かは)” の例文
叩くとき、それ/″\のくせがあるものだ、三つづつ叩く人と、二つづつ叩く人と、四つづつ叩く人と、二つと三つかはる/″\叩く人と
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
見るに衣裳なり見苦みぐるしけれども色白くして人品ひとがら能くひなまれなる美男なればこゝろ嬉敷うれしくねやともなひつゝ終に新枕にひまくらかはせし故是より吉三郎もお菊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
結納ゆいのうかはされし日も宮は富山唯継をつまと定めたる心はつゆ起らざりき。されど、己はつひにその家にくべき身たるを忘れざりしなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
即ち、後者の激しい意志が前者の無氣力の上に大きな勢力を持つてゐるのである。彼等の間にかはされた數語が私にこの確信を與へた。
その、長崎の浦上うらかみの天主教会のラゲといふ僧侶に出会つたことがあつた。その際、ラゲさんと「きりしとほろ上人伝」の話をかはした。
風変りな作品に就いて (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
室の中は何處となく底冷そこびえがした。私は散らかつた机の上に重ねた紙を置き、ところどころ刄のこぼれた小刀で五本の鉛筆をかはる交る削つた。
不穏 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
僕がめてやらう。(二つをかはがはるに指で指し)ド ツ チ ニ シ ヨ ウ カ ナ……。こつちだ。(道代に渡す)
ママ先生とその夫 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
となり旅客りよきやくは、何處どこから乘合のりあはせたのかかれはそれさへらぬ。うへ雙方さうはうとも、ものおもひにふけつて、一言葉ことばかはさなかつたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
禪師が侍者を具して威張り込んで椅子にかけてゐると、僧俗がかはる/″\出て何か云ふ、應酬宜敷あるといふ次第だ。
淡島寒月氏 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そして挨拶あいさつかはした。然し意外だつた。其の顔は初めてではなかつた。まがひもなく先刻さつき波止場で見た婦人ひとだつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
あられの如き間投詞かんたうしの互にかはされたる後、すゝぎの水は汲まれ、草鞋わらじがれ、其儘奧のへやに案内せられたるが、我等二人はまづ何を語るべきかを知らざりき。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
彼の好むごとく我は目を向け、百の小さき球のむれゐてその光をかはしつゝいよ/\美しくなれるを見たり 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
二人は時々顔を見合せ、目くはせをし乍ら、尚了解が出来ぬと言ふやうな表情をかはし乍ら、馬の後を走つて行く。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
四邊あたり其香そのにほひで大變たいへんでした。公爵夫人こうしやくふじんでさへも、ッちやんとほとんどかはる/″\くさめをして、せるくるしさにたがひ頻切しツきりなしにいたりわめいたりしてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
それから三十分程のあひだ母子おやこしてかはる/″\楽器の前にすはつては、一つところを復習してゐたが、やがて梅子が
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と噂されるので、今度の旅行には気持よく新聞記者に会つて談話はなしをするのみか、停車場ていしやぢやうに立つてゐる巡査や駅夫にまで、にこ/\顔で一寸愛嬌をかはしてゐる。
二三問答もんどうかはしてうちに、数間かずまじいやもそこへあらわれ、わたくし良人おっとひさしぶりの対面たいめんげました。
鹿しかのめぐりはだんだんゆるやかになり、みんなはかはがはる、前肢まへあし一本いつぽんなかはうして、いまにもかけしてきさうにしては、びつくりしたやうにまためて
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
婆やとかはる/\いて見ると、鷹雄といふ男は、これは又、実に気六つかしいらしい。気が向くと、朝から晩まで論文の原稿を書く、それがうまく行かぬと不機嫌ふきげんになる。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
うしろの方ではしきりに独逸ドイツ語の話がかはされて居た。かんてらの数が多くなる程ますます食堂は暗くなつてく。何時いつの間にかもう客の数は百に多く余る程のものになつて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
まこと言ひかはせし事だになけれども、我のみの哀れは中々に深さの程こそ知れね、つれなき人の心に猶更なほさら狂ふ心の駒を繋がむ手綱たづなもなく、此の春秋はるあきは我身ながらつらかりし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
慈愛のふところから思ひも寄らぬ孤独の境界きやうがいに投げ出された子供は、力の限り戸をたゝいて、女中の名や、家にはゐない親しい人の名までかはる/″\呼び立てながら、救ひを求めてゐた。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
此人このひと武村兵曹たけむらへいそうとて、吾等われら三年さんねんあひだ孤島こたう生活中せいくわつちう日出雄少年ひでをせうねんとはきはめてなかのよかつた一人ひとりです。』とわたくしかれ二人ふたり紹介ひきあはせて、それより武村兵曹たけむらへいそうわたくしとはかはる/″\、朝日島あさひじま漂流へうりう次第しだい
