すゞ)” の例文
目をあげて見れば、空とても矢張やはり地の上と同じやうに、音も無ければ声も無い。風は死に、鳥は隠れ、すゞしい星の姿ところ/″\。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たゞ心すゞしく月日経ばやなどと思ひたることは幾度と無く侍り、むつぶべき兄弟はらからも無し、語らふべき朋友ともも持たず、何に心の残り留まるところも無し
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
美女たをやめにもうれしげに……たのまれてひとすくふ、善根ぜんこん功徳くどく仕遂しとげたごと微笑ほゝゑみながら、左右さいうに、雪枝ゆきえ老爺ぢいとを艶麗あでやかて、すゞしいひとみ目配めくばせした。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「若菜集」にはまた眞白く柔らかなる手にきばんだ柑子かうじの皮をなかばかせて、それを銀のさらに盛つてすゝめらるやうな思ひのする匂はしくすゞしい歌もある。……
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
伏し目に半ば閉ぢられた目は、此時姫を認めたやうにすゞしく見ひらいた。軽くつぐんだ唇は、この女性によしように向うて物を告げてゞも居るやうに、ほぐれて見えた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
いろのくつきりとしろい、口元くちもと父君ちゝぎみ凛々りゝしきに眼元めもと母君はゝぎみすゞしきを其儘そのまゝに、るから可憐かれん少年せうねん
退いた跡には、砂の目から吹く潮の氣が、シーッとすゞしい音を立てゝ、えならぬ強い薫を撒く。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
わたしうち近所きんじよに、それは綺麗きれいいぬてよ、おまへせてやりたいわ!可愛かあいすゞしいをした獵犬かりいぬよ、つてゝ、こんなにながちゞれた茶色ちやいろの!なんでもげてやるとつててよ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
口もとは小さからねど締りたれば醜くからず、一つ一つに取たてゝは美人のかゞみに遠けれど、物いふ聲の細くすゞしき、人を見る目の愛敬あふれて、身のこなしの活々したるは快き物なり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
出はづれの阪道に瀧あり明神のもり心地もすゞしく茂りたり瀧の流に水車みづぐるま
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
落ち窪んだ眼はすゞしく輝やいてゐるのである。
二月堂の夕 (旧字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
澄みて、離れて、落居たる其音聲おんじやうすゞしさに
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
すゞしいうすものの揺らぐやうに地の上を籠める。
修道院の月 (新字旧仮名) / 三木露風(著)
ゆきすゞしきをうたせ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すゞしきひゞきいと瑲々さや/\
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
『しかし、』とお志保はすゞしいひとみを輝した。『父親おとつさんや母親おつかさんの血統ちすぢ奈何どんなで御座ませうと、それは瀬川さんの知つたことぢや御座ますまい。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それはございません。)といひながらたゝきもしないですゞしいわしかほをつく/″\た。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一人ひとり左鬢さびんに、かすかなきづしろ鉢卷はちまきわたくし雀躍こをどりしながら、ともながむる黎明れいめい印度洋インドやう波上はじやうわたすゞしいかぜは、一陣いちじんまた一陣いちじんふききたつて、いましも、海蛇丸かいだまる粉韲ふんさいしたる電光艇でんくわうてい
と心あり気に云はるゝ言葉を源太早くも合点して、ゑゝ可愛がつて遣りますとも、といとすゞしげに答れば、上人満面皺にして悦び玉ひつ、好いは好いは、嗚呼気味のよい男児ぢやな
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
最初さいしよねえさんは可愛かあいあいちやんのゆめ、それからまたひざきついたちひさなやら、そのすゞしい可愛かあい自分じぶんつめてゐるのをゆめました——物言ものいこゑきこえました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
くちもとはちいさからねどしまりたればみにくからず、一つ一つにとりたてゝは美人びじんかゞみとほけれど、ものいふこゑほそすゞしき、ひと愛嬌あいけうあふれて、のこなしの活々いき/\したるはこゝろよものなり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
退治たりと思ふ油斷に四椀目は早くも投げ込まれぬ此の狼狽我のみならず飮食道に豪傑の稱ある梅花道人始め露伴子太華山人も呆れ果て箸を膳に置いて一息しよく/\見れば美くしき妻女すゞしき眼を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
終に分け入る森陰のすゞしき宿やどり求めえなば
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
すゞ浄土じやうどのかしこさを
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
じつと其の邪気あどけない顔付を眺めた時は、あのお志保の涙にれたすゞしいひとみを思出さずに居られなかつたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
敷居しきゐに、そでおびなびくと、ひら/\と團扇うちはうごいて、やゝはなやかな、そしてすゞしいこゑして
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
扨いよ/\了見を定めて上人様の御眼にかゝり所存を申し上げて見れば、好い/\と仰せられた唯の一言に雲霧もや/\もう無くなつて、すゞしい風が大空を吹いて居るやうな心持になつたは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
日出雄少年ひでをせうねん海外かいぐわい萬里ばんりうまれて、父母ちゝはゝほかには本國人ほんこくじんことまれなることとて、いとけなこゝろにもなつかしとか、うれしとかおもつたのであらう、そのすゞしいで、しげ/\とわたくしかほ見上みあげてつたが
四方しほうすゞしき宮霧みやきり
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
姉の夫もすゞしい好い音聲で故郷の方の俗謠などを歌ひましたが、その聲には私は聞きれる位でした。
かたなゝめにまへおとすと、そでうへへ、かひなすべつた、……つきげたるダリヤの大輪おほりん白々しろ/″\と、れながらたはむれかゝる、羽交はがひしたを、かるけ、すゞしいを、じつはせて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ことに参りたる甲斐はありけり、菩薩も定めしかゝる折のかゝる所作しよさをば善哉よしとして必ず納受なふじゆし玉ふなるべし、今宵の心の澄み切りたる此のすゞしさを何に比へん、あまりに有り難くも尊く覚ゆれば
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
すゞしかりし日。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
じつは、ほのほいて、ほのほそむいて、たとひいへくとも、せめてすゞしきつきでよ、といのれるかひに、てん水晶宮すゐしやうぐうむねさくらなかあらはれて、しゆつたやうな二階にかい障子しやうじ
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かゝるすゞしきをたてて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
(おゝ、御坊様おばうさま、)と立顕たちあらはれたのは小造こづくりうつくしい、こゑすゞしい、ものやさしい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すゞしき聲をうちあげて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ほんのりとして、ゆかしくうすいが、よるなどはともしび御目おんまなざしもくろすゞしく、法衣ほふえいろがさま/″\といますがごとかすかい。立袈裟たてげさくろに、よりもほそなゝめいた、切込きりこみの黄金きん晃々きら/\かゞやく。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すゞしいかなや西風の
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しかり、ぎんかなへさゝげたときその聖僧せいそうごとく、こゝろすゞしかつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一文字いちもんじまゆはきりゝとしながら、すゞしいやさしく見越みこす。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かほげて、すゞしいじつました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しばらつて二度目どめのは判然はつきりすゞしいこゑ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)