るたんびに、いやな気持(きもち)になりました。
ヂュリ さア、名譽(めいよ)ぢゃとは思(おも)はねど、嬉(うれ)しいとは思(おも)ひまする。嫌(いや)なものを名譽(めいよ)には能(よ)うせねど、其(その)嫌(いや)なことも妾(わたし)を可愛(かわゆ)さにして下(くだ)されたと思(おも)へば嬉(うれ)しい。
如何(いか)にも酷(ひど)い主人のようにお思いかも知らないが、これはお前の為だよ、お前も小さい時分にいたから、何だか私も子のような心持がして誠に可愛(かわゆ)く思うが
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうすりゃ、今年の暮は去年のような事もあるまい。何も可愛(かわゆ)い妻子(つまこ)の為だ。私は兎に角書いて見よう。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「伯母さん、伯母さんは姉さん達が可愛(かわゆ)う厶(ござ)いますか、憎う厶いますか」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
衣川(ころもがわ)の口から渡が袈裟を得るために、どれだけ心を労したかを聞いた時、己は現にあの男を可愛(かわゆ)く思った事さえある。渡は袈裟を妻にしたい一心で、わざわざ歌の稽古までしたと云う事ではないか。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だから横町の野蕃漢(じやがたら)に馬鹿にされるのだと言ひかけて我が弱いを耻(はづ)かしさうな顔色(かほいろ)、何心なく美登利と見合す目つきの可愛(かわゆ)さ。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母上いませし折は、わが見たしと云うを許したまわず、野衾の居て恐しき処なるに、いかでこの可愛(かわゆ)きもの近寄らしむべきとて留(とど)めたまいぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何にせよこれが定基には前世因縁とも云うものであったか素晴らしく美しい可愛(かわゆ)いものに見えて、それこそ心魂を蕩尽(とうじん)されて終ったのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
小児(あか)が可愛(かわゆ)くないかと膝の上へ此の坊を載せますと、エヽうるせえ、とこんな病身の小児を畳の上へ放り出します、それほど気に入らぬ女房なれば離縁して下さい
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は可愛(かわゆ)くて可愛くて堪(た)まらない。母の面(かお)を瞻上(みあ)げながら、少し鼻声を出し掛けて
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
だから横町(よこてう)の野蕃漢(じやがたら)に馬鹿(ばか)にされるのだと言(い)ひかけて我(わ)が弱(よわ)いを恥(はづ)かしさうな顏色(かほいろ)、何心(なにごゝろ)なく美登利(みどり)と見合(みあは)す目(め)つまの可愛(かわゆ)さ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其夜の夢に逢瀬(おうせ)平常(いつも)より嬉しく、胸あり丈(た)ケの口説(くぜつ)濃(こまやか)に、恋知(しら)ざりし珠運を煩悩(ぼんのう)の深水(ふかみ)へ導きし笑窪(えくぼ)憎しと云えば、可愛(かわゆ)がられて喜ぶは浅し
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
極めて後悔し、そのまま首を伸(のば)して、肩に搦(から)んで顔を覗(のぞ)くと、真赤(まっか)になり、可愛(かわゆ)い目を細くして、およそ耐(たま)らないといった様子で、麗艶(あでやか)に微笑(ほほえ)んで
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私の様な不運の母の手で育つより継母御なり御手かけなり気に適(かな)ふた人に育てて貰ふたら、少しは父御(ててご)も可愛(かわゆ)がつて後々(のちのち)あの子の為にも成ませう
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
可愛(かわゆ)き児の、何とて小親にのみは懐(なつ)き寄る、はじめて汝(な)が頬に口つけしはわれなるを、効(かい)なく渠(かれ)に奪(と)らるるものかは。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
