おし)” の例文
「ほら、解ツてゐるじやないか。此うさ、それ、此う———」と神經中樞ちゆうすうを刺戟して、少しづつ考をおし出して呉れるやうに思はれる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
おしの強い事ばかり云つて。ひとの気も知らないで」と梅子は誠吾の方を見た。誠吾はあかまぶたをして、ぽかんと葉巻はまきけむいてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おし入の暗闇くらがりで赤色とう現像皿げんぞうさらをかざしてみながら、いかにわたし歡喜くわんきの笑みをかべたことであらうか?それからけふまでもう二十
さびしきまゝにこと取出とりいだひとこのみのきよくかなでるに、れと調てうあはれにりて、いかにするともくにえず、なみだふりこぼしておしやりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
受たる十三兩の金子はまけてあげやうほどに跡の金を殘らず御返しなされ然すれば此事は是切これきりにして上るなり夫が一番上分別じやうふんべつなまじひにおし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
冴えた通る声で野末をおしひろげるように、鳴く、トントントントンとこだまにあたるような響きが遠くから来るように聞える鳥の声は、ふくろうであった。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
○さておしきたりし男女まづ普光寺ふくわうじに入りて衣服いふく脱了ぬぎすて、身に持たる物もみだりに置棄おきすて婦人ふじん浴衣ゆかた細帯ほそおびまれにははだかもあり、男は皆はだかなり。
朦朧もうろうとした月の光のした水の上に岸を離れたばかりの小舟が浮んで、それが湖心のほうへ動いていた。櫓をおしている小柄の男の姿も見えていた。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
海水浴には少し早かったけれど、暑いのと、第一日曜というので、気の早い連中が、続々湘南の海岸へおしかけるのだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それを、そんな事を云ッて置きながら、ずうずうしく、のべんくらりと、大飯を食らッて……ているとは何所どこまでおしおもたいンだかすうが知れないと思ッて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
一本気で我執のかなり強そうだったお須磨さんは、努力の人で、あのおしきる力は極端に激しく、生死のどっちかに片附けなければ堪忍がまんできないに違いない。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
或日あるひ學校がくかう生徒せいと製作物せいさくぶつ展覽會てんらんくわいひらかれた。その出品しゆつぴんおも習字しふじ※畫づぐわ女子ぢよし仕立物したてものとうで、生徒せいと父兄姉妹ふけいしまいあさからぞろ/\とおしかける。りどりの評判ひやうばん
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
朝も暗いうちからおしかけて行くという熱心さで、よく絵に見かける半身を前に乗り出すようにして行く様があるが、どんなに一生懸命であったかを実証している。
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
顔色は蒼白くって、病人臭い所はありましたが、とても元気な人で、おしが強くて、つまり心臓が強いんでしょう。所が本当の心臓はいつ停ってしまうか分らないんですって。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「ましじ」と推量にいうのなども、丁寧で、乱暴におしつけないところなども微妙でいい。「つひに」という副詞も、強く効果的で此歌でも無くてならぬ大切な言葉である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
私はぶるぶる震えて泣きながら、両手の指をそろえて口の中へおしこんで、それをぎゅっと歯でかみしめながら、その男がどんどん沖の方に遠ざかって行くのを見送りました。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
つづいて中軍の謙信以下の旗本群まで——犀川の水を前にしりおしに脚なみを停めてしまった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちばう君がしきりにおし問答をするので番人の妻は三度迄階上へ昇つて館員にはかつてれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
云いかけた時、壮太があまり夢中になって身をおしつけていたので、ドアがぎいと鳴った。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
然るに肩は軽くなるも両手にひさしたうる事能わず。依て亦両手の労を休まんとして両手を前にする時は、ただちに叺を両方より結びたる藁縄に喉頭のどくびおししめて呼吸たえなんとして痛みあり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
八「風吹かざふがらすびんつくで女の子に可愛がらりょうとアおしつええや、この沢庵たくあん野郎」
与一は何やら一存ありげに肩を怒らしておし戴いた。同時に一同が又頭を下げた。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
悟りきった様な調子に千世子がしずかに云うのを京子はおしつける様に笑って
千世子(三) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
博士の仕付しつけで、この娘は、程なくおしおされもせぬ立派な香料師になつた。
「また船長せんちょになるつもりか? 手前はおしつええ野郎だよ、まったく。」
妹が家の板戸おしひらきわが入れば太刀の手上たがみに花散りかゝる
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
都もひなおしなべて白妙しろたえる風雪の夕
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ぐんぐんとおしよせる風陣!
