とり)” の例文
殺して金を盜み取しことを三五郎へはなした時に三五郎が異見をして博奕打や盜人の金をとり又は殺したり共同じ罪でも罪科つみは輕い素人たゞのひと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
男のかたに自由選択の権利ある現在の状態では夫婦になって始めてその妻に不満をいだきこれを虐待するなどという事は、とりも直さず自分を
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
つとめがらにたいしても、いさゝとりつくろはずばあるべからずと、むねのひもだけはきちんとしてゐて……あついから時々とき/″\だらける。……
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いわゆる家業に精を出す感心な人というのはとりなおさず真黒になって働いている一般的の知識の欠乏した人間に過ぎないのだから面白い。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふたゝび荊棘けいきよくえだとり香花かうくわ神前しんぜんさしはさみくうず。次にあつま各童わらべども手に木刀をとりみち隊閙たいだうしすべて有婚こんれいして无子こなきをんな木刀をもつ遍身へんしん打之これをうち口に荷花蘭蜜こばらみとなふ。
私達はとりあえず入浴して浴衣ゆかたに着かえた上、用意してあった遊船で宿の主人が案内に立ち、夕暮の九十九の島目がけて漕ぎでたのである。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
赤鉢卷隊あかはちまきたい全力ぜんりよく山頂さんてうむかつてそゝぎ、山全體やまぜんたいとりくづすといふいきほひでつてうちに、くはさきにガチリとおとしてなにあたつた。
(遊びました)といふのは嘘で、先生は其麽事をして、生徒の心を散るのを御自分の一身にあつめるのです。さうしてから授業にとりかゝるのです。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼は、自分が立派な軍人になって、母や弟や、隣の小孩シャオハイや、誰や、かやにとりまかれている所を想像しながら、汗ばむほどこぶしを握りしめていた。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
きびすかへしてツト馳出はせいづればおたかはしつて無言むごん引止ひきとむるおびはし振拂ふりはらへばとりすがりはなせばまとひつきよしさまおはらだちは御尤ごもつともなれども暫時しばし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
主人あるじに代って、店頭みせさきに坐ってお客にお世辞を振撒ふりまいたり、気の合った内儀かみさんの背後うしろへまわって髪をとりあげてやったりした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
有松氏の顔は名代の痘痕面あばたづらなので、その窪みに入り込んだ砂利は、おいそれととりばや穿ほじくり出す事が出来なかつたのだ。
僕も、チャン君も、二人の科学者も、甲板に立っていられないので、それぞれ柱や、ワイヤーとりすがり、振落されるのを避けながら、互に顔を見合った。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
三百石の家にては侍二人、具足持ぐそくもち一人、鑓持やりもち一人、挾箱はさみばこもち一人、馬取二人、草履ぞうりとり一人、小荷駄こにだ二人の軍役を寛永十年二月十六日の御定めなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
余所目よそめにもうらやまるゝほどしたしげに彼れが首に手を巻きて別れのキスを移しながら「貴方あなた、大事をおとりなさい、うちにはわたくしが気遣うて待て居ますから」
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
とりも直さず勘八は兄五郎治のたいでござる、何もいてこれを陪臣と仰せられては誠に夜廻りをいたし、かみを守ります所の甲斐もない事でございます
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はしなる仙太は不意の傾斜かたむきに身を支うる暇なく、あ! と叫びたるまま水の中に陥りしが、辛くも戸板の角にとり縋りて。
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
塚田巡査は職務上これを捨置すておく訳には行かぬ。取敢とりあえその屍体を町へ運ばせて、おのれその報告書を作る準備にとりかかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さういひながら、玄関げんくわんつゞきのちやへはひると、青木さんはかみにくるんだ額面がくめん十円の△△債劵さいけん背広せびろの内がくしから、如何いかにも大さうにとり出した。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
吾輩はズット以前、借金とりのがれの隙潰ひまつぶしに警視庁の図書室に潜り込んで、刑事関係の研究材誌を読んだ事がある。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
間に合せに出した白旗はくきもあるが、二つどもゑに五しきで九曜の星をとり巻かせたり、「我漢復振わがかんまたふるふ」などと大書たいしよしたりしたものもある。申報しんぱうの号外を子供が売つて歩く。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「馬鹿、てめえみたいな鼻ったらしが馬になんか乗れるもんかい。あの人なんて百円の月給とりなんだぞ。」
大人の眼と子供の眼 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
まうすと、諸君しよくんめうにおとりになるかもれませんが、ぼくはこれでもひそかに大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんといふことをほこつてるのです。こゝろから感謝かんしやしてるので御座ございます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
この特恵に乗じていよいよ益々多数の醜業婦を輸出するはとりも直さず益々日本の商業を振う所以である、というのがその頃しばしば二葉亭に力説された醜業婦論であった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