働き出し玉う御容貌(ごきりょう)は百三十二相(そう)も揃(そろ)い御声(おんこえ)は鶯(うぐいす)に美音錠(びおんじょう)飲ましたよりまだ清く、御心(ごしん)もじ広大無暗(むやみ)に拙者(せっしゃ)を可愛(かわゆ)がって下さる結構尽(づく)め故(ゆえ)堪忍ならずと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私(わたし)の樣(やう)な不運(ふうん)の母(はゝ)の手(て)で育(そだ)つより繼母御(まゝはゝご)なり御手(おて)かけなり氣(き)に適(かな)ふた人(ひと)に育(そだ)てゝ貰(もら)ふたら、少(すこ)しは父御(てゝご)も可愛(かわゆ)がつて後々(のち/\)あの子(こ)の爲(ため)にも成(なり)ませう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
婆々(ばばあ)じみるッて芳さんはお笑いだが、芳さんなぞはその思遣(おもいやり)があるまいけれど、可愛(かわゆ)い児でも亡くして御覧、そりゃおのずと後生(ごしょう)のことも思われるよ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旅ほど嚊(かか)が可愛(かわゆ)うておもしろい事はないぞ、いまだに其頃(そのころ)を夢に見て後での話しに、此(この)間も嫗(ばば)に真夜中頃(ごろ)入歯を飛出さして笑ったぞ、コレ珠運、オイ是は仕(し)たり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
殊更(ことさら)今(いま)より可愛(かわゆ)き物(もの)さへ出來(いでこ)んに二人(ふたり)が中(なか)は萬々歳(ばん/\ざい)、天(あま)の原(はら)ふみとゞろかし鳴神(なるがみ)かと高々(たか/″\)と止(とゞ)まれば、母(はゝ)を眼下(がんか)に視下(みおろ)して、放(はな)れぬ物(もの)に我(わ)れ一人(ひとり)さだめぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
池の端の行き違いより翻然(からり)と変りし源太が腹の底、初めは可愛(かわゆ)う思いしも今は小癪(こしゃく)に障(さわ)ってならぬその十兵衛に、頭(かしら)を下げ両手をついて謝罪(あやま)らねばならぬ忌々(いまいま)しさ。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これはまたお雪というと、孫も子も一所にして、乳で育てたもののように可愛(かわゆ)くてならないので。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにつけても案(あん)じられるは園樣(そのさま)のこと、何(なん)の余計(よけい)の世話(せわ)ながら何故(なぜ)か最初(はじめ)から可愛(かわゆ)くて眞實(しんじつ)の處(ところ)一日見(み)ぬも氣(き)になる位(くらい)なれど、さりとて何時(いつ)來(き)ても喜(よろこ)ばれるでもなく
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
道理で来てから帰るまで変なことずくめ、しかし幽霊でも己(おれ)が一廉(いっかど)の世話をしてやったから、空(あだ)とは思うまい。何のせいだかあの婦人(おんな)は、心から可愛(かわゆ)うて不便(ふびん)でならぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「よいわ。子は親を悩ませ苦めるようなことを為し居っても、親は子を何処までも可愛(かわゆ)く思う。それを何様(どう)とも仕ようとは思わぬ。あれはかわゆい、助けてやらねば……」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
御自分の口から出てゆけとは仰しやりませぬけれど私がこの様な意久地なしで太郎の可愛(かわゆ)さに気が引かれ、どうでも御詞に異背せず唯々(はいはい)と御小言を聞いておりますれば
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
四方(あたり)を見廻わしながら森厳(こうごう)しき玄関前にさしかかり、お頼申(たのもう)すと二三度いえば鼠衣(ねずみごろも)の青黛頭(せいたいあたま)、可愛(かわゆ)らしき小坊主の、おおと答えて障子引き開(あ)けしが、応接に慣れたるものの眼捷(めばや)く人を見て
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
亀姫 でございますから、お姉様(あねえさま)は、私がお可愛(かわゆ)うございましょう。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
君はおのづから君の本地(ほんち)ありてその島田をば丸曲(まるまげ)にゆひかへる折のきたるべく、うつくしき乳房を可愛(かわゆ)き人に含まする時もあるべし、我れは唯だ君の身の幸福(しやわせ)なれかし
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(とうるみ声にて、送り出づる時、可愛(かわゆ)き人形袖にあり。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
