さわやか)” の例文
かぜつめたさわやかに、町一面まちいちめんきしいた眞蒼まつさを銀杏いてふが、そよ/\とのへりをやさしくそよがせつゝ、ぷんと、あきかをりてる。……
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これは「雨ふれど音の聞えず、しぶきのみ露とぞ置く」コンクリート建築に慊焉けんえんたる結果、さわやかな雨の音におもいせられたものであろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
アメリカでは鉱山やま歩きばかりしていたということだが、皮膚の芯まで日にやけ、一流のスポーツマンに見る、健康そのもののようなさわやかな印象を与える。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
第一には大道砥だいどうとのごとしと、成語にもなってるくらいで、平たい真直な道はわだかまりのないさわやかなものである。もっと分り安く云うと、眼をまごつかせない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一浴五銭ずつ取って大きな共同風呂になって居る、その熱度と新鮮味とが他の何所の湯よりも肌にさわやかである。
蚊帳釣草かやつりぐさ」の穂の練絹ねりぎぬの如くに細く美しき、「猫じゃらし」の穂の毛よりも柔き、さては「あかまま」の花の暖そうに薄赤き、「車前草おおばこ」の花のさわやか蒼白あおじろ
我々は大抵、武者小路氏が文壇の天窓を開け放つて、さわやかな空気を入れた事を愉快に感じてゐるものだつた。
あの頃の自分の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
生れつき何の屈托も取付けそうにないさわやかな青年なのを、私ゆえのために、こうもしょんぼりさせているのかと思うと、いじらしいような楽しみのような気持ちが起りまして
扉の彼方へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ころ/\と轉げると右に左に追ひかけては大溝おほどぶの中へ蹴落して一人から/\と高笑ひ、聞く者なくて天上のお月さまさも皓々かう/\と照し給ふをさぶいと言ふ事知らぬ身なれば只こゝちよくさわやかにて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
時折西北の風がさわやかに吹き下ろして来ると、枝や葉が一斉になびいて、其間から無数の柳絮りゅうじょが真白な綿をちぎって飛ばすように、ふわりふわりと飛んで行く、まるで牡丹雪が降っているようだ。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
流れは見えぬが、斗満とまむ川音かわおとは耳さわやかに、川向うに当る牧場内ぼくじょうないの雑木山は、の日をうけて、黄に紅に緑にえて居る。やがてこゝを立って小さな渓流けいりゅうを渡る時、一同石にひざまずいて清水しみずをむすぶ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そらさわやかれて、とお木立こだちそらせっするあたり見渡みわたされるすずしい日和ひより
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
吉例きちれい四國なれば上野國かうづけのくににて廿萬石下總國にて十萬石甲斐三河で廿萬石都合つがふ五十萬石上野國佐位郡さゐのこほり厩橋うまやばし城主格じやうしゆかくに御座候と辯舌べんぜつさわやかに申述なほ申殘しの儀は明日成せられ候せつ越前直々ぢき/\に言上仕つり候と申のべをはれば伊賀亮是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と上り口で振返って、さわやか階下したへおりた。すぐ上って来るだろうと思うと、やがて格子戸が開いたのは、懐手で出て帰ったのである。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雨勢の相当強い様子もわかるし、麻の葉を打つさわやかな音も連想に浮ぶ。「麻の雨」の五字で全体を纏めた句法も、なかなか働いているように思う。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
自分は長椅子から立上りさわやかな風におもてを吹かせ、あたゝかく静かな空気を肺臓一ぱいに吸込すひこみ、遠くの星の殊更美しい一ツを見詰めて、さて唇を開いて声を出さうとすると
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さわやかなるに驚きて、はかばかしく答もなさず、茫然としてただ、その黒檀こくたんの如く、つややかなるおもて目戍みまもり居しに、彼、たちまちわが肩をいだいて、悲しげに囁きけるは
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ころころと転げると右に左に追ひかけては大溝おほどぶの中へ蹴落して一人からからの高笑ひ、聞く者なくて天上のお月さまさも皓々こうこうと照したまふを寒いと言ふ事知らぬ身なればただここちよくさわやかにて
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
不図耳に入るものがある。颯々さあさあ——颯々と云う音。はっとして余は耳を立てた。松風まつかぜか。いや、松風でない。峰の嵐でもない。水声すいせいである。余は耳を澄ました。何と云うさわやかな音か。此世の声で無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
乳のふくらみを卓子テエブルに近く寄せて朗かに莞爾にっこりした。そのよそおい四辺あたりを払って、泰西の物語に聞く、少年の騎士ナイトさわやかよろったようだ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
道が田圃たんぼにさしかかって、さわやかな稲の匂を鼻に感ずる。空には月がなく、天の川が斜に白々と流れている、という趣らしい。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
小夜さよけてから降り出した小雨こさめのまた何時いつか知らんでしまった翌朝あくるあさ、空は初めていかにも秋らしくどんよりと掻曇かきくもり、れた小庭の植込からはさわやかな涼風が動いて来るのに
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
立合の手合はもとより、世擦れて、人馴れて、この榎の下を物ともせぬ、弁舌のさわやかな、見るから下っ腹に毛のない姉御あねごも驚いて目をみはった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
打顫うちふるふ鈴ののごとさわやかひびきは深く優しき声よ。
霜に緋葉もみじの散る道を、さわやかに故郷から引返ひっかえして、再び上京したのでありますが、福井までには及びません、私の故郷からはそれから七里さきの