あさっぱらの柳湯やなぎゆは、町内ちょうないわかものと、楊枝削ようじけずりの御家人ごけにん道楽者どうらくもの朝帰あさがえりとが、威勢いせいのよしあしをとりまぜて、柘榴口ざくろぐちうちそととにとぐろをいたひとときの、はじ外聞がいぶんもない
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
つまり、「木幡の山を歩み吾が来し」となるので、なぜ、「馬はあれど」と云ったかというに、馬の用意をする暇もまどろしくて、取るものもとりあえず、というのであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
一、右之島にて、鳥は鶯、岩つぐみ、山鳩、五位鷺の形なる柿色の鳥、鴎に似て魚をとりとり
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
身扮みなりは恐ろしく粗末ですが言葉には武家育ちの匂いがあり、とりなしはテキパキとして、勝れた気性を見せますが、顔や身体からだの表情は娘々して、ナイーヴな魅力を発散するのです。
祖父ぢいさんの咄で、お祖父ぢいさんのお祖父さんが此淵ここへ沈んだ時は三日たつても死骸が上らず、とりはひつた番頭まで出られなくなつて、しまひには如何どうとかして擔ぎげたと聞いた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
幾面もとりよせて色々いろいろのと検定して中から一番気に入った品を周旋しゅうせんしてやった、ところが不思議にもその品はかつて見た事がある様な気がする、もしやと、箏樋ことひの裏を見ると吃驚びっくりした
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
顔を磨きたいと思ったら料理法を研究して食物で色を白くするがよい。西洋人は滅多めったに入浴せんけれども毎日襯衣はだぎを取かえたり、夜具蒲団やぐふとんのシーツをとりかえるからあかが身につかない。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
い親類を持つと云ふものは、人でへばとりなほさず良い友達で、お前にしてもさうだらう、良い友達が有れば、万事の話合手になる、何かの力になる、なう、謂はば親類は一家いつかの友達だ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
清水〈(しみづ、きよみづ、せいすい)〉、神戸〈(かうべ、かんべ、かんど、ごうど)〉のごとき、一語数訓あり。あらたに字書を作ると云うといえども、いずれの訓かとりつべきを知らず。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
この研究はとりつくしまもなく、したがってどんな空疎なる立論をも可能にしたことであろうが、幸いにして時代ごとの忠実なる記述が残り、一方にはまた文字に恵まれなかった多数民人の間にも
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
とりいれられている趣であるが、玄関には登山用の糸立いとだて菅笠すげがさ、金剛杖など散らばっている上に、一段高く奥まったところに甲冑かっちゅうが飾ってあり、曾我の討入にでも用いそうな芝居の小道具然たる刺叉さすまた
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
それからお年をおとりになって、学問の知識をお殖やしになれば
白刃しらはとり極む捨身すてみの入り早し飛鳥の如くその手抑へぬ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
だまし討になし其金をうばとりそれ而已成のみならず文妹富をあざむきて遊女に賣渡し同人の身の代金三十兩をかすとり其後十兵衞後家ごけやすを己れが惡事露顯ろけん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふたゝび荊棘けいきよくえだとり香花かうくわ神前しんぜんさしはさみくうず。次にあつま各童わらべども手に木刀をとりみち隊閙たいだうしすべて有婚こんれいして无子こなきをんな木刀をもつ遍身へんしん打之これをうち口に荷花蘭蜜こばらみとなふ。
翌日とりも置かず篠田を尋ねて、一部始終くわしい話を致しますると、省みて居所も知らさないでいた篠田は、蒼くなってふるえ上ったと申しますよ。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それあまりのおとりこし苦勞ぐらう岩木いわきなかにもおもひのなきかは無情つれなおほせのはづなしさて御戀人おんこひゞと杉原すぎはらさまとやおなんとぞ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私しは全く昨日の中に是だけの推理をして罪人は必ず年に似合ぬ白髪が有てそれを旨く染て居る支那人だと見てとりました
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ただし x2+y2=r2はいかな円でも円でさえあればあらわしているのだから、とりなおさず円の概念に当ります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山領さんりょう谷の難所をくだり、鬼岩や松原を引廻ひきまわされたので、汗びっしょりになっている私は、とりあえず温泉に一浴を試みる。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
「ハハ。ともかくも御前にまいってとりなしてつかわす故、控えおれと申し聞けまして、そのまま出仕致しましたが」
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
が、そんなことに余り頓着とんちゃくする男では無いので、草鞋穿わらじばきの扮装いでたち甲斐甲斐かいがいしく、早朝から登山の準備にとりかかっていると、約束をたがえずに塚田巡査が来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此奴が駈込んで参り突然いきなり予が持っていた箸を引奪ひったくって庭へ棄てた、これとりも直さず兄上を庭へ投げたも同じ事じゃから免さん、それへ直れ、しからん奴じゃ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
天蓋てんがいのない建物の屋根の上に、わずかにとりすがっている僕等だから、豪雨には徹底的にたたきつけられる。が、この豪雨は、また漂流者にとって天の恵みでもあった。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
そのとり框に中框を使つかつて大がいふだかん板ばかりで寫してゐたが、しよ撮影さつえいから寫る寫る、立派りつはに寫る。
それも普通たゞの智慧比べとは違つて、狭からぬ土地を賭けて、互に領地のとりをしたものだ。