まこと)” の例文
新字:
まことに祈祷するものは一所懸命なり、祈祷者はその心靈に於て明らかに神と交歡す、彼自ら何を言ひ何を語りつつあるかを知らざる也。
散文詩・詩的散文 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
思ふにこの事必ずわが導者の意をえたりしなるべし、かれ氣色けしきいとうるはしくたえず耳をわがのべしまことの言に傾けき 一二一—一二三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
思へばうつゝとも覺えで此處までは來りしものの、何と言うて世を隔てたるかどたゝかん、我がまことの心をば如何なる言葉もて打ち明けん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
蓋し此の兩樣の見解は、皆いづれも其の一半は眞なのであつて、兩樣の見解を併合する時は、全部のまこととなるのでは無からうか。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そのあくる日には羅馬へ旅立すべし。羅馬に往きて、おん身の耐忍と勉勵とを見せよ。おん身にまことの事を告ぐるは我のみぞとのたまひぬ。
けれど小供こどもこそまこと審判官しんぱんくわんで、小供こどもにはたゞ變物かはりもの一人ひとりとしかえない。嬲物なぶりものにしてなぐさむに丁度ちやうどをとことしかえない。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あゝ、おれいままでにこひをしたか? やい、まなこよ、せなんだと誓言せいごんせい! 今夜こんやといふ今夜こんやまでは、まこと美人びじんをばなんだわい。
それはまことによいおもひつきであると御賞おほめになつて、それからはつちつくつた人間にんげんなどのぞうはかそばうづめることになつたのだといふことです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
まことに、つみな、まないことぢやあるけれども、同一おなじ病人びやうにんまくらならべてふせつてると、どちらかにかちまけがあるとのはなしかべ一重ひとへでも、おんなじまくら
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もちひて浮々うき/\とせし樣子やうすさてまこと悔悟くわいごして其心そのこゝろにもなりぬるかと落附おちつくは運平うんぺいのみならず内外うちとのものもおなじことすこまくら
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
立出たちいで見れば水はなく向ふのいへに話しの老人らうじん障子をひらきて書をよみゐたるに是なる可しと庭口にはぐちより進み入つゝ小腰こごしかゞまことに申し兼たれどもおみづ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「僕はその點では潔白なものさ。」と、馬越はその慾望には殆んど無關心であるとまことしやかに日ごろの事を説いた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
まことの歌である。島崎氏の歌は森の中にこもる鳥の歌、その玲瓏のさへづり瑞樹みづき木末こずゑまで流れわたつて、若葉の一つ一つを緑の聲にかさずば止まなかつた。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
手古奈がまこと、人々の心やり、總じて嬉しく悦ばしく、行末永き手古奈が幸福を祈らむ。此上は吾茲にありて、吾が思ひのまゝに手古奈に戀ひするを許せ。
古代之少女 (旧字旧仮名) / 伊藤左千夫(著)
まことの文明の内容を見ないから、解しないから、感じないから、日本の歐洲文明の輸入は實に醜惡を極めたものになつたのだ。一番近い例は東京の電車であらう。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
八名川町と八五郎の御膝元なる向柳原一帶へかけてまことに落葉を吹きまくる木枯の如く荒し廻るのでした。
矢車草やぐるまさう思草おもひぐさ白粉花おしろいばなしやうまことの美人よりもおまへのはうがわたしはすきだ。ほろんだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いかな『力』の神でも、堅く閉ぢた岩屋の扉をこじあけることは出來ない。岩屋の前には、鍛冶に造らせた眞鐵まがねの鏡を持つて來て暗黒を照して見る『まこと』の神もある。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
どもたちをおもふと、わたしは幸福かうふくかんじます。わたしは希望きばうかんじます。どもたちをとほしてのみ、まこと人間にんげん生活せいくわつは、その意味いみわかるやうに、わたしにはおもはれます。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
義雄は繼母の爲めにまことの父とも折合が惡いので、元から別に一家を構へてゐた。
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
今度こんど發見はつけんされた駒岡附近こまをかふきんにも、すですで澤山たくさん横穴よこあな開發かいはつされてあるのだが、て、果報くわはうなのは今回こんくわいのお穴樣あなさまで、意外いぐわい人氣にんき一個ひとり背負せおつて、まこと希代きたい好運兒かううんじいな好運穴かううんけつといふべきである。
抑も斯かる覆面は何の爲にもちゐらるるかとへば、故らに面貌めんばうを奇にする爲か他人たにんに面貌を示さざる爲かしからざれば寒氣かんきを防ぐ爲なるべし。思ふに第三種の用こそ此場合このばあひに於けるまことの用ならめ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
まことにわれ汝等なんぢらに告ぐ——嗚滸をこなりや、忘れやしつる——
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
わが曰ふ處誤か、まことか? 心われに告ぐ。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
まことを言はず。