其方そちさかづきかはしたから、もうめてもいゝ。』
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
馬場はヨオゼフ・シゲテイと逢つて話をかはした。
ダス・ゲマイネ (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
たがひにくどくどかはす。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さまたげんと何國いづくの者やら相分あひわからざる醫師を遣し世に有りしとも覺えざるテレメンテーナといふ藥の事を吹聽ふいちやうし結納までも取かはせし婚姻を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人の好い明子の父親は、嬉しさうな微笑を浮べながら、伯爵とその夫人とへ手短てみじかに娘を紹介した。彼女は羞恥しうちと得意とをかはがはる味つた。
舞踏会 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「お勝手に居た二人の女が、睨めつこをして居たわけでないから、かはる/″\外へ出て用をたしたところで、一々覺えても居ないでせう」
し彼のまなこにらまれんとも、互のおもてを合せて、ことばかはさずともせめては相見て相知らばやと、四年よとせを恋にゑたる彼の心はいらるる如く動きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
流水りうすゐあにこゝろなからんや。ことばかはすと、かくさずつた。おかうちやんのかたところによれば、若後家わかごけだ、とふ。若旦那わかだんなおもつぼ
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あんたは此處にゐる男の人たちを知らないかな? その中の誰とも一言ひとことかはしたことはないかな? この家のあるじのことも、あんたはさうお云ひかな?」
やがあいちやんは其兩手そのりやうてきのこ缺片かけつてゐたのにがついて、おそる/\ふたゝびそれをはじめました、めは一ぱうを、それからほかはうかはる/″\めて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
秋の日はかゞみの様ににごつた池のうへに落ちた。なかちいさなしまがある。しまにはたゞ二本のえてゐる。青い松とうす紅葉もみぢが具合よく枝をかはし合つて、箱庭の趣がある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
エルアフイ夫人は立ち上つて控へ目な笑顔を見せながら、それ/″\の人と握手をかはした。街頭へ出た時、並木の暗い緑が、今度は静かな院長室の延長のやうに思はれた。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
会つて言葉をかはしたところで相手が俳優やくしやの事だ、あめだま京白粉きやうおしろいの話でもして、にやつと笑ふ位の事しか出来なかつたが、それでもお常はその一言に生命いのちまでもと思ひ込んだ。
き合ふ時双方の船客せんきやくが帽やハンカチイフを振りたがひに健康を祝つて叫びかはす。又信号所の附近にある人家の楼上から女子供が「ボン、ヴオアイヤアヂユ」などと仏蘭西フランス語で呼びかける。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
その度ごとに、かはがはる、男と女の顔がぱつと明るくなるのです。風に翻る袖、ほどけかゝつた肩掛、それが、木の葉のやうに光ります。僕たちも、森の中から飛び出して、一緒に踊りました。
すずしき風にかはし、また小躍こをどりぬ。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
鳥のごとく歌ひかは
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
障子一重の向うで、自分と言ひかはしたお袖が、父親とは名ばかりの獸物けだもののやうな男の餌になつて、勝手なことをされてゐるんだ
又実際主人は勿論あのはにかみ屋の女にも、「何々をくれ給へ」と云ふ外には挨拶さへかはしたことはなかつたのである。
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
又己の受けし愛の幾許浅く、人のかはせるなさけの幾許篤からんかを想ひて、又己の恋の障碍さまたげの幾許強く、人の容れられぬ世の幾許狭からんかを想ひて。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かはよろこなみだむせびけりしばらくして馬士まご云樣話はうちで出來るから日のくれぬ中うまのらつせへいや伯父をぢ樣と知ては勿體もつたいない馬鹿ばか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ドアぢやうを下ろし、手に鍵を持つた儘立つて、私の一番いゝ生徒達の中の六人程に特別の別れの言葉をかはしてゐた。
素人目しろうとめにも、こののぼり十五ちやう、五十六まがり十六けいまをして岩端いはばな山口やまぐち処々ところ/″\、いづれもかはる/″\、みづうみ景色けしきかはりますうちにも、こゝは一だんぞんじました。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ脳裏のうりには、今日けふ日中につちうに、かはる/″\あとを残した色彩が、ときの前後とかたちの差別を忘れて、一度にらついてゐた。さうして、それがなにの色彩であるか、何の運動であるかたしかにわからなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
台所ではよくかう言つた目つきが取りかはされるものである。
満洲に別れんとして人ならぬ柳とかはす最後の握手
その時初めて言葉をかはしたに過ぎぬ。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)