組織された力 (新字新仮名) / 今野大力(著)
やみ夢戸ゆめどおしひらき
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「兄さん、そのプッジングをあたしにちょうだい。ね、好いでしょう」とお重が兄に云った。兄は無言のまま皿をお重の方におしやった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
○さておしきたりし男女まづ普光寺ふくわうじに入りて衣服いふく脱了ぬぎすて、身に持たる物もみだりに置棄おきすて婦人ふじん浴衣ゆかた細帯ほそおびまれにははだかもあり、男は皆はだかなり。
たちなんかとはなしてゐると三人の位置いちひき玉にかんがへられたり、三つならんだちや碗の姿すがたおも白いおし玉の恰好かつこうに見※たりする。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
えたとほこゑ野末のずゑおしひろげるやうに、く、トントントントンとこだまにあたるやうなひゞきがとほくからるやうにこえるとりこゑは、ふくらうであつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ながらへ御とがめの身分をはゞからずおして此段御屋形樣へ言上ごんじやう仕り候此儀御用ひなき時は是非に及ばず私し儀は含状ふくみじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おい木村きむらさんしんさんつておいでよ、おりといつたらつてもいではないか、また素通すどほりで二やへだらう、おしかけてつてひきずつてるからさうおもひな
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大船おほふなくや老夫婦としよりふうふ逸早いちはやおしずしと辨當べんたうひこんだのを自分じぶんその眞似まねをしておなじものをもとめた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
足利方で立てた光明院の朝廷は、さきごろ、おし小路こうじ室町むろまちの一劃を、里内裏さとだいりとさだめられた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お立派な方が坐ると、ウンと両膝を開き、下腹を突き出し、腰を据えていらっしゃりますから、山がり出して来たようで、おしても突いても動かんように見えまするは誠にお立派なもので
白粉刷毛おしろいばけでくるくる顔をなでまわしていた曙山さんは、傍らにいるおもよどんや、お金ちゃんをあごでつかって、べにをとれの、墨をかせのと、命令するようにおしつぶした声で簡単にいいつける。
さもなくとも色事にだけは日本一おしの強い腰抜け侍に腑抜ふぬけ町人。春の日永ひながの淀川づたいを十何里が間。右に左にノラリクラリと、どんな文句を唄うて、どんな三味線をあしろうて行ったやら。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自分が悪くした妻から、幸福を求めるのはおしが強過ぎるじゃないか。幸福は嫁に行って天真てんしんそこなわれた女からは要求できるものじゃないよ
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おし莞爾にこ/\顏して我家へ這入はひりしあとにお光はまたこめ淅了とぎをはり我家の中に入し頃は護國寺のかね入相いりあひつげければ其所等そこら片付かたづけ行燈あんどうに火を照し附け明るけれどくらからぬ身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おい木村さんしんさん寄つておいでよ、お寄りといつたら寄つてもいではないか、又素通りで二葉ふたばやへ行く気だらう、おしかけてつて引ずつて来るからさう思ひな
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と気が付いた……ものらしい……で、懐中ふところあごで見当をつけながら、まずその古めかしい洋傘こうもりを向うの亜鉛塀トタンべいおしつけようとして、べたりとぬりくった楽書らくがきを読む。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それで一時もり返したねつも今は又すつかりさめきつて、それは空しくおし入のおくでほこりにまみれてゐる。
本郷丸山の本妙寺ほんみょうじ長屋へ浪人していました処、わたくしの兄澤田右衞門が物堅い気質で、左様な酒癖さけくせあしき者に連添うているよりは、離縁を取って国へ帰れとおして迫られ、兄の云うに是非もなく
おしというか、自信というか、ぶつかってゆく。——その手で、お里も、ほかの多くの女をも、経験してきた彼は、やがて、お八重がよく町医の関口琦庵きあんの所へ通うのを知って、ある夜、わざと
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分じぶんおしずしなるものを一つつまんでたがぎてとてもへぬのでおめにしてさら辨當べんたうの一ぐうはしけてたがポロ/\めし病人びやうにん大毒だいどくさとり、これも御免ごめんかうむり、元來ぐわんらい小食せうしよく自分じぶん
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
これらは幾分か片方で切りつめてこの余った energy をこの方に向ける、どちらかといえばおしのふとい方なのです。
おはなし (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
にとりつあさからぬおこゝろかたじけなしとて三らうよろこびしとたへたまほかならぬひと取次とりつぎことさらうれしければ此文このふみたまはりて歸宅きたくすべしとて懷中ふところおしいれつゝまたこそと
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)