こは初めひとへなりしも今二重ふたへとなりぬ、そは汝のことば、これとつらなる事のまことなるをこゝにもかしこにも定かに我に示せばなり 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
知られで永くみなんこと口惜くちをしく、ひとつには妾がまことの心を打明け、且つは御身の恨みの程を承はらん爲に茲まで迷ひ來りしなれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
うてかすことまこととはおもはぬこなたに、言託ことづけるのは無駄むだぢやらうが、ありやうは、みぎものは、さしあたりこなたかげを、つかまうとするではない。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あづかる者は器量きりやうなくて有べきや斯樣かやうなる事わきまへぬ其方にても有可ざるに事の此所ここに及べるはまことうたがはしきことどもなり是其方に疑ひのかゝ糺問きうもんせざるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくしはこのごろになつて益々ます/\かんずることは、ひと如何どん場合ばあひてもつねたのしいこゝろもつ其仕事そのしごとをすることが出來できれば、すなは其人そのひとまこと幸福かうふくひとといひることだ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あゝ/\! こひ影坊師かげばうしでさへ此位このくらゐうれしいとすると、げられたまことこひは、まア、どんなにたのしからうぞ?
いよ/\まこと其事そのことあらばとおそろしき思案しあんをさへさだめて美尾みを影身かげみとつきごとまもりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……死後の世界を知らうとか宇宙の外を知りたいとかいふやうなだいそれた願ひを、この頃の彼れは抱いてゐるのではないが、只目の前に起つてゐる事のまことの姿を明ら樣に知りたかつた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
文學が活きた人生に接觸しなければまことの價値のない事を感じるだけ其れが何となく癪に觸つてならない。人生其のものに同情も興味もなければ、つまり文學も何も成立つものぢやない。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
まことにわれ汝等に告ぐ、哀願のかひなかくの如く延べたり。
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
活ける響の瑠璃るりの石、これや「まこと」の金剛座こんがうざ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
まこと」のくちはかしこみて「のぞみ」のまなこそらあふ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
鑄る妙工の巧みよりまことの物を見る如し。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
こは我これをまことの鏡——この鏡萬物を己にうつせど、一物としてこれを己にうつすはなし——に照して見るによりてなり 一〇六—一〇八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
思へば三界の火宅くわたくのがれて、聞くも嬉しきまことの道に入りし御身の、欣求淨土ごんぐじやうどの一念に浮世のきづなき得ざりしこそ恨みなれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
いや、くよりはるがはやい。さあ、生命いのちられてらう、と元來ぐわんらい、あたまからまこととはおもひませぬなり。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
我等われら學校がくかう何時いつかはまこと詩人しゞんづることあらん。そのときまでは矢張やはり『ろ』で十分じふゞんかと存候ぞんじさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
娘御むすめご出世しゅっせねがひ、その昇進しょうしんをば此世このよ天國てんごくともおもはしゃった貴下こなたが、只今たゞいま娘御むすめごくもうへまこと天國てんごく昇進しゃうしんせられたのを、なんとしてなげかしゃるぞ! おゝ、やすらかにならしゃれたを
愚鈍ぐどんではあるが子供こどもときかられといふ不出來ふでかしもかつたをおもふとなに殘念ざんねんのやうにもあつて、まこと親馬鹿おやばかといふのであらうが平癒なほらぬほどならねとまでもあきらめがつきかねるもので
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まことに涙あるものゝすに忍びない人生の傍觀者だと憤慨するかも知れない。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
殺したるはまこと大罪だいざいなり因て始終は其身かたなくずに懸らん貴殿おまへ堅氣かたぎ商人あきうどなられし上は此後必ず惡事を給ふことなかれと云ながら金を受取歸りしが是を無心の始めとして其後度々來りては無心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この教こそかんながらるきまことの道とれ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
『幻のまことなる』——
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
これがいつまでわが目の樂なりしやといふ事、大いなるいきどほりまこと原因もと、またわが用ゐわが作れる言葉の事即ち是なり 一一二—一一四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
先生せんせい生活せいくわつけつして英雄えいゆう豪傑がうけつふうではありません、けれども先生せんせいまこと生活せいくわつをしてゐるのです、先生せんせいけつして村學究そんがくきうらしい窮屈きゆうくつ生活せいくわつ、ケチ/\した生活せいくわつはしてません
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)