氣遣きづか)” の例文
新字:気遣
振切つたのちの女の身の上や、又は人に嘆きを掛ける自分の行末までが、何故かう譯もなく、忍び得られぬほど氣遣きづかはれるのであらう。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
這麼老朽こんならうきうからだんでも時分じぶんだ、とさうおもふと、たちままたなんやらこゝろそここゑがする、氣遣きづかふな、こといとつてるやうな。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
見捨みすてたと云かどがあるゆゑ道具だうぐ衣類いるゐは云までもなく百兩の持參金ぢさんきんはとても返す氣遣きづかひなしと思ふゆゑそれそんをしてもかまはぬが何分なにぶん離縁状りえんじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みなさん!』とつてあいちやんは、つゞけやうとして氣遣きづかはしげにまはりを見廻みまはし、『さア、これで解散かいさんしやうぢやありませんか!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「百梃の鐵砲は公儀に取上げられてしまつた。どう工夫したつて二度と戻る氣遣きづかひはない。あれだけやり損ねると、百の九十九までは腹を切る」
「あなたはこれから這入らうとしてゐる新しい世界——あなたが這入らうとしてゐる新しい生活のことで氣遣きづかつてるの?」
多少たせう私達に好意かういを持つてくれる人達ひとたちは、に/\氣遣きづかひの眼をもつて私達にのぞみました。それは私達の眞意しんいなかつたからなのでした。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
なにかくさう、唯今たゞいま雲行くもゆきに、雷鳴らいめいをともなひはしなからうかと、氣遣きづかつたところだから、土地とち天氣豫報てんきよはうの、かぜはれ、に感謝かんしやへうしたのであつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『でも、あのやう澤山たくさんつては端艇たんていしづみませうに。』といふ、我身わがみ危急あやうきをもわすれて、かへつてあだひとうへ氣遣きづかこゝろやさしさ、わたくしこゑはげまして
うかしたかと氣遣きづかひてへば、にはか氣分きぶんすぐれませぬ、わたし向島むかふじまくのはめて、此處こゝからぐにかへりたいとおもひます、貴郎あなたはゆるりと御覽ごらんなりませ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしそれをこばんでこたへずにしまふのは、ほとんどそれはうそだとふとおなじやうになる。近頃ちかごろ協會けふくわいなどでは、それを子供こどものためにわるいとつて氣遣きづかつてゐる。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
かれやまにゐるあひださへ、御米およねこの事件じけんいて何事なにごとみゝにしてれなければいがと氣遣きづかはないはなかつたくらゐである。宗助そうすけ年來ねんらいれたいへ座敷ざしきすわつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ことすこぶそれがし武勇ふゆう氣遣きづか
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
王樣わうさま氣遣きづかはしげに白兎しろうさぎ御覽ごらんになりました、白兎しろうさぎ低聲こゞゑで、『陛下へいか證人しようにん相手方あひてかた證人しようにん詰問きつもんせらるゝ必要ひつえうがあります』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おろし主從四人ほツとばかり溜息ためいきつきながらも先々首尾しゆびよくいつはり出しをよろこび最早氣遣きづかひなしとこゝにて越前守には麻上下あさがみしも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一々でもりたいほどに氣遣きづかはれる母心はゝごゝろが、いまはしい汚點しみ回想くわいさうによつて、そのくちはれてしまふのである。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
これよりはわが大日本帝國だいにつぽんていこく領地りようちであること表示ひやうしするために、幾本いくほん日章旗につしようき海岸かいがんひるがへしていても、一朝いつてう此處こゝ立去たちさつたあとことは、すくなからず氣遣きづかはれるのである。
さうしてこのかまへ設備せつびでは、かへりがけにおもつたよりたか療治代れうぢだいられるかもれないと氣遣きづかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼の不安な樣子、何か氣遣きづかふやうないら/\した彼の擧動に私は驚いた。しかしつゞけた。
今世こんせ主君きみにも未來みらい主君きみにも、忠節ちうせつのほどあらはしたし、かはあれど氣遣きづかはしきは言葉ことばたくみにまことくなきがいまつねく、誰人たれびと至信ししん誠實せいじつに、愛敬けいあいする主君きみ半身はんしんとなりて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
乘客じようかく暗愁あんしうとはなし、不祥ふしやう氣遣きづかふにぞありける。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたしはおちやませてしまひたう御座ございます』とつて帽子屋ばうしや氣遣きづかはしげに、女王樣ぢよわうさまはうました、女王樣ぢよわうさま演奏者えんそうしや名簿めいぼんでられました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
申出ば此方へ役人をつかはすべし屹度きつと申渡すべきすぢあり其方共も落度おちどには毛頭もうとう相成あひなら氣遣きづかひ無用なり何分無禮ぶれいなきやうに致すべしと云渡いひわたしければ兩人は是をきゝきも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『はい、はい、どんなことでも/\。』と、こたへたが、それけても氣遣きづかはしきは海底戰鬪艇かいていせんとうてい工事こうじの、吾等われらかゝ騷動さわぎ引起ひきおこしたために、いたさまたげられたのではあるまいかと
出京しゆつきやう當座たうざは、大分だいぶん身體からだおとろへてゐたので、御米およね勿論もちろん宗助そうすけもひどく其所そこ氣遣きづかつたが、今度こんどこそはといふはら兩方りやうはうにあつたので、はりのあるつき無事ぶじ段々だん/\かさねてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お思ひ出しになるでせう、よく晴れた日でした——大氣も空もおだやかで、あなたのお身の安全や旅の氣持のことなど何も氣遣きづかふことはないのでした。私はお茶の後少時しばらくの間甃石しきいしの上を歩きました。
こめつ可笑をかしく面白おもしろものがたりながらしづみがちなるしゆ心根こゝろねいぢらしくも氣遣きづかはしくはなれぬまもりにこれもひとつの關所せきしよなり如何いかにしてかえらるべき如何いかにしてかのがるべきおたかかみとりあげず化粧けしやうもせずよそほひしむかし紅白粉べにおしろい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのまゝ座敷牢ざしきらうえん障子しやうじ開閉あけたてにも乳母うば見張みはりのはなれずしてや勘藏かんざう注意ちゆうい周到しうたうつばさあらばらぬこととりならぬ何方いづくぬけでんすきもなしあはれ刄物はものひとれたやところかはれどおなみちおくれはせじのむすめ目色めいろてとる運平うんぺい氣遣きづかはしさ錦野にしきのとの縁談えんだんいまいまはこびしなかこのことられなばみな畫餠ぐわべいなるべしつゝまるゝだけは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)