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恍惚
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うつとり
ふりがな文庫
“
恍惚
(
うつとり
)” の例文
鼻筋
(
はなすぢ
)
の
象牙彫
(
ざうげぼり
)
のやうにつんとしたのが
難
(
なん
)
を
言
(
い
)
へば
強過
(
つよす
)
ぎる……かはりには
目
(
め
)
を
恍惚
(
うつとり
)
と、
何
(
なに
)
か
物思
(
ものおも
)
ふ
體
(
てい
)
に
仰向
(
あをむ
)
いた、
細面
(
ほそおも
)
が
引緊
(
ひきしま
)
つて
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
懶怠
(
なまけ
)
た身の
起伏
(
おきふし
)
に何といふこともなく眺めやる昼の男の心持、また逃げてゆく「時」のうしろでをも
恍惚
(
うつとり
)
と空に
凝視
(
みつ
)
むる心持……
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
わたしの中のわたしが、しばし
恍惚
(
うつとり
)
とじぶんを置きわすれて、往つてしまふ。まづ、それをとり戻さなければならん。
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
正助爺さんはこの門を通つて、お城の中へ参りましたが、その美しいのに
恍惚
(
うつとり
)
として、
危
(
あやう
)
く竜の駒から落ちようとしたことが幾度あつたか知れません。
竜宮の犬
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
『嗅んで見さいな、これ。』と云つて自分で嗅いで居たが、小さい鼻がぴこづいて、目が
恍惚
(
うつとり
)
と細くなる。
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
與吉
(
よきち
)
は
幸
(
さいは
)
ひにぐつたりと
成
(
な
)
つてお
袋
(
ふくろ
)
の
懷
(
ふところ
)
から
離
(
はな
)
れるのも
知
(
し
)
らないのでおつぎが
小
(
ちひ
)
さな
手
(
て
)
で
抱
(
だ
)
いた。お
品
(
しな
)
は
段々
(
だん/\
)
と
身體
(
からだ
)
が
暖
(
あたゝ
)
まるに
連
(
つ
)
れて
始
(
はじ
)
めて
蘇生
(
いきかへ
)
つたやうに
恍惚
(
うつとり
)
とした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
かうした思ひがけない、深い、
恍惚
(
うつとり
)
した心持の中で全く彼の方へ引きつけられると、二十歳の娘の感覺は或る物を呼び醒ました。けれど最初に動いたのは彼女の心臟であつた。
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
元来
(
いつたい
)
荒尾が鍋小路どのを
伴
(
つ
)
れて来たのは自分の理想の女神を見せびらかすつもりであつたのが、行平どの忽ち
恍惚
(
うつとり
)
として天にあらば比翼の鳥、地にあらば連理の枝と歌ひたくなつた。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
女
(
をんな
)
は
暫時
(
しばし
)
恍惚
(
うつとり
)
として
其
(
その
)
すゝけたる
天井
(
てんじやう
)
を
見上
(
みあ
)
げしが、
孤燈
(
ことう
)
の
火
(
ほ
)
かげ
薄
(
うす
)
き
光
(
ひかり
)
を
遠
(
とほ
)
く
投
(
な
)
げて、おぼろなる
胸
(
むね
)
にてり
返
(
かへ
)
すやうなるもうら
淋
(
さび
)
しく、
四隣
(
あたり
)
に
物
(
もの
)
おと
絶
(
た
)
えたるに
霜夜
(
しもよ
)
の
犬
(
いぬ
)
の
長吠
(
とほぼえ
)
すごく
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
トツクやマツグも
恍惚
(
うつとり
)
としてゐたことは或は僕よりも勝つてゐたでせう。
河童