書生(しよせい)の千葉(ちば)いとゞしう恐(おそ)れ入(い)りて、これは何(ど)うも、これはと頭(かしら)を下(さ)げるばかり、故郷(こきやう)に有(あ)りし時(とき)、姉(あね)なる人(ひと)が母(はゝ)に代(かは)りて可愛(かわゆ)がりて呉(く)れたりし、其折(そのをり)其頃(そのころ)の有(あり)さまを思(おも)ひ起(おこ)して
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「でも不可(いけな)いの、私は、愛吉が可愛(かわゆ)くッて可愛くッて、」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これほど邪慳(じやけん)の人ではなかりしをと女房あきれて、女に魂を奪はるればこれほどまでも浅ましくなる物か、女房が歎きは更なり、遂(つ)ひには可愛(かわゆ)き子をも餓へ死させるかも知れぬ人
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
可愛(かわゆ)き銀貨を定めの賃。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これほど邪慳(じやけん)の人(ひと)ではなかりしをと女房(にようぼう)あきれて、女(をんな)に魂(たましひ)を奪(うば)はるれば是(こ)れほどまでも淺(あさ)ましくなる物(もの)か、女房(にようぼう)が歎(なげ)きは更(さら)なり、遂(つ)ひには可愛(かわゆ)き子(こ)をも餓(う)へ死(じに)させるかも知(し)れぬ人(ひと)
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母親(はゝおや)はほた/\として茶(ちや)を進(すゝ)めながら、亥之(ゐの)は今(いま)しがた夜學(やがく)に出(で)て行(ゆき)ました、あれもお前(まへ)お蔭(かげ)さまで此間(このあひだ)は昇給(しようきう)させて頂(いたゞ)いたし、課長樣(くわちやうさま)が可愛(かわゆ)がつて下(くだ)さるので何(ど)れ位(くらゐ)心丈夫(こゝろじようぶ)であらう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母親はほたほたとして茶を進めながら、亥之は今しがた夜学に出て行(ゆき)ました、あれもお前お蔭(かげ)さまでこの間は昇給させて頂いたし、課長様が可愛(かわゆ)がつて下さるのでどれ位心丈夫であらう
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今三年の後(のち)に見たしと廓(くるわ)がへりの若者は申き、大黒屋(だいこくや)の美登利(みどり)とて生国(せうこく)は紀州、言葉のいささか訛(なま)れるも可愛(かわゆ)く、第一は切れ離れよき気象を喜ばぬ人なし、子供に似合ぬ銀貨入れの重きも道理
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今(いま)三年(ねん)の後(のち)に見(み)たしと廓(くるわ)がへりの若者(わかもの)は申(まをし)き、大黒屋(だいこくや)の美登利(みどり)とて生國(せいこく)は紀州(きしう)、言葉(ことば)のいさゝか訛(なま)れるも可愛(かわゆ)く、第(だい)一は切(き)れ離(はな)れよき氣象(きしやう)を喜(よろこ)ばぬ人(ひと)なし、子供(こども)に似合(にあは)ぬ銀貨(ぎんくわ)入(い)れの重(おも)きも道理(だうり)
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
毋親(はゝおや)に抱(いだ)かせたるまゝさし覗(のぞ)いて見(み)るに、誰(た)れに似(に)たるか彼(か)れに似(に)しか、其差別(そのけじめ)も思(おも)ひ分(わか)ねども、何(なに)とは知(し)らず怪(あや)しう可愛(かわゆ)くて、其(その)啼(な)く聲(こゑ)は昨日(きのふ)まで隣(となり)の家(いへ)に聞(き)きたるのと同(おな)じ物(もの)には思(おも)はれず
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
外(そと)なるはおほゝと笑(わら)ふて、お父樣(とつさん)私(わたし)で御座(ござ)んすといかにも可愛(かわゆ)き聲(こゑ)、や、誰(た)れだ、誰(た)れであつたと障子(しようじ)を引明(ひきあけ)て、ほうお關(せき)か、何(なん)だな其樣(そん)な處(ところ)に立(た)つて居(ゐ)て、何(ど)うして又(また)此(この)おそくに出(で)かけて來(き)た
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我(わ)れは君(きみ)に厭(いと)はれて別(わか)るゝなれども夢(ゆめ)いさゝか恨(うら)む事(こと)をばなすまじ、君(きみ)はおのづから君(きみ)の本地(ほんち)ありて其島田(そのしまだ)をば丸曲(まるまげ)にゆひかへる折(をり)のきたるべく、うつくしき乳房(ちぶさ)を可愛(かわゆ)き人(ひと)に含(ふく)まする時(とき)もあるべし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)