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さわやかなる朝風は爽なるあしたのひゞきを伝へ
さわやかな心持に、道中の里程を書いた、名古屋扇も開くに及ばず、畳んだなり、肩をはずした振分けの小さな荷物の、白木綿のつなぎめを、押遣おしやって
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日曜と夏とのにおひに空気はさわやかなり。
失禮しつれい唯今たゞいま。」とかべなかに、さわやかわかこゑして、くゞもんがキイとくと、てふのやうに飜然ひらりて、ポンと卷莨まきたばこはひおとす。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(ただ一口試みられよ、さわやかな涼しいかんばしい酒の味がする、)と云うに因って、客僧、御身おんみはなおさら猶予ためらう、手が出ぬわ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飛ぶと、宙をかける威力には、とび退しさる虫がくちばしに消えた。雪の蓑毛みのけさわやかに、もとのながれの上に帰ったのは、あと口に水を含んだのであろうも知れない。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「は、早瀬さんの室を、お見舞になります時は、いつもわたくしどもはお附き申しませんでございます。」とさわやかな声で答えた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「宜しい、」と男らしく派手にさわやかにいった。これを機掛きっかけに、蝶吉は人形と添寝をして少し取乱したまま、しどけなく、乱調子に三階から下りて来て、突然いきなり
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やゝ大粒おほつぶえるのを、もしたなごころにうけたら、つめたく、そして、ぼつとあたゝかえたであらう。そらくらく、かぜつめたかつたが、温泉まち但馬たじま五月ごぐわつは、さわやかであつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
公子 (さわやかに)獄屋ではない、大自由、大自在な領分だ。歎くもの悲しむものは無論の事、僅少きんしょううれいあり、不平あるものさえ一日も一個ひとりたりとも国に置かない。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この湊屋の門口で、さわやかに調子を合わした。……その声、白きにじのごとく、と来て、お三重の姿にした。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頭を洗うし、久しぶりで、ちと心持こころもちさわやかになって、ふらりと出ると、田舎いなかには荒物屋あらものやが多いでございます、紙、煙草たばこ蚊遣香かやりこう、勝手道具、何んでも屋と言った店で。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おなじとしふゆのはじめ、しも緋葉もみぢみちを、さわやか故郷こきやうから引返ひつかへして、ふたゝ上京じやうきやうしたのでありますが、福井ふくゐまでにはおよびません、わたし故郷こきやうからはそれから七さきの
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
東雲しののめさわやかに、送つて来て別れる時、つと高くみちしるべの松明たいまつを挙げて、前途ゆくてを示して云つた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
折々をり/\そら瑠璃色るりいろは、玲瓏れいろうたるかげりて、玉章たまづさ手函てばこうち櫛笥くしげおく紅猪口べにちよこそこにも宿やどる。龍膽りんだういろさわやかならん。黄菊きぎく白菊しらぎく咲出さきいでぬ。可懷なつかしきは嫁菜よめなはなまがきほそ姿すがたぞかし。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東雲しのゝめ太陽たいやうめぐみの、宛然さながら處女しよぢよごとく、さわやか薄紅うすくれなゐなるに、難有ありがたや、きつねともらず、たぬきともならず、紳士しんしり、貴婦人きふじんとなり、豪商がうしやうとなり、金鎖きんぐさりとなり、荷物にもつり、おほいなるかばんる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その時なんぞは銀行からお帰り匇々そうそうと見えまして、白襟で小紋のお召を二枚もかさねていらっしゃいまして、早口で弁舌のさわやかな、ちょこまかにあれこれあれこれ、始終小刻こきざみに体を動かし通し
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云うのが含み声、優しくさわやかに聞えたが、ちと覚束おぼつかなさそうなひびきこもった。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある夏土用の日盛ひざかりの事……生平きびらの揚羽蝶の漆紋に、はかま着用、大刀がわりの杖を片手に、芝居の意休を一ゆがきして洒然さっぱり灰汁あくを抜いたような、白いひげを、さわやかしごきながら、これ、はじめての見参。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遠慮は不沙汰ぶさた、いや、しからば、よいとまかせのやっとこな。(と云って立つ。村越に続いて一室ひとまらんとして、床の間の菊を見る)や、や、これは潔くさわやかじゃ。御主人の気象によく似ておる。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
上敷うわしきを板に敷込んだ、後架こうかがあって、機械口の水もさわやかだったのに、その暗紛れに、教授が入った時は一滴の手水ちょうずも出なかったので、小春に言うと、電話までもなく、帳場へ急いで、しばらくして
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なりふりはすすはきの手伝といった如法の両人でも、間淵洞斎がまた声の尻上りなのさえ歯切れよく聞える弁舌さわやかで、しかも二十はたち前に総持寺へ参禅した、という度胸胡坐あぐらで、人を食っているのですから
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鋏はさわやかな音を立てた、ちちろも声せず、松風を切ったのである。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さわやかな、すずしいものいひ。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お夏はいよいよさわやか
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)