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こんな事を良人が云つたので、自分も今頃若し巴里に居たら戦争の事なんか忘れて、リユクサンブルの美術館でロダン翁の作の「鼻の欠けた人」の首でも
恍惚
(
うつとり
)
と眺めて居るかも知れないと思つた。
台風
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
お寒さうなが勿体ない。せめて私もこの
寒風
(
かぜ
)
にと、
恍惚
(
うつとり
)
そこに佇みぬ。
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
紳士は
其儘
(
そのまゝ
)
かき
抱
(
いだ
)
きて、其の白きもの
施
(
ほど
)
こせる額を
恍惚
(
うつとり
)
と
眺
(
なが
)
めつ「どうぢや、浜子、嬉しいかナ」と言ふ顔、少女は
媚
(
こび
)
を
湛
(
たゝ
)
へし
眸
(
め
)
に見上げつゝ「
御前
(
ごぜん
)
、奥様に
御睨
(
おにら
)
まれ申すのが
怖
(
こは
)
くてなりませんの」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
烈しい
木枯
(
こがらし
)
や
柔
(
やさ
)
しい微風、荒れた日や
和
(
なご
)
やかな日、日の出や落日のとき、月の光や雲の夜は、この地方に於て彼等と同じ魅力を私に次第に募らせた——そして彼等を
恍惚
(
うつとり
)
させてゐるその同じ咒文は
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そんな事を思合せると、
流石
(
さすが
)
に實利主義な世の中には呆れ返つたと云つて居るです。今時の日本の女には八百屋お七見たやうに男の
容貌
(
きりやう
)
に
恍惚
(
うつとり
)
して身を
過
(
あやま
)
つやうな優しい情愛と云ふものは微塵もない。
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
つい、ぼんやりと、
恍惚
(
うつとり
)
して
了
(
しま
)
ふところを
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
彌
(
いや
)
が
上
(
うへ
)
に、
淺葱
(
あさぎ
)
の
襟
(
えり
)
を
引合
(
ひきあ
)
はせて、
恍惚
(
うつとり
)
と
成
(
な
)
つて、
其
(
そ
)
の
簾
(
すだれ
)
を
開
(
あ
)
けて、キレー
水
(
すゐ
)
のタラ/\と
光
(
ひか
)
る
君
(
きみ
)
、
顏
(
かほ
)
を
中
(
なか
)
へ
入
(
い
)
れると、
南無三
(
なむさん
)
。
麦搗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
カラカラチーン、チーン、チーン、チーン……気まぐれな隣の
自鳴鐘
(
とけい
)
がもう夜の十時を
点
(
う
)
つ、夕日がくわつと壁から鏡に照り反す。鶏頭が
恍惚
(
うつとり
)
と息をつく、風が光る。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
恍惚
(
うつとり
)
となる
閑
(
しづ
)
けさ。——
聖母像
(
マドンナ
)
はゐない。架上の
基督
(
クリスト
)
だけが、弱々しげに咳き込む。⦅けふは、あなた、クリスマス・イヴなんですよ⦆紅茶のスプンの「ちん」と鳴る音。——
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
毎朝御飯前と
午後
(
ひるすぎ
)
、学校からお帰りになると
必
(
きつ
)
と
練習
(
おさら
)
ひなさるが、俺達のやうな解らないものが聞いてさへ面白いから、何時でも其時刻を計つて西洋間の窓の下に
恍惚
(
うつとり
)
と聞惚れてゐる。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
としめやかに
朱唇
(
しゆしん
)
が
動
(
うご
)
く、と
花
(
はな
)
が
囁
(
さゝや
)
くやうなのに、
恍惚
(
うつとり
)
して
我
(
われ
)
を
忘
(
わす
)
れる
雪枝
(
ゆきえ
)
より、
飛騨
(
ひだ
)
の
国
(
