細道ほそみち)” の例文
くらばんに、ゆきこおった、細道ほそみちあるいてゆくと、あちらからふえいて、とぼとぼとあるいてくるとしとった盲目めくら女按摩おんなあんまあいました。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
鬼ごっこ、子をとろ子とろ、ひな一丁おくれ、釜鬼かまおに、ここは何処どこ細道ほそみちじゃ、かごめかごめ、瓢箪ひょうたんぼっくりこ——そんなことをして遊ぶ。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
おかはさして高くはないが、奇岩きがん乱石らんせき急勾配きゅうこうばい、いちめんにいしげっている落葉松からまつの中を、わずかに、石をたたんだ細道ほそみち稲妻形いなずまがたについている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、安永中あんえいちう続奥ぞくおく細道ほそみちには、——故将堂女体こしやうだうによたい甲胄かつちうたいしたる姿すがた、いとめづらし、ふるざうにて、彩色さいしきげて、下地したぢなる胡粉ごふんしろえたるは。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
茶屋ちやゝうらゆく土手下どてした細道ほそみちおちかゝるやうな三あほいでけば、仲之町藝者なかのてうげいしやえたるうでに、きみなさけ假寐かりねとこにとなにならぬ一ふしあわれもふか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其角きかくだつて、「おく細道ほそみち」の講釈はするだらうが、ハムレツトと来た日にや名を聞いた事もあるまいからね。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「これがいにしえのつた細道ほそみち、この石が猫石で、それ猫の形をしていましょう、あれが神社平じんじゃだいら
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして細道ほそみちを少し向うへ歩いて行つて、ヒイスのくさむらに身體を投げ出して靜かに横になつた。
蕁草いらぐさおほはれたる細道ほそみちけば別室べつしつ入口いりぐちで、ひらけば玄關げんくわんである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
私達わたくしたちはその野原のはらつらぬ細道ほそみちをどこまでもどこまでもきへいそぎました。
さてこゝをさりれい細道ほそみちをたどり、たかきにのぼりひくきくだり、よほどのみちをへてやうやく三倉みくら村にいたれり、こゝには人家じんかげんあり、今朝けさ見玉みたま村より用意よういしたる弁当べんたうをひらかばやとあるいへに入りしに
おのづからなる細道ほそみち
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おのづからなる細道ほそみち
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
寺のあけの細道ほそみちに。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
尋ねけるに二三年以前相果あひはて娘お節は親類しんるゐへ引取れし由ゆゑ偖々さて/\變り果たる浮世かなとつぶやきながら鞠子まりこ宿しゆくこえ宇都谷たうげかゝりしにつた細道ほそみち時雨しぐれ來て心ほそくもうつゝにも夢にも人に逢ぬ辿たどり/\て岡部よりはや藤枝ふぢえだに來りし頃あとになり先になりあやなる者二三人付そひ來れば故譯わざ相良街道さがらかいだうへは這入はひらず既に瀬戸川迄來りし時日は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そしてまちはなれて、野原のはら細道ほそみちをたどる時分じぶんにはまた、のよい音色ねいろが、いろいろの物音ものおとあいだをくぐりけてくるように、とおまちほうからこえてきました。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
喟然きぜんとしてわたしたんじた。人間にんげんとくによる。むかし、路次裏ろじうらのいかさま宗匠そうしやうが、芭蕉ばせをおく細道ほそみち眞似まねをして、南部なんぶのおそれやまで、おほかみにおどされたはなしがある。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
左樣さやうならとてかしらさげげるに、あれいちやんの現金げんきんな、うおおくりはりませぬとかえ、そんならわたし京町きやうまち買物かいものしましよ、とちよこ/\ばしりに長屋ながや細道ほそみちむに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と、ほかの雑兵ぞうひょうには目もくれないで、まっしぐらに、武者走り(城壁じょうへき細道ほそみち)をかけぬけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蕁草いらぐさおおわれたる細道ほそみちけば別室べっしつ入口いりぐちで、ひらけば玄関げんかんである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おのづからなる細道ほそみち
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たけちゃんとけんちゃんがペスをつれて、くさいきれのする細道ほそみちを、かわほうからきかかると、からのリヤカーをはしらせて、とおぎようとする、秀吉ひできちあいました。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
二階にかいが、また二階にかいえる。くろはしらに、すゝ行燈あんどん木賃きちん御泊宿おとまりやど——内湯うちゆあり——と、あまざらしにつたのを、う……ると、いまめかしきことながら、芭蕉ばせをおく細道ほそみちに……
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぐろどぶかどよりまがりて、いつもくなる細道ほそみちをたどれば、うんわるう大黒だいこくやのまへまでとき、さつとかぜ大黒傘だいこくがさうへつかみて、ちうひきあげるかとうたがふばかりはげしくけば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いつぞやこの原の細道ほそみちで、足軽あしがるがになっていくのを竹童ちくどうがチラと見かけた、あの高札こうさつが打ってあるのだ。——といつのにか、その立札たてふだ獄門ごくもんの前へ、三ツの人影ひとかげが近づいている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、おとこは、それをふろしきにつつみました。そして、これをかかえていえからかけました。らのあいだ細道ほそみちとおりますと、もうみんながせっせとはたらいています。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
元禄げんろくころ陸奥千鳥むつちどりには——木川村きがわむら入口いりぐち鐙摺あぶみずりいはあり、一騎立いつきだち細道ほそみちなり、すこきてみぎかたてらあり、小高こだかところだう一宇いちう次信つぎのぶ忠信たゞのぶ両妻りやうさい軍立いくさだち姿すがたにて相双あひならつ。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
細道ほそみち二人ふたりおんなといっしょに、さびしい、なみおとこえるやまのすそのほうへとしてゆきました。
島の暮れ方の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
……はる/″\おく細道ほそみちとさへふ。奥州路おうしうぢなどはけてみづわるいにちがひない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
紳士しんしは、めったにひととおらない、青田あおたなか細道ほそみちあるいて、みぎたり、ひだりたりしながら、ときどき、まっては、くつのさき石塊いしころころがしたりしていました。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
露地ろぢ細道ほそみち駒下駄こまげたで——
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あるのこと、一人ひとり旅人たびびとが、野中のなか細道ほそみちあるいてきました。そのは、ことのほかあつでした。旅人たびびとっているまつますと、おもわずまりました。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どもは、かなしみをこらえて、んぼの細道ほそみちを、わがほうへもどりました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)