あぢは)” の例文
山中さんちううらにて晝食ちうじき古代こだいそつくりの建場たてばながら、さけなることおどろくばかり、斑鯛ふだひ?の煮肴にざかなはまぐりつゆしたをたゝいてあぢはふにへたり。
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
講談に於ける「怪談」の戦慄、人情本からあぢははれべき「」の肉感的衝動の如き、ことごとく此れを黙阿弥劇のうちに求むる事が出来る。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
予の所見に従へば、人類は百般の無用の事に百般の苦楚くそあぢはつてゐる。……予はすでに老人である。生命の太陽も沈まうとしてゐる。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『はじめは脱兎だつとの如く』と云つておいて、そして、『をはりは処女しよぢよのごとし』と云ふあたりは、あぢはつてみるとどうもうまいところがある。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
つまりその作物さくぶつ背景はいけいになつてゐるものをのみこんで、しんうたなり俳句はいくなりをあぢはるといふことが、どうしても必要ひつようなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
越後にねりやうかんを賞味して大に感嘆かんたんし、岩居にいひていはく、此ねりやうかんも近年のものなり、常のやうかんにくらぶればあぢはひまされり。
「まあ御金持おかねもちね。わたし一所いつしよれてつて頂戴ちやうだい」とつた。宗助そうすけあいすべき細君さいくんのこの冗談じようだんあぢは餘裕よゆうたなかつた。眞面目まじめかほをして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これらは八三顔子がんしが一ぺうあぢはひをもしらず。かくつるを、八四仏家ぶつかには前業ぜんごふをもて説きしめし、八五儒門には天命と教ふ。
おそらくこれいてのかんじがわかるといふだけでも僕等ぼくら日本人にほんじん歐米人達おうべいじんたちよりもずつとずつと麻雀マアジヤンあぢはたのしみかたふかいだらうと想像さうざうされる。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
実際じつさい真面目しんめんもく生涯せうがい真味しんみあぢはひし人のみがたがひともはたらき得る人なり 宗教しふけうを以て茶話席ちやわせき活題くわつだいとなすにとゞまるものは言語的げんごてき捺印的なついんてき一致いつちはかれよ
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
さて我子よ、かの大いなる流刑るけい原因もとは、木實このみあぢはへるその事ならで、たゞ分をえたることなり 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
このびんには『どく』とはいてありませんでした、其故それゆゑあいちやんはおもつてそれをあぢはつてました、ところが大變たいへんあぢかつたので、⦅それは實際じつさい櫻實漬さくらんばうづけ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かうしたおもひを取集めて考へることは、一しやうちう幾度いくどもないやうにさへ思はれた。人間はたゞ※忙そうばううちに過ぎてく……あぢはつてる余裕すらないと又繰返した。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
先生は澄んだ青空の下で、つぼを高くかざしてこの酒を飲みました。先生はしばらくの間眼をつぶつてあぢはひ尽し、それからはじめて私たちに笑顔を向けました。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
考へて見れば無理むりの無い所で、さうして此間このかんの事は硯友社けんいうしやのヒストリイからふと大いにあぢは一節いつせつですよ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分の幸福な結婚生活を、しみじみあぢはふにつけて、君達は、今、どんな気持ちで暮してゐるだらう。さぞ僕のことを考へて、何時までも晴々しないことだらう。
昨今横浜異聞(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
『貧しきものゝなぐさめ』、『労働』、『平凡なる人』、とり/″\に面白くあぢはつたことを話した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
子供が俄かに母の手に帰つたので云ひやうもない寂寞を昨日きのふからあの人はあぢはつて居るのであるから、あゝしたとがつた声で物を云つたり、可愛い榮子を打つたりするのである。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
郵船会社の倫敦支店長根岸氏は、その日以来、毎日のやうに豆腐に舌鼓したつゞみを打つにつけて、風谷と同じやうに、何とかして英国人にこの珍味があぢははせたくなつて溜らなかつた。
しかしあぢはつて見ると、此のお醋は少しくあはい。水つぽい味がすると申しました。それを聞いたお釈迦様は、醋を酸つぱいといふのは道理だ。酸つぱいが少し淡いと云ふのも最もだ。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
それだのに何故なぜ世間の奴等は、ビク/\して此の人間の面白さをあぢははないんだ。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
かれたゞ一つでもいから始終しじゆうしるなかかならずくつ/\としかつた。しかしそれは一同みんないはときのみで、それさへ卯平うへい只獨ただひとりゆつくりとあぢはふには焙烙はうろくせる分量ぶんりやうあまりにらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