くに
)
の
住人
(
じゆうにん
)
以
(
も
)
つての
外
(
ほか
)
畏縮
(
ゐしゆく
)
に
及
(
およ
)
んで
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それから
暫時
(
しばらく
)
経
(
た
)
つて、殆素つ裸の俄作りの
戯奴
(
ヂヤウカア
)
は外の出窓に両脚を
恍惚
(
うつとり
)
と投げ出して居た。而して今霊岸島の屋根瓦の波の上にくるくると落ちかかる真赤な太陽の光を
凝
(
ぢつ
)
と眺めて居る。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
年
(
とし
)
はじめて
三歳
(
さんさい
)
、
國君
(
こくくん
)
其
(
そ
)
の
色
(
いろ
)
を
聞
(
きこ
)
し
召
(
め
)
し、
仍
(
すなは
)
ち
御殿
(
ごてん
)
にお
迎
(
むか
)
へ
遊
(
あそ
)
ばし、
掌
(
たなごころ
)
に
据
(
す
)
ゑられしが、
忽
(
たちま
)
ち
恍惚
(
うつとり
)
となり
給
(
たま
)
ふ。
妙齢
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
大河に
恍惚
(
うつとり
)
とゆく帆船、
短艇
(
ボウト
)
、煙、水面
緑の種子
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
雪
(
ゆき
)
なす
鸚鵡
(
あうむ
)
は、
見
(
み
)
る/\
全身
(
ぜんしん
)
、
美
(
うつく
)
しい
血
(
ち
)
に
染
(
そま
)
つたが、
目
(
め
)
を
眠
(
ねむ
)
るばかり
恍惚
(
うつとり
)
と
成
(
な
)
つて、
朗
(
ほがら
)
かに
歌
(
うた
)
つたのである。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
恍惚
(
うつとり
)
と
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
婦人
(
をんな
)
は
何時
(
いつ
)
かもう
米
(
こめ
)
を
精
(
しら
)
げ
果
(
は
)
てゝ、
衣紋
(
えもん
)
の
乱
(
みだ
)
れた、
乳
(
ち
)
の
端
(
はし
)
もほの
見
(
み
)
ゆる、
膨
(
ふく
)
らかな
胸
(
むね
)
を
反
(
そ
)
らして
立
(
た
)
つた、
鼻
(
はな
)
高
(
たか
)
く
口
(
くち
)
を
結
(
むす
)
んで
目
(
め
)
を
恍惚
(
うつとり
)
と
上
(
うへ
)
を
向
(
む
)
いて
頂
(
いたゞき
)
を
仰
(
あふ
)
いだが
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
恍惚
(
うつとり
)
ともの
思
(
おも
)
はしげな
顏
(
かほ
)
をして
手
(
て
)
をなよ/\と
忘
(
わす
)
れたやうに、
靜
(
しづか
)
に、
絲車
(
いとぐるま
)
を
𢌞
(
まは
)
して
居
(
ゐ
)
ました。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
年紀
(
とし
)
が
少
(
わか
)
い、十三四か、それとも五六、七八か、
眦
(
めじり
)
に
紅
(
べに
)
を
入
(
い
)
れたらしいまで
極彩色
(
ごくさいしき
)
に
化粧
(
けしやう
)
したが、
烈
(
はげ
)
しく
疲
(
つか
)
れたと
見
(
み
)
えて、
恍惚
(
うつとり
)
として
頬
(
ほゝ
)
に
蒼味
(
あをみ
)
がさして、
透通
(
すきとほ
)
るほど
色
(
いろ
)
が
白
(
しろ
)
い。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
既
(
すで
)
に
膝
(
ひざ
)
に
乘
(
の
)
つて、
噛
(
かじ
)
り
着
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
た
小兒
(
こども
)
は、
其
(
それ
)
なり、
薄青
(
うすあを
)
い
襟
(
えり
)
を
分
(
わ
)
けて、
