氣勢けはひ)” の例文
新字:気勢
建續たてつゞいへは、なぞへにむかうへ遠山とほやまいて、其方此方そちこちの、には背戸せど空地あきちは、飛々とび/\たにともおもはれるのに、すゞしさは氣勢けはひもなし。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
襖の蔭から覗き見をする人の氣勢けはひなど、明らかに解つてゐたが、既うそんな事など氣にならぬほど、次第に私は心の落ち着くのを感じた。
熊野奈智山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
何やら探す樣な氣勢けはひがしてゐたが、がちやりと銅貨の相觸れる響。——霎時しばしの間何の物音もしない、と老女の枕元の障子が靜かに開いて、やつれたお利代が顏を出した。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
四方板塀で圍まれ隅に用水桶が置いてある、板塀の一方は見越みこしに夏蜜柑の木らしく暗く繁つたのが其いたゞきを出して居る、月の光はくつきりと地に印してせきとし人の氣勢けはひもない。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
義男の見定められない深い奧にいつかしら一人で突き入つて行く時があるのだと云ふ樣な氣勢けはひが、その眼の底に現はれてゐるのを見て取ると、義男の胸には又反感が起つた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
ほそはりほどな侏儒いつすんぼふしが、ひとつ/\、と、歩行あるしさうな氣勢けはひがある。吃驚びつくりして、煮湯にえゆ雜巾ざふきんしぼつて、よくぬぐつて、退治たいぢた。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どうやら人の居る氣勢けはひもする。私は玄關を離れてそちらへ急いだ。あけ放たれた入口の敷居を跨ぐと、中は廣大な土間で、老婆が一人、竈の前で眞赤な火を焚いてゐる。
比叡山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
お由は二三度唸つて立ち上つた氣勢けはひ。下腹が痺れて、便氣の塞逼に堪へぬのだ。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
夜中頃よなかごろには武生たけふまちかさのやうに押被おつかぶせた、御嶽おんたけといふ一座いちざみねこそぎ一搖ひとゆれ、れたかとおも氣勢けはひがして、かぜさへさつつた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
みち兩側りやうがはしばらくのあひだ、人家じんかえてはつゞいたが、いづれも寢靜ねしづまつて、しらけた藁屋わらやなかに、何家どこ何家どこひと氣勢けはひがせぬ。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じゆく山田やまだは、つて、教場けうぢやうにも二階にかいにもたれらず、物音ものおともしなかつた。枕頭まくらもとへ……ばたばたといふ跫音あしおと、ものの近寄ちかよ氣勢けはひがする。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それむかぎしいたとおもふと、四邊あたりまた濛々もう/\そらいろすこ赤味あかみびて、ことくろずんだ水面すゐめんに、五六にん氣勢けはひがする、さゝやくのがきこえた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
があたつてあたたかさうな、あかる腰障子こししやうじうちに、前刻さつきからしづかにみづ掻𢌞かきまは氣勢けはひがしてたが、ばつたりといつて、下駄げたおと
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うかするといし手水鉢てうづばちが、やなぎかげあをいのに、きよらかな掛手拭かけてぬぐひ眞白まつしろにほのめくばかり、廊下らうかづたひの氣勢けはひはしても、人目ひとめにはたゞのきしのぶ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかくれなゐは、俯向うつむいたえりすべり、もたれかゝつた衣紋えもんくづれて、はだへく、とちらめくばかり、氣勢けはひしづんだが燃立もえたつやう。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はんかなあまい/\甘酒あまざけ赤行燈あかあんどうつじゆれば、そ、青簾あをすだれ氣勢けはひあり。ねや紅麻こうまえんにして、繪團扇ゑうちは仲立なかだちに、蚊帳かやいと黒髮くろかみと、峻嶺しゆんれい白雪しらゆきと、ひとおもひいづれぞや。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かんざしゆら氣勢けはひは、彼方あちらに、おぢやうさんのはうにして……卓子テエブル周圍まはりは、かへつて寂然ひつそりとなりました。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぎたころ一呼吸ひといきかせて、ものおとしづまつたが、すそいて、雷神はたゝがみせながら、赤黒あかぐろまじへたくも虚空そらへ、ひ/\あがつて、のぼ氣勢けはひに、あめが、さあと小止をやみにる。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それより無言むごんにて半町はんちやうばかり、たら/\とさかのぼる。こゝにひるくら樹立こだちなかに、ソとひと氣勢けはひするを垣間かいまれば、いし鳥居とりゐ階子はしごかけて、輪飾わかざりくるわか一人ひとり落葉おちばおきな二人ふたりあり。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やまそこ潛込もぐりこむがごとき、やすからぬものの氣勢けはひに、すくなからずおどろかされたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ともこゝろがうにして、小夜さよほたるひかりあかるく、うめ切株きりかぶなめらかなる青苔せいたいつゆてらして、えて、背戸せどやぶにさら/\とものの歩行ある氣勢けはひするをもおそれねど、われあめなやみしとき朽木くちきゆる
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一昨年いつさくねんときは、翌日よくじつ半日はんにち、いや、午後ごご時頃じごろまで、ようもないのに、女中ぢよちうたちのかげあやし氣勢けはひのするのがおもられるまで、腕組うでぐみが、肘枕ひぢまくらで、やがて、夜具やぐ引被ひつかぶつてまでおもひ、なや
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つた留守るすか、ものごし氣勢けはひもしないが、停車場ステイシヨンからくるまはしらした三にんきやくの三にん其處そこに、とおもつて、ふか注意ちういした、——いま背後うしろつた——取着とツつきの電燈でんとううち閉切しめきつた、障子しやうじまへ
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、はげしい、つよい、するどいほどの氣勢けはひはなかつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
大家たいけ店前みせさきひと氣勢けはひもない。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
擦寄すりよつた氣勢けはひである。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)