)” の例文
もちろん、老人ろうじんこころざしとならなかったばかりか、B医師ビーいしは、老人ろうじんきだったらしいすいせんを病院びょういんにわえたのでありました。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
所名ところな辻占つじうらも悪い。一条戻り橋まで来たときだった。供奉ぐぶの面々は急にながえを抑えて立ちどまった。いやしゃ二、み車をまわし初めた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
短刀を鞘へ収めて右脇へ引きつけておいて、それから全伽ぜんがを組んだ。——趙州じょうしゅう曰くと。無とは何だ。糞坊主くそぼうずめとはがみをした。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大悟徹底だいごてっていと花前とはゆうとのである。花前は大悟徹底だいごてっていかたちであってこころではなかった。主人しゅじんはようやく結論けつろんをえたのであった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その全力を尽して働くもので all or nothing(かいしからずんば)の法則が厳然として行われつゝあるのだ。
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
(存在)に対する(非存在)というような、そんな、単純な空という意味ではない、ということをお話ししておきました。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
前後のお供は、馬の顔をしたのや、牛の顔をした者ばかりで、車の前には、という字の書いた鉄のふだが打ちつけてあった。
馬をらせては、当代ゆい二の名ある作阿弥さくあみ殿、イヤ、かようなところに、名を変えてひそんでおられようとは……?
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
陽城公がみことのりに答えていうのは……臣、六典ノ書ヲあんズルニ、任土ハヲ貢シテヲ貢セズ、道州ノ水土生ズル所ノ者
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
訳の解らねえ奴が大将になり、さて一旦大将になると、しゃ二そいつに獅噛み付く。子供から孫、孫から曽孫ひまご、ずっと大将を譲り受けるんだからなあ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人間にんげんではどんなにふか統一とういつはいっても、からだのこります。いかに御本人ごほんにんこころかんじましても、そばかられば、その姿すがたはチャーンと其所そこえてります。
で、そのいえすべて什具じゅうぐとは、棄売すてうりはらわれて、イワン、デミトリチとその母親ははおやとはついぶつとなった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
出来るだけ悪く造られてゐる。世界の出来たのは失錯しつさくである。の安さが誤まつて攪乱かうらんせられたに過ざない。世界は認識によつて無の安さに帰るより外はない。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
けれどもだんだんなにきこえなくなつていつのにか彼女かれは、にゐることをおぼえるやうになつたのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
いや、それはかはしたところが、三にてられるうちには、どんな怪我けが仕兼しかねなかつたのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
顏へすゝを塗る手は古いが、眼尻へ鬢附油びんつけあぶらを塗つて、頬の引つつりをかうで拵へるとは新手あらてだつたね。
墓のかなたにはだれにも同じ虚無があるばかりだ。背徳漢サルダナパロスであろうと、聖者ヴァンサン・ド・ポールであろうと、常に同じに帰する。それが真実である。
露西亞等ロシヤとう元氣げんきさかんなる人々ひと/″\すねたゝいてをどたので、わたくしもツイその仲間なかま釣込つりこまれて、一ぱつ銃聲じうせいとも三にかけつたが、殘念ざんねんなるかな、だいちやく决勝點けつしようてん躍込をどりこんだのは
永い間の御親切をにして仇し男と、甲州くんだりまで逃げ出した挙句、江戸へ戻れば、阪上様のお屋敷奉公。さぞ憎い奴だと思し召したでござんしょう。——ですがお師匠さん。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さしては折角せつかくこゝろざしにしてなんぢ忠心まごころあらはれず、第一だいいちがたしなみにならぬなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
涙香るいこう小史のほんあん小説に「怪美人」というのがあるが、見物して見るとあれではない、もっともっと荒唐こうとうけいで、奇怪至極しごくの筋だった。でもどっか、涙香小史を思わせる所がないでもない。
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
曙色あけぼのいろ薔薇ばらの花、「時」の色「」の色を浮べて、獅身女面獸スフインクス微笑ほゝゑみを思はせる暗色あんしよく薔薇ばらの花、虚無きよむに向つて開いた笑顏ゑがほ、その嘘つきの所が今に好きになりさうだ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
お前に気の毒だから、若し向うで百両を返さぬとなれば百金はわしつぐなってお前に上げる心得だ、お前の為に百両は損をする気で中へ這入るのだから、其の志をにしないで、お村を諦めなさいよ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それにして、変な小細工をするなら、おれはもう手を引くからそう思ってくれ。後日ごにちに何事が起っても、主人の首に縄が付いても、ここの店が引っくり返っても、決しておれを恨みなさんなよ。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とまったときにはじめてやむもので、これは禅宗のほうでもそうでありますが、始め題を出しまして、「趙州じょうしゅう」という題を出す。狗子くし仏性ぶっしょうがあるかないか。と問われて、趙州が無といった。