眞白
(
まつしろ
)
な
胸
(
むね
)
の
中
(
なか
)
へ、
頬
(
ほゝ
)
も
口
(
くち
)
も
揉込
(
もみこ
)
むと、
恍惚
(
うつとり
)
と
成
(
な
)
つて、
最
(
も
)
う
一度
(
いちど
)
、ひよいと
母親
(
はゝおや
)
の
腹
(
はら
)
の
内
(
うち
)
へ
安置
(
あんち
)
され
終
(
をは
)
んぬで
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
山家
(
やまが
)
の
者
(
もの
)
には
肖合
(
にあ
)
はぬ、
都
(
みやこ
)
にも
希
(
まれ
)
な
器量
(
きりやう
)
はいふに
及
(
およ
)
ばぬが
弱々
(
よわ/\
)
しさうな
風采
(
ふう
)
ぢや、
背
(
せなか
)
を
流
(
なが
)
す
内
(
うち
)
にもはツ/\と
内証
(
ないしよう
)
で
呼吸
(
いき
)
がはづむから、
最
(
も
)
う
断
(
ことは
)
らう/\と
思
(
おも
)
ひながら、
例
(
れい
)
の
恍惚
(
うつとり
)
で
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
丈
(
せい
)
もすら/\と
急
(
きふ
)
に
高
(
たか
)
くなつたやうに
見
(
み
)
えた、
婦人
(
をんな
)
は
目
(
め
)
を
据
(
す
)
ゑ、
口
(
くち
)
を
結
(
むす
)
び、
眉
(
まゆ
)
を
開
(
ひら
)
いて
恍惚
(
うつとり
)
となつた
有様
(
ありさま
)
、
愛嬌
(
あいけう
)
も
嬌態
(
しな
)
も、
世話
(
せわ
)
らしい
打解
(
うちと
)
けた
風
(
ふう
)
は
頓
(
とみ
)
に
失
(
う
)
せて、
神
(
しん
)
か、
魔
(
ま
)
かと
思
(
おも
)
はれる。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
あたりは
眞暗
(
まつくら
)
な
處
(
ところ
)
に、
蟲
(
むし
)
よりも
小
(
ちひさ
)
な
身體
(
からだ
)
で、この
大木
(
たいぼく
)
の
恰
(
あたか
)
も
其
(
そ
)
の
注連繩
(
しめなは
)
の
下
(
した
)
あたりに
鋸
(
のこぎり
)
を
突
(
つき
)
さして
居
(
ゐ
)
るのに
心着
(
こゝろづ
)
いて、
恍惚
(
うつとり
)
として
目
(
め
)
を
睜
(
みは
)
つたが、
氣
(
き
)
が
遠
(
とほ
)
くなるやうだから、
鋸
(
のこぎり
)
を
拔
(
ぬ
)
かうとすると
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
五
分間
(
ふんかん
)
停車
(
ていしや
)
と
聞
(
き
)
いて、
昇降口
(
しようかうぐち
)
を、
峠
(
たうげ
)
の
棧橋
(
かけはし
)
のやうな、
雲
(
くも
)
に
近
(
ちか
)
い、
夕月
(
ゆふづき
)
のしら/″\とあるプラツトフオームへ
下
(
お
)
りた
一人旅
(
ひとりたび
)
の
旅客
(
りよきやく
)
が、
恍惚
(
うつとり
)
とした
顏
(
かほ
)
をして
訪
(
たづ
)
ねた
時
(
とき
)
、
立會
(
たちあは
)
せた
驛員
(
えきゐん
)
は、……
恁
(
か
)
う
答
(
こた
)
へた。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
民也
(
たみや
)
は
心
(
こゝろ
)
も
其
(
そ
)
の
池
(
いけ
)
へ、
目
(
め
)
も
遙々
(
はる/″\
)
と
成
(
な
)
つて
恍惚
(
うつとり
)
しながら
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
“恍惚”の意味
《名詞》
恍惚(こうこつ)
何かに心を奪われうっとりすること。また、そのようなさま。
意識がぼんやりしていてはっきりしないこと。また、そのようなさま。
認知症で脳の機能が低下しているさま。
(出典:Wiktionary)
恍
漢検1級
部首:⼼
9画
惚
漢検準1級
部首:⼼
11画
“恍惚”で始まる語句
恍惚境
恍惚感
恍惚郷