四時頃に悩ましさのやや静まりたれば絵の具箱をもちて廊甲板らうかんぱんに座を取りスケツチを一枚いたしさふらふ。たそがれと云ふもののなきあたりとは聞きさふらひしが、絵筆を持てる時とてより強くその感をあぢはさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さて自身じしんにはいまだ一戀愛れんあいてふものをあぢはふたこといので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのささやきを日もすがらあぢはひ知りぬ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
禁制のをひとりあぢはひしこと
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
否、のこりなくあぢはひて、かれも人なる
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
このあぢはひをきみるらめ
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
こひ血汐ちしほあぢははん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
極めて單純な布局は唯だ夏の烈しい日光の印象をあぢははせるつもりと見えて、眺望が如何にも廣く色彩がいかにも強烈に感じられる。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
越後にねりやうかんを賞味して大に感嘆かんたんし、岩居にいひていはく、此ねりやうかんも近年のものなり、常のやうかんにくらぶればあぢはひまされり。
そしてとしくとともに、これらのうたあぢはひが、かはつてかんじられてるのです。だからまづ暗記あんきしておいてほしいとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
僕等ぼくらはもう廣小路ひろこうぢの「常盤ときわ」にあのわんになみなみとつた「おきな」をあぢはふことは出來できない。これは僕等ぼくら下戸仲間げこなかまためにはすくなからぬ損失そんしつである。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
実を云ふと三四郎には小さんのあぢはひがく分らなかつた。其上円遊なるものは未だかつて聞いた事がない。従つて与次郎の説の当否は判定しにくい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あゝ生得しやうとくさちある靈よ、味はゝずして知るによしなき甘さをば、永遠とこしへ生命いのちの光によりてあぢはふ者よ 三七—三九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そしてわたしの顔色をうかゞひながら、「青木さんからお人が見えた」といふ。わたしは「青木」といふ発音だけでも、一種いとふべきものに対するいやな心持をあぢはつた。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
が、私達はその反對を先生との感情の中にあぢはつた。そして全く單純な誤解に始まつた先生の私達に對する不快の氣持は、その日から漸次に色を深めて行くやうに思はれた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かれは自分の体が、魂が、又は罪悪が、欲望がすつかり仏に向つてなびいて行くのを感じた。かれはこの世では見ることもあぢはふことも出来ない光景に出逢つたやうな気がした。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
……などとふ、わたしだつて、湯豆府ゆどうふ本式ほんしきあぢは意氣いきなのではない。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あなたに洋行の気分をあぢははせたいと思ひましてね。」
我の食らふはなほ我の舌のあぢはふなり。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うべ、うべ、あぢはひのよささや。
のこりなくあぢはひて、かれも人なる
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
自分は海岸通りのホテルに茶菓さくわあぢはつたのち、汽車で東京に帰つた。人家の屋根の上には梅毒の広告が突立つつたつてゐる大きな都会。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ことに、かみのをしへをふかくおもふとき、などいふあぢはひは、これからさき、あなたがたにだんだんわかつてるだらうとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
岩居がんきよがてんぷらをふるまひたる夜その友蓉岳ようがく来り、(桜屋といふ菓子や)余が酒をこのまざるを聞て家製かせいなりとて煉羊羹ねりやうかんめぐみぬ、あぢはひ江戸に同じ。
私は稍汗ばんだ女の顔の皮膚と、その皮膚の放散するにほひとをあぢはつた。それから、感覚と感情との微妙な交錯かうさくに反応する、みづみづしい眼の使ひを味つた。
世之助の話 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
宗助そうすけ仕立卸したておろしの紡績織ばうせきおり脊中せなかへ、自然じねんんで光線くわうせん暖味あたゝかみを、襯衣しやつしたむさぼるほどあぢはひながら、おもておとくともなくいてゐたが、きふおもしたやうに、障子越しやうじごしの細君さいくんんで
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さびしみ』をのみあぢはひぬ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
あぢはひたまへ、この刹那せつな
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)