我慢がまん)” の例文
しかし自分じぶんは、いま兵隊へいたいさんのまえにいるのだとがつくと、かれは、我慢がまんして、じっと、雷鳴らいめいとおざかっていくそらつめていました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
もうじっとしてていられないような気持ちになりました。でも、しばらくじっと我慢がまんしていますと、また同じ子供の声がするのです。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
王子はうでんで、いわの上にすわりました。いつまでもじっと我慢がまんしていました。しかし、そのうちに、だんだんおそろしくなってきました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しかしほかの連中はみんな大人おとなしくご規則通りやってるから新参のおればかり、だだをねるのもよろしくないと思って我慢がまんしていた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我慢がまんできないようないやらしい沈黙ちんもくのなかで、ぼくは手紙を受取ると、そのまま、宿舎に入り、便所に飛びこんで、かぎを降しました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「だがの、直義。いくさの我慢がまんは何のためにする。よいしおに和をつかむためではあるまいか。いまは最もそのよいしおと尊氏は思う」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喜び勇んで椅子からとび下りそうになったが、おいしいおやつにありついたあかぼうみたいに、足をちょいとばたつかせるだけで我慢がまんした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
いや/\、けつして貴下方あなたがた御辛抱ごしんばうなさるにはおよばん。辛抱しんばうをするのはおうらだ、可哀想かあいさうをんなだ。我慢がまんをしてくれ、おうらうでたしかだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
皿に手を附けずに居ると料理が不味まづいからだらうと云つて夫人の心配せられるのが気の毒なので、我慢がまんして少しでも頂くことにして居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そのうへ個人こじん經濟状態けいざいじやうたいよつ是非ぜひなく粗惡そあくしよく我慢がまんせねばならぬひともあり、是非ぜひなく過量くわりやう美味びみはねばならぬひともある。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
「どうだね、一燻ひとくべあたつたらようがせう、いますぐくから」と傭人やとひにんがいつてくれてもおしなしりからえるのを我慢がまんして凝然ぢつ辛棒しんぼうしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私は子供たちの真似まねをしてそれを一つずつこわごわ口に入れてみた。なんだかっぱかった。私はしかしそれをみんな我慢がまんをしてみ込んだ。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
それでも我慢がまんして、痛いとも疲れたともいわず、与八と連れ立って歩こうとする、その痛々しさは与八も気がつかずにはいられなかったので
あいちやんはみづかおもふやう、『何時いつはなへるんだかわたしにはわからないわ、はなはじめもしないでてさ』しかあいちやんは我慢がまんしてつてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
お客にするように封建的ほうけんてきをして礼をいう。小初はそれをいじらしく思って木屑臭きくずくさい汗のにおい我慢がまんして踊ってやる。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
貴方あなたがたがさうてゐられるとすれば、大久保おほくぼつても幸福かうふくです。おいもうとさんがじつと我慢がまんしてゐられるのも、なか/\だとおもひますね。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
去年の暮れに一しょになって、築土つくどまんに家を持ってやれよかったと思う間もなく、ついに自分が我慢がまんし切れずに、あんな出来事が起ったのである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ふものアンドレイ、エヒミチはこらこらへて、我慢がまんをしてゐたのであるが、三日目かめにはもう如何どうにもこられず。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おかしな玩具がんぐかなんかのように彼を面白がったり、わるふざけをしてからかったりした。それを小父おじ(小さい行商人)はおちつき払って我慢がまんしていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
... お昼はお香の物位で我慢がまんなさいまし」大原「イエ昼飯は食べずにいましょう。僕も晩の大御馳走をお招伴しょうばんしますからなるたけ腹を減らしておきます。 ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
長吉ちやうきち後姿うしろすがた見送みおくるとまたさらうらめしいあの車を見送みおくつた時の一刹那せつな思起おもひおこすので、もうなんとしても我慢がまん出来できぬといふやうにベンチから立上たちあがつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
昔は学問のことを勉強とっていた。何か一つの目的のために、強いてつとめて我慢がまんをして学問をしたのであった。多くは新たなる職業のためであった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
入物いれもの其方そつちのですが、そのつまらん中身なかみ持參ぢさんですとひたいところを、ぐツと我慢がまんして、余等よら初對面しよたいめい挨拶あいさつをした。
フトがつくと、さきんでゐるラランがなに旨味うまいものでもたべてゐるやうなおとをたてゝ、のど気持きもちよくならしてゐる。ペンペはもう我慢がまんができないで