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
小供可愛いさの一念から崖道、絶壁の頓着なく、しゃ二に押し登る。
みなにくいがもととはへ、可愛かはゆいにもふかい/\えんがある……すればりゃにくみながらの可愛かはゆさ! 可愛かはゆいながらのにくさといふもの! からぢゃ! かなしいたはぶれ、しづんだ浮氣うはき目易めやすみにく
き掛けたただの一息で、にするのを忍ばねばならぬ。
ぶつウ」
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
     ぶつ
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
とゝさま二の御懇意ごこんいとてはづかしき手前てまへ薄茶うすちやぷくまゐらせそめしが中々なか/\物思ものおもひにて帛紗ふくささばきのしづこゝろなくりぬるなりさてもお姿すがたものがたき御氣象ごきしようとやいま若者わかものめづらしとて父樣とゝさまのおあそばすごとわがことならねどおもあかみて其坐そのざにも得堪えたへねどしたはしさのかずまさりぬりながら和女そなたにすらふははじめてはぬこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それらの無数な精霊しょうりょうに内心で直面するとき、正成はいつもそそけ立ッたおももちになる。ひとりの犠牲もにしてはと詫びるのらしい。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅人たびびとは、少年しょうねんのしんせつをにしてはいけないとおもって、だまって、ほほえみながら、そのうしろ姿すがた見送みおくっていたのです。
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
行灯あんどう蕪村ぶそんも、畳も、違棚ちがいだなも有って無いような、無くって有るように見えた。と云ってはちっとも現前げんぜんしない。ただ好加減いいかげんに坐っていたようである。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
に致すによりかたく相斷り候て受取申さゞるを市之丞は本意ほいなく存じたるにや私し儀質物流れの掛合に參り候留守に煙草盆たばこぼんうちへ人知れず入れ置て歸りしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
実際じっさい人間にんげん自分じぶん意旨いしはんして、あるい偶然ぐうぜんなことのために、から生活せいかつ喚出よびだされたものであるのです……。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あたま数で押して、しゃ二討ちとってしまおうと、自分はすばやく岩淵達之助いわぶちたつのすけのうしろへまわって
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
同時にまた次第に粟野さんの好意をにした気の毒さを感じはじめた。粟野さんは十円札を返されるよりも、むしろ欣然きんぜんと受け取られることを満足に思ったのに違いない。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
予をわずらわすこの大なるぜんたおせ、予を安静ならしむるかのなるかな、である。
それもこれも悲しさうれしさ一度に胸にこみ合い止め度なくなったゆえとおゆるし下されたく、省さま、わたしはこのごろしょうと気が弱くなりました。あなたさまの事を思えばすぐ涙が出ますの。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
純な乙女の恋心、宗三郎が道人の後を追い、名古屋へ行ったと知った時、浜路はしゃ二一人ででも、後を追おうと云い出した。仁右衛門一時は止めたものの、止めて止まりそうな様子ではない。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
傷が淺かつたので、かうを貼つただけで濟ませてをります。
に対して立っているある物
せぬ娘でござります。殿の御親切をにいたすばかりか、拙者に口実を申して、その同心屋敷の辺から、姿を消してしまいました」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、其家そのいへすべて什具じふぐとは、棄賣すてうりはらはれて、イワン、デミトリチと其母親そのはゝおやとはつひぶつとなつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ばおすゝめ申せばにもかくにもかたよりし事のみ被仰おつしやりいでなくば御兩親樣が折角のお心盡しもに成て返つてかけ御心配ごしんぱい學問なさるが親不孝おやふかうと申すはこゝの次第なりと一什を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いっさいのゆうかいっさいの、抱きしめる手でそのまま殺すことも彼女にとっては同じだったが、さすがに殺しは得ずして助けて来た左膳、日々近く手もとにおいてみると
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「君の親切をにしては気の毒だが僕は転地なんか、したくないんだから勘弁かんべんしてくれ」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……おろそかなるべき事にはあらねど、かすかなる住居すまいはかり給え。……さてもこの三とせまで、いかに御心みこころ強く、ともとも承わらざるらん。……とくとく御上おんのぼり候え。恋しとも恋し。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しや二飛込むガラツ八。