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
平生へいぜいは、「したい」と答える。もっともそれは、いよいよ我慢がまんができないか、さもなければ、月が出ていて、その光で元気をつけられるような時である。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
莫迦ばか。わしは正直者じゃ。やったことはやったというが、いくらいても、やらんことはやらぬわい。これ、もう我慢がまんが出来ぬぞ、この殺人訪問者め!」
が、やっとして、「そうさな、俺の、俺の一生の間食べ余るだけの食べ物と、着余るだけの着物とをくれると屹度きっと約束したら……まあ、それで我慢がまんしてやろう」
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
「それだけならば我慢がまんもできる。僕はロックに比べれば、音楽家の名に価しないと言やがるじゃないか?」
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だから、あなたが我慢がまんしてよくしてゐれば、その氣持ちが、暫くの間しつけられてゐただけ、ずつとはつきり現はれて來ると思ふわ。それにね、ジエィン——
片親かたおやるかとおもひますると意地いぢもなく我慢がまんもなく、わび機嫌きげんつて、なんでもことおそつて、今日けふまでも物言ものいはず辛棒しんぼうしてりました、御父樣おとつさん御母樣おつかさん
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
取より早くオヽ合點がつてんと受止つゝ強氣がうき無慚むざんに打合に年は寄ても我慢がまんの九郎兵衞茲に專途せんどと戰へども血氣けつきさかんの曲者に薙立なぎたてられて堪得たまりえず流石の九郎兵衞蹣々よろ/\よろめく處を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「お前はまだいろんなものが欲しいだろう。お父さんも買ってやりたいが……お父さんは今非常に貧乏をしているんだ……どうか我慢がまんしてくれ、ね、ふみ子や……」
楢夫は余程よほどなぐってやろうと思いましたが、あんまりみんな小さいので、じつと我慢がまんをして居ました。
さるのこしかけ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いひ切つて、絶大な我慢がまんも盡き果てたものか、氣の強さうな内儀は、初めて聲をあげて泣くのです。
それでも入らぬよりましと笑って、我慢がまんして入った。夏になってから外で立てた。いども近くなったので、水は日毎に新にした。青天井あおてんじょうの下の風呂は全く爽々せいせいして好い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なんでも堪忍かんにんをしなければいけんぞ、堪忍のにんの字はやいばの下に心を書く、一ツ動けばむねを斬るごとく何でも我慢がまん肝心かんじんだぞよ、奉公するからは主君へ上げ置いた身体
ねんではまだわからないというので、さらに二ねんほどつことになりましたが、しかしそれがぎても、矢張やは懐胎かいたい気配けはいもないので、とうとう実家じっかでは我慢がまんがしれず
でも此様こんはずでは無かツたがと、躍起やつきとなツて、とこまでツてる、我慢がまんで行ツて見る。仍且やツぱり駄目だめだ。てん調子てうしが出て來ない。揚句あげく草臥くたびれて了ツて、悲観ひくわん嘆息ためいきだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
病人の仲間入りをして、朝から晩まで病人ばっかりの中に生活するなんて、そんなことは我慢がまん出来ない。いやだ、いやだと声になって出るように、感情がせき上げました。
「こんなにもういままでながあたためたんですから、もすこ我慢がまんするのはなんでもありません。」
自分じぶん義母おつかさんに『これから何處どこくのです』とひたいくらゐであつた。最早もう我慢がまんきれなくなつたので、義母おつかさん一寸ちよつたつようたしにつた正宗まさむねめいじて、コツプであほつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
戦争は莫大の入費のかかることゆえ、我慢がまんのできる限りは何種族も戦争を始めぬには相違ないが、自己の種族の生存が危うくなる場合には、いかなる危険を犯しても戦わねばならぬ。
戦争と平和 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
情容赦なさけようしゃもなく打ちつづけてから(我慢がまんが出来ますか)と、いって訊いた。男は、顔色もえず(出来ますとも)と、答えると、今度は前よりもほめ感じて、いろいろ介抱かいほうしてくれた。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
おとよはもう意地も我慢がまんも尽きてしまい、声を立てて泣き倒れた。気の弱い母は
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
彼がはじめてこの土地に家を建てた時に、民さんという男をつかっていたが、どうにもなまけ者で朝出の時間がちがったり、不意に休んだりするので我慢がまんができなくなり、納得ずくで別れた。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
あまりやかましいので、さすがに忍耐にんたいづようし我慢がまんがしれなくなつたと
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
けれども姫は両親ふたおやにこの事を話すと、かえって心配をかけると思ったから、毎晩故意わざとよく眠ったふりをして我慢がまんしながら、どうかして新しい珍らしいお話を聞く工夫はないかと、そればかり考えていた。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
もう我慢がまんできないわ 手がしびれて上からすべり落ちさうだわ
我慢がまんく国の栄誉えいよを保つものというべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あつくても我慢がまんしてください」
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)